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公開日:2020.1.8  更新日:2023.4.5

遺産分割協議書とは|書き方・必要性・作成時のポイントを解説

いろどり法律事務所
松島 達弥 弁護士
監修記事
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遺産分割の際には「遺産分割協議書を作成しなければならい」と聞いたことがある人もいるでしょう。

とはいえ、慣れない相続手続きに次のような不安や疑問を持っている人も多いはずです。

  • そもそも遺産分割協議書って何?
  • 遺産分割協議書は必ず作成する必要がある?
  • 遺産分割協議書はどうやって書けばいい?
  • 遺産分割協議書が無効になることってある? など

そこでこの記事では、上記のような疑問を解決できるよう、遺産分割協議書について知っておきたいことを解説します。

最後は、遺産分割協議書作成を弁護士に依頼する理由についても説明していますので、この記事を読んでみて「自分で作成するのが大変そう…」と感じた人は、弁護士に相談してください。

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目次

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、遺産分割協議において合意した内容を書面に取りまとめた文書のことです。

被相続人の財産について、誰がどの財産をどれだけ相続するかを記載し、全員の署名と捺印がされています。

一度作成されると、原則としては全員の合意なく内容の変更はできません。

遺産分割協議の内容を全員が合意していると第三者に示す効果があり、『不動産の相続登記』や『預貯金・株式・自動車の名義変更の手続き』などでも利用されます。

そのほか、のちに「遺産分割協議に納得していない!やりなおしたい!」と主張する相続人があらわれたときの紛争の蒸し返し防止にも役立ちます。

遺産分割協議書が必要になるケース

遺産分割協議書は、法律で「相続が発生すると必ず作成しなければならない」と定められているものではありません。

次のようなケース等では、原則として作成は不要です。

  • 相続人が1人の場合
  • 遺言書にそって遺言を執行すればいいだけの場合

しかし、相続財産の内容や遺産分割協議の状況によっては、遺産分割協議書の作成が有効な場合や必ず必要になるケースもあります。

ここでは、どういったケースで遺産分割協議書の作成をするべきかを確認しておきましょう。

法定相続分どおりに遺産分割しないケース

遺産を法定相続分どおりに分割しないケースでは、遺産分割協議書の作成をしておくことが大変重要です。

遺産分割協議書作成により、協議の内容について全員が納得したことを証明することが可能になるためです。

法定相続分とは、民法によって定められた遺産の分割割合のことです(民法900条)。

遺産分割協議で相続人全員が合意していれば、法定相続割合と違う分割割合で遺産を分割しても何ら問題はありません。

ただ、一度全員が合意し相続分が決まっても、法定の基準と異なる条件で処理するわけですから後々異議を申し立てる相続人が出るかもしれません。そういったときに遺産分割協議書があれば、相続人全員の合意があったと明確に示すことができます。

【関連記事】法定相続分とは?計算方法は?遺産分割した時の割合を図解で解説

相続税を申告しなければならないケース

相続税を申告しなければならないケースでも、作成することをおすすめします。

相続税は基礎控除額を超えて相続した際に支払う税金ですが、その控除を利用する際に提出を求められることが少なくありません。

よく使われるうえ、とても有利な控除である「配偶者控除」や「小規模宅地の特例」では提出がマストですから、できれば作成しておきたいところです。

預貯金の払い戻しを受けるケース

相続財産に預貯金があって、払い戻しを受けるケースも遺産分割協議書を作成しておくとよいでしょう。

口座凍結後に払い戻しを受けるとき、遺産分割協議書の提出を求める金融機関も少なくないからです。

相続人が、銀行に対して、「口座名義人が死亡した」ということを伝えることで被相続人死亡の事実を金融機関が把握すると、被相続人の相続財産を確定や、相続人間のトラブルを防ぐ目的で口座が凍結されます。

その後、凍結した口座から預金を引き出すためには、当該口座を解約して相続人の口座に移さなければなりません。その手続きの際に遺産分割協議書の提出を求められる場合があります。

なお、金融機関によっては所定の用紙に相続人全員が記入すれば遺産分割協議書を提出しなくてよいこともあります。

また、相続人間で信頼関係が構築できていない等、代表者に手続を任せることができないような場合には、遺産分割協議書を持参して各自が各自の権利分を現金化する必要が生じます。

名義変更する財産があるケース

名義変更する財産があるケースでも、遺産分割協議書を作成しておきましょう。

名義変更の手続きの際に遺産分割協議書の提出を求められることが多いからです(※)。

代表的なものが、不動産を相続したケースです。

不動産を相続した場合、登記簿の名義人を被相続人から相続人に変更する、「相続登記」をしなければなりません。この時、単に「相続発生」の事実を登記するだけであれば、遺産分割協議書は必要ありません。

しかし、法定相続割合と異なる割合での不動産取得について相続登記をする場合、遺産分割協議書が必要になります。いずれにせよ不動産は財産価値が大きいため、相続財産に不動産があった場合は、遺産分割協議書の作成はしておくべきでしょう。

そのほかにも、自動車、有価証券、船舶などの名義変更手続きで遺産分割協議書が必要になることがあります。

遺言書に記載がない財産があるケース

遺言書があり、その内容どおりに遺産分割(この場合の遺産分割を「遺言執行」といいます。)するケースであれば、遺産分割協議書は原則不要となります。

しかし、遺言書に記載されていない遺産がある場合、その遺産については、遺産分割の手続きが必要となります。

このような場合、相続人間で不平等な結果が生じることが多いため、遺産分割協議書を作成しておいたほうがよいでしょう。

これにより、「法定相続分どおりに遺産分割しないケース」と同様、遺言書で言及されていない部分の遺産分割について、全員の合意があったことを確定的に示すことができます。

後のトラブルが予想されるケース

法定相続分どおりに遺産分割をするなど、遺産分割協議書を作成しなくてよいケースであっても、のちのトラブルが予想されるのであれば遺産分割協議書を作成しておくほうが安心です。

遺産分割協議は終わったものの、「やっぱり、法定相続分による遺産分割に納得していない」と主張する相続人があらわれてトラブルになる可能性もあります。

さらに、親族間の上下関係や力関係を利用して、あとから特定の財産を譲渡するよう、個別に交渉される可能性も否定できません。

いずれにせよ、遺産分割は経済的利益を追求する側面がありますから、後々にトラブルが発生することは十分に考えられます。

トラブルが発生すると予測されるのであれば、遺産分割協議書は作成しておいたほうがよいでしょう。

遺産分割協議書作成までの4つのステップ

被相続人が亡くなってから遺産分割協議書を作成するまでには、次の4つのステップを踏むことになります。

  1. 相続人を明らかにする
  2. 被相続人の財産を調べる
  3. 遺産分割協議をする
  4. 遺産分割協議書を作成する

ここでは、遺産分割協議書を作成するまでの流れを確認しておきます。

法定相続人を明らかにする

まずは、法定相続人が誰なのか明らかにしましょう。

遺産分割協議書を作成するためには、法定相続人全員が協議に参加する必要があるからです。法定相続人が全員明らかな場合であれば連絡をとります。

一方、法定相続人が明らかでない場合には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取り寄せて、法定相続人を洗い出さなければいけません。

もし、「法定相続人が誰かわからない」ということあれば、弁護士等に依頼することで調査してもらうことができます。

なお、弁護士に依頼することで、遺産分割合意完了まで一任することができます。

遺産分割協議書の作成に不安がある人は、弁護士に依頼することが有効な手段となります。

被相続人の財産を調べる

次に、被相続人の財産を調べます。

できる限りすべての財産を把握した状態で遺産分割協議を開始しなければ、結果的にいつまでたっても話し合いがまとまらない状況に陥ってしまうからです。

現金や預貯金、不動産だけでなく、住宅ローンや借金などの負債も遺産分割を巡る重要な内容ですから、プラスの財産とマイナスの財産すべてを調べなければなりません。

また、適切な遺産分割を実現するには、不動産や株式などについて適正に評価するために、査定をしてもらうことも必要です。

相続財産調査も弁護士に依頼することができます。必要に応じて依頼するとよいでしょう。

遺産分割協議をする

相続人と相続財産が明らかになったら、遺産分割協議をスタートさせることになります。

一部の人間を除け者にして協議をすることは不合理です。なぜなら、遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要な点に注意してください。

なお、遺産分割協議の段階から「協議に協力的でない人がいる」「自分の利益ばかり主張して話が前に進まない」「あなた自身の権利を侵害するような協議がおこなわれている」などのトラブルがあり、協議が進展しない場合や、「協議をできるだけうまく進めるための基本情報やコツを知っておきたい」という方は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

依頼するかどうかは費用対効果次第ですが、弁護士という第三者が間に入ることで冷静に話し合いができる場合があるほか、協議を断念して調停等の次のステップに進むべきタイミング等の助言を受けることもできます。

法的に正しいアドバイスを受けることで、一部の相続人が不当に不利益を受けるという事態も避けられるでしょう。

遺産分割協議書を作成する

無事に遺産分割協議がまとまったら、いよいよ遺産分割協議書を作成します。

誰がどの財産をどの割合で相続するかを記載し、相続人全員の捺印と署名が必要です。

なお、遺産分割協議書に不手際があると、不動産の名義変更時などでスムーズに手続きが進まないことも考えられます。

また、最終的にきちんと財産が手元に支払われないという事案もあります。

  • 関係者や財産が多すぎて、どのような遺産分割協議書を作成すればよいか見当もつかない
  • 相続人の中に自分勝手な人がいて、トラブルになりそう 又は すでにトラブルになっている
  • 後々のトラブルを防ぐためにしっかりとした遺産分割協議書を作成したい

上記のように、遺産分割協議書作成について少しでも不安があるなら、弁護士に相談しましょう。

遺産分割協議書の書き方|記載内容とサンプル

ここでは、遺産分割協議書に書くべき内容や実際の書き方、さらにサンプルを確認しておきましょう。

 遺産分割協議書に記載する内容

遺産分割書に書くべき内容は、法律で定められてはいません。

とはいえ、どの相続人がどの財産を相続したかを対外的にも相続人どうしにも示すのが目的ですから、次の内容をおさえておく必要があります。

  • タイトルとして「遺産分割協議書」と明記する。
  • 被相続人の情報として氏名・生年月日、死亡年月日、最終住所等後々被相続人の特定に疑義が生じないような情報を記載する。
  • 相続人全員が遺産分割協議の内容に合意したこと
  • 誰がどの財産を取得したか
  • 相続人全員の住所・署名・捺印

なお、遺産分割協議書の書式は、法定されているわけではありません。

縦書きでも横書きでもよいですし、「甲や乙」といったややこしい表記にする必要はありません。

相続財産を正確に記載し、どの相続人が、どのように引き継ぐかを明確に記載していれば問題はありません。

遺産分割協議書の作成例

ここでは、遺産分割協議書のサンプルを紹介します。作成の参考にしてください。

 

遺産分割協議書

 

被相続人 山田太郎

生年月日  昭和●●年●●月●●日)

死亡日   令和●●年●●月●●日

本籍地   東京都新宿区西新宿●-●●-●

最終住所地 東京都新宿区西新宿●-●●-●

前記被相続人の相続に関し、被相続人の法定相続人ら全員で遺産分割協議を行った結果、下記のとおりに遺産分割協議が成立したことを確認する。

 

1.法定相続人らの特定

 法定相続人ら全員は、被相続人らの法定相続人が、妻山田花子、長男山田一郎、長女山田和子及び次男山田次郎の4名であることを確認する。

 

2.妻の取得財産

  相続人ら全員は、下記の不動産を妻山田花子が取得することに合意する。

  所在   東京都●●区●●

  家屋番号 ●●番●

  種類   ●●

  構造   ●●●●

  床面積  ●階 ●㎡

 

3.長男の取得財産

  相続人ら全員は、下記の預貯金を長男山田一郎が取得することに合意する。

  ●●銀行●●支店 

  普通預金 口座番号●●●●●●●

 

4.長女の取得財産

  相続人ら全員は、被相続人の一切の動産について、長女山田和子が取得することに合意する。

 

5.次男の取得財産

  相続人ら全員は、前記2項から4項を除く一切の財産(本遺産分割協議成立までに明らかとならなかったものも含む)について、次男山田次郎が取得することに合意する。

 

6.精算条項

 相続人ら全員は、各相互に、被相続人の相続に関し、本協議書に定めるもののほか何らの債権債務も存在しないことを確認する。

 

  以上の内容で、相続人全員による遺産分割協議が成立したため、本協議書を4通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

 

令和●●年●月●日

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 昭和●●年●●月●●日

相続人 (妻)山田花子  ㊞

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (長男)山田一郎  ㊞

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (長女)山田和子  ㊞

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (次男)山田次郎  ㊞

 

なお、上記遺産分割協議書は、被相続人に負債がなく、財産だけがある場合という最も単純な場合を想定し、かつ、最も単純な形式を示しています。

これに対し、たとえば、負債がある場合の負債の分担方法や、祭祀承継に関する条件、その他、被相続人への生前の経済的・実働的負担の清算に関する合意等の条項を付け足すことも可能です。

ここから下では、どのような財産を取得するかによって注意しないといけないことを簡単に記載します。

なお、実際にどのような条項を置くべきかについて不安がある場合には、弁護士による正式な相談を受けることをお勧めします。

現預金に関する遺産分割協議書の書き方

現金については、どれだけの金額を、誰が相続するかを明記する必要があります。

預貯金については、「銀行名」「支店名」「預金の種類」「口座番号」について、誰が相続するかを明記する必要があります。

不動産に関する遺産分割協議書の書き方

不動産の遺産分割協議書については、誰がどの不動産を相続するか記載します。

なお、不動産を明記する方法としては、相続登記の関係から必ず登記簿の記載のとおり記入してください。

記載するべき内容は、「土地」「建物」「マンション」によって異なり、次のとおりです。

土地

建物

マンション

・所在地

・地番

・地目

・地積

・所在

・家屋番号

・種類

・構造

・床面積

【一等の建物の表示】

・所在

・建物の名称

【専有部分の建物の表示】

・家屋番号

・建物の名称

・種類

・構造

・床面積

【敷地権の表示】

・土地の符号

・所在及び地番

・地目

・敷地権の種類

・敷地権の割合

配偶者居住権の遺産分割協議書の書き方

配偶者居住権とは、被相続人が所有していた建物があり、被相続人に配偶者がいれば、その配偶者は自身が亡くなるまで、もしくは一定の期間住める権利のことです。

これは、遺された配偶者の生活拠点の住居を守ることを目的として、2020年4月1日から施行されました。

なお、配偶者居住権を第三者に対抗するには登記が必要となるので注意してください。

上場株式・有価証券に関する遺産分割協議書の書き方

上場株式や有価証券については、発行株式会社と株式数で特定しますが、できれば証券会社に関する情報として、証券会社名、支店名や口座番号といった情報を記載しておくとよいでしょう。

代償分割がある場合の遺産分割協議書の書き方

代償分割とは、不動産など分割の難しい遺産を相続する場合、特定の人が財産そのものを相続するかわりに他の人に現金などで代償財産を支払う遺産分割の方法です。

どの相続人がどの相続人に対し、どれだけの金額を支払うかを明記します。どのような方法でいつまでに支払うかも記載しておくとベターでしょう。記載例は次のとおりです。

一般的には「●条の財産の代償金として、誰が、誰に対して、金何円を支払う」といった条項を設けます。

換価分割がある場合の遺産分割協議書の書き方

換価分割とは、相続財産を一度現金化して、そのお金を相続人で分割して相続する遺産分割の方法です。相続人全員が取得を希望しない財産がある場合などに利用されます。

どの財産の換価金を、どの相続人が、どれだけの割合で相続するかについて明記しましょう。

この際、換価に伴う費用をどのように処理するかを明記しておくと後々の紛争を防ぐことに繋がります。

遺産分割協議書を作成するときのポイントと注意点

ここでは、遺産分割協議書を作成するときのポイントや注意点について確認しておきましょう。

作成はパソコンと手書きのどちらでもよい

すでにお伝えしましたが、遺産分割協議書はパソコンでも手書きでもどちらでもかまいません。縦書き・横書きについても決まりはありません。

ただし、最終調印までの間に記載内容を修正・変更することもあります。二度も手書きするのは面倒ですから、パソコンのほうがおすすめです。

相続人の名前・住所に限っては手書きが望ましい

各相続人が記載する名前と住所については手書きが望ましいといえます。それぞれが自分で署名する手書きであれば、相続人全員が合意したことが明らかになるためです。

パソコンで記載すると「私はこんな協議に合意していない」などと主張する相続人があらわれる可能性も否定できません。よけいなトラブルの原因を作らないためにも署名は手書きがおすすめです。

捺印は実印を利用する

捺印は、実印を利用しましょう。さらに、印鑑証明書も遺産分割協議書に添付します。相続登記や預貯金の解約では、原則、相続人全員の印鑑証明の提出を求められるからです。

実印を利用するのも、相続人全員が、「各相続人の意思で遺産分割の内容に同意した」という事実を示すことが目的です。

遺産分割協議書が2ページ以上なら契印を押す

遺産分割協議書がA4サイズまたはA3サイズ1枚でおさまるのであれば、署名捺印のみでもかまいませんが、もし協議書がホチキス止めや製本されて2枚以上になったら契印を押します。

ホチキス止めされているなら前ページの見開きごとに、製本されたものであれば製本テープをまたいで、契印を押してください。

契印は、捺印したときと同じ実印を使い、全相続人が押印するようにしましょう。

契印は、その遺産分割書が連続した1つのものであると示し、抜き取りや偽造を防ぐことを目的とするものです。

遺産分割協議書が2通以上なら割印が必要になる

遺産分割協議書は、できれば相続人全員が1通ずつ所有しておきたいところです。

もし遺産分割協議書を2通以上作成するのであれば、すべての遺産分割協議書をずらして、全部にまたがるように割印を押しておきましょう。

割印を押すのは、すべての遺産分割協議書が同じ内容であることを示すためです。割印も、捺印したときと同じ実印で、全相続人が押印するようにしてください。

名義変更する財産は正確に記載する

名義変更する財産は正確に記載しましょう。とくに、不動産に関しては注意が必要です。すでにお伝えしましたが、不動産に関する情報は登記簿どおりに記載するようにしてください。

もし、登記簿に書かれている内容と違ったら、法務局から不備を指摘されて相続登記ができなくなる場合もあります。その場合、あらためて遺産分割協議書を作成する等しなければならず、大きな手間がかかってしまいます。

預貯金・株式・生命保険解約金などの金融資産も正確に記載

預貯金や株式、生命保険解約金などの金融資産についても、どの資産かはっきりと特定できるよう正確に記載しましょう。金融機関名、支店名 口座番号、口座の種類など、しっかりと調べてください。

遺産分割協議書は相続人全員が1通ずつ所有する

すでに軽くふれましたが、遺産分割協議書はできれば相続人全員分を用意し、それぞれで1通ずつ所持しておくのが望ましいといえます。

このとき、すべての遺産分割協議書に、手書きで署名、実印を押印する、印鑑証明を添付することを忘れないようにしてください。

全員が所持しておくのは、紛失や偽造などによるトラブルを防ぐのが目的です。

遺産分割協議書は公正証書にしよう

法定相続人間で十分な信頼関係がなく、一部の相続人が、遺産分割協議内容どおりの義務を果たしてくれないおそれがあるような事案では、遺産分割協議書を公正証書化しておくことも有効です。

公正証書は、公証人法に基づいて法務大臣が任命した公証人(※)が作成する公文書です。

作成に携わる公証人は、裁判官や検察官、法務局長など元々法律の専門家であった者が就任することが多いため、公正証書化の相談をすると的確なアドバイスを受けられるからです。

また、公証人が作成した「公正証書」は通常の合意書面に比べて合意の有効性に関する証明力が強く、裁判に依らずに強制執行可能になる場合もあります。

ここでは、遺産分割協議書を公正証書にするメリット・デメリットなどについて確認しておきましょう。

遺産分割協議書を公正証書にするメリット

まずは、遺産分割協議書を公正証書にするメリットを紹介します。

あらゆる相続手続きがスムーズになる

遺産分割協議公正証書は、公証人の関与の下で作成されているため、自主的に作成した協議書に比して信頼性が高いといえます。

したがって、遺産分割協議公正証書のほうが、不動産の登記、預貯金口座の名義変更、相続税の申告など各種手続がスムーズになるのです。

紛争の予防になる

遺産分割協議公正証書は、公証人が間に入り、相続人全員の意思を確認して作成します。そのため、協議書の内容について後々争いとなる可能性が低くなります。

安全性が高い

遺産分割協議公正証書の原本は、公証役場に長期間保管されますので、紛失の対策にもなります。

遺産分割協議書を公正証書にするデメリット

一方で、次のようなデメリットがあるのも事実です。

  1. 余分に公証役場に支払う手数料等の費用がかかる
  2. 公証人が間に入るため作成まで時間がかかる

もっとも、公正証書化の費用はそれほど高額のものではありませんし、時間も後々トラブルになる可能性を考えればそれほど負担となるものではありません。

そうすると、これらデメリットを踏まえても、遺産分割協議書を作成するのであれば公証人に依頼するほうがよいといえます。

公正証書作成に必要な書類

ご自身で手続きをしようとする場合には、下記の資料等を準備して公証役場の予約をとり、手続きの流れの説明を受けてみてください。

ご自身での対応が難しそうという場合は弁護士に依頼しましょう。大部分の作業を代行してもらえます。

  • 相続人全員の印鑑証明書と戸籍謄本
  • 被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本・改正原戸籍、除籍謄本など
  • 不動産登記簿謄本と固定資産税評価証明書(不動産がある場合)
  • 預貯金の通帳または残高証明書
  • 有価証券の残高証明書、生命保険の解約返戻金証明書
  • 借入先の残高証明書

公正証書を作成する費用

2022年7月末日時点での公正証書に関する費用は下記表のとおりです。

ただし、費用は改定されることがあります。気になる人は直接、問い合わせてください。

目的の価格

手数料

100万円以下

5,000円

100万円を超え 200万円以下

7,000円

200万円を超え 500万円以下

1万1,000円

500万円を超え 1,000万円以下

1万7,000円

1,000万円を超え 3,000万円以下

2万3,000円

3,000万円を超え 5,000万円以下

2万9,000円

5,000万円を超え 1億円以下

4万3,000円

1億円を超え 3億円以下

4万3,000円に5,000万円ごとに1万3,000円を加算

3億円を超え 10億円以下

9万5,000円に5,000万円ごとに1万1,000円を加算

10億円を超える場合

24万9,000円に5,000万円ごとに8,000円を加算

参考:日本公証人連合会|10手数料

遺産分割協議書を公正証書にすべき人

以下の項目に該当する人は遺産分割公正証書にすることを積極的に検討してみてください。

遺産分割協議後のあらゆるトラブルを徹底して避けたい

  • 相続の手続きで万が一にも手間取る可能性を排除しておきたい
  • 遺産分割協議書の紛失を避けたい
  • 費用をかけてもいいので安心が欲しい
  • 法定相続人の中に、後々「自分は署名押印していない」等と言い出しかねない人物がいる。

なお、公正証書は法的な妥当性があるかを厳密に判断されますので、遺産分割協議書を公正証書にすることを検討されているのであれば、一度弁護士に相談しておくことをおすすめします。

遺産分割協議書の作成が困難な場合は弁護士に相談しよう

この記事では、遺産分割協議書に書くべき内容や項目ごとの書き方、作成時のポイントについて解説しました。

「自分で作成するのは難しそうだ」「後々のトラブルを避けたい」といった不安があれば、まずは弁護士への相談をおすすめします。

弁護士に依頼することで、将来のトラブルを見据えたうえで、あなたにとって最も安心で、相続人全員にとって疑義がない遺産分割協議書を作成してもらえます。さらに、公正証書化についても代行してもらえます。

「弁護士への費用は高額なのでは…」と心配になるかもしれませんが、遺産分割協議書の作成のみであれば、そこまで高額になることはありません。出費よりも、のちにトラブルに発展したり、不備があったりしてコストがかかってしまったときに、「最初から弁護士にきちんと相談して作成しておけばよかった」となってしまう方も少なくありません。

ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)」は、相続問題に注力している弁護士を全国から探せるサイトです。

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まとめ

遺産分割協議書は、遺産分割について相続人全員が合意したことを示し、名義変更や相続税の申告などでも利用される大切な書類です。遺産分割協議書後にはできるだけすみやかに作成しましょう。

作成は手書きでもパソコンでもかまいませんが、住所と氏名の記入は手書きし、捺印は実印を利用すべき点には注意してください。

また、必要に応じて公正証書にすることも検討してください。合意性の有効性が高くなるほか、裁判に依らず強制執行可能など、メリットもあるからです。

もし作成が難しいと感じたら、弁護士に依頼するようにしてください。ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を利用すれば、お近くの弁護士事務所を簡単に検索できるのでおすすめです。

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Office info 202005191848 28581 w220 弁護士大村隆平(雨宮眞也法律事務所所属)

●過去に解決した相続事件は150件以上●相続事件に専念し(相続事件以外は扱っておりません)、相続事件の対応には自信あり●経験(知識)と若さ(親しみやすさ)を両立させている点が弁護士大村の強みです

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Office info 202205241457 66681 w220 田多井法律事務所

【弁護士歴35以上】【初回相談無料】相続トラブルでご家族が揉めてしまわないよう弁護士に相談してみませんか?これまでの長い弁護士経験を生かし、適切な解決策を提案いたします。遺産分割遺言書作成など】

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Office info 202006041058 10441 w220 【遺産分割・遺留分に注力】恵比寿東京法律事務所

遺産分割・遺留分に注力】不動産/株の相続などにも対応◆解決実績多数の弁護士が、豊富なノウハウを駆使し解決に導きます。《円満な解決から取り分の最大化まで、依頼者様のご希望と相手方の性格を見ながら適切に対応!

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Office info 1901 w220 【不動産の分け方で揉めたら】アトラス総合法律事務所

●神田駅2分●初回面談無料●夜間・休日の面談可●宅建士資格所有:不動産の相続/遺産の分割/遺言書を巡る問題/複雑な案件であっても、他士業と連携しスムーズに一括解決!《これまでの実績は写真をクリック!》

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この記事の監修者
いろどり法律事務所
松島 達弥 弁護士 (京都弁護士会)
生前の遺言書作成から遺産の分割・取り分についての話し合いまで幅広く対応。税理士、司法書士、不動産鑑定士など他の士業との連携も得意としており、正確な知識・情報に基づいた解決案の提示には信頼が厚い。

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相続トラブルに巻き込まれてしまった方へ

何かと相続トラブルに発展するのは遺産の割合に不満がある・納得いかないケースです。

例えば、下記などが該当します。

・思ったより相続される遺産が少なかった
・揉めたくないので、泣く泣く遺産の配分に納得した
・遺言書に他の兄弟姉妹に遺産を多く渡す旨が書かれていた

遺産相続では法定相続分といって、民法で定められている割合の通りに遺産を公平に分割しましょうという一応の定めがありますが、生前に被相続人(亡くなった人)の介護をしていた、被相続人の事業を手伝っていれば寄与分という制度で多くの財産をもらう権利があります。

また、他の相続人が生前に財産を多く受け取っていたのであれば、遺産分割協議の際に相続財産を減らすこともできます。ただ、こういったルールは相続人全員が知っているわけではありませんから、あなたが主張しても聞く耳をもたれない可能性もあります。

その場合、弁護士に相談することで法的な観点から主張をしてくれますし、トラブルになっている場合はその仲裁に一役買ってくれるでしょう。

当サイトでは、無料相談(一部)を行っている弁護士事務所を数多く掲載しています。

まずは下記よりお近くの弁護士を探して相談してみましょう。

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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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