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再転相続とは?相続放棄する際の注意点や数次相続との違いを解説

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再転相続とは、相続人が熟慮期間中に相続を承認するか相続放棄するか決定する前に死亡してしまい、新たに相続が発生した状態のことを指します。

たとえば「祖母が亡くなって母親が相続人となり、母親が相続の承認・放棄をする前に亡くなって子どもが相続することになった」というようなケースが該当します。

再転相続の場合、通常の相続よりも相続関係などが複雑で、トラブルに発展することもあります。

適切に相続手続きを済ませるためにも本記事でポイントを押さえておき、もし自力での対応が難しい場合は速やかに弁護士などに相談することをおすすめします。

本記事では、再転相続の特徴や、代襲相続・数次相続との違い、遺産相続や相続放棄する際の注意点などを解説します。

再転相続が起きてしまった方へ

再転相続では、2つの相続についてそれぞれ対処しなければいけません。

通常の相続よりも複雑で手続きが難航することもあり、適切かつスムーズに相続を済ませるためにも弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は相続手続きの大部分に対応しており、依頼者の代理人として必要な手続きを進めてくれるだけでなく、相続トラブルの解決なども依頼できます。

初回相談無料の法律事務所も多くあるので、まずは気軽に相談ください。

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再転相続とは、一次相続の熟慮期間中に法定相続人も亡くなって新たに相続が発生した状態のこと

再転相続とは、一次相続の法定相続人が熟慮期間中に相続の承認・放棄をする前に亡くなり、新たに相続が発生した状態のことを指します。

再転相続では、二次相続での法定相続人が再転相続人となり、一次相続と二次相続の両方の相続人となります。

再転相続は相続の中でも比較的珍しいケースで、初めて聞く用語ばかりでよくわからないという方も多いでしょう。

まずは、法定相続人・熟慮期間・一次相続・二次相続・再転相続人などの用語について解説します。

法定相続人とは

法定相続人

法定相続人とは、民法で定められた相続権を有している人のことです。

上図のとおり、被相続人の配偶者は常に法定相続人になり、被相続人の血族相続人については優先順位が定められています。

相続では、原則として「被相続人の配偶者」と「優先順位が一番高いグループの血族相続人」が法定相続人となります。

熟慮期間とは

熟慮期間とは、相続人が遺産を引き継ぐか放棄するかを決める期間のことです。

具体的には「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内」に決めなければいけません(民法915条1項)。

なお、相続方法は以下の3種類あります。

  • 単純承認:被相続人の遺産を全て引き継ぐ相続方法
  • 限定承認:被相続人のプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産も引き継ぐ相続方法
  • 相続放棄:被相続人の遺産を全て引き継がない相続方法

上記のうち、限定承認や相続放棄を選択する場合、家庭裁判所での手続きが必要です。

家庭裁判所での手続きをしないまま熟慮期間を過ぎてしまった場合は、単純承認したものとみなされて相続手続きが進行します。

一次相続・二次相続とは

一次相続・二次相続とは、それぞれ以下のことを指します。

  • 一次相続:最初に起きた相続のこと
  • 二次相続:次に起きた相続のこと

たとえば「祖母が亡くなって母親が相続人となり、母親が相続の承認・放棄をする前に亡くなって子どもが相続することになった」というケースでは、祖母の相続が一次相続、母親の相続が二次相続となります。

再転相続人とは

再転相続人とは、再転相続によって一次相続の相続人の権利も引き継ぎ、一次相続と二次相続の両方の権利を持つ人のことを指します。

具体的には、二次相続での法定相続人が再転相続人となります。

「一次相続・二次相続とは」で挙げた例の場合、子どもが再転相続人となり、祖母と母親の両方の相続を受けることになります。

再転相続と混同されやすいものとして、代襲相続・数次相続・相次相続・同時死亡などがあります。

ここでは、再転相続との違いについてそれぞれ解説します。

再転相続と代襲相続の違い

代襲相続とは、本来相続人になるはずの人が被相続人よりも先に亡くなっている場合や、相続欠格・相続廃除によって相続できない場合、その相続人の子どもや孫が代わりに相続することを指します。

たとえば「祖母が亡くなって相続が開始したが、すでに祖母よりも先に母親が亡くなっており、母親の代わりに子どもが相続する」というようなケースが該当します。

再転相続と代襲相続の主な違いとしては「死亡の順番」「発生原因」「必要な相続手続きの数」などがあり、まとめると以下のとおりです。

 

再転相続

代襲相続

死亡の順番

①祖母

②母親

③子ども

①母親

②祖母

③子ども

発生原因

熟慮期間中の相続人の死亡

相続人の死亡・相続欠格・相続人廃除など

必要な相続手続きの数

2つ(祖母から母親への相続、母親から子どもへの相続)

1つ(祖母から子どもへの相続)
※母親から子どもへの相続はすでに終了

再転相続と数次相続の違い

数次相続とは、一次相続の法定相続人が相続を承認し、遺産分割協議が終わる前に亡くなって新たに相続が発生することを指します。

たとえば「祖母が亡くなり、母親が相続を承認したものの遺産分割協議の途中で亡くなってしまった」というようなケースが該当します。

再転相続と数次相続の主な違いは、「一次相続での意思表示があるかないか」です。

再転相続の場合、一次相続の法定相続人は相続の承認や放棄を決定する前に亡くなっているため、再転相続人は一次相続を承認するか放棄するか選択できます。

一方、数次相続の場合、一次相続の法定相続人は相続を承認してから亡くなっているため、二次相続の法定相続人は一次相続を放棄することができません。

再転相続と相次相続の違い

相次相続とは、一次相続で相続税の申告や納付を済ませてから10年以内に二次相続が発生することを指します。

たとえば「祖母が亡くなって母親が相続人となり、相続税を申告・納付してから5年後に母親が亡くなった」というようなケースが該当します。

再転相続と相次相続の主な違いは、「二次相続の発生時期」です。

再転相続に関しては、一次相続の熟慮期間内に二次相続が発生し、一次相続と二次相続の両方の手続きを同時期に進めていくことになります。

一方、相次相続に関しては、一次相続の相続税の申告や納付を済ませてから10年以内に二次相続が発生するので、基本的に再転相続とは違って別々に対応することになります。

再転相続と同時死亡の場合の違い

民法では「同時死亡の推定」という制度が定められています(民法第32条の2)。

この制度は「事故や災害などで家族が複数人同時に亡くなり、明確な死亡のタイミングがわからない」というようなケースで適用され、「家族は同時に死亡したもの」という扱いになります。

同時死亡となった場合、再転相続との主な違いは「代襲相続が起きているかどうか」です。

たとえば「一次相続(祖母の相続)、二次相続(母親の相続)、再転相続人(子ども)」というような再転相続の場合、子どもは母親の法定相続人であり、祖母の法定相続人でもあります。

一方、「祖母と母親が同時に亡くなって子どもが相続する」というような同時死亡の場合、同時に亡くなった祖母と母親はお互いに法定相続人にはならず、母親の相続権は代襲相続によって子どもに引き継がれます。

したがって、子どもは母親の法定相続人であり、祖母の代襲相続人となります。

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再転相続で相続放棄する場合の注意点

ここでは、再転相続で相続放棄する場合の注意点について解説します。

「一次相続:承認、二次相続:放棄」はできない

再転相続人は、相続を承認するか放棄するか、それぞれ選ぶことができます。

ただし、「一次相続だけ承認し、二次相続は放棄する」という選択はできません。

たとえば「一次相続(祖母の相続)、二次相続(母親の相続)、再転相続人:子ども」という場合、子どもは祖母の相続を承認して母親の相続を放棄することはできません。

理由として、母親の相続を放棄することで、母親から引き継ぐ「祖母の遺産相続の権利」も一緒に放棄したことになるためです。

パターンごとの相続放棄の可否をまとめると以下のとおりです。

相続の承認・放棄の可否

一次相続

二次相続

できる

承認

承認

できる

放棄

放棄

できる

放棄

承認

できない

承認

放棄

一次相続の熟慮期間は、自分が再転相続人になったことを知ってから3ヵ月

再転相続での一次相続の熟慮期間は「二次相続が発生し、自分が再転相続人になったことを知ってから3ヵ月」です。

なお、かつては「二次相続の発生があったことを知ってから3ヵ月」とするのが通説でした。

ただしこの場合、再転相続人と一次相続の被相続人が疎遠なケースなどでは「一次相続の被相続人が亡くなったことや、自分が再転相続人になったことを知らないまま時間が過ぎてしまい、知ったときには一次相続の放棄ができなくなっていた」ということが起こり得ます。

実際にそのような状況で争われた判例があり、2019年8月9日に最高裁判所によって「一次相続の熟慮期間は『二次相続が発生し、自分が再転相続人になったことを知ってから3ヵ月』とすべき」という判断が下されています。

この最高裁判所の判決を踏まえて、現在では一次相続の熟慮期間は「二次相続が発生し、自分が再転相続人になったことを知ってから3ヵ月」となっています。

2019年8月9日の最高裁判所の判例については、以下で詳しく解説します。

再転相続の熟慮期間に関する最高裁判所の判例

このケースでは、まず借金を抱えたまま伯父が亡くなり、父親が相続人になったものの熟慮期間中に相続の承認・放棄をしないまま亡くなってしまい、娘が相続することになりました。

しかし、娘は伯父と疎遠だったため伯父の相続について知らず、父親の相続開始から3ヵ月以上経ってからようやく知ることになります。

すでにそのときには、伯父の借金に関して債権回収会社による回収手続きが進行しており、それに対して娘側が強制執行の中止や相続放棄を求めて裁判を起こしました。

債権回収会社は、すでに熟慮期間を過ぎていることを理由に相続放棄の無効を主張したものの、最高裁判所はこれまでの通説にとらわれず、最終的に「一次相続の熟慮期間は『二次相続が発生し、自分が再転相続人になったことを知ってから3ヵ月』とすべき」という判決が下されました。

【手続き別】再転相続で遺産相続する場合の注意点

再転相続の場合、通常の相続とは手続きが異なる部分もあります。

ここでは、再転相続で遺産相続する場合の注意点について、手続きごとに解説します。

遺産分割協議|一次相続と二次相続の法定相続人が同じ場合は1回でよい

再転相続では、一次相続と二次相続についてそれぞれ遺産分割協議をおこなうことになります。

ただし、一次相続と二次相続の相続人が同じ場合、1度にまとめておこなうことも可能です。

遺産分割協議書|一次相続と二次相続の法定相続人が同じ場合は1枚でよい

遺産分割協議書についても、基本的に一次相続と二次相続でそれぞれ作成することになります。

ただし、一次相続と二次相続の相続人が同じ場合、1枚にまとめることも可能です。

相続登記|中間相続人が一人しかいない場合は1回の登記申請でよい

不動産を相続する場合には、相続登記という名義変更の手続きが必要です。

再転相続では、一次相続と二次相続でそれぞれ相続登記をおこなうのが原則です。

ただし、以下のようなケースでは中間省略登記が認められ、登記申請が1回で済む可能性があります。

  • 中間の相続人が一人しかいないケース
    ※例:「両親や子どものいない夫婦で、夫が亡くなって妻が不動産の相続人となり、間もなく妻も亡くなって妻の兄が相続した」など
  • 中間の相続人が複数人いるものの、そのうち一人だけが相続するケース
    ※例:「父親・母親・長男・長女というケースで、父親が亡くなって母親が不動産の相続人となり、間もなく母親も亡くなって長男が不動産を相続した」など

特別受益|判断が難しいため専門家への相談がおすすめ

特別受益とは、相続人が複数いる状態で、一部の相続人だけが被相続人から生前贈与や遺贈などをされて受け取った特別な利益のことです。

被相続人からの生前贈与などが特別受益として認められると、原則としてその贈与分は相続財産に加算して遺産分割をおこなうことになります。

民法903条1項では、特別受益者になるのは共同相続人と定められており、再転相続人が一次相続の被相続人から生前贈与などを受けていた場合は、特別受益となる可能性があります。

たとえば「一次相続(祖母の相続)、二次相続(母親の相続)、再転相続人(子ども)」というケースで、祖母が子どもに生前贈与などをしていた場合、特別受益になる可能性があります。

ただし、実際に特別受益となるかどうかは個別の事情などによっても異なり、十分な相続知識がないと正確な判断は難しいため、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。

さいごに|再転相続が発生したら、まずは弁護士に相談を

再転相続の場合、通常の相続に比べて権利関係などが複雑になるため、ある程度の相続知識や相続手続きの経験がないと適切に対応できない可能性があります。

弁護士に相談すれば、どのように対応すればよいか的確にアドバイスしてくれますし、代理人として相続手続きを依頼することも可能です。

当サイト「ベンナビ相続」では、相続に強い全国の法律事務所を掲載しています。

回相談無料の法律事務所も多く掲載しているので、相続に関する疑問や不安がある方は一度相談してみることをおすすめします。

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この記事の監修者
葛南総合法律事務所
安藤 俊平 (千葉県弁護士会)
遺言書や相続人間のトラブル防止など相続開始前のご相談から、相続開始後のお悩みまで、税理士・司法書士等の他士業と連携のうえワンストップでご対応可能。LINEから予約可能で、相続放棄に特に注力しています。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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