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遺産分割協議書とは|書き方・必要性・作成時のポイントを解説

いろどり法律事務所
松島 達弥 弁護士
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「遺産分割の際は遺産分割協議書を作成しなければならない」と聞いたことがある方もいるでしょう。

とはいえ、慣れない相続手続きについて、次のような不安や疑問がある方も多いはずです。

  • そもそも遺産分割協議書って何?
  • 遺産分割協議書は必ず作成する必要がある?
  • 遺産分割協議書はどのように書けばいい?
  • 遺産分割協議書が無効になることはある? など

本記事では、上記のような疑問を抱えている方に向けて、遺産分割協議書について知っておくべきことを解説します。

遺産分割協議書の作成を弁護士に依頼するメリットなども解説しているので、本記事を読んで「自分で作成するのは大変そう」と感じた方は弁護士に相談しましょう。

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相続することになったけど、遺産分割協議書は作るべきなの?どうやって作る?そもそも自分でも作れるの?と悩んでいませんか

 

結論からいうと、遺産分割協議書に関する悩みは弁護士に相談するのがおすすめです。遺産分割協議書は正しく作成しないと無効になってしまう可能性があるうえ、弁護士なら公正証書化も可能だからです

 

弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを得ることができます。

  • 遺産分割協議書の作成方法がわかる
  • 依頼すれば、相続人や相続財産の調査をしてもらえる
  • 依頼すれば、遺産分割協議書を作成してもらえる
  • 公正証書化も依頼することができる

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目次

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、遺産分割協議において合意した内容を取りまとめた文書のことです。

被相続人の財産について、誰がどの財産をどれだけ相続するかを記載し、全員の署名と捺印がされています。

一度作成されると、原則として全員の合意なく内容の変更はできません。

遺産分割協議書には「遺産分割協議の内容を全員が合意している」と第三者に示す効果があり、不動産の相続登記や預貯金・株式・自動車の名義変更の手続きなどでも利用されます。

そのほか、遺産分割後に「遺産分割協議に納得していないからやり直したい」と主張する相続人が出てきたときなどの、紛争の蒸し返し防止にも役立ちます。

【関連記事】遺産分割協議とは|進め方や期限、話し合いがまとまらないときの対処法

遺産分割協議書が必要になるケース

遺産分割協議書は、「相続が発生したら必ず作成しなければならない」と法律で定められているものではありません。

次のようなケースでは、原則として作成は不要です。

  • 相続人が1人の場合
  • 遺言書に沿って遺産分割する場合

しかし、相続財産の内容や遺産分割協議の状況によっては、遺産分割協議書を作成すべき場合もあります。

ここでは、どのようなケースで遺産分割協議書を作成するべきか解説します。

法定相続分どおりに遺産分割しないケース

法定相続分とは、民法によって定められた遺産の分割割合のことです(民法第900条)。

遺産を法定相続分どおりに分割しないケースでは、遺産分割協議書を作成しておくことが重要です。

遺産分割協議で相続人全員が合意していれば、法定相続分と異なる割合で遺産分割しても問題ありません。

ただし、一度全員が合意して分割方法が決まっても、民法が定める基準とは異なる条件で処理するわけですから、のちのち異議を申し立てる相続人が出るかもしれません。

そのようなときに遺産分割協議書があれば、「相続人全員の合意があった」と明確に示すことができます。

相続税を申告しなければならないケース

相続税を申告しなければならないケースでも、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。

相続税は基礎控除額を超えて相続を受けた際に支払う税金ですが、控除制度を利用する際に遺産分割協議書の提出を求められることが少なくありません。

特に、相続において有利な控除制度である「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」などの適用を受けるためには遺産分割協議書の提出が必要であるため、作成しておきましょう。

預貯金の払い戻しを受けるケース

相続財産のなかに預貯金があって払い戻しを受けるケースでも、遺産分割協議書を作成しておくとよいでしょう。

なぜなら、口座凍結後に払い戻しを受けるとき、遺産分割協議書の提出を求める金融機関も少なくないからです。

相続では、相続人が金融機関に「口座名義人が死亡した」と伝えると、被相続人の死亡の事実を金融機関が把握したのち、相続人間のトラブルなどを防ぐ目的で口座が凍結されます。

凍結した口座から預金を引き出すためには、当該口座を解約して相続人の口座に移さなければなりません。

その手続きの際、遺産分割協議書の提出を求められる場合があります。

なお、金融機関によっては、所定の用紙に相続人全員が記入すれば遺産分割協議書を提出せずに済むこともあります。

また、「相続人間で信頼関係が構築できていない」などの理由で代表者に手続きを任せられないような場合は、遺産分割協議書を持参して各相続人がそれぞれの権利分を現金化する必要があります。

名義変更する財産があるケース

名義変更する財産があるケースでも、遺産分割協議書を作成しておきましょう。

なぜなら、名義変更の手続きの際に遺産分割協議書の提出を求められることが多いからです。

代表的なのは不動産を相続するケースです。

不動産を相続する場合、登記簿の名義人を被相続人から相続人に変更する「相続登記」をしなければなりません。

このとき、「相続が発生した」という事実を登記するだけであれば、遺産分割協議書は必要ありません。

しかし、法定相続分と異なる割合での不動産取得について相続登記をする場合、遺産分割協議書が必要です。

いずれにしても不動産は価値の大きい財産であるため、相続する際は遺産分割協議書を作成しておくべきでしょう。

そのほかにも、自動車・有価証券・船舶などの名義変更手続きでも、遺産分割協議書が必要になることがあります。

遺言書に記載がない財産があるケース

被相続人の遺言書があり、遺言内容どおりに遺産分割するケースであれば、遺産分割協議書は原則不要です。

ちなみに、遺言内容どおりに手続きを進めることを「遺言執行」と呼びます。

しかし、遺言書に記載されていない遺産がある場合、その遺産については遺産分割の手続きが必要です。

このような場合、相続人間で不平等な結果が生じる恐れがあるため、遺産分割協議書を作成しておいたほうがよいでしょう。

「法定相続分どおりに遺産分割しないケース」と同様に、遺産分割協議書を作成することで、遺言書にない部分の遺産分割について「全員の合意があった」と示すことができます。

遺産分割後のトラブルが予想されるケース

「法定相続分どおりに遺産分割をする」というような遺産分割協議書が不要なケースでも、遺産分割後のトラブルが予想されるのであれば、遺産分割協議書を作成しておいたほうが安心です。

遺産分割協議が終わっても、「やっぱり法定相続分での遺産分割には納得できない」などと主張する相続人が出てきてトラブルになる可能性もあります。

また、親族間の上下関係を利用して、あとから特定の財産を譲渡するよう個別に交渉される可能性もあります。

いずれにしても、遺産分割には経済的利益を追求する側面があるため、のちのちトラブルが発生することは十分ありえます。

トラブルの発生が予測されるのであれば、遺産分割協議書を作成しておいたほうがよいでしょう。

遺産分割協議書作成までの4つのステップ

被相続人が亡くなってから遺産分割協議書を作成するまでには、次の4つのステップを踏むことになります。

  1. 相続人を明らかにする
  2. 被相続人の財産を調べる
  3. 遺産分割協議をする
  4. 遺産分割協議書を作成する

ここでは、遺産分割協議書を作成するまでの流れを解説します。

①相続人を明らかにする

まずは、相続人が誰なのか明らかにしましょう。

なぜなら、遺産分割協議書を作成するためには、まず相続人全員が遺産分割協議に参加する必要があるからです。

相続人が明らかな場合は、全員に連絡をとりましょう。

一方、相続人が明らかでない場合には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取り寄せて、相続人を洗い出さなければいけません。

もし「相続人が誰かわからない」という場合は、弁護士などに調査を依頼できます。

なお、弁護士であれば、遺産分割で必要な手続きを一任できます

遺産分割協議書の作成が不安な人は、弁護士に依頼するのが有効です。

②被相続人の財産を調べる

次に、被相続人の財産を調べます。

全ての財産を把握した状態で遺産分割協議を開始しないと、新たな財産が見つかるたびに相続人間で分割しなければならず、時間と手間がかかってしまいます。

現金・預貯金・不動産だけでなく、住宅ローンや借金などの負債もマイナスの財産として相続対象になり、全ての財産を調べなければなりません。

また、適切な遺産分割を実現するには、不動産や株式などについて適正に評価するために査定なども必要です。

相続財産の調査も弁護士に依頼できるので、必要に応じて依頼するとよいでしょう。

③遺産分割協議をする

相続人と相続財産が明らかになったら、相続人全員で遺産分割協議をおこないます。

なお、以下のいずれかに該当する場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

  • 遺産分割協議に協力的でない相続人がいる
  • ほかの相続人が自分の利益ばかり主張して協議が前に進まない
  • あなたの権利を侵害するような遺産分割協議がおこなわれている
  • 遺産分割協議をうまく進めるための基本情報やコツを知っておきたい

依頼するかどうかは費用次第ですが、弁護士という第三者が間に入ることで冷静に話し合いできる場合があるほか、協議を断念して調停などの手続きに進むべきタイミングなどの助言を受けることもできます。

法的視点から的確なアドバイスを受けることで、一部の相続人が不利益を被るような事態も避けられるでしょう。

④遺産分割協議書を作成する

無事に遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。

誰がどの財産をどれだけ相続するかを記載し、相続人全員で捺印・署名をします。

なお、遺産分割協議書に不備があると、不動産の名義変更などがスムーズに進まない恐れがあります。

また、最終的にきちんと財産が手元に支払われないという事態も起こりえます。

  • 相続人や財産が多すぎて、どのように遺産分割協議書を作成すればよいか見当もつかない
  • 相続人のなかに自分勝手な人がいてトラブルになりそう、すでにトラブルになっている
  • 遺産分割後のトラブルを防ぐために、しっかりとした遺産分割協議書を作成したい

上記のように、遺産分割協議書について少しでも不安があるなら、弁護士に相談しましょう。

遺産分割協議書の書き方|記載内容とサンプル

ここでは、遺産分割協議書に書くべき内容・書き方・サンプルなどを解説します。

遺産分割協議書に記載する内容

遺産分割協議書に書くべき内容について、法律では定められていません

とはいえ、「どの相続人がどの財産を相続したか」を相続人間や第三者に示すのが目的であるため、基本的に次の内容は押さえておく必要があります。

  • タイトル(「遺産分割協議書」と明記する)
  • 被相続人の情報(氏名・生年月日・死亡年月日・最後の住所地など)
  • 相続人全員が遺産分割協議の内容に合意したこと
  • 誰がどの財産を取得したか
  • 相続人全員の住所・署名・捺印

なお、遺産分割協議書の書式についても、厳密な決まりはありません。

縦書きでも横書きでもよく、「甲」や「乙」などの表記にする必要もありません。

遺産分割協議書の作成例

ここでは、遺産分割協議書のサンプルを紹介します。

遺産分割協議書

被相続人  山田太郎

生年月日  昭和●●年●●月●●日

死亡日   令和●●年●●月●●日

本籍地   東京都新宿区西新宿●-●●-●

最終住所地 東京都新宿区西新宿●-●●-●

前記被相続人の相続に関し、被相続人の法定相続人ら全員で遺産分割協議をおこなった結果、下記のとおりに遺産分割協議が成立したことを確認する。

 

1.相続人の特定

 相続人ら全員は、被相続人の相続人が、妻山田花子、長男山田一郎、長女山田和子および次男山田次郎の4名であることを確認する。

 

2.妻の取得財産

  相続人ら全員は、下記の不動産を妻山田花子が取得することに合意する。

  所在   東京都●●区●●

  家屋番号 ●●番●

  種類   ●●

  構造   ●●●●

  床面積  ●階 ●㎡

 

3.長男の取得財産

  相続人ら全員は、下記の預貯金を長男山田一郎が取得することに合意する。

  ●●銀行●●支店 

  普通預金 口座番号●●●●●●●

 

4.長女の取得財産

  相続人ら全員は、被相続人の一切の動産について、長女山田和子が取得することに合意する。

 

5.次男の取得財産

  相続人ら全員は、前記2項から4項を除く一切の財産(本遺産分割協議成立までに明らかとならなかったものも含む)について、次男山田次郎が取得することに合意する。

 

6.精算条項

 相続人ら全員は、各相互に、被相続人の相続に関し、本協議書に定めるもののほか何らの債権債務も存在しないことを確認する。

  以上の内容で、相続人全員による遺産分割協議が成立したため、本協議書を4通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

 

令和●●年●月●日

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 昭和●●年●●月●●日

相続人 (妻)山田花子  ㊞

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (長男)山田一郎  ㊞

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (長女)山田和子  ㊞

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (次男)山田次郎  ㊞

上記の遺産分割協議書は、「被相続人に負債がなく財産だけがある」というケースを想定したものであり、形式も単純なものになります。

相続状況によっては、負債の分担方法や祭祀承継に関する条件、被相続人への生前の経済的・実働的負担の清算に関する合意などの条項を記載する場合もあります。

以下では、相続状況ごとの注意点について解説します。

具体的にどのような条項を書くべきか不安な場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

現預金に関する遺産分割協議書の書き方

現金については、「どれだけの金額を誰が相続するか」を明記する必要があります。

預貯金については、銀行名・支店名・預金の種類・口座番号や、誰が相続するかなどを明記する必要があります。

不動産に関する遺産分割協議書の書き方

相続財産のなかに不動産がある場合は、誰がどの不動産を相続するか記載します。

なお、不動産の明記方法としては、相続登記の関係から必ず登記簿の記載のとおり記入してください。

記載すべき内容は、以下のように土地・建物・マンションによって異なります。

土地

建物

マンション

・所在地

・地番

・地目

・地積

・所在

・家屋番号

・種類

・構造

・床面積

【一等の建物の表示】

・所在

・建物の名称

【専有部分の建物の表示】

・家屋番号

・建物の名称

・種類

・構造

・床面積

【敷地権の表示】

・土地の符号

・所在および地番

・地目

・敷地権の種類

・敷地権の割合

配偶者居住権の遺産分割協議書の書き方

配偶者居住権とは、被相続人が所有していた建物について、被相続人の配偶者は自身が亡くなるまで、もしくは一定期間住むことができるという権利のことです。

配偶者居住権は、被相続人の配偶者の生活拠点である住居を守ることを目的に、2020年4月1日から施行されました。

なお、配偶者居住権について第三者に対抗するには登記が必要となるので注意してください。

上場株式・有価証券に関する遺産分割協議書の書き方

上場株式や有価証券については発行する株式会社と株式数で特定しますが、証券会社に関する情報として、証券会社名・支店名・口座番号なども記載しておくとよいでしょう。

代償分割がある場合の遺産分割協議書の書き方

代償分割とは、不動産などの分割が難しい遺産について、特定の相続人が相続する代わりに、ほかの相続人に対して現金などを支払う方法のことです。

代償分割をおこなう場合、どの相続人がどの相続人に対して、どれだけの金額を支払うかを明記します。

どのような方法でいつまでに支払うかも記載しておくとよいでしょう。

一般的には、「●条の財産の代償金として、相続人Aが相続人Bに対して、○○円を支払う」などと記載します。

換価分割がある場合の遺産分割協議書の書き方

換価分割とは、相続財産を現金化して、そのお金を相続人同士で分割する方法のことです。

相続人全員が取得を希望しない財産がある場合などに利用されます。

換価分割をおこなう場合、どの財産の換価金を、どの相続人がどれだけの割合で相続するかを明記します。

なお、換価に伴う費用をどのように処理するかも明記しておくと、のちのちのトラブル防止に繋がります。

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遺産分割協議書を作成するときのポイントと注意点

ここでは、遺産分割協議書を作成するときのポイントや注意点について解説します。

作成はパソコンと手書きのどちらでもよい

遺産分割協議書はパソコンで作成しても手書きでもよく、縦書き・横書きなどの決まりもありません。

ただし、最終調印までの間に記載内容を修正・変更したりすることもあるため、より手軽に作成できるパソコンのほうがおすすめです。

相続人の名前・住所に限っては手書きが望ましい

各相続人が記載する名前と住所については、手書きが望ましいでしょう。

なぜなら、それぞれが自分で手書きすることで、「相続人全員が合意した」ということがより明らかになるためです。

パソコンで作成すると、「私はこんな協議に合意していない」などと主張する相続人が出てくる可能性も否定できません。

できるだけトラブルのリスクを抑えるためにも、署名は手書きがおすすめです。

捺印は実印を利用する

捺印では実印を利用したうえで、印鑑証明書も遺産分割協議書に添付してください。

なぜなら、相続登記や預貯金の解約手続きでは、相続人全員の印鑑証明書の提出を求められます

実印を利用するのも、「各相続人の意思で遺産分割の内容に同意した」と示すのが目的です。

遺産分割協議書が2ページ以上なら契印を押す

遺産分割協議書がA4サイズまたはA3サイズ1枚でおさまるのであれば、署名捺印のみで問題ありません。

一方、ホチキス止めや製本されて2枚以上になる場合は契印を押します

ホチキス止めの場合はページの見開きごとに、製本の場合は製本テープをまたいで契印を押してください。

契印には、捺印時と同じ実印を使い、相続人全員で押しましょう

契印は、その遺産分割協議書が連続したひとつのものであることを示し、抜き取りや偽造を防ぐことを目的とするものです。

遺産分割協議書が2通以上なら割印が必要になる

遺産分割協議書は、相続人全員が1通ずつ所有します。

もし遺産分割協議書を2通以上作成するのであれば、全ての遺産分割協議書をずらして、全部にまたがるように割印を押しましょう

割印を押すのは、全ての遺産分割協議書が同じ内容であることを示すためです。

割印も、捺印時と同じ実印を使い、相続人全員で押してください

名義変更する財産は正確に記載する

名義変更する財産は正確に記載しましょう。

特に、不動産に関しては注意が必要で、不動産に関する情報は、登記簿どおりに記載してください。

もし登記簿に書かれている内容と異なる場合、法務局から不備を指摘されて相続登記できなくなる恐れもあります。

その場合、あらためて遺産分割協議書を作成しなければならず、大きな手間がかかってしまいます。

預貯金・株式・生命保険解約金などの金融資産も正確に記載

預貯金・株式・生命保険解約金などの金融資産についても、どの資産なのか特定できるよう正確に記載しましょう。

金融機関名・支店名・口座番号・口座の種類など、しっかりと調べてください。

遺産分割協議書は相続人全員が1通ずつ所有する

遺産分割協議書は相続人全員分を用意し、それぞれ1通ずつ所持しておくのが望ましいといえます。

このとき、全ての遺産分割協議書について、手書きでの署名・実印による押印・印鑑証明書の添付などを忘れないようにしましょう。

相続人全員が遺産分割協議書を所持しておくのは、紛失や偽造などによるトラブルを防ぐのが目的です。

遺産分割協議書は公正証書にしよう

相続人間で十分な信頼関係がなく、一部の相続人が合意内容どおりの義務を果たしてくれないおそれがある場合は、遺産分割協議書を公正証書化しておくのが有効です。

公正証書は、公証人法に基づいて法務大臣が任命した「公証人」が作成する公文書です。

作成に携わる公証人は、裁判官・検察官・法務局長などの経験者が就任することが多く、公正証書化の相談をすると的確なアドバイスが受けられます。

また、公証人が作成する「公正証書」は、通常の合意書面に比べて合意の有効性に関する証明力が強く、裁判によらずに強制執行ができる場合もあります。

ここでは、遺産分割協議書を公正証書にするメリット・デメリットについて解説します。

遺産分割協議書を公正証書にするメリット

まずは、遺産分割協議書を公正証書にするメリットを紹介します。

あらゆる相続手続きがスムーズになる

公正証書は、公証人の関与のもとで作成されるものであるため、自主的に作成する場合と比べて信頼性が高いといえます。

遺産分割協議書を公正証書にすることで、不動産の相続登記・預貯金口座の名義変更・相続税の申告などの各手続きのスムーズな進行が望めます。

紛争の予防になる

遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人が間に入り、相続人全員の意思を確認して作成します。

そのため、書面の記載内容について、遺産分割後に争いになる可能性が低くなります。

安全性が高い

遺産分割協議書を公正証書にした場合、原本は公証役場に長期間保管されるので、紛失対策にもなります。

遺産分割協議書を公正証書にするデメリット

遺産分割協議書を公正証書にする場合、次のようなデメリットもあります。

  1. 公証役場に支払う手数料などの費用がかかる
  2. 公証人が間に入るため作成までに時間がかかる

もっとも、公正証書の作成にかかる費用はそれほど高額ではなく、作成にかかる時間なども、のちのちトラブルにならずに済むことなどを考えれば、それほど負担となるものではありません。

これらのデメリットを踏まえても、遺産分割協議書を作成するのであれば公証人に依頼するほうがよいといえます。

公正証書作成に必要な書類

自身で手続きをする場合には、下記の資料を準備して公証役場の予約をとり、手続きの流れについて説明を受けてください。

自身での対応が難しそうな場合は、弁護士に依頼することで手続きの大部分を代行してもらえます

  • 相続人全員の印鑑証明書と戸籍謄本
  • 被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本・改正原戸籍、除籍謄本など
  • 不動産登記簿謄本と固定資産税評価証明書(不動産がある場合)
  • 預貯金の通帳または残高証明書
  • 有価証券の残高証明書、生命保険の解約返戻金証明書
  • 借入先の残高証明書

公正証書を作成する費用

2023年8月時点の公正証書に関する費用は下記のとおりです。

ただし、費用は改定されることがあるため、正確な金額が気になる人は直接問い合わせてください。

目的の価格

手数料

100万円以下

5,000円

100万円を超え200万円以下

7,000円

200万円を超え500万円以下

1万1,000円

500万円を超え1,000万円以下

1万7,000円

1,000万円を超え3,000万円以下

2万3,000円

3,000万円を超え5,000万円以下

2万9,000円

5,000万円を超え1億円以下

4万3,000円

1億円を超え3億円以下

4万3,000円に5,000万円ごとに1万3,000円を加算

3億円を超え10億円以下

9万5,000円に5,000万円ごとに1万1,000円を加算

10億円を超える場合

24万9,000円に5,000万円ごとに8,000円を加算

遺産分割協議書を公正証書にすべき人

以下のいずれかに該当する人は、遺産分割協議書を公正証書にすることを検討しましょう。

  • 遺産分割協議後のあらゆるトラブルを徹底して避けたい
  • 相続手続きで手間取る可能性を排除しておきたい
  • 遺産分割協議書の紛失を避けたい
  • 費用がかかってもよいので安心して手続きを進めたい
  • 相続人のなかに、のちのち「自分は署名押印していない」などと言い出しかねない人がいる

遺産分割協議書を公正証書にすることを検討している方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。

遺産分割協議書の作成が困難な場合は弁護士に相談しよう

「自分で遺産分割協議書を作成するのは難しそう」「のちのちのトラブルを避けたい」という方は、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士に依頼すれば、将来のトラブルを見据えたうえで、あなたにとって安心かつ相続人全員にとって疑義がない遺産分割協議書を作成してもらえます

さらに、遺産分割協議書の公正証書化についても代行してもらえます。

「弁護士費用は高額なのでは」と不安になるかもしれませんが、遺産分割協議書の作成のみであれば、そこまで高額になることはありません。

自力で対応したことでトラブルに発展したり、不備が生じて思わぬコストがかかったりして、「最初から弁護士に相談しておけばよかった」となることもあるでしょう。

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さいごに

遺産分割協議書は、遺産分割について相続人全員が合意したことを示すもので、名義変更や相続税の申告などでも利用される大切な書類です。

遺産分割協議後は、できるだけ速やかに作成しましょう。

作成方法は手書きでもパソコンでも問題ありませんが、住所と氏名は手書きで記入し、捺印では実印を利用するなどの点には注意してください。

また、必要に応じて公正証書にすることも検討してください。

公正証書にしておくことで、書類としての有効性が高くなるほか、裁判によらずに強制執行できるなどのメリットもあるからです。

もし自力での作成が難しいと感じたら、弁護士に依頼してください

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この記事の監修者
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松島 達弥 弁護士 (京都弁護士会)
生前の遺言書作成から遺産の分割・取り分についての話し合いまで幅広く対応。税理士、司法書士、不動産鑑定士など他の士業との連携も得意としており、正確な知識・情報に基づいた解決案の提示には信頼が厚い。
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