大切な方が亡くなり、相続手続きをどのように進めればよいのか悩んでいる方は多いでしょう。
本記事では、相続税申告の一般的な流れを紹介します。
相続税申告書の作成方法、期限までに申告・納付できなかった場合のペナルティ、適切に申告するための対処法についても解説するので、相続税について不安を抱いている方はぜひ参考にしてください。
まずは、相続税の申告をする必要があるのかを確認しましょう。
遺産総額とは、相続人が相続・遺贈・みなし相続によって取得した財産の価値の合計のことです。
ここでいう財産には、現金・預貯金・株式などの金融資産のほかにも不動産・動産なども含まれます。
財産の価値は、財産評価基本通達などによって評価され、これらを全て合わせたものが遺産総額となります。
相続税額は遺産総額を基に計算するため、まずは被相続人が所有していた財産を全て洗い出す作業が必要です。
相続人は、基本的にはプラスの資産だけでなく、マイナスの負債も相続することになります。
負債とは借金や住宅ローンなどの債務全般のことで、負債を承継した相続人は、被相続人の代わりに残債を返済しなければなりません。
しかし、負債は相続財産から控除されるため、負債額の分だけ相続税額を抑えることが可能です。
被相続人に負債があったかどうかは、専門の機関に債務調査を依頼することでスムーズに確認できます。
相続財産のなかには、以下のように一定額までなら相続税が課税されないものもあります。
具体的には、次のとおりです。
被相続人が死亡したことによって受け取った死亡保険金は、「500万円×法定相続人数」まで非課税となります。
法定相続人が3人なら、500万円×3人=1,500万円までは相続税が課されません。
非課税の対象となるのは、契約者・被保険者が被相続人で、死亡保険金の受取人が相続人である契約です。
死亡保険金の受取人が相続放棄した場合や相続人以外である場合は、非課税枠が適用されないので注意してください。
被相続人の死亡により受け取った退職手当金も、「500万円×法定相続人数」まで非課税です。
ただし、退職手当金を法定相続人以外が受け取った場合は非課税とならないので注意しましょう。
個人事業主でも小規模企業共済を使えば退職金を受け取ることができ、会社員と同様に非課税枠が適用されます。
被相続人が自営業やフリーランスだったとしても、退職金の非課税枠を使える可能性があるでしょう。
被相続人の勤務先から遺族に支払われた弔慰金も非課税対象です。
弔意金とは、亡くなった方を弔い遺族を慰めるための金銭を指し、被相続人の死亡した理由に応じて非課税対象の額が異なります。
普通給与は会社から毎月支払われる月給のことで、給料・扶養手当・通勤手当などが含まれます。
なお、賞与は含まれないので注意してください。
ほかにも、非課税となる財産はいくつかあります。
これらの財産を被相続人が所有していたかもあわせて確認しておきましょう。
生前贈与加算や相続時精算課税の対象かどうかも確認しておきましょう。
生前贈与加算とは、被相続人の死亡日からさかのぼって3年以内に暦年贈与された財産に対して相続税が課される制度のことです。
暦年贈与は贈与方法のひとつで、1月1日から12月31日までに贈与された額が110万円以下であれば贈与税がかかりません。
しかし、被相続人が亡くなった日からさかのぼって3年以内に贈与された財産については、贈与税の対象だったかどうかにかかわらず相続税の課税対象に含まれます。
1回あたりの贈与額が110万円以下だった場合でも加算されてしまうので、3年以内に贈与された財産がないか確認しておきましょう。
なお、2023年度の税制改正によって、相続税における生前贈与の加算の対象が死亡日からさかのぼって7年以内に延長されました。
これにより、 2024(令和6年)年1月1日以降の生前贈与については、段階的に加算の対象期間が延びていくことになります。
また、相続時精算課税とは、2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができる代わりに、相続時にはその贈与財産も相続財産に含めて計算される制度のことをいいます。
したがって、相続時精算課税を選択した場合、贈与財産の合計額が2,500万円までなら贈与税がかかりません。
2,500万円を超えたとしても、超過分に対して一律20%の贈与税を納付すれば済みます。
しかし、被相続人が亡くなったときは贈与された財産の全額と相続財産を合算して相続税が計算されるので、贈与財産に対しても相続税がかかります。
すでに納めた贈与税がある場合は、その額を差し引いた分を納める必要があります。
過去に贈与を受けた際に相続時精算課税を選択した場合は、その財産分も相続税の課税対象となるので注意してください。
相続税には、「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」の基礎控除があります。
遺産総額が基礎控除以下に収まる場合は相続税がかからないうえ、相続税の申告をする必要もありません。
法定相続人が1人だけであっても3,600万円までは非課税なので、相続税不要で済むケースことが多いといえます。
相続税の申告が必要な場合、申告期限や納付期限がいつなのかを必ず確認しましょう。
相続税の申告・納付期限は、被相続人の死亡日または死亡を知った日の翌日の10ヵ月後です。
遺産総額の計算や法定相続人の確定にはかなり時間がかかる場合があるので、余裕をもって相続手続きをおこなうようにしましょう。
相続税の申告・納付期限を1日でも過ぎてしまうと、延滞税が課されるので注意してください。
なお、延滞税がどのくらいかかるかは、期限を超過した日数によって異なります。
また、延滞税のほか、以下のようなペナルティが課されるケースもあります。
期限を守らなかったり適切に申告しなかったりすると、結果的により高額な税金を納めなければなりません。
相続税の申告・納付は、適切におこないましょう。
次に、相続税の申告に必要な書類をチェックしましょう。
相続税の申告に必ず必要な書類は、以下のとおりです。
相続財産の種類や負債の有無によっては、以下の書類も必要です。
次に、相続税の申告手続きをおこないます。
相続税申告書の第9〜15表に、相続した資産・負債の明細を記入します。
それぞれに記載する資産・負債の種類は以下のとおりです。
相続税申告書の第1・2表に以下の内容を記入し、相続税額を計算します。
相続税額の控除や加算が必要な場合は、相続税申告書の第4〜8表を作成します。
相続税の申告に必要な書類を準備できたら、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。
相続人の住所地を管轄する税務署には提出できないので注意してください。
住民票に記載の住所と実際の住所が異なる場合は、生活の本拠であった住所を管轄する税務署に提出しましょう。
提出方法は、税務署に直接持参するか、郵送やe-Taxによる電子申告も可能です。
被相続人の住所地を管轄する税務署は国税庁のホームページで検索することができます。
相続税の申告が終わったら、納付手続きをおこないます。
税務署で納付書をもらえるので、以下の事項を記入しましょう。
相続税は以下の3つの方法で納付できます。
電子納税についてはe-Tax、クレジットカード納付については国税庁のホームページで詳細を確認できるので、チェックしてみるとよいでしょう。
相続税は原則金銭で一括納付します。
しかし、相続税が高額である場合など、納付期限までに金銭を用意できないケースもあるでしょう。
金銭納付が難しい場合は、延納もしくは物納で納めることも可能です。
延納とは、相続税額が10万円を超える場合に相続税を分割払いできる制度です。
延納申請期限までに延納申請書を提出して一定の担保を提供すれば、5年以内(不動産などが相続財産に含まれる場合は最長20年)まで相続税を延納できます。
ただし、延納期間に応じて利子税がかかる点には注意が必要です。
物納とは、延納での納付も難しい場合に金銭以外の財産で相続税を納付できる制度です。
物納申請期限までに物納申請書・物納手続関係書類を添付して税務署に提出すれば物納できます。
物納に充てられるのは相続で取得した国内の財産のみに限られ、不動産や上場株式などを優先的に物納する必要があります。
なお、物納の許可を得たあとに金銭の一括納付や延納ができるようになった場合は、物納の許可を得てから1年以内であれば物納を撤回することが可能です。
相続税の申告・納付には、相続人の間で遺産分割協議をして財産の分け方を話し合う必要があります。
しかし、相続人が多い・相続人が遠方にいる・話し合いがまとまらないなどの理由で、遺産分割協議が期限内に終わらないケースもあるでしょう。
期限内に申告・納付できない可能性が発生したら、税金の専門家である税理士に相談・依頼するのが得策です。
税金に関する法律の知識を基にアドバイスをもらえるうえ、財産の適切な分け方を一緒に考えてもらえるので、話し合いがスムーズに進む可能性があります。
相続人だけでは話が進まない場合は、ぜひ税理士への依頼を検討してください。
相続税の申告には、相続人の確定・相続財産の計算・書類の作成など、やらなければならないことが数多くあります。
相続財産が高額である場合や相続人が多い場合、手続きが難航する可能性は大いに考えられるでしょう。
相続税の申告・納付について少しでも不安があるなら、早めに税理士に相談・依頼するのがおすすめです。
遺産分割協議や書類作成のサポートを受けられるので手続きがスムーズに進み、期限内に適切に相続税を納められるでしょう。
相続税が発生しそうな場合は、ぜひ税理士に相談してみてください。
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