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公開日:2020.11.17 

相続時精算課税制度のメリットと贈与税対策のポイント

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相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)とは、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の推定相続人である子または孫に対して財産を贈与した場合に、2,500万円の限度額に達するまで何度も控除が出来る贈与税の特例のことです。

この制度を選択する場合には、生前贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
 
なお、一度相続時精算課税制度を選択すると、その年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税」への変更ができないという制限があります。しかし税法上は大変便利な制度であることから、相続時精算課税制度を利用するケースも一定数あるようです。
 
この記事では、相続時精算課税制度を活用するメリットや注意点、活用した時の税金の計算方法などを解説します。

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度のメリットとしては以下のことが挙げられます。

財産移転がスムーズに進行できる

相続税の節税対策にはなりませんが、早期に多額の財産を移転することは出来ます。相続税がかからないとわかった段階で行うには大きな意味があります。

土地などの分けにくい財産でも生前に移転が可能

相続開始時の遺産分割協議が難しい財産も生前に移転することが出来ます。ただし贈与財産については、遺産分割の対象にはなりませんが特別受益には該当しますので、相続財産に含まれてしまう可能性があります。

【参考】特別受益の基礎知識|適用対象から計算方法、注意点まで

一度に2,500万円の贈与が可能

贈与しても2,500万円までは贈与税がかかりませんので、不動産などの大きな金額になりそうなものを贈与する際はメリットが大きいでしょう。また2,500万円を超えたとしても、税率は一律20%ですのでまだ良心的と言えます。

また贈与財産の種類、金額、贈与回数、年数などには制限がありません。

【参考】生前贈与で不動産を贈与する際に贈与税を抑える為の手順

収益物件の贈与なら相続税対策になる

収益物件の贈与の場合、贈与後の収益は受贈者のものになりますので、贈与者の財産が増えないことで間接的な相続税対策になる場合もあります。

収益物件とは

毎月一定の賃金収入のある不動産のことです。一棟売りのアパートや賃貸マンション、テナントビルが該当し、投資した不動産の家賃収入から収益を得る目的で購入する物件のことを言います。

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値上がり見込みがある財産を贈与するなら相続税対策になる

贈与時の金額は相続開始時に加算されるため、将来的に値上がりが見込まれる財産(土地や建物など)の贈与であれば、値上がり分の相続税は回避できます。

相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度は、贈与税対策としてこれ以上ない制度ではありますが、デメリットもあります。

  • 年齢や対象者の制限がある

  • いちど相続時精算課税制度を利用すると暦年課税に戻せない

  • 金額にかかわらず贈与税の申告が必要になる

  • 相続時に物納(金銭以外での納税)が認められていない

  • 相続時に小規模宅地等の特例が受けられない

  • 不動産の贈与の場合、移転コストが高くなる など

移転コストは、相続の場合は登録免許税が0.4%ですが、贈与の場合は2.0%となり不動産取得税もかかります。したがって不動産の相続時精算課税制度を利用する際は、価額を正確に把握する必要があるため、税理士などの専門家に依頼するべきでしょう。

相続時精算課税を選択した後は暦年贈与に変更できない

相続時精算課税を選択した場合は、それ以降のその贈与者からの贈与について、暦年課税を適用することは出来ません(逆は可能)

相続税の対策にはならないが贈与税の対策になる

贈与者の相続時は、相続時精算課税での贈与財産を加算して相続税を計算し、この相続税といったん支払っていた贈与税との差額を支払います。この点がよく勘違いされるところですが、「贈与税の対策」にはなっても「相続税の対策」にはなりませんので注意が必要です。

相続時精算課税制度と暦年課税(従来の生前贈与)の比較

ここでは、従来通りの暦年贈与(年間110万円までの贈与行為)とどういった違いがあるのか、またどの程度の贈与税対策になるのかを表にまとめました。

 

従来の贈与(暦年課税)

相続時精算課税制度

贈与税の計算

(贈与額-110万円)×累進税率-控除額

(贈与額-2,500万円)×20%

累進税率は10~55%の8段階

※税率区分は
・20歳以上の子や孫への贈与(特例贈与)
・それ以外への贈与(一般贈与)で異なる

贈与税条件

誰でも可能

60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子・孫への贈与が対象。
※贈与の年の1月1日現在の満年齢

相続税との関係

相続税とは切り離して計算

相続税の計算時に贈与税は精算される

※相続開始前から3年以内の贈与は相続税の課税価格に加算する

精算時の贈与財産の評価は贈与時の時価

贈与税の納税

歴年単位で計算し納税

特別控除2,500万円を超えた贈与時ごとに納税し、相続時に精算する

暦年とは・・・
その年の1月1日~12月31日

節税効果

基礎控除(110万円)は毎年使え、非課税となる
※相続時も相続開始前3年以内の贈与で対象外

相続時に評価が上がっているものを贈与する場合は、相続財産の圧縮ができ節税効果あり

大型贈与の可能性

数年にわたり多人数に行えば大型の贈与が可能

2,500万円まで贈与税がかからないので、大型の贈与がしやすい

※相続開始前3年以内の贈与は課税価格に加算

制度の移行

暦年課税から相続時精算課税制度への移行は可能

相続時精算課税制度を選択後、暦年課税への移行は不可能

5,000万円を贈与した場合の計算例

5,000万円を贈与した場合の相続税は以下のようになります。計算時の累進税率は下記の表を参照してください。

表:一般贈与の税率(兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合)

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

300万円以下

15%

10万円

400万円以下

20%

25万円

600万円以下

30%

65万円

1,000万円以下

40%

125万円

1,500万円以下

45%

175万円

3,000万円以下

50%

250万円

3,000万円超

55%

400万円

表:特例贈与財産用(その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

400万円以下

15%

10万円

600万円以下

20%

30万円

1,000万円以下

30%

90万円

1,500万円以下

40%

190万円

3,000万円以下

45%

265万円

4,500万円以下

50%

415万円

4,500万円超

55%

640万円

暦年課税の場合(一般税率を採用)

(贈与額-110万円)×累進税率-控除額
=(5,000万円 − 110万円)×55%-250万円
2,439万円

相続時精算課税制度の場合

(贈与額-2,500万円)×20%
=(5,000万円-2,500万円)×20%
500万円
 
このように相続時精算課税制度を利用することで、上記のケースでは2,000万円近くの贈与税対策が可能となります。

相続時精算課税制度を選択出来る人

相続時精算課税制度を利用出来るのは、以下の条件に当てはまるケースに限られます。
※年齢は贈与の年の1月1日現在のもの

財産を贈与した人(贈与者)

→ 60歳以上の父母又は祖父母
(住宅取得等資金の贈与の場合には特例あり。▶︎現在は廃止)

財産の贈与を受けた人(受贈者)

→ 20歳以上の者のうち、贈与者の推定相続人である子又は孫

贈与者ごとに適用することもできるため、例えば父からは暦年課税とし、母からは相続時精算課税とするなどの選択が自由にできます。なお住宅取得資金の場合かつ親から子への贈与の場合は、親の年齢制限はありません(相続時精算課税選択の特例)。

相続時精算課税制度の贈与税と相続税の計算方法

相続時精算課税を利用した場合、贈与を受けてから相続するまでの流れを汲んだ税金は以下のようになります。

2008年に父から子へ2,500万円を贈与

贈与税の申告は必要ですが、贈与税の支払いは控除されるためありません。

2013年に父から子へ1,000万円を贈与

2008年との累計で3,500万円の贈与になり、贈与税は200万円の支払いになります。

(3,500万円-2,500万円)×20%=200万円

2015年に父が亡くなり相続が発生

この場合、まずは課税遺産総額を求めて相続税額を確定したのち、実際の納税金額を計算します(相続人:子ども2人・遺産1億円と仮定)。

遺産1億円+贈与財産3,500万円-基礎控除額4,200万円
※基礎控除の額:3,000万円+600万円×2(相続人の数)= 4,200万円
課税遺産総額9,300万円
 
{(9,300万円÷相続人数2人)×相続税率20%-200万円}×2人=相続税1,460万円
相続税1,460万円-贈与税200万円=1,260万円(相続時の納税金額)

 
※相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際、暦年課税の基礎控除額110万円は控除できませんので、贈与を受けた財産が110万円以下の場合でも贈与税の申告をする必要があります。

表:相続税率の表

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

1,000万円超~3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超~5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超~1億円以下

30%

700万円

1億円超~2億円以下

40%

1,700万円

2億円超~3億円以下

45%

2,700万円

3億円超~6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

相続時精算課税制度を利用する際の必要書類

相続時精算課税を選択する受贈者(子又は孫)は、納税地の所轄税務署長に対して、以下の種類を提出する必要があります。

手続きに必要な書類

  • 相続時精算課税選択届出書(書類フォーマット
  • 受贈者の戸籍の謄本又は抄本その他の書類で、次の内容を証する書類
  • 受贈者の氏名、生年月日がわかるもの
  • 受贈者が贈与者の推定相続人である子又は孫であること
  • 受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類で、受贈者が20歳に達した時以後の住所又は居所を証する書類
  • 受贈者の平成15年1月1日以後の住所又は居所を証する書類でも可能
  • 贈与者の住民票の写しその他の書類などで、次の内容を証する書類
  • 贈与者の氏名、生年月日がわかるもの
  • 贈与者が60歳に達した時以後の住所又は居所
  • 特定贈与者の戸籍の附票の写しその他の書類で、特定贈与者が 65 歳に達した時以後の住所又は居所を証する書類(特定贈与者の平成 15 年1月1日以後の住所又は居所を証する書類でも差し支えありません)

申告期限

申告期限は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間です。申告期限までに提出しなかった場合には、相続時精算課税の適用は受けられません。

相続時精算課税制度を利用する際の注意点

相続時精算課税制度の利用にあたっては、以下のポイントに注意しましょう。

小規模宅地等の特例と比較しておく

相続時精算課税制度を選択すると、相続時に小規模宅地等の特例の適用が受けられません。小規模宅地等の特例を受けた方が有利な宅地は、相続時精算課税制度を受けないほうが良いでしょう。

住宅の贈与のほうが節税になる場合もある

住宅取得資金を贈与するよりも、贈与者が住宅を建てて贈与することで評価額が下がるため、結果的に相続税の節税に繋がる場合もあります。

なお住宅取得資金は、贈与の翌年3月15日までに住宅の引き渡しを受け、自宅として居住する等の一定の要件があるため、引き渡しが間に合わない場合などは適用できないこともあります。
 
詳しくは国税庁の「住宅取得等資金の贈与を受けたとき」を参考にしてください。

孫が受贈者の場合は相続税の面で不利になることもある

例えば祖父から孫へ相続時精算課税を適用した贈与をして、祖父に相続が発生した場合、孫は法定相続人ではないため相続税の2割加算の対象になってしまいます。このようなケースでは結果的に損を被ってしまうこともあり得ます。詳しくは以下の記事をご覧ください。

【参考】遺贈と死因贈与は違うもの!混同しやすい遺贈・贈与・相続の区別とは

まとめ

相続時精算課税制度は、贈与税について大幅な節税が出来る制度です。しかし基本的に相続税の対策にはならず、小規模宅地等の特例との比較をしないとかえって損になる可能性もあります。

場合によっては複雑な計算が必要になることもありますので、迷った際は無理せず税理士などの専門家を頼ることをおすすめします。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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