ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ) > 相続コラム > 土地・不動産相続 > 遺産分割協議の手順と流れ|不動産の分け方や協議書のサンプルを紹介
公開日:2019.8.15  更新日:2022.10.28

遺産分割協議の手順と流れ|不動産の分け方や協議書のサンプルを紹介

リフト法律事務所
川村 勝之 弁護士
監修記事
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親が亡くなって遺産相続が生じた場合は、法律が定める範囲の人で遺産を分け合うことになります。これが「遺産分割」と呼ばれる手続きです。

遺産には、預貯金などのお金だけでなく、実家の土地・建物や株式などの有価証券も含まれるため、誰が、どの財産を、どのくらいの割合で相続するのかについて話し合う必要もあります。

遺産の分割について、相続人が集まって話し合うことを「遺産分割協議」といいます。

遺産相続におけるトラブルの多くは、遺産分割協議にかかわるものです。

「自分の権利ばかりを主張する相続人がいて話し合いが前に進まない」、「話し合いに応じない相続人がいる」など、遺産分割協議がスムーズに進まないケースも珍しくありません。

この記事では、遺産分割協議の流れやスムーズに協議を進めるポイントなどを解説します。

【関連記事】【5分でわかる】遺産分割協議書の必要書類!集める際の注意点とは!

遺産分割協議をこれからおこなう方へ

遺産分割協議をするためには、相続人の確定や相続財産の調査、相続人全員の同意を得て遺産分割協議書の作成などやることがたくさんあります。

上記の対応は後々のトラブルを回避したいのなら、怠るわけにはいきません。

また相続財産に不動産が含まれていた場合は、分割方法が複雑になります。

遺産分割に関してお悩みの方は、弁護士に相談・依頼する事がおすすめです。

弁護士に依頼すれば、下記の様なメリットを受けられます。

  • 相続する財産や相続人の調査を任せることができる
  • 弁護士が代理人となり、他の相続人と直接話をしなくても済むようになる
  • 遺産分割で自分の希望を反映させるためのアドバイスがもらえる など

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この記事に記載の情報は2022年10月28日時点のものです

遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、遺産を相続する権利がある人が集まり、誰が、どの財産を、どのくらいの割合で相続するのかを話し合う手続きです。

民法第907条第1項によると、複数の相続人が存在する場合、「共同相続人は原則としていつでも協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる」と定められています。

民法第907条(遺産の分割の協議または審判等)

1.共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部または一部の分割をすることができる。

2.遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部または一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。

3.前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

引用:民法|e-Gov

遺産分割協議は、必ず相続人全員で行う必要があります。相続人が1人でも欠けた状態で決めた事項は無効です。

また、相続人のなかに未成年者がいる場合は、その法定代理人の参加も求められます。

ただし、必ずしも相続人の全員が一堂に会して協議を進行する必要はありません。

遠方に住んでいる、仕事の都合で参加できないといった事情があれば、電話・メールなどを使って話し合うことも可能です。

数人の協議によって決まった案を、相続人の誰かが持ち回って協議に参加できなかった相続人から承諾を得る方法でも「協議があった」とみなされます。

つまり、重要なのは「相続人の全員が合意している」という事実です。

ほかの全員が賛成していても、誰か1人が反対していれば遺産分割協議は成立しません。

遺産分割協議がまとまらないなら調停をする

どうしても話し合いがまとまらない場合は、「遺産分割調停」を家庭裁判所に申し立てることになります。

調停においても話がまとまらない場合には、裁判官が遺産分割方法を決定する手続きである審判が行われます。

遺産分割協議の手順

遺産分割協議は、「相続人による話し合い」の手続きです。

話し合いを進めるにあたって、事前の準備や話し合いの結果をまとめる必要があります。

遺産分割協議は、大きくわけて4つの手順で進みます。

  • 相続人の確定
  • 相続財産の確定
  • 財産目録の作成
  • 相続人全員の同意を得て遺産分割協議書を作成

各手順について詳しくみていきましょう。

相続人を確定させる

遺産分割協議を進めるためには、まず「誰が相続人なのか」を確定させる必要があります。

相続人を確定しておかないと、誰と協議すべきなのかがはっきりしません。

また、調査をおろそかにしてしまうと、あとになって「実は、ほかにも相続人が存在していた」といった事態になり、遺産分割協議のやり直しが必要になります。

相続人の確定が難しい状況としては、次のようなケースが挙げられます。

特に、離婚・再婚・養子縁組をしている場合は、被相続人との関わりが薄いままで相続権を有している人が存在するケースが多いので注意が必要です。

被相続人と第三者との間に隠し子がいて、親族が知らない間に認知をしていたという事例も少なからず存在します。

相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍情報を辿っていくのが確実です。

参考までに、以下は相続人調査の際に役立つ証明書と取得にかかる手数料の一覧表です。

証明書一覧

内容

手数料

戸籍全部事項証明
(戸籍謄本)

戸籍原本の内容の全部を写したもの
(戸籍に記載されている全ての人の証明書)

450

戸籍個人事項証明
(戸籍抄本)

戸籍原本の内容の一部を写したもの

450

除籍全部事項証明
(除籍謄本)

除籍原本の内容を全部写したもの

750

除籍個人事項証明
(除籍抄本)

除籍原本の内容の一部を写したもの

750

改製原戸籍謄本

改製原戸籍の内容を全部写したもの

750

改製原戸籍抄本

改製原戸籍の内容の一部を写したもの

750

戸籍に関する証明書などは、各自治体によって運用が異なります。

窓口交付のみの自治体もあれば、コンビニエンスストアのマルチコピー機でも一部の証明書を取得できる自治体もあります。

手数料も自治体によって異なるので、ここで挙げた料金は目安だと考えてください。

相続財産を確定させる

相続人を確定させる作業と並行して、「どのような財産が、どのくらいあるのか」も確定させる必要があります。

ここで注意しておきたいのが、相続財産は「プラスの財産」だけでなく「マイナスの財産」も含まれるということです。

預貯金や不動産ばかりを探すのではなく、隠れた借金や負債も探し出さなくてはなりません。

遺産分割の対象となる財産(プラス分)

不動産

宅地、農地、建物(マンション、アパートなど)、店舗、居宅、借地権、借家権など

現金・有価証券

現金、預貯金、株券、貸付金、売掛金、小切手など

動産

自動車、家財、船舶、骨董品、宝石、貴金属、美術品など

その他

ゴルフ会員権、慰謝料請求権、損害賠償請求権など

遺産分割の対象となる財産(マイナス分)

負債

借金、買掛金、住宅ローン、小切手など

税金関係

未払いの所得税と住民税、その他未払いの税金

その他

未払い分の家賃と地代、未払い分の医療費など

遺産分割協議では、誰が、どの財産を、どのくらい相続するのかを話し合います。

ここで「マイナスの財産はどのように分割するのか」という問題が発生します。

マイナスの財産についても、相続人の間で協議して負担の割合を決めることは可能です。

ただし、協議のなかで「Aはプラスの財産のすべてを、Bはマイナスの財産のすべてを相続する」と決まったとしても、この決定を債権者に主張できないという点には注意が必要でしょう。

遺産分割の対象となるものは被相続人の有していた積極財産だけであり、被相続人の負担していた消極財産たる金銭債務は相続開始と同時に共同相続人にその相続分に応じて当然分割承継されるものであり、遺産分割によって分配せられるものではない

参考:大阪高裁昭和31年10月9日(Westlaw Japan 文献番号 1956WLJPCA10090018)

つまり、被相続人が作った借金などマイナスの財産は、法定相続分に従って、相続人が公平に負担しなければなりません

すると、先に挙げたA・Bの事例では、遺産分割協議で負担がA:0%・B:100%と決まっていたとしても、法律の定めに従ってA・Bのそれぞれが50%ずつ負担することになります。

財産目録の作成をする

相続財産が確定したら「財産目録」を作成します。

財産目録とは、相続財産のすべてを一覧表にしたものです。

プラス・マイナスの各財産をすべて挙げて作成するので、どのような財産があり、総計するとプラス・マイナスのどちらが上回るのかが一目瞭然になります。

財産目録の作成は、法律による定めがありません。

必ず作成しなければならないというものではありませんが、相続手続きがスムーズに進むので作成しておいたほうがよいでしょう。


【簡単3ステップ】財産目録を作成したい方必見!

財産目録かんたん作成ツール

⇒ 財産目録で全ての財産内容を管理すると、共同相続人による財産隠しの予防ができるかもしれません。


また、財産目録を作成する手順は、以下の記事でも詳しく解説しています。

相続人全員の同意を得て遺産分割協議書を作成する

相続人と相続財産が明らかになれば、遺産分割協議の前準備は完了です。

ここからは、相続人全員による協議が始まります。

相続人が一箇所に集まって協議できるのがベストですが、必ずしも一堂に会して協議する必要はありません。

実際には、法要などの機会にある程度の話し合いを進めておき、各相続人に了承を得たうえで代表者が「遺産分割協議書」を作成して、署名・押印を求める流れになるでしょう。

遺産分割協議書に記載すべき事項とポイントを列挙します。

  • タイトルに「遺産分割協議書」と記載
  • 被相続人は誰か
  • 被相続人はいつ死亡したのか
  • 遺産分割協議には誰が参加したのか
  • 誰が何の財産を取得するのか
  • 相続する財産の具体的な内容とその割合
  • 不動産の記載は登記簿謄本や権利証で確認して正確に記載する
  • 協議の日付、相続人の住所を自筆で署名
  • 実印による押印は相続人全員分を用意
  • 相続人全員が各自1通ずつ原本を保管
  • 預貯金、車、株式等の遺産や債務はもれなく記載
  • 代償分割の場合、代償金額と支払期限を明確にする

実際に遺産分割協議書を自作した場合は、次のサンプルのようなかたちになるでしょう。

遺 産 分 割 協 議 書

 

被相続人 アシロ太郎(昭和●●年●●月●●日)

死亡日 令和●年●●月●●日

本籍地 東京都新宿区西新宿●-●●-●

 

令和●年●月●日、被相続人アシロ太郎の死亡によって開始した遺産相続について、アシロ太郎の相続人全員で遺産分割協議を行った結果、下記のとおりに遺産を分配、取得することに合意したことを認める。

 

 

1. 下記の不動産は妻アシロ花子が相続する

所在 東京都●●区●●

家屋番号 ●●番●

種類 ●●

構造 ●●●●

床面積 ●階 ●㎡

 

2. 下記の預貯金は長男アシロ次郎が相続する

●●銀行●●支店

普通預金 口座番号●●●●●●●

●●●●万円

 

3. ここに記載のない財産については、次男アシロ士郎が取得する

 

以上の内容で、相続人全員による遺産分割協議が成立したため、本協議書を3通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

 

令和●年●月●日

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 昭和●●年●●月●●日

相続人 (妻)アシロ花子 実印

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 昭和●●年●●月●●日

相続人 (長男)アシロ次郎 実印

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (次男)アシロ士郎 実印

遺産分割の3つの手続き

遺産分割は、次の3つのうちいずれかによっておこなわれます。

  1. 遺産分割協議による遺産分割
  2. 遺産分割調停・審判による遺産分割
  3. 遺言による遺産分割

遺産分割協議による遺産分割は、あくまでもひとつの方法に過ぎません。

状況次第では、協議ではない方法で遺産分割がおこなわれることもあります。

①遺産分割協議による遺産の分割

次のような状況であれば、相続人全員による遺産分割協議が必要です。

  • 遺言書が存在しない
  • 遺言書には相続分の指定のみで財産の指定がない
  • 遺言書から漏れている財産がある
  • 相続人の全員が遺言書の内容と異なる分割を希望している

なお、遺産分割協議によって決定する相続分は、必ずしも法定相続分に従う必要はありません。

たとえば「ある人がすべての財産を取得する」、「ある人の取得分をゼロとする」といった遺産分割協議も有効です。

②遺産分割調停・審判による遺産の分割

相続人全員による遺産分割協議では話がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停又は遺産分割審判を申し立てることになります。

どちらを行っても良いですが、実務的には、まずは調停に付すことが通常です。

遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いを進める手続きです。

裁判官が判決を下すわけではありませんが、調停で決定した事項は「調停調書」にまとめられて判決と同じ効力を持ちます。

調停でも話し合いがまとまらない場合は、調停不成立として「不調」となり、取り下げをしない限り自動的に、裁判官が判断する「審判」へと移行します。

遺産分割調停の流れ

③遺言による遺産分割を行う場合

被相続人が遺言をのこしている場合は、遺言書で指定された方法で遺産分割が進められます。

遺言は、被相続人の最期の遺志として尊重されるため、原則として遺言の指定のとおりに遺産分割が行われます。

ただし、遺言の効力は絶対ではありません。

各相続人に保障された最低限の相続分である「遺留分」を侵すことはできないのです。

たとえば、被相続人が「遺産は全額寄付する」という遺言をのこしていたとしても、遺留分侵害額請求をすることで遺産が取得できます。

詳しい情報は以下の記事で解説しているので、気になる方はご覧ください。

土地や不動産が含まれていた場合の遺産分割方法4つ

一口に相続財産といっても、現金や預貯金のように額面に従って分割しやすいものばかりではありません。

実家の土地・建物などのように不動産が遺産に含まれる場合は、遺産分割も容易ではないでしょう。

ここでは、相続財産に不動産が含まれている場合の分割方法4つを解説します。

①現物分割

不動産を相続分に従ってそのまま分割する方法です。

もっともわかりやすいのは分筆登記でしょう。

現物分割の方法

この図のように、ひとつの土地を文筆して複数にわけることで、わけにくい不動産でも分割が可能です。

また、土地は配偶者が取得し、子どもが借地権を取得するといった方法も現物分割のひとつだといえます。

②代償分割

代償分割とは、相続人のひとりが不動産を取得し、ほかの相続人は不動産の価額を分割した金銭を取得する方法です。「価額賠償」とも呼ばれます。

たとえば、価額2,000万円の土地をAとBの2人で相続する場合には、Aが土地のすべてを取得し、Bに2,000万円の1/2にあたる1,000万円の金銭を支払います。

③換価分割

不動産の全部あるいは一部を売却して金銭に換えたうえで分割する方法です。

分割しにくい相続財産の分割方法としては、よく利用されている手段だといえるでしょう。

④共有分割

不動産そのものを分割せず、各相続人がもつ相続分に従って共有する方法です。

持ち分に従って各相続人が権利を分割しますが、権利関係が複雑になるため、あまりおすすめできる方法ではありません。

共有分割をした不動産は、相続人全員の承諾がないと売却できないため、後々の処分が難しくなります。

相続人同士の仲が良いうちはとくに問題にもなりませんが、仲違いをしてしまうと共有分割をしたことが災いになるでしょう。

土地の分割に迷った場合は、次の記事をご覧ください。

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遺産分割の注意点

遺産分割協議を進めるにあたって注意すべき点を解説します。

基本的にやり直しはすべきではない

ひとたび成立した遺産分割協議は、基本的にやり直しをするべきではありません。

相続人の全員が合意すれば、遺産分割協議のやり直しは可能です。

ただし、有効に成立した協議に基づいておこなわれた遺産分割を解除して再び遺産を分割すると、税務上は「贈与」や「交換」にあたるため、贈与税や譲渡所得税の課税を受けます。

さらに税金を支払うことになるリスクを考えると、遺産分割協議のやり直しは不利益を招くでしょう。

ただし、相続人全員の合意が得られていないなど、遺産分割協議の前提を揺るがすようなケースでは、遺産分割協議の無効を主張できる可能性があります。

また、協議が成立したあとで新たに財産が見つかったときには、その財産に対する新たな遺産分割協議をおこなうことで足ります。

新たに財産が発見される可能性があれば、軽微な財産については特定の相続人に帰属する旨の規定を遺産分割協議書に盛り込んでおくことで協議のやり直しを回避できるでしょう。

遺産分割が済んだ後に遺言書が見つかった場合

遺産分割協議が成立したあとで遺言書が見つかった場合は、遺言書で指定された内容とは異なる遺産分割協議は無効になります。

ただし、遺言発見後、再度相続人の全員の合意により、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を成立させれば、その遺産分割協議は有効となり得ます。

なお、相続人のなかにひとりでも「遺言書の内容に従うべきだ」と主張する人がいる場合は、遺言の指定に従うことになります。

遺言書がもつ効力については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

遺産分割自体を禁止にすることも可能

民法の規定によると、遺産分割そのものを禁止することも可能です。

民法の規定によると、遺産分割を禁止できる方法は2つあります。

  • 遺言書による禁止
  • 家庭裁判所による禁止

まず、自分の死後に相続人の間でトラブルになることが予想される場合は、遺言書によって5年に限り遺産分割を禁止できます。

民法第908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託し、または相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

引用:民法|e-Gov

さらに、特別な事情がある場合は家庭裁判所の指定によって遺産分割を禁止できます。

民法第907条3項

3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

引用:民法|e-Gov

家庭裁判所による遺産分割の禁止は、次のようなケースでの活用が想定されるでしょう。

  • 相続人の範囲が確定しない
  • 相続財産の範囲が確定しない

分割が禁止された場合、遺産は共有状態のままで誰も取得できない状態になります。

単に個人の判断で遺産分割を禁止して決着を先送りできるというわけではないので注意しましょう。

借金は遺産分割協議の対象外

遺産相続では、預貯金などのプラスの財産と同時に、借金などマイナスの財産も継承されます。

すると、遺産分割協議のなかで借金の負担についても話し合うことになりますが、原則として借金は遺産分割協議の対象外です。

被相続人の借金は、法定相続分に従って相続人全員が負担します。

たとえ遺産分割協議において一部の相続人のみが負担することを決定しても、債権者に主張できません。

一部の相続人のみが借金返済の義務を負担するのであれば、債権者の承諾が必要になります。

行方不明者を除外して遺産分割協議を行うことはできない

遺産分割協議が成立するためには、相続人全員の合意が必要です。

たとえ行方不明になっているとしても、それを理由に協議から除外することは認められません。

相続人が行方不明になって7年以上が経過している場合は、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることで解決可能です。

また、行方不明から7年が経過していない場合でも、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てて協議を進める方法もあります。

まとめ

遺産分割協議は、被相続人がのこしてくれた財産の分配方法を決める大切な話し合いです。

だからこそ、遺産分割協議は相続人の間でトラブルに発展しやすく、親族間の関係に亀裂が生じてしまう原因にもなります。

各相続人がそれぞれの自己都合だけを主張していては、円満な解決は期待できません。

法律の定めに従い、各相続人の事情を公平に取りまとめて調整できる役割が必要です。

遺産分割協議を円満に進めたいなら、遺産相続トラブルの解決が得意な弁護士にサポートを求めましょう。

協議を進めるにあたって必要な相続人の調査や財産調査など手間がかかる作業を一任できるだけでなく、各相続人との間で話し合いの窓口としても対応してくれるので、スムーズな遺産分割協議が期待できるでしょう。

遺産分割協議をこれからおこなう方へ

遺産分割協議をするためには、相続人の確定や相続財産の調査、相続人全員の同意を得て遺産分割協議書の作成などやることがたくさんあります。

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この記事の監修者
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川村 勝之 弁護士 (千葉県弁護士会)
相談者に選択肢を提示し、最も理想に近い解決法を共に考えることを心がけており、コミュニケーションの取りやすさに定評あり。税理士・司法書士・公認会計士などの他士業と連携したトータルサポートも魅力。

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相護士ナビ編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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