相続が発生した際、まずおこなう必要があるのが相続財産の調査です。
相続財産の調査では、「相続財産の有無の調査」と「相続財産の評価」をおこないます。
相続財産調査をおこなわないと、あとあと大きな負債が見つかって損をしたり、新たに預貯金などが見つかって相続税の延滞税が発生したりするなどの不利益を被る恐れもあります。
しかし、相続財産調査はほとんどの人が初めておこなうため、やり方や進め方がわからず悩んでしまうものです。
本記事では、相続財産の調査方法や、相続財産の調査について依頼できる専門家などをわかりやすく解説します。
相続財産の方法がわからずお悩みの方へ
相続をおこなうのに相続財産の調査をしないといけない…でもやり方がわからずに悩んでいませんか?
結論からいうと、相続財産調査でお悩みなら弁護士への相談・依頼をおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを得ることができます。
- 相続財産調査のやり方がわかる
- 相続財産調査を依頼すべきかわかる
- 弁護士に依頼したときの費用がわかる
- 依頼すれば、不明確な財産も漏れなく遺産分割できる
- 相続放棄すべきかどうか判断できる
当サイトでは、相続について無料相談できる弁護士を多数掲載しています。電話での相談も可能なので、依頼するか決めていなくても、本当に弁護士に依頼すべきかも含めてまずは無料相談を利用してみましょう。
相続財産調査とは?
ここでは、相続財産調査でどのようなことをするのかを解説します。
相続財産の有無や内容を調査する
まず、相続では相続対象になる相続財産を調査する必要があります。
対象となるのは、亡くなった被相続人のプラスの財産やマイナスの財産を含めた全ての財産です。
プラスの財産には土地・預貯金・保険金積立金など、マイナスの財産には住宅ローン・借金などが含まれます。
各相続財産の調べ方は「相続財産の調査方法」で詳しく解説します。
相続財産を評価する
相続税の申告や公平な相続のためにも、相続財産のうち不動産や株式などは適正に評価・査定してもらうことが重要です。
不動産や株式の査定方法はさまざまですが、不動産についてはいくつかの評価・算出方法があります。
不動産の実際の取引相場価格の算定の際には、不動産業者の査定サービスを複数利用してみて平均値を算出する方法が一般的です。
なお、財産評価の仕方は相続税にも関係するので、節税したい場合は税理士や公認会計士などに相談してみてください。
相続財産調査が必要な3つの理由
「うちには財産なんてないだろうから」などと考えて相続財産調査を怠ったりすると、思わぬ不利益を被る恐れがあります。
ここでは、相続において相続財産調査が必要な理由を解説します。
1.遺産分割の手続きを適切に済ませるため
被相続人の財産を相続する際、遺言書がなければ相続人同士で遺産分割協議をおこないます。
原則として遺産分割協議は相続人全員でおこなう必要があり、誰か一人でも欠けた状態でおこなった場合、その遺産分割協議は無効となります。
遺産分割協議ではお互いの取り分などで揉めたりすることも珍しくなく、ある程度の手間や時間がかかります。
相続財産調査を適切に済ませていないと、遺産分割協議後に新たな財産が見つかったりすることもあり、その場合はまた遺産分割協議をおこなわなければならず、さらに手間がかかってしまう可能性があります。
2.相続税の申告を正しく済ませるため
一定以上の相続財産を相続した場合、相続税を納付する必要があります。
相続財産調査を適切におこなわないと、そもそも相続税が発生するのか、いくら相続税を納めればよいのかなどが正確に把握できません。
相続税の支払いを延滞した場合は延滞税がかかる
もし相続税を支払う必要があるにもかかわらず適正に納付されなかった場合、延滞日数に応じて延滞税などの支払いを求められることもあります。
ほかにも、実際よりも金額を少なく申告した場合は「過少申告加算税」、申告期限を超過しても申告しない場合は「無申告加算税」などのペナルティもあります。
3.相続放棄が必要かどうか判断するため
相続財産調査を適切におこなわないと、「相続手続きが終わった」と思っていたあとに被相続人の借金が発覚したりするケースもあります。
被相続人の借金などの債務は、相続放棄しないかぎり各法定相続人が相続割合に従って承継します。
この場合、債権者から相続分に応じて支払いを求められるかもしれません。
これが少額であれば大して問題ないかもしれませんが、返済に困るような金額であれば、相続により大きな不利益を被ることになりかねません。
場合によっては、自己破産などの債務整理を検討しなければならない可能性もあります。
相続放棄は被相続人の相続開始を知ってから3ヵ月以内
相続放棄は、「被相続人の相続開始を知ってから3ヵ月以内」におこなうのが原則です。
後日、多額の借金が発覚した場合でも相続放棄ができるケースもありますが、あらかじめ相続財産調査をしっかり済ませておくのが得策でしょう。
相続財産調査は亡くなってから2ヵ月以内に終わらせるのが理想
相続が発生したら、まず取り組むべきなのが相続財産調査です。
可能であれば、亡くなった方から2ヵ月以内に完了させることを目標にしましょう。
なぜなら、相続放棄の期限が基本的に3ヵ月しかないためです。
相続放棄を希望する場合、「相続開始を知った時から3ヵ月以内」に手続きをおこなう必要があります。
つまり、3ヵ月以内に財産を調査し、相続放棄をするかどうか判断する必要があるのです。
もし、期限に間に合わない場合には、相続の承認又は放棄の期間の伸長の手続きをするか、調査で分かった内容を前提に判断する必要があります。
初七日が終わったら財産調査を始める
3ヵ月といっても実際には余裕はありません。
相続放棄には、申請書の記入や戸籍などの必要書類の収集など、手続きに一定の期間がかかります。
準備期間も含めると、2ヵ月以内に財産調査を完了するのが望ましいでしょう。
一般的に、財産調査は1〜2ヵ月程度かかります。
そのため、可能な範囲で早く、例えば初七日が終わったあたりから調査を始めるといいでしょう。
財産調査を早めにおこなうことのメリット3つ
財産調査を早めに完了することで、以下のようなメリットがあります。
- 相続手続きをスムーズに進められる
- 思わぬ借金などの問題が発覚するのを防げる
- 相続放棄の判断を早められる
相続財産調査は、専門の業者に依頼することもできます。
費用はかかりますが、時間や手間を大幅に節約できるため、検討してみるのも良いでしょう。
大切なのは、早めに行動することです。
相続財産調査について、わからないことがあれば、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
相続財産調査の対象となる4つの財産
ここでは、主にどのようなものが相続財産調査の対象になるのかを解説します。
1.預貯金や自動車などの動産
動産とは、自動車・貴金属・家財道具・趣味で集めた書画や骨董品などの美術品のような、不動産以外の財産です。
特に一般的な動産としては、自動車があげられます。
2.土地や建物などの不動産
不動産は、土地や土地に定着している建物などを意味しますが、所有権だけでなく賃借権や地上権などが含まれる場合もあります。
3.株式や債券などの有価証券
株式や債券などの有価証券も財産の一つですし、FX・仮想通貨・投資信託・保険金積立金などの金融商品も相続の対象です。
また、ゴルフの会員権や電話加入権も相続対象となり得ます。
4.借金などの負債
相続では、プラスの財産だけでなく、借金・住宅ローン・奨学金ローン・消費者ローンなどのマイナスの財産も対象となります。
この負債は、各相続人が相続分に応じて負担することになるので、いつ・誰から・いくら借り入れがあるのかをしっかり把握することが重要です。
相続の際は、主に以下のような財産について調査をおこないます。
ここでは、相続財産ごとの調査方法を解説します。
なお、弁護士が相続財産調査をおこなう場合、相続人の協力度合いや調査先にもよりますが、調査期間は1ヵ月~2ヵ月程度です。
預貯金の調査方法
1. 金融機関のカード・通帳などから金融機関を特定する
預貯金を調査する際、まずはどこの金融機関を利用していたのか調査しなければなりません。
基本的に、金融機関のカード・通帳・金融機関からの手紙やメールなどから利用していた金融機関を特定します。
2. わからない場合は弁護士に依頼し照会をかけてもらう
カードや通帳がなく「金融機関を利用しているものの、どこの金融機関かわからない」という場合があります。
そのような場合は、弁護士などに依頼して各金融機関に対して照会をかけてもらうことも可能です。
3. 金融機関が判明したら残高証明書の発行してもらう
利用している金融機関が判明したら、窓口や郵送で残高証明書の発行を依頼しましょう。
残高証明書では、普通預金・定期預金・投資信託などの全ての残高や利用状況を把握できます。
残高証明書は口座のある支店に依頼し、所定の書類を提出すればスムーズに出してもらえます。
その際の必要書類としては、被相続人の印鑑証明や戸籍謄本などがありますが、状況によっても異なるので詳しくは各金融機関のホームページなどを確認しましょう。
4. 書類発行費用は500円~1,000円程度で早ければ1週間~2週間程度で発行
残高証明書の発行については、書類発行費用として500円~1,000円程度かかることもあります。
申請から発行までは、金融機関によって異なりますが、早ければ1週間~2週間程度、長ければ1ヵ月程度とみておきましょう。
不動産の調査方法
1.登記識別情報と固定資産税の課税通知書があるかを確認
不動産を調査する際、「登記識別情報(登記済権利書)」と「固定資産税の課税通知書」という2つの書類があるか確認しましょう。
登記識別情報には「登記識別情報通知」と記載されており、下部に法務局と登記官の押印がされています。
なお、権利書の場合は冊子となっており、表紙に司法書士などの事務所名が記載されているでしょう。
課税通知書は、不動産を所有している場合は市区町村から発行されます。
地域によっては、「課税明細書」や「納付書」などと記載されているケースもあるので、注意してください。
2. 市区町村役場へ行き固定資産台帳の申請をおこなう
一方、これらの書類がなくても調査は可能です。
たとえば、固定資産税の支払先となっている市区町村役場へ行き、「固定資産台帳(名寄帳・資産明細・課税台帳)」の申請をおこなって、所有している不動産を調べる方法もあります。
ここで注意すべきは、名寄帳に記載されるのは課税主体となっている市区町村にある不動産に限られることです。
複数の市区町村で課税されている場合、それぞれについて申請が必要です。
なお、非課税の不動産(私道・学校・福祉施設を設立している土地)かつ書類もない場合は、調べるのがそもそも困難な場合もあります。
3.不動産の登記情報を調べる
不動産の所在地がわかっていれば、法務局に出向くか、インターネットで「登記情報提供サービス」を利用することで、不動産登記情報を簡単に調べることができます。
ただし、不動産登記の地番と住所は必ずしも一致しないので、注意しましょう。
株式・FX・国債の調査方法
1. 口座開設などの書類・証券・残高通知・取引案内を探す
株式・FX・国債を調査する場合、株式・FX・国債に関する書類(口座開設や事業を紹介する書類など)やメールがないか探します。
たとえば、国債であれば証券、FX・株式・保険金であれば残高通知や取引案内などが考えられます。
2. 証券会社やFX会社がわかれば取引残高報告書を発行してもらう
書類から、口座のある証券会社やFX会社がわかれば、当該会社に依頼をして取引残高報告書を発行してもらいます。
この報告書は、預貯金の残高証明書のようなもので、預金の残高調査と同じように発行にあたり所定の書類が必要です。
詳しくは各社のホームページなどを確認しましょう。
3.家に古い株券があった場合は株式を有する会社に連絡
家にある古い株券でも、権利自体は有効であることがあります。
この場合、まずは株式を有する会社に連絡して、株主として登録があるかどうかを確認しましょう。
借金・債務の調査方法
1. 督促状・返済の明細書・消費者金融のキャッシュカードを探す
借金などのマイナスの財産も必ず調査しましょう。
まずは、家で金融機関からの督促状や返済の明細書、消費者金融のキャッシュカードがないか調査します。
調査方法としては、各信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に対して、被相続人の信用情報の情報開示を求めて、過去のローンやキャッシングの契約などを把握するという方法があります。
2. 弁護士や司法書士が作成した委任状や返済計画などを探す
また、債務整理をしていないか確認するために、弁護士や司法書士が作成した委任状や返済計画などを探しましょう。
住宅ローンも相続対象なので、見過ごさないように注意が必要です。
3. プラスの財産とマイナスの財産を比較する
なお、マイナスの財産が見つかった場合、相続人は相続してマイナスの財産を返済するのか相続放棄するのか判断しなければなりません。
プラスの財産とマイナスの財産を比較して、明らかにマイナスの財産のほうが大きく、特に残したい財産がない場合には相続放棄を活用することをおすすめします。
相続放棄すれば相続人の財産を一切承継しなくなるので、借金などの負債を返済する必要がなくなります。
また、プラスの財産とマイナスの財産の内訳が不明であり、相続放棄するべきかわからない場合は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を承継する「限定承認」という方法もあります。
限定承認は、被相続人の財産状況が不透明である場合や、マイナスの財産があるものの相続財産の中に手放したくない財産がある場合などに活用できます。
ただし、限定承認をおこなうには相続人全員の同意が必要です。
4. 保証人契約書がないかを調査する
被相続人が誰かの保証人になっていた場合の保証債務も、マイナスの財産として相続人に相続されます。
そのため、マイナスの財産の調査にあたっては、被相続人を当事者とする保証人契約書がないかも調査しましょう。
相続財産調査の依頼先の選び方
相続財産調査は、時間をかければ自身でおこなうことも可能ですが、自ら調査する時間がない人も少なくないでしょう。
相続財産調査は、主に弁護士・行政書士・司法書士に依頼することができ、それぞれの対応内容の主な違いは以下のとおりです。
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弁護士
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行政書士
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司法書士
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相続財産調査
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〇
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〇
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〇
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戸籍収集
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〇
|
〇
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〇
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不動産の名義変更
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〇
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×
|
〇
|
相続放棄
|
〇
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△
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△
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遺産分割協議書の作成
|
〇
|
△
|
△
|
遺産分割によるトラブルの解決・仲介
|
〇
|
×
|
×
|
相続財産調査を専門家に依頼したいと思っていても、「誰に頼むべき?」と悩んでいる方もいるでしょう。
ここからは、各専門家の特徴や依頼すべきケースなどを解説します。
弁護士|相続トラブル全般について解決してほしい方におすすめ
弁護士の大きな特徴は、制限なく法的なサービスをおこなうことができる点です。
そのため、相続人調査・相続財産調査や遺産整理業務などもおこなえますし、遺産分割で揉めそうな場合の代理交渉や、すでに相続トラブルになっている場合の調停や裁判なども対応可能です。
相続トラブルがあるかないか問わず、相続自体に不安がある場合には弁護士への相談を検討するべきでしょう。
弁護士であれば、もし裁判に発展したときにも手続きの大部分を一任できます。
相続財産調査を相談できる弁護士を探すのであれば、「ベンナビ相続」がおすすめです。
「ベンナビ相続」では、初回無料相談・電話相談対応・休日相談可能な法律事務所を多数掲載しています。
相続発生前の相談に対応してくれる弁護士もいるので、まずは気軽に相談してみましょう。
行政書士|相続財産調査と書類作成のみ依頼したい方におすすめ
行政書士も、一定の範囲で相続財産調査が可能です。
また、相続放棄や遺産分割協議などでの必要書類の作成のみを依頼することも可能です。
しかし、弁護士法72条にて、弁護士以外の者が法律事件に関する法律事務をおこなって報酬を得ることは禁止されているため、行政書士は有償で他人の法律事務を取り扱うことはできません。
行政書士は、相続トラブルに対して法的アドバイスをしたり、相続トラブルを仲介したりできないことを覚えておきましょう。
司法書士|相続財産に不動産が含まれる場合におすすめ
司法書士も、一定の範囲で相続財産調査が可能です。
行政書士と同様に書類作成を依頼することも可能ですが、司法書士が得意とするのは不動産を相続した際の不動産登記に関する実務です。
相続財産に不動産が含まれる場合は、司法書士への相談・依頼を検討するとよいでしょう。
しかし、司法書士は行政書士と同様、他人の法律事務を取り扱うことは、一定のもの以外は原則として許されていません。
「相続人間でトラブルになりそう」「すでに相続トラブルになっている」というような場合は、弁護士に相談するようにしましょう。
相続財産調査を依頼する場合の費用の相場
依頼先
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費用相場
(調査の数などにもよります)
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弁護士
|
10万円~30万円程度
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行政書士
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数万円~
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司法書士
|
10万円~30万円程度
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弁護士・行政書士・司法書士の依頼費用は、事務所の料金体系や事案の業務量などによって異なります。
また、「弁護士だから高い」「行政書士や司法書士だから安い」というわけではありません。
一見すると、弁護士費用が高く感じることもあるかもしれませんが、相続手続き全般をサポートしてくれることを考慮すると、専門家にバラバラに依頼するよりも安く済む可能性があります。
費用については、相続財産調査だけでなく「相続手続きが終了するまでの間、どの範囲まで対応してもらえるのか」という点もよく考慮してください。
さいごに|相続財産調査で悩んだら弁護士に相談を
相続財産調査では、主に「相続財産の有無の調査」や「相続財産の評価」などをおこないます。
この相続財産調査を基に遺産分割協議をおこなうことで、公平な遺産分割が望めます。
相続財産調査は相続手続きの出発点であり、税金未納や隠れ債務の請求トラブルなどを回避するためにも、必ず適切におこないましょう。
相続財産調査は自身でもおこなえますが、多数の戸籍収集や金融機関などでの手続きが必要となります。
そのため、調査方法がよくわからない方・相続財産調査に困っている方・経験のある人に任せたい方・遺産分割協議も含めてトータルサポートを希望する方などは、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。
相続財産の方法がわからずお悩みの方へあ
相続をおこなうのに相続財産の調査をしないといけない…でもやり方がわからずに悩んでいませんか?
結論からいうと、相続財産調査でお悩みなら弁護士への相談・依頼をおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを得ることができます。
- 相続財産調査のやり方がわかる
- 相続財産調査を依頼すべきかわかる
- 弁護士に依頼したときの費用がわかる
- 依頼すれば、不明確な財産も漏れなく遺産分割できる
- 相続放棄すべきかどうか判断できる
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