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遺言書の8つの効力|認められる範囲や有効期間、無効になるケースも解説

Winslaw法律事務所
今田 覚 弁護士
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遺言書は遺産相続において強い影響力を持っているものであり、さまざまな種類・方式があります。

なかでも有効性という点では、公正証書遺言という遺言書が優れています。

遺言書を作成しておくことで、「誰にいくら渡す」「指定した相続人に遺産相続させない」「内縁の妻や隠し子に遺産相続させる」などの指定ができます。

ただし、遺言書の書き方を誤ったりすると効力が無効になるため、作成する際は注意しなければいけません。

弁護士であれば代わりに遺言書作成してくれるほか、遺言書の作成方法や効力などについて詳しく教えてくれるため、遺言書に関する不安や疑問がある人はサポートしてもらうのがおすすめです。

本記事では、遺言書の種類ごとの作成方法や、せっかく作った遺言書が無効になるケースなどを解説します。

法的効力のある遺言書の作成方法がわからず悩んでいるあなたへ

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遺言書は法律の定める方式に則って作成する必要があり、知識のない人が作成した場合、内容が無効になることもあります。

法的に効力がある遺言書を作成したい場合、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

また、弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。

  • 遺言書が無効になる場合を教えてもらえる
  • 遺言書の内容についてアドバイスを得られる
  • 依頼すれば、遺言書の記載内容に不備がないかチェックしてもらえる
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この記事に記載の情報は2024年06月14日時点のものです
目次

遺言書の8つの効力

遺言書の8つの効力

ここでは、遺言書が持つ効力を解説します。

遺産を相続させたくない場合は相続権を剥奪できる

相続発生時に相続人になる予定の人について、被相続人に対する虐待・重大な侮辱・その他の著しい非行などの法定の廃除事由が認められ、その相続人に遺産を相続させたくない場合には、遺言によって相続権を剥奪できます民法第893条)。

(遺言による推定相続人の廃除)

第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

引用元:民法第893

(相続人の欠格事由)

第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。

一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

引用元:民法第891

自由に相続分(取り分)を決めることができる

相続人には、民法にて「法定相続分」という取り分が定められていますが、遺言書を作成することで自由に取り分を決定できます

例)相続人が妻・子ども2人の場合

・法定相続分:妻(遺産の1/2)、子どもA(遺産の1/2×1/2=1/4)、子どもB(遺産の1/2×1/2=1/4)

・遺言による指定:妻(遺産の1/4)、子どもA(遺産の5/8)、子どもB(遺産の1/8)

(遺言による相続分の指定)

第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

引用元:民法第902

遺産分割の方法と指定と分割の禁止を決定できる

民法第908条では「遺言者が遺産分割の方法を決定できる」と記載されており、分割方法の決定を第三者に委託することもできます。

さらに、相続開始時から5年を超えない期間で、遺産分割を禁止することもできます。

遺産分割では揉めることも多いため、ある程度の冷却期間を設けられるというメリットもあります。

(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

第九百八条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

引用元:民法第908条1

法定相続人ではない第三者や団体に財産を渡すことができる

遺言者の財産は、原則として配偶者や子どもなどの法定相続人が相続します。

しかし、遺言書を作成することで、そのほかの親族や知人などの法定相続人ではない第三者や団体に財産を渡すことができます

このように、遺言によって第三者などに財産を渡すことを「遺贈」と呼びます。

内縁の妻とその子どもを認知することができる

婚姻をしていない女性との間にできた子どもがいる場合、遺言にて認知することができ、その場合は子どもも相続人として遺産相続に参加できます

第三者を後見人に指定できる

未成年の子どもがいて、遺言者の死亡により親権者が不在になる場合、遺言にて第三者を後見人に指定することで、子どもの財産管理などを委ねることができます。

担保責任の負担者や負担割合について指定できる

相続財産が他人のものだったり欠陥があったりした場合、法律上、ほかの相続人には担保責任が生じます。

遺言者は、担保責任の負担者や負担割合についても遺言にて指定できます。

必要な手続きをおこなう遺言執行者を指定できる

遺産相続によって相続財産の名義変更が生じる場合、事務手続きが必要になることがあります。

遺言者は、そのような遺産相続にあたって必要な手続きをおこなう遺言執行者を指定したり、第三者に指定を委任したりすることができます

以上の8つが遺言書の主な効力です。

「どの範囲まで遺言書に記載してよいのか」「何を書けばスムーズに遺産相続が進むのか」など、遺言書の記載内容について詳しく知りたい人は弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談すれば、状況に応じて具体的なアドバイスが望めますし、自分で作成するのが難しそうであれば代わりに作成してもらうこともできます。

遺言書の種類と種類別の効力

遺言書の種類と種類別の効力

遺言書とは、被相続人(死亡した人)が、自分の死後に財産を誰に渡し、どのように分配するかなどを記載したものです。

遺産相続の際は、遺言書の記載内容に則って財産を分配するのが通常です。

しかし、遺言書の作成方法については、民法にて「法律の定める方式に従わなければならない」と明記されています(民法第960条)。

つまり、遺言書に効力を持たせるための決まりがあり、法律で定められた方式で作成された遺言書でなければ効力がないということです。

遺言書には、「普通方式の遺言書」と「特別方式の遺言書」の2種類があります。

普通方式の遺言書

特別方式の遺言書

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 一般危急時遺言
  • 難船危急時遺言
  • 一般隔絶地遺言
  • 船舶隔絶地遺言

「自分で遺言書を書くと無効になりそうで不安」「遺言書作成で失敗したくない」という人は、弁護士にサポートしてもらうのがおすすめです。

弁護士であれば、適切な作成方法をアドバイスしてくれるほか、代わりに遺言書の案文を作成してもらうこともでき、確実な遺言書を作成できます。

自筆証書遺言|全文自筆で記入し印鑑を押して保管するという遺言方式

自筆証書遺言とは、遺言者が書面に、作成年月日・遺言者氏名・遺言内容などを自筆で記入し、印鑑を押して保管するという遺言方式です。

民法で定められている遺言方式としては、自筆証書遺言が最もシンプルです。

なお、2019年1月に民法が改正されたことで、財産目録についてはパソコンで作成できるようになりました。

(自筆証書遺言)

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

引用元:民法第968

自筆証書遺言は、遺言者が自分で字を書いて印鑑を押すことができる状態であれば、いつでも自由に作成できます

自筆証書遺言の書き方や作成時の注意点などの詳細については、以下の記事で解説しています。

公正証書遺言|公証役場で作成し保管する遺言方式

公正証書遺言とは、遺言者が法律で定められた手続きに従って、公証役場で公証業務をおこなう公証人に遺言内容を伝え、その内容を公証人が遺言書に落としこむ形で作成して保管するという遺言方式です。

公正証書遺言ではいくつかの手続きを踏んで作成するため作成には時間がかかりますが、遺言書の真正性が問題になることが少なく、効力について疑義が生じにくいというメリットがあります。

遺言書の効力自体は自筆証書遺言とまったく変わりませんが、効力の確実性という点では公正証書遺言のほうが優れています。

「できるだけ確実に遺言内容どおりに遺産相続を進めてほしい」という場合には、公正証書遺言が有効です。

秘密証書遺言|遺言者が作成した遺言を公証役場で証明してもらう遺言方式

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言の中間のような遺言書です。

秘密証書遺言の場合、遺言者が遺言内容などを記入して署名・押印し、封筒に入れて押印したものと同じ印鑑で封印をしたのち、公証人に提示して所定の処理をしてもらうという方式です。

なお、普通方式の遺言書にはほかにもルールがあり、もし破った場合には無効になる恐れがあります。

特別方式の遺言書とは?|死亡の危機に置かれた人が作成する遺言書

特別方式の遺言書は普通方式の遺言書とは少し異なります。

「もうすぐ他界してしまう」などの緊急時である・船舶中の事故で死亡の危機に迫られている・伝染病などにかかり外界と隔離された状態である、などの特殊な状況に置かれた人が作成する遺言書です。

特別方式の遺言書は以下の4種類あります。

  • 一般危急時遺言
  • 難船危急時遺言
  • 一般隔絶地遺言
  • 船舶隔絶地遺言

上記の遺言書は特殊であり、以下のような規定があります。

(特別の方式による遺言の効力)

第九百八十三条 第九百七十六条から前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から六箇月間生存するときは、その効力を生じない。

引用元:民法第983

一般危急時遺言|3名以上の証人の立ち会いのもとで作成する遺言方式

一般危急時遺言とは、疾病などの理由で死亡の危機に迫られている場合、3名以上の証人の立ち会いのもとで作成する遺言方式です。

人によって状況はさまざまですが、死期が迫っていて自ら署名・押印できず、通常方式の遺言書を作成するのが困難な場合に選択するのが一般的です。

一般危急時遺言の場合、遺言者による自署や書面作成は不要ですが、証人による書面作成や署名・押印は必要です。

難船危急時遺言|船舶内で死亡の危機にあるときに作成する遺言方式

難船危急時遺言とは、遭難中の船舶内で死亡の危機に迫られている場合、2名以上の証人の立ち会いのもと口頭で作成する遺言方式です。

難船危急時遺言の場合、遺言者の自署や書面作成は不要ですが、証人による書面作成や署名・押印は必要です。

一般隔絶地遺言|外界との接触を断たれているときに作成する遺言方式

一般隔絶地遺言とは、伝染病などの理由で外界との接触を断たれている場合、警察官1名と証人1名以上の立ち会いのもとで作成する遺言方式です。

一般隔絶地遺言の場合、遺言者による自署や書面作成と、立会人による署名・押印が必要です。

一般隔絶地遺言の対象になるのは伝染病だけでなく、ほかの行政処分や刑事処分(懲役刑の宣告など)によって隔離されている場合も含まれます。

船舶隔絶地遺言|船舶内にいて外界との接触ができないときに作成する遺言方式

船舶隔絶地遺言とは、船舶内にいて外界から隔絶されている場合、船長又は船舶関係者1名及び証人2名以上の立ち会いのもとで作成する遺言方式です。

船舶隔絶地遺言の場合、遺言者による自署や書面作成と、立会人による署名・押印が必要です。

普通に生活して寿命などで亡くなる場合は普通方式の遺言書を選択するのが通常で、特別方式の遺言書はあくまでもやむを得ない場合に選択します。

このように、遺言書にはさまざまな種類やルールがあり、相続の知識がない素人では対応が難しい場合もあります。

遺言書作成で失敗するリスクを減らしたい人は、弁護士にサポートを依頼しましょう。

遺言書の効力が無効になる15の事例

ここでは、遺言書の効力が無効になる15の事例について解説します。

自筆証書遺言の効力が無効になる10の事

  1. パソコンで作成した遺言書(財産目録の部分はパソコンでも可)
  2. レコーダーなどで録音した遺言書
  3. 押印がない遺言書
  4. 日付の記載がない遺言書
  5. 日時が特定できない遺言書
  6. 遺言者以外が書いた遺言書
  7. 署名がない、あるいは他人が署名した遺言書
  8. 相続財産の内容が不明確な遺言書
  9. 2人以上の共同で書いた遺言書
  10. 作成日とは異なる日付が記載された遺言書

(自筆証書遺言)

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

引用元:民法第968

公正証書遺言の効力が無効になる5つの事

  1. 公証人が不在の状態で作成された遺言書
  2. 証人になれない人が立ち会った遺言書
  3. 公証人に口授せずに身振り手振りなどで伝えた遺言書
  4. 証人が席を外している間に作成された遺言書
  5. 証人欠格者が立ち会っており、証人の数が足りていなかった遺言書

(公正証書遺言)

第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 証人二人以上の立会いがあること。

二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

引用元:民法第969

秘密証書遺言の効力が無効になるケースは、自筆証書遺言や公正証書遺言とほぼ同じです。

なお、公正証書遺言の場合は公証人が適切な手続きによって作成するのが通常であるため、効力が無効になることは極めて稀です。

遺言書作成でよくあるミス|自筆ではない・押印がない・日付がない

遺言書作成でよくあるミスとしては、自筆証書遺言を作成する場合に全文が自筆ではない・押印がない・日付がない、などがあります。

遺言書作成で失敗したくない人は、弁護士にサポートしてもらいましょう。

弁護士は、記載内容に不備や不足がないかチェックしてくれるため、確実な遺言書を作成できます。

特別方式遺言の効力が無効になる例

上記の15種類の事例のほか、一般危急時遺言・難船危急時遺言・一般隔絶地遺言・船舶隔絶地遺言の場合は若干内容が異なります。

特別方式遺言の効力について詳しく知りたい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

各遺言書の特徴についてまとめると以下のとおりです。

遺言書に関する対応で失敗したくない人は、自力で対応するのは避けたほうが安全です。

まずは弁護士に相談して、今後の対応をアドバイスしてもらいましょう。

遺言書が無効にならないための書き方5つのコツ

遺言書には法律が定める厳格な要式があります。

要式を満たしてないと原則として「無効」となります。

特に遺言者が自己判断で遺言書を作成した「自筆証書遺言」の場合は、要式を満たしておらず無効となってしまうケースが多くあります。

そこで、自筆での遺言書の作成を検討されている方は、無効にならないため以下の要式を理解しておきましょう。

1. すべて自分で書く

遺言書は代筆をお願いしたり、パソコンを利用して作成したりした場合、無効になります。

遺言書はすべて自分で書きましょう。

ただし、財産目録などはパソコンを使い作成しても問題ありません

2. 書面で作成する

動画や録音による遺言は無効になります。

遺言は必ず書面で作成するようにしましょう。

3. 氏名を自ら書き、押印する

遺言書には、署名し、押印する必要があります。忘れずにおこないましょう。

なお、押印する際の印鑑は実印以外の認印でも問題ありません。

4. 日付を必ず入れる

日付が記載されてない場合も無効になります。

日付は必ず自分で書くようにしてください。

5. 訂正や加筆をする場合は決められた方式でおこなう

作成した遺言書を訂正・加筆したい場合は決められた方式でおこなう必要があります。

訂正・加筆の仕方は以下のとおりです。

・訂正箇所を二重線で消す

間違った部分を二重線で消します。消す際に、誤解を招かないようにしっかりと線を引いてください。

・訂正内容を記入する

訂正したい内容を訂正する場所の近くに記入します。

・署名と押印

訂正箇所の近くに署名(自分の名前を手書き)し印鑑を押します。

訂正箇所が複数ある場合、それぞれの訂正箇所に署名と押印をします。

・訂正の記録

遺言書の余白部分に、訂正箇所の数を記録し「○○箇所訂正」のように明示します。

その記録の横にも署名と押印をします。

もし、遺言書の内容の一部を「山田太郎」に100万円を遺贈すると書いたが、それを「山田花子」に訂正したい場合の例を見てみましょう。

  1. 「山田太郎」を二重線で消す。
  2. その近くに「山田花子」と記入する。
  3. その訂正箇所の横に署名と押印をする。
  4. 遺言書の余白に「1箇所訂正」のように記録し、その横にも署名と押印する。

訂正方法を間違ってしまう方も少なくありません。

訂正を間違ってしまった場合も遺言書は無効になってしまいます。

可能であれば、弁護士や司法書士に相談して訂正手続きを進めることをおすすめします。

遺言書に有効期限はないが勝手に開封すると過料がある

なかには「遺言書に有効期限はあるのだろうか」と気になる人もいるかもしれませんが、有効期限はありません。

たとえ被相続人が10年以上前に書いた遺言書でも、適切な形式で作成されていれば有効です。

遺言書を勝手に開封すると5万円以下の過料になる可能性がある

相続人が遺言書を見つけた場合、勝手に開封してしまうと罰金を取られることがあります。

民法第1005条によると、裁判所に届け出をせずに勝手に遺言書を開封してしまうと、5万円以下の過料を科せられる可能性があります。

(遺言書の検認)

第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。

3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

引用元:民法第1004

(過料)

第千五条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

引用元:民法第1005

勝手に開封しても遺言書の効力は消えない

もし相続人が遺言書をうっかり開封してしまっても、それによって相続人の資格を失うことはありません。

過料を科せられた相続人でも遺産相続を受けることができ、遺言書の効力が失われることもありません。

遺言書でも遺留分を侵害することはできない

もし遺言内容がほかの相続人の遺留分を侵害している場合は、遺留分侵害額請求がおこなわれる可能性があります

遺留分は遺言によっても侵害することができない権利として法律上認められています。

(遺留分侵害額の請求)

第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

引用元:民法第1046

遺留分とは?|相続人に保障された最低限の取り分

遺留分とは?

兄弟姉妹以外の相続人には、遺言でも除外できない遺留分が定められています。

つまり、兄弟姉妹以外の相続人には「最低限の財産を相続する権利」が保証されており、それを遺留分と呼びます

たとえば、遺言書に「知人に全ての財産を譲る」などと記載されていた場合、ほかの相続人としては親族でもない赤の他人に遺産相続されるのは納得いかないでしょう。

そのような場合に遺留分を有している相続人は、自身の遺留分が侵害されていることを主張して最低限の取り分を確保できます。

さいごに

遺産相続に関するトラブルでは、相続関係などが複雑で自力での解決が難しい場合もあります。

「遺言書の効力は何なのか」「遺言内容に問題はないか」など、少しでも不安や疑問がある場合は独断で動かないほうが賢明です。

当事者同士で解決できるのであればそれが一番ですが、遺産分割のようにお金が関わる場面では「もらえるものは少しでも多くもらいたい」などと考えてトラブルが起こることも珍しくありません。

親族間・兄弟姉妹間での争いを避けるためにも、問題がややこしくなる前に、客観的な視点から冷静に対応してくれる弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

弁護士にサポートしてもらうことで、遺言書などの相続問題に関する不安や悩みを解消でき、スムーズな遺産相続が望めます。

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この記事の監修者
Winslaw法律事務所
今田 覚 弁護士 (第一東京弁護士会)
遺産分割ですでにトラブルが発生している場合の対策や、未然にトラブルを防ぐための遺言書作成など、相続問題の幅広いニーズに対応。依頼者にとって最適な利益が何なのか、心を配った解決策の提示をポリシーとする。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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