日ごろから株式投資をしていた親や親族が亡くなった場合は、株式の相続が発生します。
しかし、株取引をしたことがない人にとってはどのように相続するのかがわからず悩んでしまうのではないでしょうか。
本記事では、株式の相続に必要な手続きの流れや遺産分割の方法、相続税評価のやり方、現金化する手順について解説します。
株式の相続でお悩みの方へ
投資好きの親や親族が亡くなって、株式を相続することになったけど株は難しくてよくわからない…と悩んでいませんか。
結論からいうと、株式の相続でお悩みなら弁護士への相談をおすすめします。
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この記事に記載の情報は2024年08月30日時点のものです
株式を相続するときの手順
株式を相続する際の手順は以下のとおりです。
株式の相続手順
- 遺産分割協議をおこなう
- 株式の名義を変更する
- 相続税の申告と納付をおこなう
親族が亡くなって相続が発生する場合は、まず被相続人の財産調査をおこなう必要があります。
株式も例外ではなく、まずはどれくらいの株式を相続するのかを調査する必要があります。
次に、株式を相続人の間でどのように分けるかを遺産分割協議で決定します。
最後に、株式の名義変更をおこないますが、相続した株式の評価額によっては、相続税の申告や納付が必要になります。
以下では、それぞれの手順について詳しく解説します。
1.株式の有無を調査する
株式には上場株式・非上場株式の2種類があります。
それぞれで調査方法が異なります。
上場株式の調査方法
相続財産に上場株式がある場合、まず証券会社や信託銀行などから送付される取引残高報告書または評価証明書をチェックしてください。
取引残高報告書は株取引をおこなっていれば3ヵ月に1回、株取引をおこなっていなくても残高があれば1年に1回は送付されます。
次に口座開設している証券会社等がわかる場合は、相続発生時の株価を確認するため「取引残高証明書」の発行を依頼します。
取引残高証明書では、株式の銘柄や数量、相続時の時価(株価)が確認できるので、遺産分割協議用に保管しておきましょう。
なお、手掛かりがない場合や古い株券が残っていた場合は「証券保管振替機構(ほふり)」に照会して口座の開設先を調べることも可能です。
非上場株式の調査方法
非上場株式の場合、2004年の商法改正によって株券不発行が原則となりましたが、改正前に設立された非上場会社であれば「株券」として残っているケースもあります。
また、株券の発行会社から不発行会社に変わった場合、株券の回収や定款変更もあるため、株主には何らかの通知が届いているはずです。
そのため、株券や郵便物を調査したうえで、非上場株式の発行会社に残高証明書を請求しましょう。
なお、株券は貸金庫に保管されているケースもあるので、自宅を整理しても手がかりがない場合は、被相続人の取引銀行に照会してください。
2.遺産分割協議をおこなう
株式調査が終わったら、遺産分割協議をおこない、誰がどれくらいの株式を相続するのか、相続人全員の話し合いによって決定します。
協議が決着するまでの間、株式は相続人全員の共有状態になるため、株式の譲渡など勝手な処分は認められず、法的にも無効になります。
なお、上場株式の評価額は取引残高証明などで容易に把握できますが、非上場株式の評価額は自分で計算しなくてはなりません。
評価方法も会社規模や保有株式数で変わるため、まず弁護士や税理士などに相談し、株価を確定しておく必要があります。
遺産分割協議が成立しなかった場合
株式の遺産分割をめぐって相続人同士が対立してしまうケースは、決して珍しいことではありません。
しかし、被相続人名義の株式をいつまでも放置するわけにはいきません。
遺産分割協議が成立しなかった場合には、家庭裁判所への調停申し立てを検討します。
遺産分割調停は一般的な裁判と異なり、裁判官や調停員が間に入って話し合いを進めますが、調停でも決着しなかった場合は遺産分割審判へ移行します。
審判の場合は遺産分割方法を裁判官が決定し、問題がなければ従うことになります。
ただし、判決に不服がある場合は「即時抗告」も可能であり、遺産分割は高等裁判所で審議されます。
なお、遺産分割協議の決着が相続税申告に間に合わない場合は、ひとまず法定相続分どおりに分割したとみなす「未分割申告」も可能です。
1.株式の名義変更手続きをおこなう
遺産分割協議が決着した場合は、株式の相続人が発行会社に申し出て、名義変更の手続きをおこないます。
上場株式は証券会社や信託銀行の窓口で手続きをおこないますが、非上場株式の場合は、発行会社と直接やりとりして名義を書き換えます。
また、証券会社等で管理されていない上場会社の株券については、証券保管振替機構に連絡して手続きを進めましょう。
なお、株式の名義書換に必要な書類は次のとおりですが、あくまでも一般的な例なので、詳細は証券会社や発行会社などに確認してください。
株式の名義変更に必要な書類の例
株式を相続する場合、一般的には以下の書類が必要になります。
株式の相続に必要な書類
- 株券(株券が発行されていない場合は不要)
- 証券会社や信託銀行指定の株式名義書換請求書
- 名義書換により新たな株主になる人の株主票
- 共同相続人の同意書または遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)
被相続人の戸籍謄本は取得に時間がかかるケースが多いため、株式相続を急ぎたい場合は、弁護士への戸籍収集依頼も検討しておくとよいでしょう。
相続税の申告と納付をおこなう
相続した全財産の評価額が相続税の基礎控除額を超えている場合には、相続税の申告と納付をおこないます。
申告期限は相続開始の翌日から10ヵ月以内と定められているため、この期限までに相続税の申告と納付を完了させることが必要です。
株式の相続財産を分割する3つの方法
複数の相続人がいる場合には、株式の相続財産を分割することが必要です。
以下の3つの方法から適切なものを選びましょう。
株式をそのまま相続する(現物分割)
現物分割は株式を売却することなく、そのまま分割する方法です。
たとえば、株式3,000株を兄弟3人で相続する場合、金銭に換えることなく、兄弟それぞれが1,000株ずつ株式を相続します。
株式を一人が相続して代償金を支払う(代償分割)
代償分割は一人の相続人が株式を受け取り、ほかの相続人には代償金と呼ばれる金銭を支払う分割方法です。
たとえば評価額3,000万円の株式3,000株を兄弟3人で相続する場合、長男が全株式を取得し、次男と三男にそれぞれ現金1,000万円を支払います。
なお、代償金の金額は法定相続分に応じて決めることが一般的ですが、相続人同士の話し合いで決めることも可能です。
株式の売却代金を相続人間で分ける(換価分割)
換価分割は株式を売却してから売却代金を相続人同士で分け合う分割方法です。
たとえば、評価額3,000万円の株式3,000株を兄弟3人で相続する場合、はじめに兄弟3人の中から代表者を決めます。
そして、その代表者が相続手続きの中で株式3,000株を売却します。
次に売却して得られた現金3,000万円を兄弟3人で分配します。
なお、売却代金の配分は法定相続分にしたがうか、別の方法で決めても構いません。
株式の相続税評価のやり方
株式の評価方法も上場株式と非上場株式で異なります。
上場株式は特に難しくありませんが、非上場株式の評価は専門的な知識が求められます。
計算が必要な場合は、まず税理士に相談しましょう。
上場株式の相続税評価額
上場株式は基本的に「相続発生日の終値」が相続税評価額になりますが、株式の特性上、被相続人の死亡日(相続日)に株価が高騰または下落する可能性もあります。
そこで、株価が極端に変動したときの影響を受けないよう、相続発生日の終値と以下の3つの平均額から一番低い価格を選んでよいことになっています。
- 相続発生日の終値
- 前々月の毎日の最終価格の月平均額
- 前月の毎日の最終価格の月平均額
- 亡くなった月の毎日の最終価格の月平均額
株価はインターネットでも検索できますが、毎日の終値を1件ずつ調べることになるため、全て表示されている残高証明書の請求をおすすめします。
上場株式の相続税評価の具体例
被相続人が7月1日に亡くなり、保有していた上場株式3,000株を相続する場合の相続税評価額について考えてみましょう。
相続発生日の終値と3つの平均額は以下のとおりです。
- 7月1日の終値(3,000円)
- 5月の毎日の最終価格の月平均額(3,300円)
- 6月の毎日の最終価格の月平均額(3,200円)
- 7月の毎日の最終価格の月平均額(2,900円)
上記のうち、一番低い価格は7月の最終価格の平均額である2,900円だとわかります。
したがって、上場株式の相続税評価額は、2,900円×3,000株=870万円です。
非上場株式(未公開株)の相続税評価額
非上場株式は証券会社等が関与していないため、株価は自分で計算することになります。
評価方法は経営者一族用と少数株主用の2種類があり、それぞれ計算方法が異なります。
経営者の一族が自社の株式を相続する場合
非上場会社の経営者が亡くなった場合は、いわゆる「大株主用」の評価方法で株価を計算します。
正確には原則的評価方法といいますが、会社規模などによってさらに以下の3方式に分かれます。
「類似業種比準方式」とは、業種が同じ、または似ている上場会社の株価を基準にした評価方法です。
「純資産価額方式」は、仮に会社を廃業(清算)するとした場合、株主一人あたりの分配金がいくらになるのか?という基準で株価を算出します。
「併用方式」は上記2つのミックスです。
いずれも純資産(簿価)や前期1年間の取引額など、さまざまな要素を考慮して判定するため、税理士や会計士に任せるのが一般的です。
また、経営者一族の相続では、社長の地位承継や株式の承継、経営に関与していない相続人への平等な配分など、さまざまな要素を考慮しなくてはなりません。
次期社長が大量の株式を相続すれば、株主権限が強力になり経営は安定します。
しかし、他の相続人は均等分割を望んでいるケースが多いため、相続トラブルが起きやすくなってしまいます。
経営者の株式相続で問題が発生しそうな場合は、早めに弁護士へ相談してください。
少数株主が非上場株式を相続する場合
経営に参画していない少数株主(持ち分比率の低い株主)の場合、基本的には「配当還元方式」によって株価を評価します。
ただし、同族株主になるか、少数株主になるかの判定もあるため、発行会社に確認しておいたほうがよいでしょう。
少数株主は配当も少なく、株主としての発言力も弱いため、「株式保有のメリットを最大限に受けられる大株主と同じ評価では不公平」という考え方があります。
これは過去の配当や、1株あたりの資本金額などを基準に株価を算出する考え方になります。
相続した株式を売却・現金化する手順
相続人名義の専用口座を開設して株式を移管させたあとは、株式を売却できます。
売却方法には個別売却と一括売却があるため、それぞれの売却方法について解説します。
各相続人が個別に株式を売却処分する場合
1万株の株式を兄弟二人が5,000株ずつ相続するなど、複数の相続人で分割する場合、まずは株式を管理する証券会社等に専用口座を開設します(口座未開設の場合)。
専用口座開設後は遺産分割協議書などを提出し、各相続人の口座へ株式を移管させます。
移管後は各相続人名義の株式になるため、自由に売却できます。
相続財産である株式を一括売却する場合
複数の相続人が株式を相続する場合でも、全員がすぐに現金化するようであれば、代表相続人が一括して相続し、売却後の現金を分割する方法もあります。
まず代表相続人を決定し、他の相続人は委任状により株式売却を委任します。
次に代表相続人が証券会社等に専用口座を開設し、移管手続きを済ませたあとに売却するという流れです。
株式売却を先行し、現金化してから遺産分割するため、各相続人は金銭の遺産分割協議をおこなうことになります。
非上場株式を売却する場合
非上場株式はその多くに譲渡制限が付いているため、自由に売却することができません。
したがって、自分で買い手を見つけて売却する必要があります。
ただし、非上場企業は誰が株主であるのかが経営上重要な意味を持ちます。
そのため、ガバナンスの観点から会社の定款に発行会社への売渡請求が定められている場合があるのです。
売渡請求とは、株式の相続人から名義変更があったときに、発行会社に売り渡すよう請求する仕組みです。
非上場株式は買い手が見つかりにくいため、このような売渡請求が定められていたら、それに従って株式を買い取ってもらい現金化しましょう。
株式を相続する際の注意点5つ
最後に、株式を相続する際の注意点について見ていきましょう。
注意点は以下の5つです。
1.準確定申告が必要な場合がある
被相続人が亡くなる前に株取引で利益が出ていたら、準確定申告が必要となります。
準確定申告とは、被相続人が確定申告すべきであった場合に亡くなった本人に代わって確定申告をおこなうことをさします。
準確定申告の期限は、相続開始から4ヵ月以内と定められているため、必要な場合には早めに手続きをおこないましょう。
2.株式の未受領配当金には時効がある
株式を保有している際に受け取れる配当金は、発行会社の定款に時効期間が設定されています。
そのため、配当金を受け取ることなく一定の時間が経過していた場合、配当金を請求することができなくなってしまいます。
通常、配当については株主名簿管理人である信託銀行が管理しています。
配当の権利消滅に関する情報については、信託銀行に問い合わせて確認しましょう。
3.株式を売却して利益が出たら譲渡所得税がかかる
株式を売却して利益が出たら、相続税とは別に譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税の税率は所得税と住民税を合わせて一律20.315%です。
株式の売却益に対して課税されるため注意しましょう。
なお、相続税の申告から3年以内の売却であれば、特例として納めた相続税の一部を株式の取得費に加算できます。
そのため、譲渡所得税を少なくできるでしょう。
4.相続税の修正申告が求められる場合がある
相続税の申告期限から5年が経過する前に、被相続人の株券が新たに見つかった場合には、相続税の修正申告が求められます。
税務署から指摘を受けてから修正申告をおこなうと加算税や延滞税の対象となります。
気づいた段階で修正申告をおこなうようにしましょう。
5.株式を売却するタイミング次第では損をする
株式の評価額は日々変動するため、安易なタイミングで売却すると大きな損失を被ります。
また、売却のタイミングによっては本来であれば受け取れるはずの配当金がもらえなくなる場合もあります。
株主の権利確定日や相場の市況を確認しながら、できるだけ高いタイミングで売却することを心がけましょう。
さいごに|株式の相続や現金化は弁護士に相談
現金は流動性や使い勝手に優れているため、相続した株式を現金化したい方は少なくありません。
しかし、電子化とともに株式は「見えにくい財産」になってしまい、相続財産の調査から漏れてしまう可能性も高くなっています。
父親や兄弟などの財産を相続する場合、まず株式があるかどうか念入りに調べておきましょう。
また、評価額の算定も複雑なため、株式相続や現金化に不安があれば、早めに弁護士へ相談しておきましょう。
相続放棄や確定申告などについても弁護士によるアドバイスが有効です。
無料相談を設けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみましょう。