「共同相続人」とは、遺産分割が終わっていない段階において、遺産を共有している相続人をいいます。
遺産分割は共同相続人全員でおこなう必要があるので、遺産分割に先立って共同相続人を漏れなく把握しなければなりません。
弁護士のサポートを受けながら、共同相続人の調査を迅速かつ確実におこないましょう。
本記事では、共同相続人とは何か、および共同相続人の調べ方などについて解説します。
「共同相続人」とは、遺産分割が終わっていない段階において、遺産を共有している相続人のことです。
相続人が複数人いるときは、相続財産(遺産)はすべての相続人の共有となります(民法898条)。
このとき、相続財産を共有する相続人を「共同相続人」といいます。
共有状態にある相続財産は、遺産分割によって各共同相続人に振り分けられます。
遺産分割が完了した時点で共有関係が解消されるので、それ以降「共同相続人」と呼ばれることはなくなります。
共同相続人とは何かを理解するためには、共同相続と単独相続の違いや、共同相続人と法定相続人の違いを知ることが役立ちます。
「共同相続」とは、複数の相続人が遺産を相続することをいいます。
これに対して、1人の相続人が遺産を相続することは「単独相続」と呼ばれます。
当初から相続人が1人である場合のほか、遺言や遺産分割に従って1人がすべての遺産を相続する場合も、単独相続と呼ばれることがあります。
前述のとおり、「共同相続人」とは遺産を共有している相続人をいいます。
共同相続人は必ず複数人であり、共同相続人と呼ばれるのは遺産分割が完了する時までです。
これに対して「法定相続人」とは、民法の規定に従って相続権を有する者をいいます。
法定相続人は、1人の場合も複数人の場合もあります。
また、遺産分割が完了しているか否かを問わず、法定相続人と呼ばれます。
一般的によくある共同相続人の組み合わせと、各共同相続人の法定相続分を紹介します。
被相続人の配偶者と子は、常に相続人となります(民法890条、887条1項)。
被相続人が亡くなった際に、妻(または夫)と子がいるケースは、最もよく見られる共同相続人の組み合わせです。
この場合、妻(または夫)の法定相続分は2分の1、子の法定相続分も2分の1となります(民法900条1号)。
子が複数人いる場合は、子の法定相続分である2分の1を人数で按分します(民法900条4号)。
たとえば相続人が妻と子2人の場合、妻の法定相続分は2分の1、子の法定相続分は各4分の1です。
なお、養子も実子と同様に相続人となります。
たとえば相続人が妻・実子2人・養子1人の場合、妻の法定相続分は2分の1、実子と養子の法定相続分は各6分の1です。
被相続人に子がいない場合は、被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)が相続人となります(民法889条1項1号)。
ただし、被相続人との親等が異なる直系尊属がいる場合は、親等の近い者のみが相続人となります(例:父母が祖父母よりも優先)。
被相続人が結婚した後、子を設けないうちに若くして亡くなってしまった場合には、その時点で配偶者に加えて、両親またはいずれかの親が存命中のケースがあります。
この場合、配偶者の法定相続分は3分の2、父母の法定相続分は3分の1です(民法900条2号)。
直系尊属が複数人いる場合は、直系尊属の法定相続分である3分の1を人数で按分します(民法900条4号)。
たとえば相続人が妻と父母の場合、妻の法定相続分は3分の2、父母の法定相続分は各6分の1です。
なお、養親も実親と同様に相続人となります。
たとえば相続人が妻・実父母・養親1人の場合、妻の法定相続分は3分の2、実父母と養親の法定相続分は各9分の1です。
被相続人に子も直系尊属もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります(民法889条1項2号)。
たとえば、結婚しているものの子がいない方が亡くなった時点で、両親もすでに他界している場合には、残った兄弟姉妹が相続人となるケースがよくあります。
この場合、配偶者の法定相続分は4分の3、兄弟姉妹の法定相続分は4分の1です(民法900条3号)。
兄弟姉妹が複数人いる場合は、原則として兄弟姉妹の法定相続分である4分の1を人数で按分します(民法900条4号)。
たとえば相続人が妻・妹1人・弟1人の場合、妻の法定相続分は4分の3、妹と弟の法定相続分は各8分の1です。
ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(=異母兄弟姉妹・異父兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とされています(民法900条4号但し書き)。
たとえば相続人が妻・父母が同じ妹1人・異母弟1人の場合、妻の法定相続分は4分の3、父母が同じ妹の法定相続分は6分の1、異母弟の法定相続分は12分の1です。
被相続人が亡くなった時点で、配偶者がすでに他界しているか、生前に配偶者と離婚していた場合には、被相続人の子だけが相続人となることが多いです。
相続人が被相続人の子のみである場合は、人数に応じて均等に法定相続分を割り振ります(民法900条4号)。
たとえば相続人が子3人の場合、それぞれの子の法定相続分は各3分の1です。
被相続人と以下のいずれかの続柄にある相続人が、死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合には、その者の子が相続権を取得します(=代襲相続。民法887条2項・3項、889条2項)。
たとえば、被相続人が亡くなるよりも前に、被相続人の子が亡くなっていた場合には、被相続人の孫が代襲相続人となることがあります。
また、本来であれば兄弟姉妹が相続人となるケースにおいて、被相続人が亡くなるよりも前に兄弟姉妹が亡くなっていた場合には、被相続人の甥または姪が代襲相続人となることがあります。
代襲相続人の法定相続分は、被代襲者(=死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った者)と同じです(民法901条)。
たとえば、相続人が妻・長男・次男の代襲相続人である孫2人であるとします。
この場合、妻の法定相続分は2分の1、長男の法定相続分は4分の1、孫2人の法定相続分は各8分の1です。
被相続人の配偶者が相続放棄をした場合は、配偶者がいないものとして法定相続分を計算します。
たとえば相続人が妻と子2人だった場合において、妻が相続放棄をしたときは、子2人の法定相続分は各2分の1となります。
配偶者以外の相続人が相続放棄をした場合は、以下のうちいずれのパターンに該当するかによって、相続人の決まり方や法定相続分の計算方法が異なります。
①他に同順位の法定相続人がいる場合 |
---|
相続放棄をした者を除外して法定相続分を計算します。 |
②他に同順位の法定相続人がおらず、後順位相続人がいる場合 |
相続放棄をした者から、後順位相続人に相続権が移ります。 |
③他に同順位の法定相続人がおらず、後順位相続人もいない場合 |
配偶者がいれば、配偶者がすべての遺産を相続します。 |
※「同順位の法定相続人」からは、被相続人の配偶者を除きます。
遺産分割をおこなう際には、あらかじめ共同相続人全員を確定しなければなりません。
共同相続人のうち1人でも遺産分割協議に参加していないと、遺産分割が無効になってしまうので注意が必要です。
共同相続人を調べる際には、市区町村役場から戸籍謄本などを取り寄せる必要があります。
まずは亡くなった被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを取り寄せて、相続人となる人を確認しましょう。
結婚などによって別の戸籍に移っている人がいる場合や、死亡によって代襲相続が発生している場合などには、さらに別の人の戸籍謄本などを取り寄せて共同相続人を確定します。
戸籍謄本などは、本籍地の市区町村役場に請求すれば取得できます。
窓口や郵送での請求のほか、2024年3月1日以降は本籍地以外の市区町村の窓口でも、一部の戸籍謄本などを取得できるようになりました(=広域交付制度)。
戸籍謄本などの取得方法や読み方、共同相続人を確定する方法などが分からない場合には、弁護士にご相談ください。
遺産分割を有効な形でおこなうためには、共同相続人全員を漏れなく確定する必要があります。
そのためには、誰が共同相続人になるのかに関する法律上のルールと、戸籍謄本などの取得方法や読み方を理解しておかなければなりません。
共同相続人を間違いなく確定するためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、職務上請求によって戸籍謄本などを取り寄せた上で、法律上のルールに従って共同相続人を正しく確定してもらえます。
また、共同相続人間で遺産分割をおこなう際にも、弁護士のサポートを受けるのが安心です。
遺産の分け方について共同相続人同士が揉めてしまうケースも多いところ、弁護士に間に入ってもらえば、論点を整理した上で冷静な話し合いをすることができます。
遺産分割協議がまとまらない場合にも、弁護士に依頼していれば、家庭裁判所における調停や審判へスムーズに移行することが可能です。
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