親族が亡くなった際、遺産である不動産が「共有名義」だったと知り、どう手続きを進めればよいか悩んでいませんか?
共有持分の相続は、通常の不動産相続と比べて権利関係が複雑になりがちです。
仕組みをよく理解せずに共有名義のまま引き継いでしまうと、将来的に不動産の売却や活用が難しくなり、トラブルにつながるリスクがあります。
そこで本記事では、共有持分の基本的な意味合いや、共有持分の不動産を相続する際のルールを解説します。
また、共有名義で相続するデメリットや、単独名義に変更するための方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
まずは、共有持分とはどのような権利なのか、また持ち主が亡くなった際に持分を誰が引き継ぐのかといった基本的なルールを解説します。
言葉の意味や権利の仕組みを正しく理解しましょう。
共有持分とは、ひとつの不動産を複数の人で共同所有している場合に、それぞれの所有者が持つ所有権の割合です。
たとえば、4,000万円の土地を兄と弟で半分ずつお金を出して購入したとしましょう。
この場合、兄と弟はそれぞれ「2分の1(2,000万円分)」ずつの共有持分を持つことになります。
ただし、共有持分は概念的な割合である点に注意が必要です。
100平方メートルの土地を2人で共有しているケースでも、「右側の50平方メートルは兄のもの、左側の50平方メートルは弟のもの」というように、物理的に場所を区切るわけではありません。
共有者は、共有物全体を使用の対象にできますが、使用できる範囲は自己の持分に応じたものとされます。
そのため、共有者の一人が不動産を単独で使用している場合には、他の共有者との間で使用方法や使用対価をめぐって問題になることがあります。
共有持分権者が亡くなった場合、民法で定められた法定相続人が共有持分を相続するのが原則です。
法定相続人となるのは、被相続人の配偶者や親族です。
また、法定相続人には順位が決められています。
自分より高い順位の人がひとりでもいると、低い順位の人は相続人になれません。
| 順位 | 対象者 |
| 常に | 配偶者 |
| 第1順位 | 子どもまたは代襲相続人 (子どもが亡くなっている場合の「孫」) |
| 第2順位 | 直系尊属 (親・祖父母など) |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 |
ただし、亡くなった人が遺言書を残していた場合は、遺言書の内容が優先されます。
遺言書があれば、法定相続人以外の人に財産を譲ることも可能です。
法定相続分とは、民法で定められた各相続人が受け取る遺産の割合です。
遺言書がなく遺産分割協議で合意形成を図る場合や、相続人間で相続分について揉めてしまった場合の基準として使われます。
不動産のような物理的に分けにくい財産を法定相続分通りに相続すると、複数の相続人で権利を分け合うことになり、共有状態が発生します。
誰がどの割合で共有持分を相続するかは、家族構成によって異なります。
ここでは、「配偶者がいる場合」と「配偶者がいない場合」の2つのパターンに分けて、法定相続分を表にまとめました。
【配偶者がいる場合の法定相続分】
配偶者は常に相続人となり、組み合わせによって割合が変わります。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の割合 | その他の相続人の割合 |
| 配偶者と子ども | 1/2 | 1/2 |
| 配偶者と直系尊属 | 2/3 | 1/3 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4 |
※相続人が複数いる場合は、人数で等分します。
【配偶者がいない場合の法定相続分】
配偶者がいない場合は、一番順位が高い人が遺産を全て相続します。
同順位の人が複数いる場合は、人数で等分します。
| 順位 | 対象者 |
| 第1順位 | 子のみ |
| 第2順位 | 直系尊属のみ |
| 第3順位 | 兄弟姉妹のみ |
※同順位の人が複数いる場合は、人数で等分します。
共有名義の不動産で所有者のひとりが亡くなった場合、その持分は誰のものになるか勘違いしていると、後の話し合いでトラブルになることがあります。
誰が共有者になるのか、正しいルールを知っておきましょう。
被相続人が持っていた共有持分は、その人の遺産として扱われます。
そのため、持分を受け取る権利があるのは、あくまで亡くなった人の法定相続人です。
もし、共有相手が赤の他人や遠い親戚だったとしても、勝手に権利が移ることはありません。
被相続人の配偶者や子どもが持分を受け継ぎ、新たな共有者として相手と一緒に不動産を共有します。
もし相手が「不動産を全て自分のものにしたい」と言ってきたとしても、無償で譲る必要はありません。
相続人として話し合いに応じ、納得できる金額で買い取ってもらうべきです。
ここでは、具体的な数字を使って、相続後の共有持分がどう変化するか確認してみましょう。
この場合、相続の対象になるのは「夫が持っていた2分の1の持分」だけです。
妻がもともと持っていた「2分の1」は、そのまま妻のものです。
【計算の流れ】
まず、夫の持分(1/2)を法定相続分で分けます。
子どもは3人いるため、子ども全員分の「1/4」をさらに3人で割ります。
したがって、最終的な不動産の持分は以下のとおりです。
| 人物 | もともとの持分 | 夫から相続した持分 | 最終的な持分 |
| 妻 | 1/2 | 1/4 | 3/4 |
| 長男 | なし | 1/12 | 1/12 |
| 次男 | なし | 1/12 | 1/12 |
| 長女 | なし | 1/12 | 1/12 |
計算結果を見ると、妻(母)の持分が全体の「4分の3」となり、大部分の権利を持つことがわかります。
一方で、子どもたちの持分は一人あたり「12分の1」と、数字上ではかなり少なくなります。
しかし、たとえわずかな割合であっても、子どもが所有者としての権利を持つ点に変わりはありません。
不動産全体に関わる決定をする際には、持分が小さくても重要な意味を持つのです。
不動産を共有名義で相続する主なメリットは、以下の2つです。
ここから、それぞれのメリットを詳しく解説します。
1つ目のメリットは、相続人全員が納得する形で、公平に遺産を分けられる点です。
現金であれば、たとえば2,000万円を1,000万円ずつきれいに分けられます。
しかし、不動産はひとつの大きな財産なので、物理的に切り離して価値を分けられません。
共有名義を利用すれば、不動産はそのままで、権利だけを数字で分けられます。
たとえば、実家の土地を兄弟2人で分ける場合、2分の1ずつ共有名義にすれば、お互いに同じ価値の権利を持てます。
「公平に相続したい」「不動産の売却予定はないが、ひとりだけ相続すると揉める」という場合には有効です。
2つ目のメリットは、不動産から得られる利益も公平に分配できる点です。
相続した不動産がアパートや駐車場のような家賃収入(賃料)を生み出す物件だった場合、共有名義にしておけば、収益も持分の割合に応じて受け取れます。
たとえば、毎月10万円の利益が発生する駐車場を兄弟2人で半分ずつ共有していれば、5万円ずつ受け取れます。
特定の相続人が家賃を独り占めすることがなくなるため、金銭的な不公平感が生まれにくいです。
ただし、収益を受け取るのであれば、固定資産税や修繕費といったコストも分担しなければなりません。
共有名義にすることで相続人間の公平さを保てますが、共有名義での相続はあまり推奨されていません。
共有名義を避けるべき主な理由は、以下の3つです。
ここから、それぞれ解説します。
不動産を共有名義にすると、不動産の活用・処分について自由に決定できなくなります。
民法では、共有物の処分・活用に必要な同意の内容が決められています。
【共有不動産を処分・活用する際に必要な同意】
| 行為の種類 | 具体的な内容 | 必要な同意 |
| 変更行為 | 売却する、家を取り壊す | 共有者全員の同意 |
| 管理行為 | 賃貸に出す、契約を解除する | 持分の過半数の同意 |
| 保存行為 | 家の雨漏りを修理する | 各自が単独で可能 |
中でも最も大きなハードルは、売却などの変更行為に全員の同意が必要な点です。
もし共有者の中に一人でも反対する人がいれば、不動産を売却できません。
また、認知症などで判断能力がない共有者がいる場合、話し合いができないため成年後見人という代理人を立てる手続きが必要です。
これには多くの手間と時間がかかります。
結果として、売りたいタイミングで売れず、資産が塩漬け(何もできない状態)になるリスクが高まります。
不動産を所有するだけで、毎年固定資産税がかかります。
また、庭の草むしりや建物の修繕といった管理の手間や費用も発生します。
費用は原則として持分に応じて負担しますが、実際には代表者が立て替えて支払うケースが多いので、トラブルの火種になりがちです。
よくあるのが、「実際にその家に住んでいる人が費用を払うべきだ」という意見と、「住んでいなくても権利を持っているのだから全員で払うべきだ」という意見の対立です。
「自分は住んでいないし、お金がないから払いたくない」と拒否する共有者が現れると、ほかの共有者がその分を負担せざるを得ません。
こうした金銭的な不公平感から、親族関係が修復不可能なほど悪化してしまうケースが多いです。
時間の経過につれて、権利関係が複雑になるリスクもあります。
共有者が亡くなると、持分はさらに子どもや配偶者に相続されます。
最初は兄弟2人の共有だったとしても、数十年後にはそれぞれの子どもや孫へ権利が分散し、共有者が10人、20人と増えてしまうかもしれません。
こうなると、顔も名前も知らない親戚同士で共有している状態になります。
人数が増えれば増えるほど、連絡がつかない人や話し合いに応じない人が出てくるため、売却の際に全員の同意を得るのは難しいでしょう。
問題を先送りにすればするほど、子や孫の世代に負の遺産を残してしまいます。
共有名義に関するトラブルを防ぐためには、相続のタイミングで共有状態を解消しておくのが理想です。
共有名義を解消し、誰かひとりの単独名義にする主な方法は、以下の3つです。
それぞれの具体的な手順や仕組みを見ていきましょう。
不動産の持分を取得する人が、かわりに預貯金などのほかの遺産を受け取らないことでバランスを取る方法です。
たとえば、遺産として「共有持分2,000万円の不動産」と「2,000万円の現金」があったとします。
兄弟2人で相続する場合、兄が不動産を全て相続し、弟が現金を全て相続すれば、それぞれの取り分は同じ2,000万円分となります。
この方法なら、不動産を共有にすることなく、兄の単独名義または共有者との共有関係のみにできます。
遺産の中に現金や預貯金が十分にある場合には、一番スムーズでしょう。
不動産以外にめぼしい遺産がない場合によく使われるのが、代償分割です。
代償分割とは、不動産の持分を取得する人が、ほかの相続人に対して現金(代償金)を支払う方法です。
たとえば、長男と次男で「共有持分3,000万円の不動産」と「1,000万円の現金」を相続するケースを考えてみましょう。
この場合、長男が不動産を取得し、次男が現金を取得すると、取得した財産に2,000万円の価値の差が生じます。
この場合、長男が次男に1,000万円を支払えば、お互いに2,000万円ずつの価値を得たことになります。
ただし、代償分割のためには、相続人に一定の資金力がなければなりません。
相続手続きとは別に、自分の持分を相手に売却する方法もあります。
たとえば、自分が持っている2分の1の持分を、亡くなった共有者の相続人(新しい共有者)に買い取ってもらえば、不動産は相手の単独名義になります。
相手に買い取る資金がない場合は、自分の持分と相手の持分をまとめて第三者に売却し、売却で得たお金を分ける方法もあります。
なお、共有持分の売買は、一般的な不動産売買のように相場がはっきりしていません。
当事者同士の話し合いで価格を決めるため、揉めるおそれがあります。
トラブルを避けるためには、弁護士や司法書士などのサポートを受けるのが安心です。
ここでは、共有持分の相続に関して、多くの人が疑問に思うポイントをまとめました。
疑問を解消して、正しい知識で相続に臨みましょう。
相続税は、不動産全体ではなく亡くなった人が持っていた持分の価値に対してのみかかります。
たとえば、3,000万円の価値がある土地を、夫と妻で2分の1ずつ共有していたとします。
夫が亡くなった場合、相続税の計算対象になるのは、夫の持分である1,500万円分だけです。
妻がもともと持っていた1,500万円分には相続税はかかりません。
ただし、実際に相続税を支払う必要があるかどうかは、持分評価額だけでは決まりません。
亡くなった人が残した預貯金や株式などの全ての財産を合計し、総額をもとに計算します。
遺産の総額が「基礎控除」と呼ばれる非課税枠を超えた場合にのみ、相続税の申告と納税が必要になります。
正確な金額を知りたい場合は、税理士への相談をおすすめします。
亡くなった人の名義をそのまま放置していても、自動的に誰かのものになることはありません。
むしろ、相続手続きを先送りにすることで、以下のような4つの大きなリスクが発生します。
このような事態を防ぐためにも、相続が発生した際は早めに登記などの手続きを進めることが重要です。
本記事では、共有名義の不動産を相続する人物や相続する際の注意点について、わかりやすく解説しました。
共有名義の不動産の相続は、一般的な相続よりも権利関係が複雑になりがちです。
何もせずに放置しておくと、将来的に「売りたいのに売れない」「管理費の負担で親戚と揉める」といった大きなトラブルに発展するおそれがあります。
こうした事態を防ぐには、相続が発生したタイミングで、共有状態を解消しておくのが理想です。
とはいえ、親族間での話し合いや手続きは、精神的にも大きな負担がかかります。
「自分たちだけで解決するのは難しい」と感じる場面も多いでしょう。
「ほかの親族と意見が合わない」「手続きの方法がよくわからない」といった不安が少しでもあるなら、早めに弁護士や司法書士といった専門家に相談しましょう。
的確なアドバイスをもらうことで、手続きがスムーズに進みます。
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