このようなときに蹴糖されるのが、共有物分割請求です。
共有物分割請求とは、複数人で共有している不動産や土地について、「共有状態を解消したい」と求める手続きのことです。
しかし、共有物分割請求には現物分割・代償分割・換価分割」など複数の方法があり、状況によって適切な進め方は異なります。
また、共有者同士で話し合いがまとまらない場合には、裁判手続きへ発展するケースも少なくありません。
そこで本記事では、共有物分割請求の基本的な仕組みをはじめ、具体的な分割方法、手続きの流れ、注意点、よくあるトラブルまでわかりやすく解説します。
共有不動産の扱いに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
共有物分割請求とは、複数人で共有している不動産や財産について、共有状態の解消を求める手続きです。
土地や建物などを複数人で所有している状態を「共有」といいます。
共有そのものは珍しいものではありませんが、不動産を共有したままにしておくと、売却や建て替え、担保設定などを自由におこなえないケースがあります。
たとえば、共有不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。
共有者のうち1人でも「売りたくない」と反対すれば、自分の判断だけで不動産を処分することはできません。
また、共有状態を放置したまま共有者の誰かが亡くなると、その持分が相続人へ引き継がれます。
相続が何代にもわたって繰り返されると、共有者の人数が増え、誰がどの権利を持っているのか把握しにくくなることもあります。
このような状態を解消するための手続きが、共有物分割請求です。
共有物分割請求をおこなうことで、不動産を物理的に分けたり、売却して代金を分けたり、特定の共有者が不動産を取得してほかの共有者へ金銭を支払ったりする方法で、共有関係を整理できます。
法律上、各共有者は原則としていつでも共有物の分割を請求できます。
共有状態を解消できれば、ほかの共有者の同意を得ずに、自分の財産として売却・活用しやすくなる点が大きなメリットです。
ただし、対象の不動産が亡くなった人の遺産であり、まだ遺産分割協議が終わっていない場合は注意が必要です。
この場合は、共有物分割請求ではなく、まず遺産分割協議や遺産分割調停によって相続財産の分け方を決める必要があります。
共有物分割請求の進め方には、主に以下の3つがあります。
いきなり裁判を起こすのではなく、まずは当事者同士の話し合いから始めるのが一般的です。
協議でまとまらない場合は調停、さらに解決が難しい場合は訴訟へ進みます。
それぞれの進め方について、詳しく見ていきましょう。
協議とは、共有者同士で分割方法について話し合う手続きです。
たとえば、土地を分けるのか、不動産を売却して代金を分けるのか、特定の共有者が取得してほかの共有者に代償金を支払うのかなどを話し合います。
共有者同士の関係が良好で、意見の対立が少ない場合は、もっとも早く費用を抑えて解決できる方法です。
スムーズに話し合いがまとまれば、1~2ヵ月程度で解決できるケースもあります。
ただし、口約束だけで終わらせると、後から「言った・言わない」のトラブルになるおそれがあります。
合意できた場合は、共有物分割協議書などの書面を作成しておきましょう。
また、相手が話し合いに応じない場合や、後に裁判へ進む可能性がある場合は、内容証明郵便で共有物分割請求の意思を通知しておく方法もあります。
請求した事実を証拠として残せるため、後の手続きに備えやすくなります。
当事者同士の協議でまとまらない場合は、調停を利用する方法があります。
調停では、裁判所の調停委員が中立的な立場で双方の話を聞き、合意できる解決案を探ります。
当事者同士が直接やり取りするのではなく、調停委員を介して話し合えるため、感情的な対立を避けやすい点がメリットです。
特に、親族間で不動産を共有しているケースでは、過去の相続問題や家族関係が影響し、話し合いが感情的になりやすいこともあります。
そのような場合でも、第三者が間に入ることで冷静に交渉を進めやすくなります。
ただし、調停はあくまで話し合いによる解決を目指す手続きです。
裁判所が一方的に結論を決めるわけではないため、共有者全員が合意できなければ調停は不成立となります。
協議や調停でも解決できない場合は、共有物分割請求訴訟を提起します。
訴訟では、裁判所が双方の主張や証拠を確認し、どの方法で共有状態を解消するのが適切かを判断します。
相手が話し合いに応じない場合や、不合理な要求をしている場合でも、裁判所の判断によって最終的な解決を図れる点が特徴です。
一方で、訴訟には時間と費用がかかります。
事案の内容にもよりますが、解決までに半年~1年半程度かかるケースもあることを覚えておきましょう。
また、訴訟を起こす際には、裁判所に納める収入印紙代が必要です。
共有物分割請求訴訟では、対象不動産の固定資産税評価額や持分割合などをもとに、訴額を計算します。
| 不動産の種類 | 訴額の計算方法の目安 |
| 建物 | 固定資産税評価額 × 持分割合 × 1/3 |
| 土地 | 固定資産税評価額 × 持分割合 × 1/6 |
たとえば、固定資産税評価額が4,500万円の土地について、自分の持分が3分の1である場合は、4,500万円×1/3×1/6=250万円が訴額の目安になります。
この訴額に応じて、収入印紙代が決まります。
さらに、不動産の時価を正確に把握するため、裁判所が不動産鑑定を命じるケースもあります。
不動産鑑定費用は数十万円程度かかることがあり、事案によってはさらに高額になる場合もあります。
なお、訴訟を提起したからといって、必ず判決まで進むとは限りません。
裁判の途中で裁判官から和解案が示され、当事者同士が合意して解決するケースもあります。
共有物分割請求によって共有状態を解消する場合、具体的な分割方法には主に以下の3つがあります。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
現物分割とは、共有している不動産そのものを、持分割合に応じて物理的に分ける方法です。
たとえば、広い土地を2つに分筆し、それぞれの共有者が別々の土地として取得するケースが該当します。
現物分割のメリットは、共有者がそれぞれ不動産そのものを取得できる点です。
売却先を探す必要がなく、不動産を手放さずに共有状態を解消できます。
一方で、建物は物理的に分けることが難しいため、現物分割には向いていません。
土地であっても、分割によって土地が狭くなりすぎたり、一方の土地だけ道路に接しなくなったりすると、価値や使い勝手が大きく下がるおそれがあります。
また、分割後の土地の価値に差が出る場合は、その差額を現金で調整することもあります。
現物分割は、一定の広さがあり、分けても利用価値が大きく下がらない土地に向いている方法だと覚えておきましょう。
代金分割とは、共有不動産を売却して現金化し、その売却代金を持分割合に応じて分ける方法です。
換価分割とも呼ばれます。
不動産は物理的に分けにくい財産ですが、現金にすれば持分割合に応じて公平に分配しやすくなります。
そのため、共有者の誰も不動産を使う予定がない場合や、売却需要が見込める物件では有効な方法です。
ただし、売却そのものには合意できても、「いくらで売るのか」「どの不動産会社に依頼するのか」などで意見が対立するケースがあります。
トラブルを防ぐためには、複数の不動産会社に査定を依頼し、客観的な相場を把握したうえで話し合うことが重要です。
なお、裁判で代金分割が命じられた場合、通常の任意売却ではなく、競売によって売却されることがあります。
そして、競売では一般的な市場価格より低い価格で落札される傾向があるため、手元に残る金額が少なくなる可能性があります。
そのため、できる限り競売になる前に、共有者同士で任意売却の合意を目指すことが望ましいでしょう。
代償分割とは、共有者のうち一部の人が不動産全体を取得し、その代わりにほかの共有者へ持分に応じた代償金を支払う方法です。
全面的価格賠償と呼ばれることもあります。
たとえば、兄弟で実家の土地建物を共有しており、兄が実家を単独で取得し、弟に対して持分相当額の代償金を支払うケースが該当します。
代償分割のメリットは、不動産を売却せずに維持できる点です。
実家を残したい場合や、建物のように物理的な分割が難しい不動産では、現実的な解決策になりやすいでしょう。
ただし、代償分割をおこなうには、不動産を取得する人に代償金を支払う資力が必要です。
裁判で代償分割を希望する場合は、預金通帳や融資の見込みなどを示し、支払い能力があることを証明しなければなりません。
また、代償分割では、不動産の評価額をどの評価基準で算出するかが大きな争点になります。
| 評価基準 | 特徴 |
| 時価(実勢価格) | 実際の市場で売買される価格に近く、もっとも高くなりやすい |
| 相続税評価額(路線価) | 相続税を計算する際の基準で、時価の8割程度とされることが多い |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税を計算する際の基準で、時価の7割程度とされることが多い |
不動産を取得して代償金を支払う側は、できるだけ低い評価額を主張しやすくなります。
一方、持分を手放して代償金を受け取る側は、できるだけ高い評価額を求めるでしょう。
このように利害が対立しやすいため、必要に応じて不動産鑑定士の評価や複数社の査定を活用し、客観的な金額をもとに話し合うことが大切です。
なお、代償金は現金で支払うのが一般的です。
現金以外の不動産や株式などで支払うことも可能ですが、税金や名義変更の手続きが複雑になるため、慎重に検討する必要があります。
共有物分割請求は、共有状態を解消するための有効な手段です。
ただし、手続きを進める前に知っておきたい注意点もあります。
特に以下の3つは、事前に理解しておきましょう。
共有物分割請求は、スムーズに進めば短期間で解決できることもあります。
しかし、相手が話し合いに応じない場合や、分割方法で大きく対立する場合は、解決までに長い時間がかかります。
協議だけでまとまれば数ヵ月で終わることもありますが、訴訟まで進むと半年~1年半以上かかるケースもあります。
また、手続きには以下のような費用がかかる可能性があります。
特に土地を現物分割する場合は、境界確定や測量、分筆登記が必要になることがあります。
これらの手続きには専門家への依頼費用がかかります。
また、分割方法によっては以下のような税金が発生する場合もあります。
| 種類 | 課税される可能性があるケース |
| 譲渡所得税 | 不動産を売却して利益が出た場合や、代償金の受け取り方によって譲渡とみなされる場合 |
| 贈与税 | 本来の持分を大きく超える財産を受け取った場合や、著しく低い代償金で取得した場合 |
| 不動産取得税 | 共有物分割の内容によって、新たな不動産取得とみなされる場合 |
なお、土地の現物分割では、分筆登記と持分移転登記を同時に申請するなど一定の条件を満たすと、登録免許税が軽減される場合があります。
このように、共有物分割請求では法律面だけでなく、税金や登記の問題も関係します。
そのため、手続きを始める前に、弁護士・司法書士・税理士などの専門家へ相談し、費用の見通しを立てておくことが重要です。
共有物分割請求をすれば、必ず自分の希望する方法で共有状態を解消できるわけではありません。
協議であれば、当事者同士の合意によって柔軟な解決を目指せます。
しかし、訴訟になると、裁判所が法律や証拠に基づいて分割方法を判断します。
たとえば、「実家を残したいので、自分が取得して代償金を支払いたい」と希望しても、支払い能力がないと判断されれば、代償分割が認められない可能性があります。
また、建物のように現物分割が難しく、代償分割もできない場合は、裁判所が競売による代金分割を命じることもあります。
競売になると、一般的な市場価格より低い金額で売却される可能性があるため、結果的に受け取れる金額が少なくなるおそれがあります。
そのため、裁判で最後まで争うことが常に最善とは限りません。
裁判の途中で和解案が示された場合は、感情的にならず、経済的な損得や今後の負担も踏まえて冷静に判断することが大切です。
共有物分割請求では、共有者同士の人間関係が悪化するリスクもあります。
共有不動産の相手方は、兄弟姉妹や親族など、身近な関係であることが少なくありません。
そのため、不動産の評価額や代償金の金額をめぐって、「自分だけ損をしている」「相手が得をしている」と感じ、感情的な対立に発展することがあります。
特に相続によって共有状態になった不動産では、過去の家族関係や介護負担、親との関わり方などが争いに影響するケースもあります。
また、話し合いが面倒だからといって、自分の共有持分だけを第三者の買取業者へ売却する方法には注意が必要です。
共有持分だけを買い取る業者は存在しますが、通常の不動産売却と比べて価格が大きく下がる傾向があります。
さらに、何の相談もなく第三者へ持分を売却すると、残された共有者から反発を受け、関係が決定的に悪化するおそれもあります。
人間関係への影響を抑えるためには、いきなり強硬な手段を取るのではなく、まずは適正価格での買い取りや任意売却など、現実的な解決策を検討することが大切です。
また、共有物分割の問題は、相続、離婚、建物明渡し、借地借家関係など、ほかの法律問題と同時に発生していることもあります。
複数の問題が絡んでいる場合は、当事者だけで解決しようとせず、早めに専門家へ相談したほうがよいでしょう。
共有状態の不動産を放置すると、売却や活用がしにくくなるだけでなく、相続によって共有者が増え、将来的にさらに複雑なトラブルへ発展するおそれがあります。
そのため、共有不動産の扱いに悩んでいる場合は、早めに共有物分割請求を検討することが大切です。
ただし、共有物分割請求には、協議・調停・訴訟といった手続きがあり、分割方法によって費用や税金、登記手続きも変わります。
また、共有者同士の感情的な対立が起こりやすく、当事者だけで冷静に話し合うのが難しいケースも少なくありません。
そのため、共有不動産の処分や活用で悩んでいる方、ほかの共有者との話し合いが進まず困っている方は、一人で抱え込まず、まずは弁護士に相談してみましょう。
ベンナビでは、相続に詳しい弁護士を多数掲載しているので、ぜひご活用ください。
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