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成年後見人の費用はいくら?内訳や相場、払えない時の対処法まで徹底解説

長谷川 達紀・日吉 加奈恵
監修記事
成年後見人の費用はいくら?内訳や相場、払えない時の対処法まで徹底解説
ベンナビ

成年後見人にかかる費用は、申立て時の実費だけでなく、毎月の報酬が本人の死亡まで発生し続ける点が大きな特徴です。

「誰がいくら払うのか」「払えない場合はどうすればいいのか」と不安を感じている方は多いでしょう。

成年後見制度は、基本的に一度始めたら途中でやめられません

開始前にコストを確認しておく必要があります。

本記事では、成年後見人の申立てにかかる費用・毎月の報酬相場を詳しく解説

費用を誰が負担するのか、払えない場合の支援制度も順に解説します。

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目次

成年後見制度とは|判断能力が不十分な人を法的に支援する制度

成年後見制度とは|判断能力が不十分な人を法的に支援する制度

成年後見制度とは、認知症や知的障害などにより判断能力が不十分になった人の財産管理・身上保護を、法的に支援するための制度です。

本人に代わって契約を締結したり、不当な取引を取り消したりする権限が後見人に与えられます。

財産を守りながら、本人の生活を安定させることが制度の目的です。

家庭裁判所が後見人を決める「法定後見」と自分で指定できる「任意後見」

成年後見制度

成年後見制度は、後見人を家庭裁判所が決める法定後見制度と、後見人を事前に自分で指定できる任意後見制度の2つがあります。

  法定後見制度 任意後見制度
概要 認知症や精神・知的障がいで判断能力が不十分な方の権利を守るため、家庭裁判所が支援者を選ぶ制度 本人の判断能力が低下する前に任意後見契約を結び、能力低下後に後見人が支援を始める制度
選任方法 家庭裁判所が選任 本人が事前に選択
類型 本人の能力に応じて後見・保佐・補助の3つの類型にわかれる 保佐や補助の類型はなし

すでに判断能力が衰えており、成年後見人(あるいは保佐人・補助人)の早急な選任が必要な場合に活用するのが法定後見制度です。

本記事では、法定後見制度を利用する際に必要となる費用について、詳しく紹介します。

なお、任意後見制度について詳しく知りたい方は「任意後見と成年後見の違いは何?権限やどんなときに効力が発動するかを比べて解説」もあわせてお読みください。

【成年後見制度の総額費用】申立て費用2万円+毎月の報酬2万円~

成年後見制度の費用

法定後見制度を利用する際にかかる費用は、大きく分けて「申立て費用」と「成年後見人への報酬」の2種類があります。

申立て費用とは、制度の利用開始のために家庭裁判所へ申立てをおこなう際に必要となる初期費用。

目安として2万円程度がかかります。

一方、成年後見人への報酬は、選任された成年後見人に対して後見業務の対価として制度の利用期間に支払うもの。

原則として毎月発生するランニングコストで、月額2万円~6万円程度が目安です。

次からは、それぞれの費用について詳しく見ていきましょう。

成年後見人の開始までにかかる初期費用3つ

成年後見制度を利用するには、手続きの開始にあたって一定の初期費用が発生します。

費用の種類は、手続きの実費・精神鑑定費用・専門家への申立て代行費用の3つです。

それぞれの相場を把握したうえで、準備を進めましょう。

①必ず発生する手続きの実費

申立てに必要な書類の取得や手数料など、手続き上の実費は必ず発生します。

総額の目安は 2万円前後です。

必要書類 費用の目安
戸籍謄本 450円程度
住民票または戸籍附票 300円程度
診断書 5,000円~10,000円程度
後見登記されていないことの証明書 300円
残高証明書 1,000円程度
不動産の登記事項全部証明書 600円
郵便切手代 3,000円~5,000円程度
後見登記手数料 2,600円(収入印紙)
申立て手数料 800円(収入印紙)

戸籍謄本(自治体)|450円程度

成年後見人の申立書には、裁判所が指定する戸籍謄本を添付する必要があります。

戸籍謄本の取得費用は「1通につき450円程度」です。

申立ての内容や親族関係の複雑さによって、複数の戸籍謄本を取得しなければならないケースも少なくありません。

場合によっては、戸籍謄本の取得費用だけで数千円から1万円を超える場合もあるでしょう。

住民票または戸籍附票(自治体)|300円程度

成年後見人の申立書には、後見人候補者の住民票または戸籍附票の提出を求められます。

住民票・戸籍附票の発行手数料は「1通につき300円程度」です。

しかし戸籍謄本と同じく、事案によっては複数の書類が必要になる場合は費用も増加します。

たとえば、複数の後見人候補者がいる場合や、過去の住所歴を証明するために戸籍附票を複数取得する必要がある場合などです。

診断書(医療機関)|5,000円~10,000円程度

診断書の作成費用は医師・病院によって異なりますが、 5,000円から10,000円程度が目安です。

成年後見人の申立てをおこなう場合、原則として主治医などが作成した診断書の提出が必要です。

本人の判断能力の程度を医学的に評価するもので、後見・保佐・補助のどの類型に該当するかを判断する資料となります。

後見登記されていないことの証明書(法務局)|300円

申立て対象者がすでにほかの成年後見制度(後見・保佐・補助)を利用していないことを示すための書類が必要で、取得費用は「1通につき300円」です。

収入印紙を貼付して納付します。

全国の法務局や地方法務局本局の戸籍課窓口で申請・取得可能です。

ただし、支局や出張所では取り扱いがないためご注意ください。

残高証明書(金融機関)|1,000円程度

残高証明書の取得にかかる費用は金融機関によって異なりますが、一般的に1,000円程度がかかります。

残高証明書は、金融機関の特定日における預貯金残高を証明する書類です。

本人の財産状況を正確に把握するために必要となります。

複数の金融機関に口座がある場合は、それぞれで取得手続と手数料が発生するため、事前に各金融機関の手数料を確認しておくのがおすすめです。

また、証券会社に口座があると有価証券の残高証明書も必要になる場合もあります。

不動産の登記事項全部証明書(法務局)|600円

不動産の登記事項全部証明書の取得にかかる費用は「1通あたり600円」です。(オンライン請求で窓口受取の場合は490円、オンライン請求で普通郵便での郵送の場合は520円)

不動産を所有している場合は、本人の財産状況を示す資料として登記事項全部証明書が必要です。

複数の不動産を所有している場合は、それぞれの物件ごとに証明書の取得が求められます。

郵便切手代(郵便局)|3,000円~5,000円程度

成年後見の申立て手続きでは、家庭裁判所が関係者に書類を送付したり、登記を嘱託したりする際に郵便切手が必要となります。

必要な切手の金額や内訳は申立てをおこなう家庭裁判所によって異なりますが、 3,000円~5,000円程度が目安です。

家庭裁判所によって必要な金額・内訳が異なるため、申立て先に事前確認をしてください。

後見登記手数料|2,600円(収入印紙)

後見開始の審判後に法務局へ登記をおこなう手数料として、2,600円が必要です。

収入印紙を購入して申立書に貼付する形で支払います。

後見登記は、成年後見人などの選任やその権限範囲を公示する重要な手続きで、取引相手や金融機関が成年後見人の権限を確認するため3に利用されます。

申立て手数料|800円(収入印紙)

家庭裁判所に後見開始の申立てをする際に納める手数料で、800円分の収入印紙を申立書に貼付して提出します。

申立ての類型(後見・保佐・補助)にかかわらず金額は同一です。

収入印紙は郵便局や法務局などで購入できます。

②医師の精神鑑定が必要な場合の費用|10万円~20万円

家庭裁判所が必要と判断した場合、医師による精神鑑定がおこなわれます。

費用の相場は10万円~20万円程度です。

裁判所が指定した医師に対して本人の財産から支払ってください

医師の精神鑑定は全ての申立てで実施されるわけではありません。

実施される割合は全申立件数の約3%~4%程度(※)で、多くのケースでは鑑定なしで手続きが進みます

※参照元:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」(令和7年1月~12月)

③弁護士や司法書士、行政書士へ支払う書類作成および申立て代行費用|10万円~30万円

専門家に申立書類の作成や手続きの代行を依頼する場合、別途費用が発生します。

相場は10万円~30万円程度で、事務所や依頼内容によって異なります。

専門家 業務範囲 費用相場
弁護士 申立書類の作成・収集、裁判所対応、後見人候補者の選定、制度比較の提案、親族間トラブルへの対応 15万円~30万円程度
司法書士 申立書類の作成・収集、裁判所への書類提出 10万円~20万円程度
行政書士 申立書類の作成・収集(裁判所への提出・代理は不可) 10万円~15万円程度

書類作成や手続きを自分でおこなうなら不要な費用ですが、書類の複雑さや精神的な負担を考えると、専門家への依頼を検討する価値は十分にあるでしょう。

特に弁護士であれば申立代行だけでなく、後見人候補者の選定や制度の比較提案まで一括して対応してもらえます。

成年後見人へ毎月支払う報酬の相場

成年後見人へ支払う「毎月の報酬」

成年後見制度を開始すると、後見人へ報酬を毎月支払わなくてはいけません。

報酬額は後見人が自由に設定するのではなく、家庭裁判所が本人の財産状況や業務内容をもとに決定します。

報酬は基本報酬、付加報酬の2種類。

別途、監督人が選任された場合の報酬もかかります。

①財産額に応じて変動する基本報酬|毎月2万~6万円

基本報酬は、成年後見人が通常の後見業務をおこなう際に支払われる報酬です。

費用の目安は「月額で2万円から6万円程度」とされており、管理する財産の額に応じて基本報酬が決められるのが一般的です。

たとえば、東京家庭裁判所および東京家庭裁判所立川支部では、以下の基準が公表されています。

管理財産額 月額報酬の目安
1,000万円以下 月額2万円
1,000万円超~5,000万円以下 月額3万~4万円
5,000万円超 月額5万~6万円

参照元:東京家庭裁判所 東京家庭裁判所立川支部「成年後見人等の報酬額のめやす」

財産額が多いほど報酬が高くなる仕組みです。

本人の財産が多い場合、毎月の負担も大きくなる点を理解しておきましょう。

②特別な業務をおこなった場合の付加報酬|基本報酬額の50%の範囲内で決定

後見人が通常の財産管理に加えて、特別に困難な業務をおこなった場合、基本報酬とは別に付加報酬が認められます

付加報酬の上限は基本報酬額の50%以内です。

具体的には、以下の手続きが該当します。

  • 介護保険サービスの契約手続
  • 訴訟対応
  • 身元引受対応
  • 施設入退所の手続き など

全ての後見人に毎月発生するわけではなく、該当する業務があった期間のみ家庭裁判所が認める形で発生します。

③成年後見監督人が選任された場合の費用|毎月1万~3万円

家庭裁判所が必要と判断した場合、後見人の業務を監視・監督するための成年後見監督人が別途選任されることがあります。

監督人への報酬は、後見人報酬とは別枠で月額1万円~3万円程度です。

管理財産額 監督人報酬の目安
5,000万円以下 月額1万~2万円
5,000万円超 月額2万5,000円~3万円

監督人が選任されるケースとしては、後見人と本人が親族関係にある場合や、管理財産が高額な場合が挙げられます。

後見人報酬と監督人報酬の合計額が、毎月の実質的な負担です。

家族(親族)か専門家で成年後見人の費用に違いはある?

専門職後見人(弁護士や司法書士、行政書士など)が、親族後見人と比べて報酬が高くなることは基本的にありません。

成年後見人の報酬額は、業務の内容や本人の財産状況をもとに家庭裁判所が公平に決定するものであり、後見人が自由に金額を設定できるわけではないためです。

ただし、管理する財産が高額だったり親族間の紛争解決といった専門的な対応が求められたりするケースでは、弁護士が後見人に就任する可能性が高まります。

結果、特別な業務に対して付加報酬が認められやすくなり、報酬総額が親族後見の場合よりも高くなるでしょう。

なお、親族が成年後見人に選任された場合、報酬を請求せず無報酬とするケースも多く見られます。

本人への扶養義務の一環として捉える家族や、報酬を受け取ることへの遠慮から、あえて無報酬を選択する方が実情として多いようです。

成年後見人への報酬はいつまで払う?

成年後見人への報酬の支払いは、後見人の任務が終了するまで払い続けます。

任務が終了するのは、以下の場合です。

任務終了時 具体例
本人が死亡したとき
成年後見人が死亡したとき
家庭裁判所によって後見開始の審判が取り消されたとき 本人の判断能力が回復した
成年後見人が辞任したとき 病気や高齢で任務を遂行できなくなった、遠方へ転居した など
成年後見人が欠格事由に該当した 後見人が自己破産した、行方不明になった など
成年後見人が家庭裁判所によって解任されたとき 正当な理由なく職務を放棄した、後見人が本人の財産を横領した など

認知症などの病気は医学的に完治が難しいため、基本的には本人が亡くなるまで後見業務が継続します。

途中で「費用が高い」「家族で面倒を見ることになった」といった事情があっても、自己都合による中途解約は法的に一切認められません

例えば80歳の親に後見人をつけ、90歳で亡くなるまでの10年間、専門家が後見人を務めた場合を試算すると、報酬の累計額は約240万円~720万円(※)にもなります。

制度を開始する前に、本人の財産がいつまで報酬を賄えるかシミュレーションしておくことが重要です。

※月額2万円~6万円で計算

2026年6月、成年後見制度の終身利用を見直す改正民法が参院本会議で可決・成立しました。民法改正後は、本人や家族の希望に合わせて、利用途中でも制度の解約ができるようになる見込みです。

成年後見人の費用は誰が支払う?

成年後見人の費用は、原則として全て本人(被後見人)の財産から支払われます

成年後見制度は本人の生活と財産を守るための制度であるため、本人の預貯金・年金・不動産などの個人資産から差し引かれる仕組みです。

申立て時の実費(印紙代や診断書代など)を親族が一度立て替えた場合でも、家庭裁判所の許可があれば、審判後に本人の財産から精算して回収できます。

家族や親族が自己資金から後見費用を持ち出す必要はないため、親族側の金銭的負担はありません

本人の財産がどの程度あるかを事前に整理し、長期的に報酬を賄えるかどうかを確認しておきましょう。

成年後見人の費用が払えない場合の対処法2つ

本人の資産が少なく、成年後見人の費用を支払うのが困難な場合でも、①自治体の利用支援事業、②法テラスの立替制度の2つが利用できます。

いずれの制度も低所得者向けの利用要件が設けられていますが、要件を満たせば費用負担をほぼゼロにするか、大幅に軽減したうえで後見制度を利用できます。

費用が払えないからといって、判断能力がない親をそのまま放置する必要はありません

法テラスの民事法律扶助制度を利用する

弁護士や司法書士に支払う申立て代行費用を準備できない場合は、法テラスの「民事法律扶助制度」を利用できる可能性があります。

制度の利用で、費用の立て替えと分割払いが可能です。

具体的には、法テラスが専門家への手数料を一時的に全額立て替え、利用者は毎月5,000円~10,000円程度の無理のない範囲で分割返済していきます。

生活保護受給者の場合は、返済義務が免除または猶予される特例も用意されています。

利用には、本人および配偶者の手取り月収や保有資産が一定基準以下であることなどの資力要件をクリアする必要があります。

家族人数 収入基準 資産基準
生活保護の基準に定める一級地 そのほか 地域共通
一人 200,200円以下 182,000円以下 180万円以下
二人 276,100円以下 251,000円以下 250万円以下
三人 299,200円以下 272,000円以下 270万円以下
四人 328,900円以下 299,000円以下 300万円以下

※生活保護の基準に定める一級地:東京都特別区・大阪市など

※家賃や医療費などを支払っていれば要件を満たしていなくても利用できる場合あり

詳しい基準は法テラスの公式サイトまたは最寄りの法テラスで確認してください。

市区町村の成年後見制度利用支援事業を利用する

各市区町村では「成年後見制度利用支援事業」などの名称で、成年後見制度の利用に対する助成制度を設けています。

申立書作成費用や成年後見人の報酬にかかる費用の一部が助成される制度です。

たとえば、東京都目黒区では以下のように条件・支給額を定めています。

利用対象者 目黒区内に住所を有する者で、以下のいずれかに該当する者
①生活保護受給者(被保護者)
②後見人報酬の負担により生活保護が必要な状態となる者
③その他、会長が必要と認める者
助成金額 在宅生活者 月額上限 28,000円
施設入所者 月額上限 18,000円
助成期間 原則12か月分まで(年度ごとに更新)

※参照元:目黒区社会福祉協議会「成年後見制度報酬助成事業実施要領」

助成要件や上限額は市区町村ごとに独自に設定されています。

利用を検討する場合は、事前に居住地の自治体に確認してください。

成年後見人の費用を抑える方法

成年後見人の費用を抑えるには、以下の2つの方法が有効です。

  • 家族(親族)が後見人に就任して報酬を無償にする
  • 申立て手続きを自分でおこなう

親族が後見人に就任し、無償で活動すると決めれば、毎月の後見人報酬は発生しません。

ただし、管理財産が1,000万円以上ある場合は裁判所の判断で専門家が選任されやすく、実現できないケースもあります。

なお、監督人が選任された場合はその報酬(月1万~3万円程度)が別途発生するため、完全に無償になるとは限らない点は把握しておきましょう。

また、申立て手続きを自分でおこなうと、弁護士や司法書士への代行費用を節約できます。

相続関係がシンプルで、書類収集や申述書の作成に時間を割ける場合は、自分で手続きを進める選択肢も検討してみてください。

ただし、手続きが複雑な場合や期限が迫っている場合は、専門家への依頼をおすすめします。

成年後見制度を利用するメリット・デメリット

成年後見制度は、判断能力が低下した本人を強力に保護できる制度ですが、同時に財産の自由な管理や運用ができなくなるなどの制約も伴います。

「費用がかかり続ける」「一度始めたら途中でやめられない」という実態を理解せずに利用し、後から親族間で揉めるケースは少なくありません。

本人の財産を守るという目的と、家族全体の生活の利便性を天秤にかけたうえでの判断が重要です。

成年後見制度を利用するメリット

後見制度を利用する主なメリットは次のとおりです。

  • 本人の財産と権利を安全に守れる
  • 不利益な契約を取り消せる
  • 各種法的手続きを後見人が代理でおこなえる

後見人が財産を一括管理するため、親族による勝手な引き出しや詐欺による財産搾取を防止できます。

また、本人がサインしてしまった不当な高額商品やリフォーム契約は、後見人の取消権によって事後的に無効化できる点も見逃せません。

さらに、本人が参加できない場合でも、後見人が代理人として遺産分割協議・不動産売却・施設入所契約を有効に締結できます。

本人の判断能力がない状態では進められなかった手続きが、後見制度によりスムーズに動き出す点は大きな利点です。

成年後見制度を利用するデメリット

一方、成年後見制度を利用するデメリットは主に次のとおりです。

  • 毎月の基本報酬が発生し続ける
  • 家族であっても財産の処分が極めて不自由になる
  • 資産運用や節税対策が禁止される
  • 自己都合では原則辞められない

本人の生活・看護に必要な使途以外の金銭移動は裁判所に差し止められ、親族への仕送りや援助も困難になります。

生前贈与やアパート経営・株式投資などの積極的な節税・資産形成は「財産を減少させるリスク」とみなされ、認められません。

相続税対策として生前から動いていた場合も、後見開始後は原則として停止することになります。

また、途中で「費用がかかるから」「自分たちで面倒を見るから」という理由で中止できません。

生涯にわたり維持コストを支払い続ける責任を負う点は、利用前に必ず理解しておくべきです。

今後、民法改正により、途中でも辞められるようになる見込みです。しかし新たな成年後見制度が開始されるのはまだ先の話のため、現行においては長期の維持コストは大きなデメリットでしょう。

成年後見制度選びや判断能力の有無は弁護士に早めに相談するべき

成年後見制度を利用すべきかどうか、本人の判断能力がどの程度あるかの判断は、法律と相続の実務に精通した弁護士に早めに相談することをおすすめします。

成年後見を一度開始すると途中で辞められないため、自己判断のみの安易な申立ては避けるべきです。

弁護士であれば、本人の判断能力の段階に応じて「法定後見」が適切か、「家族信託」などの柔軟な生前対策が可能かについて、別ルートとの比較提案もおこなえます。

また、家庭裁判所への申立書類の作成や精神鑑定に向けた準備も、弁護士のサポートがあればスムーズに進められます。

親の財産をめぐる問題は放置するほど選択肢が狭まるため、少しでも不安を感じたら早期に専門家へ相談してください。

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親の財産問題は、放置するほど深刻化します。

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成年後見人の費用に関するよくある質問

成年後見人の費用について、当事者やご家族から相談頻度の高い疑問をQ&A形式で解説します。

制度の利用を判断する際の参考にしてください。

個別の事情に関しては、弁護士への直接相談をおすすめします。

複数の後見人を選任した場合の費用は?

複数の成年後見人が選任された場合でも、本人が支払う報酬の総額は原則として増えません

一人分の基本報酬(月額2万~6万円程度)が、各後見人の業務量や分担に応じて按分されます。

ただし、成年後見監督人が別途選任された場合の監督人報酬(月1万~3万円程度)は、後見人の取り分とは別枠で追加発生します。

その分は負担増となるため、監督人が選任される可能性があるかどうかも事前に確認しておきましょう。

親族が後見人になれば毎月の費用は無料になる?

親族が成年後見人になり、報酬付与の申立てをしない(無償で活動する)と決めれば、毎月の後見人報酬は発生しません

ただし、親族が後見人になった場合でも、裁判所の判断で成年後見監督人が選任されると、監督人報酬(月1万~3万円程度)は別途発生します。

なお、管理する流動資産が1,000万円以上ある場合は、裁判所の職権で専門家が後見人に選ばれる確率が高いのが実情です。

実質、親族単独での無償後見を実現できないケースも少なくありません。

成年後見人による不正行為(財産の使い込み・横領など)は大丈夫?

家庭裁判所による定期的な監査や、不正を物理的に防ぐ仕組みが整っているため、不正のリスクは極めて低く抑えられています

後見人は年1回以上、全ての収支報告書と通帳のコピーを裁判所に提出して監査を受ける義務があります。

また、不正行為の防止には、後見制度支援信託や後見制度支援預金も有効です。

日常生活費以外の高額な預金は裁判所の指示書がなければ引き出せない口座に固定されるため、使い込みが物理的に不可能になります。

万が一、専門家後見人が不正をおこなった場合は、各士業団体の補償基金や賠償保険による補填に加え、刑事告発による厳罰が科されます。

認知症の親の家を売却して後見人の費用に充てられる?

売却は可能ですが、売却対象が本人の居住用不動産である場合、必ず事前に家庭裁判所の許可(居住用不動産処分の許可)が必要です。

老人ホームに入居して空き家になっている実家であっても、本人の生活の基盤であった場合は居住用不動産に該当します。

裁判所の許可なく売却契約を交わすと、契約自体が無効になるので注意しましょう。

後見人の費用や介護・入院費用を捻出するために「ほかに方法がない」といった経済的合理性が認められれば、売却許可が下りる可能性は高いです。

まずは成年後見人に相談し、裁判所への申立て手続きを進めてください。

生活保護受給者が成年後見人を利用する場合、費用はどうなる?

生活保護受給者であっても、成年後見制度の利用は可能です。

費用面は公的支援制度で負担を大幅に軽減できます。

申立て時にかかる専門家(弁護士・司法書士)への代行費用は、法テラスの民事法律扶助制度を利用することで、費用を一時的に立て替えてもらえます。

ただし、あくまで立替えであるため、後日分割で返済する必要があります。

生活保護受給者の場合は返済が猶予・免除される特例が適用される場合もあるため、法テラスに直接確認してください。

また毎月の後見人報酬は、各市区町村の成年後見制度利用支援事業による助成を活用しましょう。

助成の対象や上限額は自治体ごとに異なりますが、生活保護受給者や報酬負担により生活保護が必要になる者が主な対象です。

手続きは、居住地の自治体窓口や地域包括支援センターに確認してください。

まとめ

成年後見人には、申立て時の実費(約2万円)に加え、毎月発生する報酬(月額2万円~6万円)の費用がかかります。

さらに、精神鑑定が必要な場合や、専門家に申立て代行を依頼した場合は別途費用が発生する仕組みです。

初期費用 申立て時の実費 約2万円
精神鑑定 10万円~20万円
専門家へ支払う申立て代行費用 10万円~30万円
毎月支払う報酬 基本報酬 月額2万円~6万円
特別な業務時の付加報酬 基本報酬額の50%
成年後見監督人 月額1万円~3万円

費用を負担するのは親族ではなく本人の財産であるため、制度を開始する前に本人の財産が長期にわたって報酬を賄えるかどうかの確認が必要です。

現状、一度開始すると原則として取り消せない制度であるため、本当に成年後見を選択すべきか判断することをおすすめします。

申立て前に弁護士へ相談すると、後悔なく制度を選択できるでしょう。

成年後見制度や親族間での相続トラブルに悩んでいる方は、ベンナビ相続で弁護士を探してみてください

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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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