遺産分割は経済的な利益を追求する側面があり、親族同士の話し合いであっても互いに意思を尊重できなかったり、感情的になったりして協議が立ち行かなくなってしまうこともあります。
このとき、協議で解決できない場合には「遺産分割調停」という、裁判所での手続きを利用して、分割割合を決めることになります。
しかし、遺産分割調停は裁判所を通じた手続きなので、「どういったものなんだろう」「どうやって進むんだろう」といったように詳しく知らないという方も多いはずです。
また、遺産分割調停にまで発展しているということは、遺産分割においてあなたに譲れない部分があり、「ここだけは相手方に認めてもらいたい」という思いも抱いていることでしょう。
そこでこの記事では、遺産分割調停とはなにか、どういった流れで進むのか、手続きの方法や費用といった基本的なことをまずは解説し、その後に遺産分割調停を有利に進める方法について解説します。
この記事を読めば、遺産分割調停について理解でき、また調停において有利な分割を実現し、満足な遺産分割ができる可能性を高めることができるでしょう。
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遺産分割調停とは、被相続人が残した財産について、相続人同士が、どのような割合で分けるかを話し合い、裁判官と調停委員(※)が中立な立場で話を整理し、協議によって分割方法を定める手続きのことです。
遺産分割調停では、主張を立証するような資料を提出したり、お互いがどういった分割をしたいかについて、調停委員が聞き取りをしたりして、裁判官や調停委員が具体的な解決案を提示したり、お互いの主張について調整などを行い、当事者が円満に合意できるように協議を進めます。
遺産分割調停は調停室という場所で行われ、内容が公開されることはありません。
また、裁判官や調停委員は中立な立場に努めるので、どちらか一方に肩入れをするといったこともありません。
ここでは、どういったときに遺産分割調停をするべき?調停日はどういった流れで進む?といった、遺産分割調停の基本的な内容について解説します。
※参考:遺産分割調停|裁判所
遺産分割調停を利用すべきケースは主に次の2つです。
遺産分割協議で、当事者同士で話し合っても合意に至らず決裂してしまったり、長期間揉めていて協議の終わりが見えなかったりといった場合には調停に進んだ方がよいでしょう。
相続の話し合いは、落としどころが見えなくなってしまったり、意見が食いちがって感情的になってしまったり、ただただ相手を批判するとことが目的になってしまったりといったこともあります。
そうなってしまと当事者同士での話し合いでは協議がまとまらない可能性が高いですから、遺産分割調停の利用を検討してみましょう。
また、遺産分割協議に参加しない、協力的でない人がいる場合や、そもそも連絡がつかない場合も遺産分割協議を検討しましょう。
遺産分割は相続人全員が参加する必要があるからです。
「相続にかかわりたくない」「相続人の中に話し合いをしたくない人がいる」「自宅に住み続けたいから遺産分割をされると困る」といった理由で協議に参加しない人がいると、そもそも遺産分割協議が開始できずいつまでたっても遺産分割が実現できません。
調停を申し立てると裁判所から通知が送られます。
相続人からの呼び出しに応じなかった場合も、裁判所からの連絡には応じるかもしれません。
遺産分割調停は、平日の日中、10時~17時の間で行われます。
また、基本的に調停が1回で終わることはありません。
おおよそ月に1度くらいのペースで期日が決まり、協議が終わるまで続けられます。
調停が終わるまでの期間はまちまちですが、早いと3ヶ月程度で、長い場合には1年以上続くケースもあります。
実際、2019年度の司法統計によれば、1年以内に調停が終わったケースは8,649件であったのに対し、1年以上かかったケースは、4,091件です。
調停は裁判所を通じた手続きですが、その本質は話し合いです。
お互いの主張がすれ違う場合には長期に及ぶこともあるようです。
参考:第45表 遺産分割事件数―終局区分別審理期間及び実施期日回数別―全家庭裁判所|司法統計
遺産分割調停は家庭裁判所で行われます。
なお、調停を申し立てる裁判所は基本的に相手方の住所を管轄する裁判所(複数いる場合には1人の住所を管轄する裁判所)であると定められています。
ただし、当事者同士が合意した場合には住所地の管轄外での家庭裁判所で調停を開くことも可能です。
相手方の住所が遠方の場合には交通費等の費用が発生してしまいます。
どこの裁判所で行うかは十分に検討するようにしましょう。
なお、遠隔地に居住しているなどの相当の理由がある場合には、出頭せずにリモートという形も可能です。
事前に裁判所に相談するようにしてください。
調停当日は、指定された時刻までに待合室に入ります。
定刻になると調停委員が呼び出しに来ますので調停室に案内されます。
なお、調停では相続人同士で対立している可能性があることを考慮され、待合室は別々です。
基本的には、調停当日に顔を合わせることはありません。
調停室に入った後、第1回目は、調停委員から事実関係の聞き取りや相続人同士の争点について確認を行います。
入れ替わりで相手方が呼ばれ、事実や争点について調停員が確認をします。
1回目はこの程度で終了し、次回期日の調整をして終了です。
2回目以降は、前回の流れに準じて、調停委員が双方の主張を聞き取りながら妥協点を探り、どちらもが納得できるような落としどころを探します。
調停での内容に合意があれば、調停調書を作成し、調停は終了となります。
※調停の進め方は家庭裁判所ごとに異なる可能性があります。
これまで、遺産分割調停の概要について紹介してきました。
さらに理解を深めるために、ここでは遺産分割調停のメリット・デメリットについて確認しておきましょう。
遺産分割協議が長期にわたると、お互いが感情的になってしまうこともあります。
調停においては、調停委員が間に立って双方の意見を聞いてくれますので、相続人同士が顔を合わせることなく、冷静な対話が可能になります。
相続人同士の間に入る調停委員は、法律に基づいて話を進めます。
また、1つの調停には調停官として裁判官が必ずついてくれますので、法律的に妥当な分割が実現できる可能性が高まります。
特に相続人同士での協議の場合、間違った法律知識をもって協議に挑んでいる人がいるケースもあります。
調停ではそういったことがありませんから、法律的な知識が乏しいためにあなたが損をしてしまうといった事態を防げます。
調停委員は間を取り持つだけでなく、双方の意見を聞いたうえで新たな解決策を提案することもあります。
当事者同士では落としどころが見つからなかったとしても、新たな解決策を提案してもらえることで、早期に遺産分割を実現できる可能性が高まります。
すでにお伝えした通り、遺産分割調停が終わるまでは早くて3ヶ月程度かかってしまいます。
長い場合には3年以上かかることもあります。
調停が終わるまでの期間 | 件数 |
---|---|
1ヶ月以内 | 293件 |
3ヶ月以内 | 1,256件 |
6ヶ月以内 | 2,813件 |
1年以内 | 4,333件 |
2年以内 | 3,034件 |
3年以内 | 748件 |
3年を超える | 309件 |
参考:遺産分割事件数―終局区分別審理期間及び実施期日回数別―全家庭裁判所|司法統計
遺産分割調停をしたからといって、必ず早期に遺産分割が実現できるとも限りません。
経済的な理由によって早く遺産が欲しいという場合は、早期に遺産が受け取れるよう、相手方の主張に対して譲れる部分は素直に認めるという姿勢が重要なケースもあります。
調停はあくまで話し合いなので、解決するにはお互いに譲り合う姿勢も大切です。
調停では調停委員が相続人全員から意見を聞き、皆が納得する落としどころを探していきますので、あなたに有利な分割が必ず実現できるとは限りません。
調停に臨む前にはとして、自分の中で「譲れるもの」と「譲れないもの」の線引きや、欲しい遺産の優先順位を決めておくと良いでしょう。
調停は裁判所で行う手続きですが、裁判官や調停委員が分割の割合を決めて、相続人はそれに従うということはありません。
相続人間の合意を目指す話し合いの手続きです。
そのため、相続人全員が合意しない場合には審判という手続きに移行します。
審判では、遺産の総額や種類、そのたさまざまな事情を総合考慮して、裁判官が各相続人の取り分を決めることになります。
ここでは、遺産分割調停の大まかな流れと申立て手順を解説します。
相続では、まず相続人と相続財産を確定する必要があります。
相続人とは、被相続人と一定の関係があり、遺産を相続する権利を持っている人のことです。
遺言書によって財産を贈与された人のうち「遺産の○○分の1」というように、取得する財産の内訳を指定されていない人(包括受遺者)も含めて考えます。
相続財産とは、被相続人が死亡した時点で保有していた財産のことです。
金銭や不動産などのプラスの財産のほか、借金・ローンや未払い医療費などのマイナスの財産も含まれるため、入念に調査しなければいけません。
遺言書(いごんしょ・ゆいごんしょ)とは、民法の定めに則って作成された法律文書で、被相続人の死後の財産処分等の意思を示した書面のことです。
単なるメッセージにすぎない遺書とは異なり、遺言書がある場合は原則として遺言書通りに遺産分割を進めます。
そのため、なるべく初期の段階で遺言書の有無を確認した方が良いでしょう。
①・②が終わった後は、いよいよ遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは「誰がどの財産をどの程度相続するか」という話し合いのことで、遺言書がある場合は記載内容をもとに、無い場合は当事者の希望に沿って話し合いを進めます。
遺産分割協議がまとまれば遺産分割協議書を作成したのち、それぞれが財産を取得して相続手続きは終了です。
しかし、どうしても当事者同士の話し合いで決着がつかない場合には、家庭裁判所において、遺産分割調停を行い、具体的な財産の取り分を確定させます。
遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停または遺産分割審判を申し立てます。
なお遺産分割事件については、ほかの家事事件のように調停前置主義(「裁判前に調停しなければならない」という原則)は採用されていません。
しかし、実際のところは裁判所の判断で遺産分割調停から始めるケースが多く、まずは遺産分割調停を申し立てるのが通常です。
遺産分割調停は裁判所で行う遺産分割の話し合いであるため、はじめに管轄裁判所へ調停申立書(ダウンロードはこちら)を提出し、手数料を納付して手続きを行います。
遺産分割調停申立書については、以下の通り裁判所HPに記載例が載っています。記載例を参考に作成しましょう。
引用元:記入例(遺産分割)|裁判所
調停申立書が受理されて相手方に送達されると、裁判所から調停を行う日(期日)が指定されます。
調停当日は裁判所に出頭して、調停委員に自分の主張を伝えます。
調停では、申立人と他の相続人は控室が分かれており、順番に調停室へ入室して話をします。
そのため、当事者同士が顔を合わせることはほとんどありません。
ただし、最初と最後だけは当事者全員に手続き内容などを説明しなければならないため、顔を合わせることもあります。
遺産分割調停では、何回かの期日を積み重ねて調停の成否を探ります。
調停がまとまれば調停調書が作成されたのち、それぞれが財産を取得して相続手続きは終了です。
調停調書は「債務名義」として、強制執行を行う効力を持っています。
調停が成立すると調停調書通りの遺産分割をせざるを得ませんので、遺産分割に納得できない場合はその都度きちんと意見を伝えることが大切です。
調停がまとまらない場合(不調と呼びます)には、調停を取り下げない限り自動的に審判手続きが開始され、当事者の主張立証が行われます。
「相続人が誰か確定していない」「遺産がどれだけあるかわからない」などのように、遺産分割の前提となる事実について相続人同士の話し合いで解決できないこともあるでしょう。
そういった場合には、事実について確定させるために、遺産分割調停の前に訴訟を行う必要があります。
ここでは、どういった訴訟があるかについて代表的なものをいくつか紹介します。
なお、遺産分割調停の前に訴訟をすべきかどうかは十分に考慮する必要があります。
調停によって、前提となる事実が一緒に解決できることもありますし、訴訟は年単位で時間がかかることもあるからです。
相続人同士で感情的な対立が激しく、どうしても話し合いで前提となる事実が解決できそうにない場合には訴訟をすべきです。
一方、そこまで対立が激しくなく、訴訟しても結論がある程度見えているという場合には調停を選ぶ方法もあります。
とりあえず調停をすべきか、それとも訴訟をすべきかは慎重な判断が必要となります。
どうすべきかについてご自身での判断が難しい場合には、弁護士に相談するようにしてください。
遺産分割協議を行うためには、相続人全員が参加している必要があります。
このとき誰が相続人か確定していないこともあるでしょう。
そういった場合には、「相続人の地位不存在確認訴訟」を行います。
相続人の範囲が問題となるのは、相続欠格事由に該当しているケースや、養子縁組が無効となるケース、婚姻が無効となるケースなどが挙げられます。
遺産分割は相続財産が確定していなければ開始できません。
そのため、遺産の範囲について問題がある場合には、「遺産確認訴訟」を行います。
具体的には、被相続人名義の口座ではあるものの、妻が自分の貯蓄のために利用していたケース、被相続人が住んでいた家で、名義人は相続人の長男であるケースなどが挙げられます。
遺言書が有効である場合には、原則としてその内容に従った分割を実現します。
一方で無効である場合には、法定相続分に従うか、遺産分割協議を行わなければなりません。
つまり、遺言書が有効か無効かによって相続の手続きが全く異なってきます。
有効性に疑いがある場合には、遺産分割を始める前に有効か無効かについて明らかする必要があるのです。
遺言書の有効性について争われる具体的なケースとして次のようなものがあります。
被相続人の生前に、相続人が遺産の使いこみなどをしていた場合には「不当利益返還請求訴訟」を行います。
使い込みによって遺産の総額が不当に減っていた場合には、適切な遺産分割が実現できないからです。
具体的には、被相続人の口座を管理するといっていた長男が、実は自分の生活費や趣味のために口座の預金を利用していたといったケースが当てはまります。
ここでは、遺産分割調停を申し立てる際の必要書類と費用を解説します
遺産分割調停を申し立てる際は、被相続人1人につき1,200円分の収入印紙と当事者の数に応じた連絡用の郵便切手代が必要です。
なお、連絡用の郵便切手代は申し立てる裁判所によって金額や切手の組み合わせが異なります。
申し立てる際は、管轄裁判所へ確認しましょう。
納付方法については、現金納付が可能な裁判所もありますが、所定の額・枚数に応じた切手の納付が必要な裁判所もあります。
詳しくは管轄裁判所に確認してください。
ちなみに郵便切手代としては、当事者1人あたり800円分程度、それに加えて850円分程度の切手が別途必要になることが多いようです。
遺産分割調停で必要な書類は、ケースによって異なります。
以下の書類については、どのようなケースでも必要です。
※戸籍謄本については除籍謄本や改製原戸籍謄本でも可能です。
相続人に父母(直系尊属)が含まれる・配偶者と直系尊属または直系尊属のみの場合、以下の書類が必要です。
相続人が配偶者のみ・兄弟姉妹(代襲相続による甥姪)が含まれる場合、以下の書類が必要です。
上記のほか、事案によっては裁判所が以下の書類の提出を求めてくる場合もあります。
遺産分割調停は、各相続人の主張内容などを踏まえて調停委員等が分割内容を提案したり、当事者の意見をすり合わせたりして解決を図る手続きであり、「こうすれば必ず有利になる」という方法はないというのが実情です。
もっとも、調停に関わる者は調停委員等も含めて人間であるため、少しの心がけ次第で有利に進められる可能性はあります。
ここでは、遺産分割調停を有利に進めるためのポイントを解説します。
調停委員は紛争トラブルにおける豊富な知識を持っている、現代社会で様々な経験をしてきたといった要件を満たした人が任命されます。
また、調停委員は公平な立場で互いの話を聞くように努めなければなりません。
しかし、調停委員も人であることに変わりはありません。
調停にのぞむ態度によって、どちらか一方に肩入れしてしまうということもあります。
そのため、調停委員の心証については十分気を付けておいたほうがよいでしょう。
実際、調停委員を味方につけておいた方が、調停が有利に進むといったことも現実的にあります。
感情的になったりただただ自分の主張を強く発言するといったことはできるだけ控え、調停委員の話を真摯に聞いたり、冷静に調停にのぞむなど、調停委員の心証が良くなるような態度を意識するようにしてください。
遺産分割の問題は、法律とは切っても切れない関係です。
「私はこのようにしたい」と考えていても、法律に基づいていないのであれば、調停委員が納得することはありません。
調停という話し合いの場であっても、あなたが望む分割を実現するためには、法律に則った主張・立証をする必要があります。
そのため、法定相続分や寄与分、特別受益などの内容について、事前に正しい知識を学んでおくようにしてください、
遺産分割調停では、相続に関することで知っていることを曖昧にしたり、隠したり騙したりするのはやめましょう。
あなたに不利な事実を隠していたとしても、調停では明らかになることが少なくありません。
そうなってしまうと、調停委員の心証が悪くなるだけでなく、相手方からの信用もなくなり、より対立が激しくなってしまうことも考えられます。
たとえ相続において不利益な情報であっても、それが既に協議の場に現れているのであれば、誤魔化したり言い訳したりせずに正直に事実を話した方が良い結果になることもあります。
「裁判官や調停委員などの他人にお金の絡む希望を伝えるのは恥ずかしい」などと感じるのは仕方ないかもしれません。
しかし、自分の考えや希望を伝えることで調停の解決案を探ることができ結果的には当事者全員のためになりますから、変に遠慮したりせずに自分の考えを伝えましょう。
遺産分割調停では、基本的に誰がどの遺産をどれだけもらうかを決めるのが目的なので「どうしてもこの○○は欲しい」「最低でも○○円は分けてほしい」などの簡単な要望でも構いませんから、できるだけ意見を述べることです。
調停中には調停委員等から質問されることもありますが、答えにくい場合は回答を保留しても問題ありません。
焦って答えずに「次回に回答を持ち越す」と伝えるのもおすすめです。
弁護士に依頼すれば、あなたに代わって希望を主張してもらえます。
また、調停では主張の根拠となる資料や参考書類を提出する必要がありますが、これらの準備も依頼可能です。
そして、調停は話し合いの場ですが、適切に主張・立証する必要があります。
弁護士は調停委員に適切に主張・立証するノウハウを豊富にもっていますので、あなた自身で臨むよりも調停を有利に進められる可能性が高まります。
遺産分割調停はあなた自身で取り組むこともできますが、有利に進めたいのであれば弁護士に相談することが有効です。
ここでは、その理由について解説しておきましょう。
「弁護士に依頼をする」のは、通常の生活でたびたびあることではないため、少し気が引けてしまう人もいるかもしれません。
しかし、調停においては、ほとんどの人が弁護士に依頼しています。
実際、2019年度の調停(※)では、全1万2,785件のうち、弁護士が関与したものは1万80件、関与していないものが2,705件と、弁護士が関与するものは全体の79%に登ります。
費用等は発生しますが、有利な遺産分割を実現できれば、十分なメリットがあるといえます。
※参考:第47表 遺産分割事件数―終局区分別代理人弁護士の関与の有無別―全家庭裁判所|司法統計
これだけ多くの調停で弁護士に依頼しているのは、それだけ大きなメリットがあるからです。
具体的には次のようなものが挙げられます。
調停を申立てるには、申請書類を揃えるなどの手続きが必要になります。
戸籍謄本や住民票などの書類を集める必要がありますし、申立書も記載しなければなりません。
これら手続きは煩雑なこともあり、ご自身でやろうとすると時間も必要で手間もかかります。
弁護士に依頼すれば必要な手続きはすべて任せられますので、あなたが手を煩わせる必要はありません。
弁護士は法律に関する深い専門的な知識をもっていますから、調停においては法律的な観点に基づいて主張・立証を行ってくれます。
あなた自身で深く法律について理解していなくても、弁護士に依頼すれば正しい根拠をもって主張してもらえます。
これによって、相手方が納得してくれる可能性も高まりますし、調停委員の理解も得られやすい傾向にあります。
その結果、あなたに有利なように調停がまとまる可能性が高まるのです。
調停においては、できるだけ正確に調停委員にあなたの意見を主張しなければなりません。
また、調停においてはあなたの意見を通すための根拠となる資料についても準備する必要があります。
弁護士はこれまでの経験から、どのように伝えれば調停委員が納得してくれるように主張すればよいかを理解しています。
また、主張を通すための最適な資料についても準備してもらえます。
このことから、弁護士に依頼するとあなたの主張が通る可能性が高まるといえるのです。
すでにお伝えした通り、遺産分割調停は平日の日中、具体的には午前10時~午後5時の間で行われます。
仕事等でどうしても調停に出席できないという人もいるでしょう。
弁護士はあなたに代わって調停に参加することが可能です。
調停のために仕事を休むなど、ご自身の予定を調整する必要はなくなります。
最後に、遺産分割調停を申し立てる際に押さえておきたい豆知識を解説します。
有効に成立した遺言書があれば遺言書通りの遺産分割を行うのが一般的ですが、相続人全員の合意があれば遺言書と異なる内容での遺産分割協議も可能です。
そのため、必ずしも遺言書の効力が絶対とは言い切れません。
しかし、遺言書によって子の認知や相続人廃除が行われた場合には絶対の効力があり、納得できない場合には遺言書の有効性について裁判で争うほかありません。
相続が始まると、はじめに被相続人の財産の有無や内訳を確認しなければいけません。
その際、「遺産分割の対象になる財産」と「相続税の対象となる財産」は若干異なりますので、両者を混同しないように注意しましょう。
項目 | 遺産分割の対象可否 | 相続税の対象可否 |
---|---|---|
家や土地などの不動産 | ○ | ○ |
銀行などの預貯金 | ○ | ○ |
株などの有価証券 | ○ | ○ |
自動車や船舶 | ○ | ○ |
貴金属や美術品 | ○ | ○ |
借金・ローン | ○ | ○ |
葬儀費用 | ○ | ○ |
死亡保険金 | × | ○ |
死亡退職金など | × | ○ |
遺族年金など | × | × |
相続開始前の贈与 | 一定の生前贈与を遺産分割時に考慮 | 相続開始前3年以内の贈与は相続税算定の際に考慮 |
相続人全員が被相続人と同居しており、お互いが相続人であると認識しているケースであっても、相続人調査の作業を怠ってはいけません。
再婚家庭では前婚の子も相続に関わる可能性がありますし、生涯独身だった被相続人に隠し子がいる可能性もゼロではありません。
また、相続では相続人が多いほど揉めやすい傾向があります。
もし相続に興味がなさそうな相続人がいたり、事業継続などの理由があって誰かに遺産を集中させたりしたい場合は、相続放棄を活用して相続人を減らすのも選択肢の一つです。
遺産分割を行う期間については制限がないため、極論ですが相続から10年以上遺産分割をしなくてもペナルティはありません。
しかし相続税の場合、被相続人の死亡日(相続開始日)の翌日から10ヶ月以内に申告・納税を済ませなければ、各種控除や特例などの制度を利用できません。
さらに、最悪の場合ペナルティとして追徴税(延滞税や加算税)などが科される恐れもあります。
そもそも相続税は必ず発生するものではなく、基礎控除額の範囲に収まる財産しか残らなければ申告義務もありません。
ただし、相続税が発生するかどうかは生前贈与なども含めた相続財産の総額で決まるため、調停手続きに移行する前に被相続人の財産や相続人への生前贈与のほか、債務などもきちんと把握する必要があります。
なお、相続税の控除や特例などは自分から申告しなければ適用されないものが多いため、忘れずに確認しておくことも必要です。
相続税申告の際、まだ遺産分割の内容が決まっていなければ「各相続人が法定相続分で相続した」と仮定して申告・納税を行います。
その後3年以内に修正申告を行うことで、追徴税などのペナルティは科されません。
ただし小規模宅地等の特例など、申告時点で遺産分割の内容が決まっていないと利用できない特例もあります。
そのような場合には、特例などの適用を受けたい財産を優先的に分割しておいて、残った財産については後々納得行くまで話し合うという方法が有効でしょう。
遺産分割調停は、当事者間で協議ができない場合に、家庭裁判所で調停委員に間を取り持ってもらいながら合意を目指す手続きです。
平日の日中に行われ、月1回程度のペースで合意が得られるまで続きます。
調停の本質は話し合いですが、有利に進めるためにはポイントがあります。
この記事で紹介した内容を参考に、事前に準備をするようにしておきましょう。
なお、遺産分割調停は、申立て自体はさほど難しくないものの、裁判官や調停委員を納得させるには法律的な根拠に基づく論理的な主張が必要不可欠です。
また、調停が不調に終わって審判に移行した場合には、より法律的な主張立証が大事になります。
1人で臨むのが不安な方は、弁護士に一度相談しましょう。
遺産分割が得意な弁護士を探す 初回の面談相談無料・休日/夜間対応可能の事務所も多数掲載 |
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北海道・東北 |
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関東 |
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北陸・甲信越 |
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東海 |
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限定承認すれば遺産相続後に借金が発覚してもお金の支払いをする必要はありません。ここでは、限定承認とはどんなものか・相続放棄との違い・メリット・費用などを丁寧にわ...
この記事では、遺産相続の際、預貯金に使途不明金が発生する4つのパターンと、使い込まれた遺産を取り戻せる場合の方法について、解説します。使途不明金が発生している、...
【弁護士監修】海外資産が絡む国際相続の手続きや相続税の申告方法などを徹底解説。被相続人が海外資産を持っていた場合、相続手続きはどのように進めれば良いのか。海外に...
準確定申告の手続きをする必要がある人と不要な人がおり、この記事では、準確定申告が不要な方はどんな方なのか説明します。また、どんな方に準確定申告の必要があり、用意...
財産目録とは、何が相続財産となのか一覧にした表のことを言い、プラスの財産はもちろん、借金、負債といったマイナス財産などもすべて記入しておくことで、相続財産の有無...
相続人代表者指定届が市役所から届いた場合、どうすればよいのでしょうか。この記事では、相続人代表者指定届がどんな書類で、書き方や疑問点について解説します。
祭祀財産とは、先祖や神様をまつるために必要な財産のことで、一族の系譜や位牌、墓地などが当てはまります。祭祀財産を相続する際は、どのように承継者を決めるのか、承継...
相続財産(そうぞくざいさん)とは、相続によって相続人に引き継がれることになる被相続人の権利義務のことをいい、プラスの財産とマイナスの財産のすべてが相続財産の対象...
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