遺産相続(いさんそうぞく)とは、被相続人(亡くなった人)が残した財産を相続人が引き継ぐことをいいます。
引き継ぐ財産のことを「相続財産」と呼びますが、これは被相続人が有していたすべての財産が含まれます。
預貯金や株式、不動産といったプラスの財産のほか、債権などのマイナスの財産も相続財産です。
遺産相続は、個人的な感情のぶつかり合いになり交渉が難航することも少なくありません。
遺産相続でトラブルを避けるためには事前に準備をする必要があるでしょう。
この記事では、どういったものが相続財産になるのか、誰が相続人になるのか、どういった割合で遺産を分割するべきかなどの遺産相続に必要な知識を解説します。
併せて、トラブルになった場合の対処法も記載します。
これから遺産相続をする可能性がある方はこの記事を参考に遺産相続への理解を深めましょう。
すでにトラブルを抱えてしまった方は、内容に沿って専門家に依頼するようにしてください。
遺産相続で問題を抱えている方へ
上記のような問題を抱えている方は、弁護士に相談・依頼する事がおすすめです。
弁護士は業務範囲が広く、法的な知識に基づき納得のいくアドバイスもできますし、あなたの代理として他の相続人と交渉をすることもできます。
弁護士は依頼者の利益が最大になるよう業務をおこないます。
遺産相続トラブルで悩んでいる方は、まずは下記から弁護士に相談してみてください。
遺産相続の対象になる財産を「相続財産」と呼びます。
相続財産となるのは被相続人が有していたすべての財産です(一部の例外はあります)。
どういったものが相続財産になるかについて正確に把握しておかなければ、遺産相続手続きを円滑に進めることができません。
まずは相続財産の対象になるものについて理解しておきましょう。
相続財産の対象になるものは、プラスの財産とマイナスの財産に分けられます。
相続財産の種類 |
内容 |
現金・有価証券 |
|
動産 |
|
不動産その他関連する権利 |
|
その他 |
|
上記のように、被相続人が亡くなった時点で有している財産や権利は、基本的には相続財産の対象です。
抜け漏れがあるとスムーズに遺産相続が進められませんので、しっかりと把握しておきましょう。
相続財産の種類 |
内容 |
負債 |
|
上記のように、マイナスの財産も相続財産の対象です。
被相続人が抱えていた借金やローンのほか、未払いの税金・未払いの家賃なども相続人が引き継ぎます。
もっとも、住宅ローンは「団体信用生命保険」に加入していた場合、本人が死亡した場合には残りの住宅ローンは全額弁済されることになりますので、相続のときに問題になることはないでしょう。
被相続人が有している(と思われる)財産であったとしても相続財産とならないものがあります。
大きく分けると「一身専属権」「保険金・退職金・年金」「祭祀財産」の3種類です。
一身専属権とは、権利の性質上、特定の者のみに帰属し、または行使することができる権利のことをいいます。
一身専属権は、相続財産には含まれません(民法第896条但し書)。
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
引用元:民法896条
相続財産に含まれない一身専属権には、以下のようなものがあります。
生命保険金や遺族年金などは、被相続人の死亡を契機に受け取るものであることから、相続財産に含まれると考えている方もいるかもしれません。
しかし、これらは受取人固有の権利と考えられており、相続財産には含まれません。
なお、生命保険金や死亡退職金は「みなし相続財産」と呼ばれ、相続税の課税対象となっています。
受け取った場合には相続税を支払わなければならない可能性があるので注意が必要です。
また、遺族年金を受け取るためには申請が必要です。
自動で振り込まれることはありませんのでこちらも注意してください。
祭祀財産とは、祭祀を営むための系譜(家系図)、祭具(仏壇・位牌など)、墳墓(墓地・墓石)などのことです。
これらは被相続人から受け継ぐことになりますが、祭祀を主催すべき者が承継するとされており、相続財産には含まれません(民法第897条)。
(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
引用元:民法897条
被相続人と疎遠でどういった財産を所有しているか把握していないケースや、相続人の一人が有利に遺産相続を進めるために相続財産を開示しないケースなど、被相続人の遺産がわからない場合もあるでしょう。
相続財産は自分で調べることも可能ですが、遺産がわからない場合は専門家に依頼するのがベターです。
相続財産調査について依頼できるのは弁護士、司法書士、行政書士です。
それぞれ、相続財産調査以外にも依頼できることがありますが、対応内容が異なります。
自分が抱えているトラブルに応じて誰に依頼するか検討する必要があります。
依頼できる内容 |
弁護士 |
司法書士 |
行政書士 |
相続財産調査 |
○ |
○ |
○ |
戸籍収集 |
○ |
○ |
○ |
不動産の名義変更 |
○ |
○ |
× |
相続放棄 |
○ |
△ |
△ |
遺産分割協議書作成 |
○ |
△ |
△ |
遺産分割トラブル対応 |
○ |
× |
× |
遺産相続において、誰が相続できるのか、どういった割合で分割するのかについては民法に規定があります。
遺産を受け取る権利がある人のことを「法定相続人」、受け取れる遺産の割合を「法定相続分」と呼びます。
法定相続人は、被相続人の配偶者及び一定の親族となっています。
また、遺産分割では法定相続分通りに分割するのが一般的ですが、相続人全員が納得している場合には、必ずしも法定相続分に拘束される必要はありません。
法定相続人や法定相続分についてもしっかりと把握しておかなければ、スムーズに遺産相続を進めることはできません。
ここで理解を深めておきましょう。
遺産を受け取れる法定相続人の順位は、被相続人との関係によって次のとおり決まっています。
グラフで表すと、相続順位は次の通りになります。
相続順位 |
対象者 |
常に相続人 |
配偶者 |
第1順位 |
子 |
第2順位 |
直系尊属(親・祖父母) |
第3順位 |
兄弟姉妹 |
相続人となるのは、配偶者と最も順位が高い法定相続人です。
仮に配偶者と子供がいれば、配偶者と子供が相続します。被相続人の親や兄弟は相続できません。
一方、子供がいなければ親が、子供も親もいなければ兄弟姉妹が相続人になります。
また、法定相続人が得られる法定相続分も民法によって次のとおり決まっています。
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
引用元:民法
わかりやすくまとめると、法定相続分は次の表のとおりです。
組み合わせ |
配偶者 |
子供・孫 |
直系尊属 |
兄弟姉妹・甥姪 |
配偶者のみ |
100% |
― |
― |
― |
配偶者+子 |
1/2 |
1/2 |
― |
― |
子のみ |
― |
100% |
― |
― |
配偶者+直系尊属 |
2/3 |
― |
1/3 |
― |
直系尊属のみ |
― |
― |
100% |
― |
配偶者+兄弟姉妹 |
3/4 |
― |
― |
1/4 |
兄弟姉妹のみ |
― |
― |
― |
100% |
被相続人の介護を一人の相続人が担っていたような場合など、法定相続分に従っていたのでは不公平に感じるようなケースもあるでしょう。
そのような場合には、当該相続人が「寄与分」を主張して、相続分を修正することも可能です。
寄与分(民法第904条の2)とは、相続人の中で、被相続人の療養看護や被相続人の事業の手伝い、事業への資金提供などで被相続人の財産の維持や増加に貢献した人が、他の相続人より多くの相続分を受け取れるというものです。
(寄与分)
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2~4 略
引用元:民法
なお、相続人以外の者が、無償で被相続人の療養看護等をおこなっていたような場合には、その者は「特別の寄与」を主張し、相続人に対し寄与に応じた額の金銭の支払を請求することも可能です。
第千五十条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2~5 略
引用元:民法
民法第866条第1項には、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」と規定されています。
したがって、胎児であっても法定相続人になりますし、法定相続分に従って遺産を受け取れます。
もっとも、胎児が死産してしまった場合には、胎児に相続権はありません。
胎児がいなかったものとして遺産分割がおこなわれます。
(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
引用元:民法
【関連記事】胎児の遺産相続権はいつから?もらえる条件や産後の手続きを解説
養子や前の配偶者との子の相続権はあるのか、気になる方もいらっしゃるでしょう。
養子・前妻/前夫の子が法定相続人になるのか、遺産割合はどれくらいかについて確認しましょう。
養子も第一順位の法定相続人ですし、法定相続分に則って遺産を受け取れます。
仮に遺産が2,000万あり、相続人が配偶者、実子、養子だった場合には、配偶者の遺産は1,000万円、実子、養子の遺産はそれぞれ500万円ずつです。
前妻や前夫の子にも相続権はあり、相続順位は第一順位で、法定相続分も同じです。
仮に遺産が2,000万円で、相続人が、配偶者と、配偶者との子供1人、前妻との子供1人の場合、配偶者は1000万円、同親の子と前妻との子はそれぞれ500万円を遺産として受け取れます。
なお、前妻や前夫は相続人ではありません。
【関連記事】前妻の子に相続させない9つの方法|よくあるトラブルと対処法をわかりやすく解説
たとえば、被相続人に子供と孫がおり、子供が死亡した後に、被相続人が死亡したとします。
この場合、本来子供が受け取れるはずだった遺産を、その孫が受け取ることができます。
これを、代襲相続と呼びます。
代襲相続とは、被相続人より先に、法定相続人である子や兄弟姉妹が死亡等(廃除や欠格事由に該当する場合も含む)により相続人になれなかった場合に、その者の直系卑属(直系の下の世代。但し兄弟姉妹の場合は子に限る。)が、その者に代わって相続することをいいます。
なお、相続放棄した場合には代襲相続は認められていません。
法定相続人の中に、遺産を相続させたくない人がいるケースもあるでしょう。
そういった場合の対処法についてみておきましょう。
虐待をされた等の理由で、相続人となるべき人に遺産を相続させたくないという場合は、相続人の廃除をおこなうことが考えられます。
相続人の廃除は当該相続人の相続権を消失させる制度で、家庭裁判所の審判で認められることが必要です。
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
引用元:民法
但し、条文に記載のとおり、廃除が認められるためには、虐待があった等の要件を満たしている必要があります。
相続させたくない人がこのような要件を満たしていない場合には、次で紹介する「遺言書の指定」を検討する必要があります。
生前に遺言書を作成し、遺言書によって相続させたくない相続人の相続分をゼロとすることで、相続させないという方法もあります。
ただし、被相続人の兄弟姉妹を除く相続人には「遺留分」といって、民法1042条で認められた最低限度の相続分があります。
遺言書で指定したとしても、遺留分を侵害することはできません。
仮に侵害していた場合は、「遺留分侵害額請求」といって、遺留分侵害額に相当する金銭支払いを他の相続人が求められることになります。
遺言書で指定する場合には、その相続人の遺留分を侵害しないように注意する必要があります。
ここでは、遺産相続の流れを確認しておきましょう。全体の流れは次の図のとおりに進みます。
まず遺言書があるかどうかを確認する必要があります。
遺言書の有無で遺産の分割方法が異なることがあるからです。
なお、遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、被相続人が保管、管理していますので、相続人が探すしかありません。
自宅に保管しているほか、相続人の1人や友人、専門家が預かっている、銀行や信託銀行に預けてあるといったケースもあるかもしれません。
公正証書遺言は公正役場に保管されていますので、問い合わせてみましょう。
全国どこの公証役場に問い合わせても構いませんが、問い合わせが可能なのは相続人かその代理人に限られます。
なお、自筆証書遺言と秘密証書遺言については、遺言書が偽造されていないか、形式的に不備がないかを確認するために家庭裁判所で検認を受けなければなりません。注意しておきましょう。
遺言書があった場合には遺言書通りに遺産を分けることが原則です。
ただし、相続人全員の同意があった場合には、遺産分割協議による分割も可能です。
遺言書が存在したとしても、無効になるケースがあります。
【遺言書が無効になるケース】
遺言書が無効になった場合も、遺産分割協議によって分割します。
遺言書がない場合は、遺産分割協議(相続人同士の話し合い)で財産の分配について決めます。
遺産分割協議は、遺産相続が始まればいつでもおこなえますが、相続人全員で協議する必要があるので注意しましょう。
遺産分割協議で話し合いがまとまったら、その内容を遺産分割協議書にまとめることが通常です。
遺産分割協議書には相続人全員が署名・押印します。
一度遺産協議分割が終わると、一方的に変更することはできないので注意が必要です。
なお、遺産分割協議では、相続人全員の合意があれば、法定相続分にとらわれずに遺産分割をおこなっても構いません。
法定相続人の中に行方不明者がいる場合には、遺産分割協議を行えません。
遺産分割協議は法定相続人全員でおこなう必要があるからです。
まずは、行方不明者の戸籍をたどるなどして、現住所を把握しましょう。
住所がわかった場合には手紙を送るなどして、相続が開始したことを伝えます。
仮に相続人の生存が不明な場合には、「不在者財産管理人選任の申立」を裁判所におこなうか、失踪宣告の手続をおこなうなどの方法が考えられます。
それぞれの内容は次のとおりです。
手続き | 内容 |
不在者財産管理人選任の申立て | 不在者財産管理人を裁判所に選任もらう手続き。不在者管理人は不在者が現れるまで不在者の財産管理をおこなう。 ただし、不在者財産管理人を遺産分割協議に参加させる場合は、別途家庭裁判所の許可を得ることが必要。 |
失踪宣告 | 不在者を法律に則って死亡したものとする制度。死亡者はいないものとして遺産相続をおこなう。 |
協議がまとまらないときは遺産分割調停をおこないます。
遺産分割調停とは、調停委員や裁判官が各相続人の主張を聞きながら、解決を図る手続です。
遺産分割調停で話し合いがまとまると調停が成立し手続きは終了しますが、納得しない相続人が一人でもいた場合には、審判手続へと移行します。
遺産分割調停でも話し合いがまとまらないと審判手続(最終的に裁判官が判断を下すこと)に移行します。
審判では、争点について、証拠に基づいて判断が下されることになります。
通常、遺産相続では「単純承認」といって被相続人のプラスの財産とマイナスの財産のすべての財産を相続します。
しかし、相続したくない遺産(負債など)がある場合、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する「限定承認」や、相続をしない「相続放棄」という手段があります。
限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する方法です。
自宅や被相続人の形見など必ず相続したい財産があるけれど、負債が大きい場合に有効な手段です。
なお、限定承認をする場合は、相続人全員で、家庭裁判所に限定承認の申述をおこなわなければなりません。
加えて、申述が受理された場合には、限定承認をしたこと等を公告(官報掲載)する必要があります。
借金などマイナスの財産が多く、遺産相続をすると負債を抱えるという場合には、相続放棄を検討しましょう。
相続放棄とは被相続人の遺産の一切を放棄することです。
相続放棄をすると、放棄をした相続人は、プラスの財産もマイナスの財産も相続しないこととなります。
ただし、相続放棄をすると、次の順位の相続人に相続権が移行します。
相続人の誰もが相続をしたくないという場合には、法定相続人全員が相続放棄をしなければなりませんので注意が必要です。
相続放棄する場合には、家庭裁判所に相続放棄の申述をおこないます。
相続に関する手続きの中には期限があるものがあります。
期限を過ぎてしまうと手続きを行えずに不利益を被る場合もあるため、十分な注意が必要です。
「相続放棄」や「限定承認」は、相続開始を知った日から3ヵ月以内におこなわなければなりません。
なお、遺産の調査に時間がかかる場合など、どうしても3ヵ月以内に行えないというときには、家庭裁判所に「熟慮期間の延長」を申し立てましょう。
申立をすることで一定期間、期限を延ばしてもらえる可能性があります。
【関連記事】相続放棄の期限は3ヵ月|期間を過ぎたときの対処法を解説
準確定申告は相続開始を知った日から4ヵ月以内におこなわなければなりません。
準確定申告とは、被相続人の生前における所得についての確定申告のことです。
次のような場合は準確定申告が必要になるケースがあるので注意してください。
【準確定申告をする必要があるケース】
相続税の申告・納税は相続開始を知った日から10カ月以内におこなう必要があります。
申告・納税をしない場合には、無申告課税や延滞税を支払わなければなりません。
相続税の申告は税務署におこないますが、個人ではむずかしいケースもあるでしょう。
必要に応じて税理士などの専門家に依頼するようにしてください。
相続をすると、遺産の金額によっては「相続税」を支払わなければなりません。
相続税を支払わなかった場合、無申告加算税や延滞といったペナルティーを受ける可能性があります。
相続税の計算方法は個人では難しいケースが通常です。
遺産総額を計算のみならず、基礎控除、配偶者控除、未成年者控除、障碍者控除、相次相続控除などを考慮しなければなりません。
遺産を受け取った場合には、相続問題に注力しており、相続税にも詳しい弁護士に相談してみましょう。
相続トラブルがない場合には、税理士に相談するのも有効な方法です。
ここでは、相続税に関して知っておくべきことを解説します。
相続税の対象になるのは、被相続人から相続したすべての財産です。
現金、預貯金、株、不動産などのほか、著作権、特許権など金銭に見積もることが可能な経済的価値のあるすべてのものが課税対象です。
その他、被相続人の死亡によって得た財産も相続税の対象になります。
これを「みなし相続財産」と呼びます。
具体的には、死亡退職金、生命保険金などが該当します。
相続税は高額になるケースもあります。
現金が少なく不動産などの流動性が低い財産が多い場合には、特に納税が困難になってしまうケースもあるでしょう。
相続税を減らすためには生前の対策が大切です。
具体的な方法としては次のようなものが挙げられます。
生前贈与や祭祀財産の購入などは、被相続人の財産を減らすことで相続税対策をする方法です。
相続財産が減ればその分、相続税が減ります。
特に生前贈与はよく用いられる方法で、1年間の贈与額が110万円であれば贈与税がかからず、相続税を大きく減らせるメリットがります。
生命保険の非課税枠の利用は、被相続人の財産で生命保険に加入し、受取人を相続人にしておく方法です。
生命保険には相続税の非課税枠があるので、これも相続税対策になります。
アパート・マンションの購入は、相続財産の評価を目減りさせることで相続税対策になり得ます。
現金で相続するよりもアパート・マンションの方が基本的には評価額が低くなり、そのぶん相続税を減らすことが可能になるのです。
生前贈与について詳しく知りたい方は下記を参考にしてみてください。
相続した遺産のほとんどが不動産で、相続税を一括で払うのが難しい場合には延納(相続税を分割で支払う制度)を検討してください。
それでも支払いが難しい場合は、金銭の代わりに不動産等を納める「物納」という方法もあります。
詳しくは税理士などの専門家にご相談ください。
相続はトラブルに発展してしまうケースが少なくありません。
実際、1997年には1万298件だった相続の調停・審判件数が、2018年には1万3,040件と約1.3倍に増加しています。
相続問題を抱えている場合には弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士が間に入って協議するだけで問題が解決することもありますし、調停・審判となった場合にはあなたに有利な条件での遺産分割ができる可能性も高まります。
相続を弁護士に依頼するメリットには、遺産分割協議での解決が期待できることと、他士業に比べて業務範囲が広いという2点が挙げられます。
相続問題は、弁護士への相談・依頼により解決が期待できます。
具体的な相続問題としては次のようなものが挙げられます。
遺言書の内容や遺産分割協議に納得がいかない場合、相続人の間で言い争いをすることになり、精神的な負担が大きくなります。
また、生前の使い込みや遺留分の侵害、寄与分が反映されないなどがあると、不平等な遺産分割になってしまいかねません。
弁護士であれば法的な知識に基づき納得のいくアドバイスも可能ですし、あなたの代理になって交渉をすることも可能です。
弁護士は依頼者の利益が最大になるよう業務をおこないますので、相続トラブルで悩んでいる場合にはまずは弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士は他の専門家と違って業務範囲が広いのが特徴です。
特に相手方との交渉・遺産分割調停の代理等は弁護士しかおこなえません。
相続のトラブルを抱えている場合には、弁護士への相談がベストな選択です。
業務内容 |
弁護士 |
司法書士 |
行政書士 |
法律相談 |
○ |
△ (認定司法書士のみ) |
× |
遺産分割協議書の作成 |
○ |
△ (内容の書面化のみ) |
△ (内容の書面化のみ) |
相手方との交渉の代理 |
○ |
× |
× |
遺産分割調停の代理 |
○ |
× |
× |
遺留分侵害額請求の代理 |
○ |
× |
× |
弁護士は法律の専門家であるものの、あらゆる分野に精通しているわけではありません。
相続問題を依頼する場合には、相続トラブルに注力している弁護士に相談するべきです。
相続分野に注力していない弁護士に依頼すると、迅速な解決が見込めない場合もありますし、実務経験が足りず納得できる結果が得られない可能性も高くなります。
弁護士に依頼する際は、次のような点を参考に検討すると良いでしょう。
相続トラブルに特化した弁護士を探すには、ネットで調べる、知人に紹介してもらうといった方法があります。
ご自身に合う方法を選びましょう。
なお、ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)では、相続問題に特化した弁護士を都道府県別に検索できます。
遺産分割、遺留分侵害、遺言書作成など、悩み別に弁護士を探すことも可能です。
相談料無料の弁護士も多数掲載していますので、ぜひ利用してみてください。
遺産相続について知っておくべきことをまとめました。
事前に相続について理解しておくことでトラブルを未然に防ぐようにしましょう。
遺産相続は、遺言書の存在を確認したり、財産を調査したりするところから始まります。
特に財産の調査は個人では難しいケースもありますので、困難だと感じたら、まずは弁護士などの専門家に相談してみましょう。
また、相続はトラブルに発展する可能性もあります。
自力での解決が難しかったり、悩んだりした場合には無理せず弁護士に相談してみましょう。
弁護士であればあなたの状況にあった的確なアドバイスをしてくれるでしょう。
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