遺産相続の問題解決を弁護士に依頼したい場合、気になるのは「弁護士費用がいくらかかるのか?」、その相場感だと思います。
基本的に弁護士費用は「相談料」「着手金」「報酬金」の3つで成り立っていますが、弁護士にどのような解決を望むかで費用は変動するので、厳密にいうと相場というものはありません。
以前は「旧報酬規程」という基準によって、弁護士費用は一律で決まっていましたが、現在は撤廃され、弁護士費用は自由に決めてよいことになっています。たとえば、相談料は1時間10,000円程度としている事務所もありますが、中には「相談料無料」としている事務所もあり、弁護士への相談ハードルは、グッと下がったといえます。
しかし弁護士費用と聞くと、「料金が高そう」というイメージはぬぐい切れないでしょう。できるなら事前に弁護士の費用相場を把握しておきたいですよね。
そこで本記事では、以下のような疑問に詳しく答えていくので、ぜひ参考にしてください。
- 相続問題の解決を依頼した場合の弁護士費用
- ケース別で弁護士費用は変わるのか?
- 弁護士費用を抑える方法はあるのか?
遺産相続の弁護士費用が心配なあなたへ
遺産相続を弁護士に依頼したくても「弁護士=高い」というイメージがあり、不安になってしまいますよね。
結論からいうと、遺産相続の弁護士費用は、事務所によって異なります。そのため、事前に弁護士に相談することで、どれくらいの費用がかかるかを聞いておくのがおすすめです。
そのほか、弁護士へ相談することで以下のようなメリットを得ることができます。
- 遺産相続のさまざまな相談に乗ってもらえる
- 遺産相続の流れや手続きについて教えてもらえる
- 依頼すれば相続人間の交渉を代理でおこなってもらえる
- 遺産相続の流れや手続きについて教えてもらえる
当サイトでは、相続問題を得意とする弁護士を地域別で検索することができます。 無料相談はもちろん、電話で相談が可能な弁護士も多数掲載していますので、まずはお気軽にご相談ください。
「旧報酬規程」とは、相続問題を弁護士に依頼した際の相場を規程したものですが、現在は公式には廃止され、弁護士費用は、各弁護士事務所の弁護士が自由に決定してよいことになっています。
つまり、現在弁護士費用に相場というものは実質的には存在しないといえます。
しかし、昔の報酬規定をそのまま使用している弁護士も多いため、参考とすることはできます。「旧報酬規程」は下記の表のような費用体系になっています。
「遺産分割請求事件は、対象となる相続分の時価相当額。 ただし、分割の対象となる財産の範囲及び相続分について争いのない部分については、 その相続分の時価相当額の3分の1の額」
弁護士費用の相場
表:旧弁護士規程の弁護士費用相場
法律相談
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初回法律相談料
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一般法律相談料
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書面による鑑定
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30 分ごとに 5000 円から1 万円の範囲内の一定額
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30 分ごとに 5000 円以上、2 万 5000 円以下
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複雑・特殊でないときは、10 万円から 30 万円の範囲内の額
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着手金・報酬金
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経済的利益の額
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着手金
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報酬金
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300万円以下の部分
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8%
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16%
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300万円を超え3,000万円以下の部分
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5%+9 万円
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10%+18 万円
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3,000万円を超え3億円以下の部分
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3%+69 万円
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6%+138 万円
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3億円を超え部分
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2%+369 万円
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4%+738 万円
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【参考】(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
相談料|初回無料の事務所もある
相談料は、弁護士に相談をした際に発生する費用です。30分5,000円程度が相場といってよいかもしれませんが、最近では「初回相談を無料」にしている法律事務所もあります。
電話やメールで相談できるという利便性の高さから、弁護士という敷居の高い存在にも気軽に相談できるようになりましたが、あなたの詳細を知ってもらい、最適な解決策を見つけるには、一度は面談でしっかりと相談するのがおすすめです。
無料相談と有料相談で差がある?
結論からいうと、無料相談と有料相談に大きな差はないといってよいでしょう。有料相談のほうが丁寧であったり、無料だから素っ気なく扱われたりといったことはありません。
ただ、弁護士も人間なので、正式に依頼するなら相性は非常に大切です。
たとえば、「あなたが裁判で勝つのは無理です」とはっきり言ってくれる弁護士を「頼りない」と感じるか、「絶対勝てます」と言ってくれる弁護士を心強いと感じるかはあなた次第でしょう。
問題解決よりも受任するために必死になっている弁護士もいます。依頼人の問題解決のために、料金がかかることや難しいものは難しいとはっきり言ってくれる弁護士は良い弁護士だと考えられます。
着手金|20万円以上かかるケースもある
着手金は、実際に弁護士が案件の解決に動き出すタイミングで支払うことになる費用のことです。着手金は基本的には返金されません。
金額は相続財産によって変動するため、相場は20万〜200万円以上と幅があります。
報酬金|回収額の数%
報酬金は相続事件の解決後に発生する費用のことで、「回収金額の何%」のような形で発生します。
つまり、全面敗訴した場合などは発生しません。
その他の弁護士費用
実費
依頼者が負担する交通費や郵便代、裁判所への印紙代などが該当します。
日当
弁護士が遠方へ出張した際に生じる費用のこと。
手数料
手数料は、書面を1通作成したり調査をしたりといった、事件に関する単発の仕事に関して生じる費用です。
また、郵便料金や戸籍等の資料取得費用、申し立ての際の印紙代、業務遂行にあたって必要な実費は、弁護士費用とは別途必要になるので注意が必要です。
表:弁護士費用以外にかかる諸費用
実費
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依頼者負担(例)交通費,郵便代,裁判印紙代など
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日当
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裁判所等への出頭・出張1回につき
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関東近県の場合には,30,000円(税別)
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その他の地域の場合には,50,000円(税別)
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強制執行をおこなう場合
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1回につき,100,000円(税別)
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遺産相続事件に弁護士が関わった場合、どのような項目の費用があるのか、確認しておきましょう。
相続人同士の争いが起きるきっかけともいえるのが遺産分割協議です。
ここでは、各相続人に対する示談交渉や調停代理人を弁護士に依頼する際の着手金と報酬金の費用相場について、旧弁護士会報酬規定を参考に試算してみましょう。
経済的利益の額が3,000万円の場合
下記では、被相続人が3,000万円の遺産を遺して死亡し、自分の相続分は2分の1と仮定した場合の弁護士費用を計算してみましょう。
着手金 |
3000万円 × 1/2 × 1/3 × 5% + 90,000円 = 34万円 |
報酬金 |
3000万円 × 1/2 × 1/3 × 10% + 180,000円 = 68万円 |
合計 |
着手金+報酬金 = 1,020,000円 |
経済的利益の額が5,000万円の場合
示談交渉や調停を弁護士に依頼した場合の弁護士費用は以下のとおりです。
- 着手金:146万円
- 報酬金:292万円
- 合計:438万円
ただし、法定相続分の5,000万円を超えておらず、金額について争いがない場合は「時価相当額の3分の1の額」を適用すると、5,000万円の3分の1の約1,667万円を経済的利益の額として弁護士費用を計算することとなります。
経済的利益の額を1,667万円とすると、着手金・報酬金は以下のとおりになります。
- 着手金:約62万円
- 報酬金:約123万円
- 合計:約185万円
「時価相当額の3分の1の額」を適応すると弁護士費用の合計は438万円の半分以下となり、経済的利益の額をどのように判断するかで、 弁護士費用が大きく違ってくることがわかります。
経済的利益の算出方法は個別の事務所で違う
旧報酬規程のものではありますが、弁護士費用の相場はほぼこの基準を目安に考えてよいでしょう。
とはいえ、上記はあくまで一例なので、単純に弁護士に遺産分割の代理交渉を依頼した場合でも、弁護士費用は相続人の個別案件によって変動してきます。
より正確な弁護士費用を知りたい場合は、弁護士への相談の際に聞いてみましょう。
遺言書の作成を弁護士に依頼した場合には、遺言書作成手数料がかかります。また、遺言書を「公正証書遺言」とする場合は、公証人の手数料が別途必要となります。
弁護士の遺言書作成手数料は10万〜20万円程度とされることが多くなっていますが、遺言対象財産の金額に基づいて計算される場合もあります。
遺言執行を弁護士に依頼した場合の弁護士費用は、相続財産の総額や相続人の数にもよるので一概にはいえませんが。旧弁護士会報酬規程によれば、下表の基準で算出されることになっています。
旧弁護士会報酬規程(遺言執行の場合) 経済的利益の額 費用 300万円以下の場合 30万円 300万円を超え3000万円以下の場合 2%+24万円 3000万円を超え3億円以下の場合 1%+54万円 3億円を超える場合 0.5%+204万円 特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と受遺者との協議により定める額 遺言執行に裁判手続を要する場合 遺言執行手数料とは別に裁判手続きに要する弁護士報酬を請求できる
【参考】(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
一般的には、申立手数料は10万円程度とされることが多いようです。
相続放棄を弁護士に依頼するメリット
相続放棄は相続が始まってから3ヵ月以内という限定された期間内に、必要書類を揃えて裁判所への申し立てが必要です。相続放棄が得意な弁護士に依頼することでスムーズな手続きをおこなうことができます。
相続放棄の主な目的は、被相続人の負債から逃れたり、特定の誰かに遺産を集中させたりしたい場合ですが、相続放棄を弁護士に依頼することで、債権者からの支払い催促や問い合わせ、請求対応も代理してもらえます。

相続放棄が得意な弁護士を都道府県から探す
遺留分減殺請求の意思表示のみ(内容証明郵便の送付のみ)であれば3~5万円程度とされることが一般的です。
遺留分について代理交渉等を依頼する場合にかかる弁護士費用は以下のとおりです。
遺留分減殺請求費用の計算例 |
- 被相続人が8,000万円の遺産を遺して死亡
- 全財産を他の相続人に相続させる旨の遺言があった
- 自分の遺留分割合は8分の1だった場合・・・
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着手金
8,000万円 × 1/8 × 5% + 9万円 = 590,000円
報酬金
8,000万円 × 1/8 × 10% + 18万円 = 1,180,000円
合計
着手金+報酬金 = 1,770,000円
※法改正(2019年7月1日施行)により、遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求」と呼ばれるようになりました。

遺留分が得意な弁護士を都道府県から探す
おおよその相場が把握できたところで、一番気になるのが、弁護士費用を安く抑える方法はないのかということですね。ここでは、できるだけ弁護士費用を安くする方法を紹介します。
着手金などの分割払いを相談する
旧弁護士費用規程が廃止され、費用体系が自由に設定できるようになった、現在は「無料相談」「無料電話相談」などを受け付けている弁護士事務所もあります。(【参考】弁護士に無料法律相談をする際に知っておきたい5つのこと)
こういった取り組みのあとから、着手金や報酬費用を分割で支払うことのできる事務所もあるので、相談の際に分割払いに応じてもらえるか聞いてみるとよいでしょう。
事前にトラブルの要点をまとめておく
どんなに優秀な弁護士でも、要点がわからなければ調査に時間がかかりるので、その分費用もかさんでいきます。
また、「ここまではしてほしいけど、これ以上は必要ない」などの線引きがしっかりしていないと、実は必要なかった費用まで支払う可能性もあるので、あなたの希望するゴールを明確化しておくことが重要です。
複数事務所で弁護士費用を比較するのも有効
相談を利用しても、最終的に費用面で折り合わないことも考えて同時に複数事務所に相談するとよいでしょう。
また、相談内容をひととおり伝えたあと、こちらが出せる金額を先に提示することで予算内で提案してくれる可能性もあります。
ある程度の証拠を集めておく
証拠は多ければ多いほど、問題解決の大きな武器になります。証拠が揃っていることで、請求できる金額が上がったり、余計な出費を抑えたりすることもできます。証拠というと大げさですが、遺言書ならコピーを持参することで、遺言内容の正当性を判断してくれます。
また、遺留分のトラブルであれば、「だれが相続人で」「だれに侵害されているのか」がわかるだけでも、手間と費用は少なく抑えられる可能性があります。
法テラスの民事法律扶助制度を利用する
弁護士費用を抑えるために法テラスの「民事法律扶助制度」を利用することも検討しましょう。条件付きではありますが、一時的に弁護士費用を立て替えてくれる可能性があります。
民事法律扶助業務とは、経済的に余裕がない方が法的トラブルにあったときに、無料で法律相談をおこない(「法律相談援助」)、弁護士・司法書士の費用の立替えをおこなう(「代理援助」「書類作成援助」)業務です。(総合法律支援法第30条第1項2号)
引用元:民事法律扶助業務
【関連記事】法テラスは本当に無料?無料相談できる条件を解説
弁護士費用は誰が払う?
まれに、「弁護士費用は誰が支払いますか?」という質問を見かけますが、結論からいうと、「弁護士に依頼した人が費用を支払うのが原則」です。
複数の相続人(たとえば兄弟間)の総意で弁護士に依頼したとしても、長男が弁護士へ依頼し、話し合いのもと遺産分割をおこなったのであれば、弁護士費用を支払うのは「長男」で、そのほかの相続人が弁護士費用を支払う義務はありません。
以前は「裁判等で敗訴した側に弁護士費用を請求できる」ということもあったようですが、現在そういった請求はありません。
複数人で揉めている場合に自分が依頼するのは不公平のように聞こえますが「弁護士は依頼者の利益が最大限になるよう活動してくれる」ので、自身の利益を確保したいのであれば、必要に応じて自ら弁護士に相談・依頼するメリットは大きいといえます。
遺産分割の交渉などを代理人としておこなってくれる弁護士ですが、そもそも相続問題の解決を弁護士に依頼することにどのようなメリットがあるのか、ここで確認していきましょう。
遺産相続には、さまざまな法的問題が関わります。司法書士や行政書士なども相続の専門家といえますが、弁護士でないと対応できない分野も多くあるのが現状です。
司法書士や行政書士は、相続人同士の話し合いで決まった内容を書面に起こすことはできますが、遺産分割調停や訴訟を起こすことや、代理人として交渉の場に立つことはできないのです。
弁護士が対応可能な業務と行政書士などが対応できないこと
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弁護士
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司法書士
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行政書士
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税理士
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相続人調査
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遺産調査
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相続人との交渉
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遺産分割調停の代理
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相続登記
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遺言書の作成
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相続人感のトラブル解決
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(弁護士の職務)
第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務をおこなうことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務をおこなうことができる。
引用元:弁護士法第3条
相続財産の調査や書類作成といった面倒な作業や、ほかの相続人との交渉まで任せられるのは弁護士しかいません。こうした作業や交渉を自分でおこなうストレスを軽減できるでしょう。
弁護士は、依頼した相続人が置かれた状況を法律的な解釈をもってサポートしてくれます。る常に弁護士からアドバイスを受けたり、相談したりしながら手続きを進められるので、不安な交渉や手続きの際も、とても心強いでしょう。
依頼主の希望内容をどうすれば最大限実現できるのか、弁護士が交渉方法や戦略立案をおこないます。
遺産相続では思いもしない場面でトラブルに発展する可能性もあります。さまざまな相続トラブルを解決してきた弁護士なら、その経験を踏まえて遺産分割後に再度トラブルが発生するリスクを極力減らすためのアドバイスができます。
相続トラブルの解決を弁護士に依頼する際、最も気になるのは弁護士費用ですが、一方で、相続問題を得意とする弁護士に依頼することも大切です。
費用がどれくらいかかるのか、信頼して依頼できる弁護士かどうかを確かめるためにも、まずは相談してみるとよいでしょう。
遺産相続の弁護士費用が心配なあなたへ
遺産相続を弁護士に依頼したくても「弁護士=高い」というイメージがあり、不安になってしまいますよね。
結論からいうと、遺産相続の弁護士費用は、事務所によって異なります。そのため、事前に弁護士に相談することで、どれくらいの費用がかかるかを聞いておくのがおすすめです。
そのほか、弁護士へ相談することで以下のようなメリットを得ることができます。
- 遺産相続のさまざまな相談に乗ってもらえる
- 遺産相続の流れや手続きについて教えてもらえる
- 依頼すれば相続人間の交渉を代理でおこなってもらえる
- 遺産相続の流れや手続きについて教えてもらえる
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