二次相続とは、両親のどちらかの遺産を相続したのちに残された親が亡くなり、さらに相続が発生することをいいます。
遺産を相続する際には、相続税が発生するケースがありますが、二次相続では基礎控除や配偶者控除制度が利用できないため、対策をしておかないと相続税額が増えてしまう可能性があります。
本記事では、二次相続と一次相続の違いを解説するとともに、二次相続の相続税対策の方法を紹介します。
二次相続の対策をしておかないと、同じ遺産額でも数百万円単位で相続税額が増えてしまう可能性もあるので、しっかりと対策しておきましょう。
一次相続は両親のどちらかが亡くなり、残された配偶者(父または母)と子どもが共に相続人になる場合の相続をいい、 二次相続は、一次相続後に残された配偶者(父または母)も亡くなり、子どもだけが相続人となる相続をいいます。
子どもの世代への遺産相続が完了するには、この一次相続と二次相続の両方を経験しなくてはいけないことになります。
二次相続が一次相続よりも重要だといわれる理由としては、以下2つがあげられます。
つまり、両親が健康な内に、二次相続まで含めた対策をしたほうが金銭面なメリットが大きいのです。
一般的には、一次相続の相続人は「配偶者と子」であり、二次相続の相続人は「子」となります。
そのため、二次相続の多くのケースで相続人の人数は減少します。
相続税の基礎控除額は、相続人の人数によって算出されるため、相続人の数が減ることで相続税の基礎控除額が減り、相続税が増える可能性があるのです。
以下では、二次相続対策をしなかった場合のシミュレーションを紹介します。
法定相続人 |
相続税額 |
配偶者 |
0円(配偶者控除) |
子ども(一人あたり) |
157.5万円 |
法定相続人 |
相続税額 |
子ども(一人あたり) |
385万円 |
二次相続の課税価格は、遺産額が同じでも子ども1人につき約230万円も相続税が増えていることが分かっていただけたと思います。
相次相続控除とは、相続が発生してから10年以内に次の相続が発生した場合、相続税の金額から一定の金額を差し引くことができる制度です。
なお、最初の相続から次の相続が発生するまでの期間が短ければ短いほど控除額が大きくなります。
このように二次相続となる場合、相次相続控除という控除制度を用いて相続税額の控除が可能となります。
二次相続のように続けて相続が発生すると、相続税の負担がかなり重いものとなり、短期間に同じ財産に対して二重に相続税が課税されることになります。
こうした場合に相続税の負担を軽減するため、「相次相続控除」という制度が設けられています。
相次相続控除を受けるには3つの要件を満たす必要があります。
この控除制度は、上記要件②の通り10年の期間制限がありますが、これは10年以内で経過年数に応じ1年につき10%の割合で控除金額が減額するよう計算されるようになっています。
そのため、前回の相続から今回の相続までの期間が短いほど控除額が多くなります。
控除される割合は、前回の相続から今回の相続までの期間が3年で70%(10年-3年)、6年で40%(10年-6年)となり、一次相続が発生してから二次相続が発生するまでの期間によって控除金額が変わります。
では、実際に二次相続に備えるにはなにをすればよいのか、具体的な二次相続対策を考えていきましょう。
一次相続の段階から、少しずつ配偶者や子へ贈与をおこなうのも効果的な二次相続対策です。
生前贈与は毎年110万円までなら贈与税もかからないうえ、夫婦間でも家や土地の贈与の際に2,000万円までの非課税枠があるので、活用しない手はないでしょう。
なお、毎年定額を贈与することを子ども等との間で約束した場合は、定期贈与と認定されてしまう可能性があります。
たとえば10年で毎年100万円を贈与することとしていた場合、1,000万円に対して贈与税が課されることになります。
そのため、生前贈与をおこなう際は毎年贈与をするタイミングで贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。
定期贈与と評価されないためにも、金額や贈与する時期も毎年同じ内容とならないよう、変更しておくとよいでしょう。
一次相続の際に配偶者への相続財産を減らしておくという方法も有効です。
配偶者への分配を多くせず、子どもに多めに相続分を確保しておくことで、トータルでの税額を減らすことにつながります。
同居している子どもがいれば、配偶者ではなく子どもに実家を相続させれば、小規模宅地等の特例が利用でき、大きな節税につながります。
なお、小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住していた土地を相続したときの相続税評価額を減額する制度で、330㎡までの部分の相続税評価額を80%減額できます。
しかし、小規模宅地等の特例を子どもが利用するには、両親と同居している必要があり、同居していない場合には特例は利用できません。
小規模宅地等の特例を利用する場合には、早めに同居するか、二世帯住宅にするなどの工夫をすることが必要になります。
また、被相続人の配偶者を被相続人名義の建物に引き続き居住させて特段の負担なく居住可能となるために、令和2年4月1日から配偶者居住権が認められました。
残された配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた場合で、一定の要件を充たすときに、被相続人が亡くなったあと配偶者が賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利です。
残された配偶者は、被相続人の遺言や相続人間の話し合い(遺産分割協議)等によって、配偶者居住権を取得することができます。
配偶者居住権は、第三者に譲渡したり、所有者に無断で建物を賃貸したりすることはできません。
しかし、建物の所有権を取得するよりも低い価額で居住権を確保することができるので、配偶者が配偶者居住権を取得することによって、預貯金等のその他の遺産をより多く取得することができるというメリットがあります。
二次相続の基礎控除額よりも相続税が大きくなることが予想される場合に、一次相続時に配偶者に配偶者居住権のみを取得させて、次の代の子に所有権のみを移転させることも可能です。
2014年以降、建物内部で行き来ができない完全分離型の二世帯住宅でも、小規模宅地等の特例対象になっています。
お互いの生活スタイルを考えたときに、同居すべきか否かで悩まれた場合は選択肢の一つとなるでしょう。
小規模宅地等の特例は賃貸住宅の土地にも適用されます。賃貸住宅の土地の場合、相続税の減額割合は50%ですが、大きな減額といえます。
賃料収入はローンの返済や納税資金にも活用できるので、親世代が元気なうちに建て替えることも有効な対策といえます。
一次相続で、配偶者が取得した財産で預金化できるものは全て現金化しておくことで、二次相続による多額の納税資金に困らないようにするといった対策ができます。
不動産などで家賃収入を得ている場合、最初の相続で配偶者が取得すると配偶者の財産を増加させることになり、二次相続で相続税を増やす結果になります。
そのため、一次相続時に子どもへ移転しておくことで、二次相続の税額を減らすことにつながります。
配偶者に多額の現金が入った場合、生命保険に加入することで二次相続の際に保険金が支払われる納税資金となります。
また、生命保険金は取得者には「500万円×法定相続人」の非課税枠があるので、納税資金の確保と相続財産を減らす効果が期待できます。
相次相続控除制度を忘れずに利用することをおすすめします。
一次相続と二次相続との間が10年以内の場合で、二次相続で亡くなった人が一次相続で納めた税金のうち、一部を二次相続の相続人の相続税額から控除するという制度です。
相次相続控除によってマイナスできる金額は、以下の式によって算出されます。
相次相続控除額 = A × (C/B - A)×(D/C)×((10 – E)/10) |
A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額
この相続税額は、相続時精算課税分の贈与税額控除後の金額をいい、その被相続人が納税猶予の適用を受けていた場合の免除された相続税額並びに延滞税、利子税及び加算税の額は含まれません。
B:被相続人が前の相続の時に取得した純資産価額(取得財産の価額+相続時精算課税適用財産の価額-債務及び葬式費用の金額)
C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した全ての人の純資産価額の合計額
D:今回のその相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満の期間は切り捨て)
参考:国税庁|相次相続控除
詳しい計算例は「相次相続控除の計算」を参考にしてください。
Q1:このたび、父が死亡しました。4年6カ月前には祖父が死亡しており、父は1,000万円の相続税を納めています。この場合、今回の私が納めるべき相続税額から控除できる相次相続控除はいくらになりますか。ちなみに、父が祖父から相続した純資産価額(相続財産から債務等を引いた後の額)は1億5,000万円で、今回の父から相続する全体の純資産価額は1億8,000万円で、私の今回の相続する純資産価額は9,000万円で相続税額は950万円です。
A1前回の祖父の相続においてあなたの父が納めた1,000万円の税額のうち、次の算式で計算した金額(300万円)が相次相続控除となります。 【前提】
「純資産価額」とは、相続した財産から債務・葬式費用を控除した額。・前回の祖父から父が相続した純資産価額1億5,000万円
・今回の父の全体の相続税の純資産価額 1億8,000万円
・今回のあなたの相続する純資産価額9,000万円
・前回の祖父の死亡から今回の父の死亡までの経過年数:4年6カ月(※2) 【相次相続控除の計算】
前回の父の相続税額1,000万円のうち次の算式で求めた額
※1カッコ内の計算が100/100を超えるため、この場合は100/100で計算します。
※2経過年数は、4年6カ月ですが1年未満を切り捨て4年で計算します。引用元:相次相続控除の計算
二次相続において最も大きな問題とされるのが相続税についてです。
二次相続における子の課税価格はかなり大きいものですが、どうしてこのような事が起きるのか、詳しく解説していきます。
二次相続では、法定相続人がまた1人減ってしまいますので、控除額が600万円も減ることになります。
【平成26年まで】 |
【平成27年以後】 |
||||
取得金額 |
税率 |
控除額 |
取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
- |
1,000万円以下 |
10% |
- |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
3億円以下 |
40% |
1,700万円 |
2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
3億円超 |
50% |
4,700万円 |
3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
|
6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
||
6億円超 |
55% |
7,200万円 |
相続税における基礎控除は、法定相続人の数によって変動するので、単純に考えて600万円の減額で税率が上がる場合もあります。
配偶者控除とは、相続が発生して遺産分割がおこなわれた際に、以下の条件で相続税が発生しなくなる制度です。
一次相続であれば母などが取得した遺産分の配偶者控除が利用できる一方、二次相続ではもう両親はいないので、一次相続で控除されていたを相続税として負担する必要があります。
平成22年度の税制改正によって、「小規模宅地等の特例」の適用範囲が狭まりまったのも二次相続の相続税負担が大きい理由としてあげられます。
小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅の330平米まで、評価額を80%減額してもよいという制度です。
簡単にいえば、330平米までの自宅の評価額が5,000万円なら、8割引きの1,000万円で評価してもよいということです。
相続において不動産としての相続は大きな相続税対策になるので、重宝したい制度です。
二次相続でもし別居している子(持ち家あり)が取得する場合は、小規模週宅地等の適用が受けられず100%の価額で評価され、課税価格が大幅に増える可能性があります。
二次相続時には子どもも結婚して、家を持っている可能性は十分に考えられるので、該当している方は要注意です。
二次相続はいつ起こるかわかりませんし、そういった状況がいつ起こるかも人それぞれですので、いつ起きてもいいように、しっかりとした事前対策をとっておくと安心です。
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