平成28年4月の税制改正で、一定の要件を満たす住宅用家屋については、適用期限が平成30年3月31日まで2年延長され、所有権の保存登記・移転登記、住宅ローン借り入れに伴う抵当権設定登記の税率が軽減されることになりました。
そこで、登録免許税の軽減をする為に必要な知識として、
1:登録免許税の計算方法
2:登録免許税の軽減を受けるにはどのような手順を踏めば良いのか
をご紹介していこうと思います。なお、不動産を相続したばかりの人のために【不動産の相続税の計算方法と節税のための全手法】という記事でもまとめておりますので是非参考にしてみてくださいね。
*本記事の専門家による監修日は2023年6月28日です。
登録免許税は、不動産の売買や相続などで所有権が移って、法務局で登記をした際に収める税金のことです。厳密に言うと、新築の建物を取得した時の「表題登記」と言うのもありますが、相続などで不動産を得た場合は「所有権移転登記」という手続きを行います。
その時の計算式としては、原則として下記の式で算出していきます。
不動産取得の場合の登録免許税額 = 固定資産税評価額 × 税率
抵当権設定の場合の登録免許税額 = 抵当権設定金額 × 0.004
抵当権とは、住宅ローンの借り入れなどをした際、ローンの返済ができなくなった場合の担保として土地や建物に設定することで、このときにも登録免許税が課されます。
計算式自体は簡単ですが、「固定資産税評価額」や「抵当権設定金額」を求めるのが多少面倒ですので、ここで詳しく解説していきます。
固定資産税評価額とは、各市区町村で管理している固定資産課税台帳というものに記載された、土地や家屋の評価額のことで、毎年度市町村から送付される「納税通知書」に添付された、「課税資産明細」の欄に記載されているものを見れば確認できます。
建物を持っている方であれば、「固定資産課税台帳の縦覧制度」というものを使えば、「納税通知書」を待たずに自分の固定資産税評価額がいくらなのかを知ることができますので、覚えておくと良いでしょう。
1 縦覧できる方
(1) 23区内に固定資産(土地・家屋)を所有する納税者の方(2) 納税者から縦覧することについて委任を受けている方
2 縦覧期間
令和5年4月3日(月)から6月30日(金)まで(ただし、土曜日、日曜日、休日を除きます。)
3 縦覧時間
午前8時30分から午後5時まで4 縦覧の場所
固定資産(土地・家屋)が所在する区にある都税事務所※固定資産税・都市計画税に関する事務は、固定資産(土地・家屋)が所在する区にある都税事務所で行っています。
5 必要書類
(1) 固定資産税の納税者ご本人の場合、納税者本人であることを確認できるもの(2) 上記の方から委任を受けている方の場合、代理人本人であることを確認できるもの
※本人確認の方法として、詳しくは都税に関する証明等申請時の「本人確認」方法についてをご覧ください。
(3)固定資産縦覧等申請書(PDF)
6 その他
上記期間中、縦覧できる方は、固定資産(補充)課税台帳及び土地・家屋名寄帳を窓口にて無料で閲覧いただけます(当該年度分に限る)。
抵当権設定金額はいわゆる債権金額のことで、登録免許税の式は下記のようにも書き換えることができます。
抵当権の設定登記における登録免許税額= 債権金額 × 0.004
債権金額として例えば5,000万円かけているのであれば、そこに0.004をかけた20万円が抵当権の設定登記における登録免許税額となり、100円未満の端数がある場合は切り捨てて考えます。
下記は国税庁に掲載がある登録免許税の税額表になりますが、何に対してどの程度の税金がかかるのかを確認しておきましょう。
内容 |
課税標準 |
税率 |
土地の売買 |
不動産の価額 |
1,000分の20 |
相続や法人の合併 |
不動産の価額 |
1,000分の4 |
贈与・交換・収用・競売等 |
不動産の価額 |
1,000分の20 |
内容 |
課税標準 |
税率 |
所有権の保存 |
不動産の価額 |
1,000分の4 |
売買又は競売による所有権の移転 |
不動産の価額 |
1,000分の20 |
相続又は法人の合併による所有権の移転 |
不動産の価額 |
1,000分の4 |
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) |
不動産の価額 |
1,000分の20 |
項目 |
軽減税率 |
住宅用家屋の所有権の保存登記 |
1,000分の1.5 |
住宅用家屋の所有権の移転登記 |
1,000分の3 |
特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等 |
1,000分の1 |
認定低炭素住宅の所有権の保存登記等 |
1,000分の1 |
特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記 |
1,000分の1 |
住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記 |
1,000分の1 |
詳しくは「国税庁|登録免許税の税額表」をご覧ください。
実際に登録免許税がいくらになるのかをここで計算していきましょう。
計算要素の例(相続で不動産を取得した場合) 不動産取得の場合の登録免許税額 = 固定資産税評価額 × 税率 抵当権設定の場合の登録免許税額 = 抵当権設定金額 × 0.004 固定資産税評価額:400万円 抵当権設定金額:150万円 |
不動産取得の場合:400万円×0.004 = 16,000円
抵当権設定の場合:150万円×0.004 = 6,000円
合計:22,000円
次に、登録免許税の軽減を受ける為の知識と手順をご紹介していきます。
原則的に登記権利者(買主)と登記義務者(売主)に納税義務があります。しかし、ほとんどのケースで不動産登記によって利益を得る買主が納付するようです。当事者間の同意があれば折半もできます。
ただ、当事者同士で取り決めを行っていれば、折半したり売主が負担することもあります。もちろん、売主に拒絶される可能性もありますので、きちんと話し合いのうえ取り決めます。
下記は軽減税率の適応を受ける為の要件になります。この要件を満たしていないと税金の軽減が受けられませんので、自分が要件に当てはまっているのか、ここで確認しておくのが良いでしょう。
引用元:国税庁|登録免許税の税額表
登録免許税額が実際にはいくらになるのかですが、原則として下記のように計算していく流れになります。
課税標準額=固定資産課税台帳登録価格(土地)+(建物)
登録免許税額=課税標準額×適用税率
計算の結果、登録免許税額が1,000円未満の場合は端数を切り捨て1,000円とします。また、マンションの共有などにかかる敷地の場合は、「土地の固定資産課税台帳登録価格×共有持分」によって価格を求め、新築建物などの場合では「新築建物課税標準価格認定基準表」の単価に建物面積を掛けて価格を求めることになります。
土地の課税標準額=固定資産課税台帳登録価格(土地)
建物の課税標準額=固定資産課税台帳登録価格(建物)
土地の登録免許税額=土地の課税標準額×土地の適用税率
建物の登録免許税額=建物の課税標準額×建物の適用税率
登録免許税額=土地の登録免許税額+建物の登録免許税額
こちらも同様に、1,000円未満の端数を切り捨て、マンション共有にかかる敷地の場合は「土地の固定資産課税台帳登録価格×共有持分」によって価格を求めます。
課税標準額=債権金額
登録免許税額=課税標準額×適用税率
課税標準額は1,000未満の端数を切り捨て、登録免許税額は100円未満の端数を切り捨てますが、登録免許税額は計算した税額が1,000円未満の場合には1,000円とします。
登録免許税額=1,000円×不動産の個数
□その建物所在地の区市町村長による「住宅用家屋証明書」
中古住宅の場合には「既存住宅証明書」という場合もあります。また、自治体によっては「専用住宅証明(=専住証明)」ともいいます)を添付することとされています。
□耐震性を有する証明書または既存住宅売買瑕疵保険に加入の証明書
以前は、築25年を超えているマンションや、築20年を超えた木造一戸建て住宅の場合、「耐震性を有することの証明書」「既存住宅売買瑕疵保険に加入したことを証する書類」を添付する必要がありましたが、現在では築年数の制限が撤廃されています。
一方で、昭和57年1月1日以前の建物に関しては、耐震基準適合証明が必要となります。
□認定長期優良住宅または認定低炭素住宅の証明書
□登記事項証明書
□建築確認済証(建築確認通知書)の写し
□売買契約書などの写し
□住民票の写し
□申立書および現在の住民票
□その他必要に応じて、従前の建物の処分方法等を明らかにする書類
登録免許税の納付は、銀行や郵便局で行います。ただ、実際には依頼した司法書士がほとんどの業務を行ってくれますので、個人の方がそこまで気にする必要ないでしょう。
不動産登記の申請を個人で行うことはほとんどありませんので、登記を行う際は司法書士にその手続きを依頼することになります。
不動産登記の中で最も分かり難いのが「登録免許税」です。登記には目的別に一定の税金を国が発生させていますので、自分で計算するのは非常に困難になります。こういった場合に司法書士に相談すると楽に問題を解決できるという点が大きなメリットになります。
司法書士は資産の移転が発生するような場合で特に強い味方になってくれます。ややこしい登録免許税の計算や、特例措置の相談など、登記を行う場合や登録免許税については、まずお近くの司法書士に相談してみるのをお勧めします。
登記費用は、司法書士への報酬と登録免許税などの実費に分けられますが、司法書士の何を依頼するかによっても変わり、大体の目安としては下記のような費用がかかってくると思って良いと思います。
司法書士費用:5,000円~
登録免許税:不動産の個数×1,000円
司法書士費用:50,000円〜
登録免許税:不動産評価額×0.4%
司法書士費用:50,000円~
登録免許税:不動産評価額×2%
司法書士費用:50,000円~
登録免許税:不動産評価額×2%
司法書士費用:85,000円~
登録免許税・所有権の移転:
建物:不動産評価額×2%:(居住目的で一定の要件を満たすとき:0.3%)
土地:不動産評価額×1.5%
抵当権設定額:×:0.4%:(居住目的で一定の要件を満たすとき:0.1%)
司法書士費用:50,000円~
登録免許税:資本金額×0.7%(最低15万円)
定款認証:52,000円~
良い司法書士を探すためにも、以下の項目に注目して司法書士を探してみてください。
上記で、おおよその費用相場をお伝えしましたが、あまりにも相場とかけ離れた司法書士は費用面を考えてみても避けるべきでしょう。また、気になる司法書士には詳しく費用の内訳を聞いてみて、明確に答えてくれるかを確認しましょう。
司法書士といえど、その業務は多岐にわたります。司法書士によっても得意不得意がありますので、その司法書士が登記案件を得意にしているかを確認しましょう。得意としている司法書士は、ホームページや広告などに実績が載せられているでしょう。
上記の経験と近いものはありますが、登記には土地の専門知識も必要です。司法書士と土地の専門家の連携がとれている事務所は、専門知識も高いと考えられます。
士業を営む人には、残念ながらお客様に対する配慮が欠ける人がいることも事実です。上から目線で物を伝えてきたり、レスポンスがあからさまに遅いようでしたら、その司法書士は避けるべきでしょう。こちらも依頼する立場ですから、相手を選べます。
登録免許税の軽減措置について考えていきましたが、もし分からないことがあれば、相続税相談ナビの司法書士などにお気軽にご相談いただければと思います。
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