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公開日:2018.7.2 

相続時精算課税制度とは|制度の仕組みと利用時の注意点

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
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相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)とは、生前贈与をした場合に納めなければならない贈与税の代わりに、相続の際に相続税を納めるという税金の制度です。

相続時精算課税制度のイメージ

この相続時精算課税制度とは、具体的にどのような制度なのでしょうか。また、節税対策などメリットはあるのでしょうか。

相続時精算課税制度の仕組み

相続時精算課税制度の仕組みからみていきましょう。

一定の直系親族間贈与に認められた特例制度

相続時精算課税制度は、贈与税の特例制度です。近年終活という言葉をよく耳にするようになりました。

生きているうちに自分で自分の財産の処分を決めたいと思う方も増えてきています。また、生前に財産を分配して「自分の死後にもめないようにしたい」と考えて生前贈与を検討している場合もあります。

生前贈与を行うと贈与税がかかる

生前贈与の場合は贈与税がかかります。贈与税は相続税に比べて、控除額などが低いことが難点です。また、相続税は、相続財産をすべて分配してから納めるため、相続した預貯金などから納めることが可能です。こうしたことから、生前贈与の場合、相続に比べて受け取る側に困難が伴います。

贈与する人がよかれと思ってしたことでも、結果的に家族などに迷惑がかかってしまうことは避けたいですよね。また、高齢化が進み、相続による財産の移転が進まなくなってきたという社会的事情もあります。

そういった背景から、2003年から相続時精算課税制度が創設されました。

適用される生前贈与の範囲

こういった創設の背景から、適用される範囲は限られています。贈与する側は、60歳以上の父母または祖父母、贈与される側は、20歳以上の子や孫が対象です。贈与される子や孫が自分で贈与税か相続時精算課税か選択することができます。

それでは、次から細かい仕組みをみていきましょう。

相続時の評価額ではなく、贈与時の評価額で計算する

相続時精算課税制度は、相続の際に、生前贈与のものもまとめて税金を精算する制度です。しかし、1点注意が必要なのは、土地や建物などの不動産のように価値が変動する財産の贈与について相続時精算課税制度を利用した場合、相続時の評価額ではなく、贈与時の評価額で計算されます。

そのため、相続時に価値がかなり低くなっていたとしても、贈与を受けたときの価値のままなので、相続時に承継すればよかった、と思う場合もあります。不動産価格が高騰しているときには、急いで生前贈与をする必要がない限りは避けた方がよいかもしれません。

逆にこれから上がるような場合には、節税効果があります。贈与時の評価額の方が相続時の評価額よりも低く計算されるからです。

2,500万円までの贈与には贈与税がかからない

相続時精算課税制度は、相続の際に一緒に清算する制度ですから、贈与税はかかりません。そして、相続の清算の際には合計2,500万円までは贈与税がかからず、超えた部分に一律20%かかります。

通常の贈与税の場合は1年間で110万円まで非課税で、それを超えた部分に、超えた金額に応じて税金がかかります。

しかも、2,500万円というのは、1回だけでなく、生涯にわたって合計されます。累計で2,500万円を超えた部分について、相続の際に税金を納めることになります。

節税対策としての効果はない

相続時精算課税制度は、2,500万円まで非課税ですので、『110万円を超える部分に税金がかかる贈与税に比べて節税対策になる』と思われがちですが、単純に税金を納めることを先延ばしにしているだけに過ぎないため、節税効果はないといわれています。

ただし、個々の財産状況や相続人の関係などによって節税になる場合もあります。

のちほど「暦年課税と相続時精算課税制度の比較|税額の計算例」で比較をしますので、参考にしてみてください。

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相続時精算課税制度の利用条件

相続時精算課税制度を利用できる人が決められていると触れましたが、具体的にどのような立場の人が利用できるのかみていきましょう。

財産を贈与した人(贈与者)

財産を贈与した人、いわゆる贈与者は『60歳以上の父母または祖父母』に限られます。年齢は、その年の1月1日時点で達していることが必要です。今年60歳、ではダメなのです。

財産の贈与を受けた人(受贈者)

財産を贈与される人、いわゆる受贈者は、20歳以上の子や孫です。相続時精算課税制度を選択するかどうかは、贈与される人が決めます。ただし、一度決めたら、ずっと相続時精算課税制度を利用することになります。

例えば、2015年に父親から1,000万円もらって相続時精算課税制度を利用すると決めた場合、2016年に90万円もらった場合、2016年は贈与税を適用する、とはできないのです。

ただし、父親からの贈与は相続時精算課税制度を利用、母親からの贈与は贈与税を利用と異なる制度を利用することは可能です。

手続きの流れ

相続時精算課税制度を利用する際には、手続きが必要です。通常の場合は、誰かから110万円以上もらった場合、確定申告をして、贈与税を納めなければなりません。なお、110万円以下ならば、贈与税はかかりませんので、申告する必要はありません。

相続時精算課税制度を利用する場合は、確定申告書類と一緒に『相続時精算課税選択届出書』を提出します。また、受贈者が贈与者の推定相続人と証明することができるように、戸籍の謄本なども併せて提出する必要があります。こうしないと、勝手に相続人と主張して簡単に贈与税から逃れることができてしまうからです。

暦年課税と相続時精算課税制度の比較|税額の計算例

贈与税の適用を受けるいわゆる暦年課税と相続時精算課税制度の税金額はどのようになるのか、実際に計算してみましょう。例として、Aさんの相続人が配偶者B、子Cの場合を想定します。

財産が5,000万円で、Aさんが子Cに2,000万円生前贈与した場合

贈与税(暦年課税)の場合

2,000万円-110万円=1,890万円 

1,890万円×50%-250万円=695万円

ただし、これは一般の贈与の場合です。相続時精算課税制度を利用できる関係の場合、『特例贈与財産用(特例税率)』が利用できますので、もう少し贈与税額が低くなります。

贈与税(暦年課税・特例贈与):

2,000万円-110万円=1,890万円 

1,890万円×45%-265万円=585万5,000円

相続時精算課税制度の場合

2,500万円までは非課税なので0円。もっとも、贈与税の場合は毎年110万円までは非課税です。そのため、例えば100万円を20年間贈与すれば、贈与税は0円です。

相続時精算課税制度を選択する際の注意点

相続時精算課税制度は、利用する場面を検討すれば、節税対策になる場合もあり、便利ですが、選択の際に注意する点があります。

一度利用すると小規模宅地等の特例が利用できない

相続時精算課税制度を一度でも利用してしまうと、小規模宅地等の特例制度を利用することができなくなります

小規模宅地等の特例制度は、相続税に関する特例の1つで、被相続人(亡くなった人)の生計をともにしていた相続人(相続する人)に限り、一定の条件で相続税が減額される制度です。

将来的にこちらの小規模宅地等の特例制度を利用しようとしているときは、相続時精算課税制度と併用できませんので、選ばないようにしましょう。

住宅自体を贈与する方が節税しやすい

また、贈与をする際には、住宅取得資金としてお金をあげることよりも、土地などの住宅自体を贈与する方が、節税につながります。

なぜなら、お金を贈与すると、金額そのものですが、土地などの場合は固定資産税評価額を基準に計算されるからです。

具体的には、土地は公示価格の7割程度、建物は建築費の4割から7割程度といわれています。実際の金額は固定資産税の課税明細書で確認できます。

孫が受贈者の場合|相続税の2割加算が発生する

相続時精算課税制度は、孫に対しても適用になりますが、相続税が2割加算されることに注意すべきでしょう。親の代わりとなる代襲相続人の場合は適用されませんが、孫はもともと相続人としての順位は低いです。

そのため、相続時精算課税制度では20%税金が加算されます。もっとも、相続時精算課税制度の2,500万円まで非課税という制度は孫でも変わりません。2,500万円を超えた金額に対して、加算額もプラスされるという仕組みです。

まとめ

相続財産がそれほど多くない場合は、相続時精算課税制度を利用すると通常の贈与の形態と比べて節税効果を得ることができるかもしれません。ただし、相続財産が多ければ、相続税率も大きくなります。そのため、相続財産が多い場合は、低額の贈与を数十年続けた方が節税対策になる場合があります。

生前贈与で相続時精算課税制度を利用することを検討している場合は、どちらが節税効果がより得られるか検討してみることをおすすめします。

よくわからないという場合は、弁護士など専門家のアドバイスを受けるとよいでしょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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