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相続放棄した家はどうなる?管理義務の有無や注意点について解説

アシロ社内弁護士
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田舎に住んでいる両親が亡くなり、急に遺産相続をすることになった」という方もいるでしょう。

「両親の住んでいる実家が残っているけど、多額の借金もあるため相続放棄を検討している」というケースも少なくありません。

このようなケースにおいて、相続放棄をして空き家だけが残った場合にどうなるのか、相続放棄した家の対処法について解説します。

また本記事では、相続放棄した場合の家の管理責任や、空き家になる場合の対処法などについても解説します。

相続放棄後の空き家の行方に悩んでいるあなたへ

相続放棄をして空き家が残ったとき、その家はどうなるのだろう...と悩んでいませんか?

結論からいうと、法定相続人全員が相続放棄すると、相続財産の不動産は国のものになります。

 

しかし、ほかの相続人の有無や意向などによって対応が変わるため、相続放棄後の家に困っている方は弁護士に相談・依頼するのをおすすめします

弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。

  • そもそも相続放棄すべきか相談できる
  • 相続放棄後の空き家について、法的視点からアドバイスが得られる
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相続人全員が相続放棄をすると家はどうなる?

相続人全員が相続放棄をすると家はどうなる?

相続放棄とは、相続人が相続財産の受け取りを拒否し、一切の財産を引き継がないことを指します。

相続放棄をすると、相続人としての地位を喪失し、相続財産に対する権利や義務を放棄したとみなされます

相続財産に不動産が含まれる場合、家などの建物や土地などの相続権も全て放棄することになります。

それでは、相続人全員が相続放棄してしまうと家はどうなるのでしょうか。

相続人のいない不動産は国のものになる

民法では、相続放棄をした家の扱いについて以下のように定められています。

(無主物の帰属)

第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。

2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

引用元:民法第239条

上記のとおり、法定相続人全員が相続放棄すると、相続財産である不動産は国のものになります

ただし、不動産を国に継承するためには、弁護士などを相続財産清算人とするための申し立てをおこない、相続人がいないことを法的に証明しなければなりません。

なお、2023年4月施行の改正民法により、相続人不存在の場合における相続財産の管理人について、「相続財産管理人」から「相続財産清算人」へと名称が変更されました。

相続財産管理人と相続財産清算人の職務内容は基本的に同じですが、公告の方法については若干の変更があります。

相続放棄後の家の管理義務は誰にある?

相続放棄後の家の管理義務は誰にある?

相続放棄後の家の管理義務は誰にあるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

管理義務があるなら相続放棄しても意味がないのではないか」と考える方もいるでしょう。

結論としては、これまでは相続放棄後も管理義務がありましたが、2023年4月施行の改正民法によって相続放棄後の管理義務の対象者が明確になりました。

これまでは相続放棄後も管理責任があった

当然、相続放棄をした場合は不動産などの資産は相続できません。

しかし、2023年4月に相続放棄に関する民法が改正されるまでは、相続放棄後も管理責任がありました。

(相続の放棄をした者による管理)

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

引用元:民法第940条

改正前はこのように定められていたため、以下のようなケースでは相続放棄後も管理義務が発生していました。

相続放棄後も管理義務が発生していたケース
  • 相続人が一人だけで、ほかに相続人がいない
  • 相続人全員が相続放棄した

また、管理義務があるにもかかわらず不動産を放置して何らかのトラブルが発生した場合は、責任を問われる可能性もありました。

管理義務から逃れるためには相続財産管理人の手続きが必要となるものの、手間がかかるために放置してしまうというケースも多かったのです。

2023年4月以降は「現に占有している場合」のみ管理義務が発生する

これまでの民法では、相続放棄にともなう管理義務の発生条件があいまいな部分もありました。

しかし、2023年4月の民法改正によって、管理義務の考え方が明確になりました。

(相続の放棄をした者による管理)

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

引用元:民法第940条

上記のとおり「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」という一文が追加されており、「現に占有している場合」に該当しなければ管理義務は発生しません

ここでの「現に占有している場合」とは、不動産を保有していた被相続人と同居していた相続人などが該当します。

相続放棄によって空き家になる場合の対処法

相続放棄によって空き家になる場合の対処法

たしかに、「現に占有している場合」に該当しなければ管理義務は発生しません。

しかし、だからといって相続放棄によって空き家になった不動産を放置するのは得策ではありません。

管理義務がないとはいえ、もし空き家になった不動産が原因でトラブルが発生すれば損害賠償請求されるリスクもあります。

ここでは、相続放棄によって空き家になる場合はどうするべきなのか説明します。

また、空き家を相続放棄する前にできるおすすめの方法については、『訳あり物件買取プロ(株式会社AlbaLink)』の記事に詳しく記載されているので、ぜひ参考にしてみてください。

相続財産清算人を選任する

相続人が明確でない場合は、家庭裁判所への申し立てにより相続財産清算人を選任します。

相続財産清算人とは、相続を円滑に進めるために指定される人のことで、相続財産の管理や分割・債務の整理・相続税の申告などの相続手続きをおこなう役割があります。

一般的には配偶者などの相続人の中から選任されますが、弁護士や司法書士などに依頼することもできます。

基本的に相続財産清算人は相続人同士の合意に基づいて選任され、合意が成立しない場合は裁判所が指定することもあります。

相続財産清算人の選任申し立てから国庫に帰属するまでの流れ

相続人がいない場合は、空き家を放置せずに適切な手続きをおこないましょう。

不動産を国庫に帰属する際は、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらう必要があります。

これにより弁済や財産分与がおこなわれ、最終的に残った財産を国庫に帰属することになります。

相続財産清算人の選任申し立てから国庫に帰属するまでの手順は、以下のとおりです。

相続財産清算人の選任から国庫帰属までの流れ
  1. 家庭裁判所が相続財産清算人を選任する
  2. 家庭裁判所による選任・相続人の捜索の公告をする
  3. 相続財産清算人が相続債権者などに対する請求申出の公告をする
  4. 相続債権者などに弁済をする
  5. 特別縁故者が現れたら財産分与を検討する
  6. 残余財産が国庫に帰属される

1.家庭裁判所が相続財産清算人を選任する

まずは家庭裁判所にて申し立てをおこない、相続財産清算人を選任してもらいます。

申し立てをすると、2ヵ月ほどで相続財産清算人選任の審判がおこなわれます。

2.家庭裁判所による選任・相続人の捜索の公告をする

家庭裁判所によって相続財産清算人が選任されると、選任されたことや、相続人がいる場合はその権利を主張するべきという旨などを官報で公告します。

官報とは、法律上の重要な情報などを発信するために国が発行する機関紙のことです。

3.相続財産清算人が相続債権者などに対する請求申出の公告をする

相続財産清算人は、この時点で判明していない相続債権者や受遺者に対して、請求の申し出をすべきという旨の公告もおこないます。

「請求申出の公告」とは、被相続人の債権者などに対して名乗り出るよう催促するものです。

この時点で名乗り出れば弁済を受けられる可能性があり、もし名乗り出なければ弁済から除斥されてしまいます。

なお、初めから判明している場合や相続財産調査の途中で判明した場合などを含め、すでに判明している相続債権者には個別に連絡する必要があります。

4.相続債権者などに弁済をする

相続財産清算人は、請求申出の公告期間が終わると相続債権者・受遺者に弁済をおこないます。

相続財産に関連する負債などを確認して整理しなければならず、債務の支払いは相続財産からおこなわれることもあります。

5.特別縁故者が現れたら財産分与を検討する

相続人の捜索の公告が終わるまでに相続人が現れない場合は、相続人がいないものとみなされます

特別縁故者の場合、相続人の捜索の公告終了から3ヵ月以内に、家庭裁判所へ財産分与の申し立てをおこなわなければなりません。

特別縁故者とは、「内縁の妻」や「被相続人の看護を献身的に努めた看護人」など、被相続人と特別な関係にあった人のことを指します。

家庭裁判所にて財産分与の申し立てがおこなわれ、財産分与を認める審判が確定した場合は、特別縁故者に財産が分与されます。

6.残余財産が国庫に帰属される

特別縁故者への財産分与が完了したら、相続財産清算人は報酬付与の申し立てをおこないます。

家庭裁判所が決定した報酬を受け取り、予納金に残余財産がある場合は申し立て人に還付されます。

予納金を還付したあとに残余財産がある場合は、相続財産清算人が国庫帰属の手続きをおこないます。

基本的には上記のような流れでおこないますが、これまで相続手続きの経験が無い方などは理解が難しい部分もあるでしょう。

相続問題が得意な弁護士なら、わかりやすい言葉で説明してくれますし、そのまま手続きを依頼することもできます。

法律事務所によっては初回相談無料のところもあるので、まずは一度話を聞いてみることをおすすめします。

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相続放棄後も家に住み続ける場合は保存義務がある

相続放棄後も家に住み続ける場合は、保存義務が発生する可能性があります。

保存義務とは、相続財産に対して適切な管理や保護をおこなう義務のことです。

民法改正により「管理義務」ではなく「保存義務」を負う

民法改正によって、相続放棄後の不動産については「管理義務」から「保存義務」に名称が変更されました。

名称が保存義務に変わっても「不動産を適切に管理しなければならない」という点は変わりません。

相続人には、相続財産を適切に管理し、傷つけたり損害を与えたりしないようにする義務があります。

これには、財産の保管・保険の加入・必要な修繕の実施・維持管理の責任などが含まれます。

保存義務を負う期間

保存義務を負う期間は、以下のように「ほかに相続人がいるかどうか」で異なります

保存義務を負う期間

ほかに相続人がいる場合

相続放棄をしていないほかの相続人に不動産を引き渡すまで

ほかに相続人がいない場合

相続財産清算人に引き渡すまで

なお、相続財産の処理には、相続財産の評価・債務の清算・財産分与の手続きなどが含まれます。

相続放棄後の家についてよくある質問

相続放棄について、まだ不安があるという方もいるでしょう。

ここでは、相続放棄後の家の扱いに関するよくある質問について解説します。

2023年4月より前に相続放棄をした場合はどうなる?

改正民法が適用されるのは、あくまでも2023年4月1日以降です。

2023年4月より前におこなわれた相続放棄については、改正前の民法が適用されます。

相続放棄後、家の解体をするように自治体から言われた場合はどうすればいい?

家の解体は処分行為に該当し、法定単純承認とみなされて相続放棄が無効になる可能性があります。

そのため、自治体からの命令でも相続放棄の対象者が解体をおこなうことは避けなければなりません

このようなケースでは、命令に従うことができない正当な理由にもなりえるため、解体費用などを負担せずに済む場合もあります。

状況に応じて取るべき対応は異なるので、もし対応に迷った際は一度弁護士に相談することをおすすめします。

相続人全員が相続放棄する場合、相続放棄後も家を管理しなければいけない?

ほかの相続人または相続財産清算人に家を引き渡すまでの期間内は管理する必要がありますが、これらの者に引き渡しが完了すれば管理義務はなくなります

さいごに|相続放棄後の家について困っているなら弁護士に相談を

相続放棄後の家がどうなるのかについては、ほかの相続人の有無や意向などによっても対応が変わります。

相続放棄後の家の扱いについて困っている場合は、できるかぎり早く弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、相続放棄後の家についてどのように対応すればよいか具体的にアドバイスしてくれるほか、自分の代わりに適切な措置をおこなってくれます。

自己判断で動いたりして相続人同士で相続トラブルになる前に、まずは一度弁護士へ相談しましょう。

相続放棄後の空き家の行方に悩んでいるあなたへ

相続放棄をして空き家が残ったとき、その家はどうなるんだろう...と悩んでいませんか?

結論からいうと、法定相続人全員が相続放棄すると、相続財産の不動産は国のものになります。

 

しかし、ほかの相続人の有無や意向などによって対応が変わるため、相続放棄後の家に困っている方は弁護士に相談・依頼するのをおすすめします

弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。

  • そもそも相続放棄すべきか相談できる
  • 相続放棄後の空き家について、法的視点からアドバイスが得られる
  • 依頼すると、期限までの相続放棄手続きの完了が期待できる
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この記事の監修者
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この記事は、株式会社アシロの「ベンナビ相続編集部」が執筆、社内弁護士が監修しました。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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