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会社の相続をおこなう流れ|確実に事業を引き継ぐためにやるべきこと

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会社を相続することになり、どのような流れで手続きを進めればよいのかわからず戸惑っている方もいるでしょう。

また、自分の子どもなどに会社を相続させるための方法を知りたい経営者の方もいるのではないでしょうか?

本記事では、会社を相続する方法について解説します。

会社を相続する場合に注意したいリスクや生前にできる相続対策なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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会社の相続とは「株式の相続」のこと

会社の相続とは、会社の株式を相続することです。

会社の財産は会社が所有するものであり、被相続人が経営者であったとしても被相続人のものではありません。

そのため会社の財産は、相続の対象にはならないのです。

一方で株式を相続すると、株主総会での議決権を手に入れることができ、取締役の選任や定款の変更など、会社の意思決定に携われるようになります。

議決権は保有する株式数に応じて与えられるので、株式を多く持っているほど自分の意思を経営に反映させることが可能になるのです。

安定的に会社の経営を支配するには、全株式の2/3以上を取得し会社にとって重要な特別決議を単独で可決できるようにする必要があります。

そのため会社を引き継ぐ場合は、2/3以上の株式を相続することが望ましいのです。

相続の仕方は会社(法人)と個人事業で異なる

被相続人が経営していた事業が法人なのか個人事業なのかによって、相続方法が異なります。

ここでは、それぞれの相続方法を解説します。

個人事業の場合は事業資産が相続の対象になる

個人事業とは、個人商店や個人事務所など、法人化されていない事業のことです。

事業で使っていた建物や工具、車などの事業資産は、被相続人個人の資産として扱われます。

その資産自体が相続の対象になるので、一般的な相続とほとんど同じ手順で遺産分割をすることになります。

会社を相続するには株式を相続して経営権を承継する必要がある

法人とは、株式会社や合同会社など、法人格を有する事業形態のことです。

法人は人間ではありませんが、法律上は人と同じように法律上の権利や義務を有しており、事業で使っていた資産は全て会社が所有するものと考えられます。

被相続人個人の資産ではないため、会社を相続するには株式を相続し経営権を承継する必要があるのです。

会社を相続する流れ

会社(法人)を相続するときは、以下の流れで手続きを進めるのが一般的です。

それぞれ詳しくみていきましょう。

1.自社株を相続する

まずは会社の株式を相続します。

株式を相続することで、会社の経営に携われるようになります。

発行株式の1/2以上を取得すれば、役員選任や事業計画の承認などを単独でおこなうことが可能です。

発行株式の2/3以上を取得することで、定款の変更や会社の合併・解散など特に重要な決定についても単独で可決できます。

そのため会社を相続する際は、発行株式の2/3以上を相続することが望ましいといえるのです。

なお、株式を相続するときは、株式の価値を評価しなければなりません。

株式の評価方法は、会社が上場しているかによって異なります。

以下、上場企業・非上場企業それぞれにおける相続税申告の際の株式の評価方法をみていきましょう。

上場企業の株式評価方法

上場企業の場合、市場での株価を基に評価します。

具体的には、以下のうち最も低い価格を評価額として採用します。

  • 被相続人が亡くなった日の終値
  • 被相続人が亡くなった月における終値の平均
  • 被相続人が亡くなった前月における終値の平均
  • 被相続人が亡くなった前々月における終値の平均

原則的には、被相続人が亡くなった日の終値が評価額とされます。

しかし、たとえばその日に株価がたまたま高騰した場合、相続税が高くなってしまい相続人の負担が重くなることも考えられるでしょう。

そのため、上記4つのうち最も低いものを評価額としてよいことになっています。

非上場企業の株式評価方法

非上場企業の株式は市場で取引されていないため、会社の業績や資産の内容などを基に評価します。

評価方法はいくつかあり、おもに以下の方法が用いられます。

  • 純資産価額方式:会社が解散したと仮定した場合に株主へ配分されるであろう金額で評価する方法
  • 類似業種比準方式:事業内容が似ている上場企業の株価を参考に評価する方法
  • 配当還元方式:将来株主が受け取れると想定される配当金額を基に評価する方法

大会社は類似業種比準方式、中会社は類似業種比準方式と純資産価額方式の組み合わせ、小会社は純資産価額方式で評価するのが一般的です。

配当還元方式は、株式を相続した人が同族株主(議決権の30%以上を保有している株主とその親族)でない場合に使用します。

2.株式の名義変更をおこなう

株式の評価額が決まり株式を取得したら、株式の名義変更をおこないます。

株主としての権利を行使するためには、株主名簿の書き換えが必要です。

上場企業の場合、株式の変更手続きは証券会社を通じて、非上場企業の場合は発行会社にておこないます。

上場企業が名義変更をおこなう場合は、一般的に以下のような書類が必要です。

  • 株式名義書換請求書
  • 取引口座引き継ぎの念書
  • 相続人全員の同意書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書

なお必要な書類は証券会社によって異なる可能性があるので注意ください。

一方、非上場企業の場合は、贈与契約書のほか、取締役会議事録もしくは株主総会議事録などが必要となる場合があります。

発行会社によって異なる可能性があるので、発行会社に確認ください。

3.代表取締役の地位を確保する

株式の名義変更が終わったら、代表取締役としての地位を獲得します。

株式を相続しただけで、代表取締役になるわけではありません。

取締役会・株主総会での手続きや法務局での登記変更をはじめとした手続きをおこない、代表取締役としての地位を確保する必要があります。

4.法人銀行口座の代表者変更などその他の手続きをおこなう

会社を相続するには、以下のような手続きも必要です。

  • 法人口座の代表者変更
  • 許認可事業の代表者変更
  • 社会保険の代表者変更
  • 取引先への代表者変更通知など

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子どもに会社を相続させる際は引き継ぐ意思があるかの確認も重要

子どもに会社を相続させたい場合、子どもの意思を尊重することが大切です。

子どもに会社を継ぎたい意思がない状態で、会社を無理に相続させるのは難しいでしょう。

まずは、子どもに会社を継ぐ意思があるかを確認してみてください。

相続する意思があるようなら、会社の状態や経営方針、経営方法について伝え、事業承継の準備を進めましょう。

もし、会社を継ぎたくないようであれば、ほかの人を後継者候補にするなど、別の方法を検討してください。

会社を相続する場合に注意すべきリスクとは

被相続人の会社を相続する場合、以下のリスクが考えられます。

十分に気をつけて、相続を円滑に進めましょう。

経営権の掌握に失敗する

会社を相続する際は、最低でも株式の過半数、できれば2/3以上を取得することが理想です。

しかし通常の相続手続きにて株式を法定相続人へ相続する場合、株式が分散し後継者候補に集中できなくなる可能性も否定できません。

その結果、会社の相続をスムーズに進められなくなることも十分に考えられるのです。

後継者候補がより確実に会社を相続できるように、遺言や生前贈与を活用して株式を引き継ぐことも検討することが推奨されます。

負債を相続する

会社が融資を受けていた場合、経営者である被相続人自身が保証人になっていることがあります。

その場合、会社だけでなく保証人の立場も相続しなければならない可能性も考えられるでしょう。

後継者となる場合に個人保証も相続することで、莫大な借金を個人として背負うことにもなり得るわけです。

なお経営者保証ガイドラインを活用し、後継者が保証人を引き継がないで済むよう金融機関と交渉することはできます。

ただし要件が厳しいので、経営者保証ガイドラインを使いたい場合は、弁護士などの専門家へ相談するのがおすすめです。

ほかの相続人と揉めてしまう

会社を相続したいと考えている相続人がほかにもいる場合、トラブルになるおそれがあります。

会社の経営権を得るには、会社の株式のほとんどを相続する必要がありますが、これに対しほかの相続人が不満を抱く可能性があるでしょう。

相続人同士のトラブルを防ぐため、ほかの相続人には株式以外の財産を優先的に相続させるなど、不満が起きないようにする工夫が必要です。

相続人同士で揉めないための生前対策

相続人同士のトラブルを防ぐため、生前にできる対策を4つ紹介します。

遺言書を作成する

遺言書を作成することで、遺産分割による争いを回避しスムーズに会社の相続をすすめやすくなります。

遺言書がない場合は遺産分割協議によって、相続人同士で株式を含む相続遺産をどう分割するか協議しなくてはなりません。

遺言書を作成していれば遺言書の内容が優先されるため、遺産分割協議を回避して後継者へ確実に株式を引き継ぎやすくなるのです。

なお遺言書を作成するときは、「遺留分」を侵害しないように注意しましょう。

遺留分とは、相続人が最低限相続できる遺産の割合のことです。

遺言書の内容が、後継者以外の相続人の遺留分を侵害するものだった場合、後継者が「遺留分相当額を払ってほしい」と請求されてしまう可能性があります。

生前贈与をおこなう

生前贈与とは、生きている間に財産をほかの人に贈与することです。

生前贈与であれば、会社の経営に必要な株式を後継者へ確実に確保させられます。

また、贈与は財産を渡す人(贈与者)と受け取る人(受贈者)の合意により成立します。

贈与者の会社に対する思いや、経営方針などの考え方を受贈者が理解したうえで株式を引き継いでもらえるのでので、安心して会社を任せることができるでしょう。

生前贈与をおこなうときは、贈与契約書を作成しておくことが大切です。

贈与契約書がないと、贈与額が不明となって適正額以上の贈与税がかかってしまったり、ほかの相続人とトラブルになったりする可能性があるので、必ず作成しておきましょう。

家族信託を利用する

家族信託とは、不動産や預貯金などの資産の管理・処分を家族に託すことです。

家族信託の仕組みは、会社の相続に活用できます。

家族信託では財産の所有権が受託者へ移転しますが、委託した財産によって得られた利益は受益者のものです。

この仕組みを利用し、株式を後継者・受託者である子どもに譲り、親のために株式を管理させます。

そうして親の死後は、帰属権利者として子どもを設定するのです。

これによって株式の所有権がある子どもは大部分の株式を所有して、会社を安定的に経営できるようになります。

家族信託を利用する場合は、弁護士などの専門家に相談・依頼しましょう。

経営承継円滑化法を活用する

経営承継円滑化法は、中小企業の円滑な事業承継を支援するための法律です。

後継者に株式を集中させようとすると、ほかの相続人から遺留分を請求されてしまい、後継者候補に株式を集中させられないことも考えられます。

経営承継円滑化法を活用することで、遺留分の対象となる財産として生前に贈与された株式を含めないなどの合意を目指せるのです。

これによって、株式が複数の相続人に分散するのを防ぐことができます。

相続したくない場合は相続人(子ども)が相続放棄できる

会社の後継者になりたくない場合、相続放棄を検討するとよいでしょう。

ここでは、相続放棄の概要と手続き方法を解説します。

相続放棄とは正負全ての相続の権利を手放すこと

相続放棄とは、相続人の権利を一切放棄することです。

被相続人の全ての財産を相続しないことになるので、会社の株式を相続する必要もなくなります。

会社の株式だけでなく、預貯金や不動産なども相続できなくなるので、この点も留意したうえで検討しましょう。

相続放棄は3ヵ月以内の手続きが必須

相続放棄をする場合は、原則的に相続が開始した日から3ヵ月以内に手続きをする必要があります。

手続き先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

手続きには、相続放棄申述書・被相続人の住民票除票・相続放棄する人の戸籍謄本などが必要となります。

原則的に3ヵ月を過ぎると相続放棄できなくなるので、余裕を持って手続きを進めるようにしてください。

会社の相続をおこなう際にできる税金対策

会社を相続すると相続税がかかる場合があります。

相続税が多くかかってしまうと、後継者本人だけでなく会社に対しても負担になるため、しっかりと対策しておくことが大切です。

相続税を軽減する方法としては、主に以下の2つが挙げられます。

自社株の評価額を下げる

相続税は相続した財産の額に応じて課税されるので、株式の評価額を下げることで相続税を軽減できます。

非上場株式の主な評価方法は純資産価額方式と類似業種比準価額方式です。

いずれも純資産価額が計算の基礎となるため、純資産価額を減らすことで評価額を下げることができます。

純資産価額を減らす方法には、先代の経営者である被相続人に退職金を支払う、投資用不動産を購入するなどがあります。

純資産価額を減らしすぎると会社の財政状態が悪化するおそれもあるので、専門家に相談しながら慎重に進めましょう。

非上場株式の納税猶予や免除制度を活用する

事業承継税制という制度を活用するのもよいでしょう。

事業承継税制とは、非上場株式の贈与・相続を受けた場合に、贈与税や相続税が猶予・免除される制度です。

一定の要件を満たしたうえで所定の手続きをおこなえば、発行済み株式の2/3までの部分に対する相続税の80%または贈与税の100%が猶予・免除されます。

税負担を大幅に抑えられる可能性があるので、ぜひ活用しましょう。

事業承継税制の詳細については、以下記事で解説しておりますので興味があれば参照ください。

さいごに

会社の後継者になるには、特に重要な会社の意思決定に必要となる2/3以上の株式を相続することが望ましいでしょう。

しかし、相続人が複数いる場合や、会社を継ぎたい相続人がほかにもいる場合、会社の経営権を十分に得られない可能性もあります。

確実に会社の経営者になれるよう、先代の経営者に遺言書を作成してもらう生前贈与をしてもらうなど、必要な対策を講じてもらいましょう。

また、会社を相続するときは相続税対策も重要です。

ベストな方法で円滑に事業承継できるよう、弁護士などの専門家に相談しながら進めましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人片岡総合法律事務所
片岡 優 (茨城県弁護士会)
相続問題に注力。税理士の資格も持ち、節税対策を含めた納得いただけるサービスの提供を目指している。地域密着の利点を活かし、その土地特有の事情を考慮した案件の解決に尽力し、ワンストップ対応を実現。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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