相続トラブルが発生し、当事者同士で話がつかない場合、家庭裁判所で「遺産分割調停」をおこないます。
調停でも合意ができなければ、最終的に「遺産分割審判」がおこなわれます。
その審判の結果に不服がある場合には、高等裁判所に対して「即時抗告」の申立てが可能です。
即時抗告はどのようなケースで、いつどのようにしておこなえばよいのでしょうか?
今回は、遺産分割審判に対する「即時抗告」の手順と申立ての期限について解説します。
遺産分割審判の結果に不服な方へ
即時抗告は、基本的に「書面」によって審理が行われます。
即時抗告を有利に進めるには、なぜ主張が認められなかったのかを審判書を読むなどして検討し、説得的な主張書面と主張を補強する証拠を提出することが重要です。
遺産分割審判の結果に不服な方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼すれば、下記のようなメリットがあります。
即時抗告審では専門知識やノウハウが重要になってきます。
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遺産分割審判の結果に対して不満がある場合は、即時抗告を行うことができます。
ここでは、即時抗告の流れを解説します。
即時抗告は、いつどのような流れでおこなわれるものなのでしょうか?
相続トラブルが起こってから即時抗告がおこなわれるまでの流れを確認しておきましょう。
まず、相続が開始したら、法定相続人らの間で遺産分割協議をおこないます。
しかし遺産分割の内容について合意ができなければ、いつまでも遺産分割協議は成立しません。
その場合、家庭裁判所に対して「遺産分割調停」を申し立てます。
ただ、調停も話し合いの手続きなので、いくら話し合いを進めても、やはり、相続人らが合意できないケースがあります。
その場合には、「遺産分割審判」に移ります。
遺産分割審判になったら、審判官がそのケースにおける遺産分割の方法を決定します。
遺産分割審判がなされたら、各相続人に対して「審判書」が送られます。
審判は裁判所がおこなうものなので、相続人が納得していなくても効果が発生します。
しかし時には誰も望んでいない結果になるケースもありますし、相手が納得しても自分が望んだ結果になるとは限りません。
そのようなとき、遺産分割審判を受けた当事者は、その審判に対して不服を申し立てることが可能です。
その手続きが「即時抗告」です。
即時抗告は、民事裁判における「控訴」のようなものです。
判決に対しては「控訴」、審判に対しては「即時抗告」と理解すればよいでしょう。
即時抗告は「高等裁判所」に向けておこないます。
即時抗告は、もともとの家庭裁判所ではなく高等裁判所の管轄になります。
一審の家庭裁判所の裁判官(審判官)とは異なる人が判断するので、一審で認められなかった主張でも、即時抗告審で認められる可能性はあります。
即時抗告審では、再度同じ遺産分割事件における遺産分割の内容が判断されます。
たとえば特別受益や寄与分が認められなかったことで一審に不服がある場合に、これを不服とする内容の即時抗告をすると、判断が覆されて、特別受益や寄与分の一部や全部が認められる可能性もあります。
ただ、判断する裁判官が変わっても、法律的な主張や立証ができていなければ認められることはありません。
即時抗告をするならば、一審でなぜ主張が認められなかったのかを審判書を読むなどしてしっかり検討して、新たな証拠や主張などをおこなうことが必要です。
即時抗告をおこなう場合、どのような流れになるのか、また即時抗告申立書の書き方を説明します。
即時抗告申立ては、以下のような流れで進めます。
即時抗告を申し立てるときには、まずは「抗告状」を作成する必要があります。
即時抗告申立書には、「原審に不満があるので、即時抗告を申し立てます」ということが書けていれば足ります。
詳しい申立理由までは不要です。
抗告状のあて先は「高等裁判所」です。
ただ、提出先は原審の家庭裁判所となるので注意が必要です。
誤って高裁に直接送らないようにしましょう。
即時抗告申立をするときに必要な費用は、収入印紙1,800円分と、連絡用の郵便切手です。郵便切手代は地域によって異なるので、裁判所に確認しましょう。
また、自分の申立理由を補完する資料があれば、一緒に提出しましょう。
即時抗告には「期限」があるので注意が必要です。
判決に対する控訴と同様に、期限を過ぎると即時抗告できなくなって審判内容が確定してしまいます。
即時抗告の期限は、審判書を受け取った日の翌日から2週間です。
この間に家庭裁判所に必着で抗告状を送らなければなりません。
家庭裁判所に持参するのが安心ですが、郵送するなら「速達・書留」を利用するとよいでしょう。
抗告状を提出した後には「即時抗告理由書」の作成と提出が必要です。
即時抗告理由書には、即時抗告の理由(一審に対して不服を持っている事項)を詳しく書かねばなりません。
理由がしっかりしていないと、即時抗告をしても棄却されてしまいます。
即時抗告理由書にも提出期限があるので注意が必要です。
基本的には即時抗告の申し立てから2週間以内に高等裁判所宛に提出する必要があります。
ただ、理由書については、2週間以内に提出しなくても申立てが棄却されたり却下されたりするとは限りません。
2週間を過ぎても理由書を受け付けてもらえるケースもありますし、受け付けられたら審理もしてもらえます。
ただし、理由書の提出期限を過ぎると、「いつ却下されてもおかしくない状態」となります。
そこで、即時抗告を申し立てたら、すぐに理由書の作成を始め、なるべく早めに提出することが重要です。
即時抗告審では、書面審理のみで終了することもありますが、ケースによっては当事者が裁判所に呼び出されることがあります。
通常は、即時抗告に理由があるか、審理するために呼ばれますが、和解の話し合いのために呼ばれることもあります。
ここで相続人全員が解決方法について合意できれば、遺産分割事件は和解によって解決できます。
即時抗告審においても書面の提出は可能です。
そこで、申立人や相手方が主張や資料の提出をおこないます。
最終的に和解もできなかった場合には、即時抗告審の裁判官が即時抗告に理由があるか、ないかの判断をおこないます。
理由がない場合は抗告は棄却されます。
理由がある場合は、原審判を取消して、遺産分割についての決定を下します。
即時抗告に対する決定が出てから2週間が経過すると決定内容は確定し、その内容に従って遺産相続を進めていくことになります。
高等裁判所の決定に対する不服申し立て(特別抗告など)もありますが、通常はできません。
即時抗告をするときの「抗告状」の書き方について、ご説明します。
まずは、「抗告状」「即時抗告申立書」など、文書のタイトルを書きましょう。
どちらでも受け付けてもらえます。
次に、文書の作成日付を入れて、原審の事件番号を書きましょう。
例えば「平成30年(家ロ)第1234号 遺産分割審判事件」などです。
間違えると補正が必要になるので、原審の審判書を見て正確に書きましょう。
次に、申し立てるあなたと他の相続人の表記が必要です。
それぞれの当事者の住所と氏名を書きましょう。
それぞれが申立人なのか相手方なのかもわかるように書いておく必要があります。
例えば「〇〇県〇〇市〇〇 一丁目20番 申立人(相手方) 〇〇〇〇」などと書くとよいでしょう。
次に、即時抗告をおこなうことを書きます。
具体的には「原審の内容に不服があるので、即時抗告を申し立てます」などと書けば足ります。
不服の理由については、後ほど理由書に詳しく書くので、抗告状には書かなくてもかまいません。
ただし、言いたいことがだいたい決まっているのなら理由の概要を書いてもかまいません。
抗告状に抗告理由を書いた場合でも、後の即時抗告理由書により詳しい理由を補足して述べることが可能です。
抗告状を書いたら、必ず記名押印をしなければなりません。
「即時抗告申立人 〇〇〇〇 印」などと書きましょう。
押印は認印でもよく、氏名については署名でも記名でもかまいません。
抗告状のあて先は「高等裁判所」です。
提出先は家庭裁判所なので、間違えないように注意しましょう。
「〇〇高等裁判所 御中」とはっきり書いて家庭裁判所に送りましょう。
遺産分割審判では、予想していなかったような審判や不利益な結果が出ることもあります。
審判に対して不服がある場合は、2週間以内の期限内に、即時抗告の申立てをします。
即時抗告は控訴と同じように、高度な法律的な知識が必要なので素人では対応が難しく、弁護士によるサポートが必要です。
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