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寄与分とは|介護等の貢献があった際の計算方法や認められる要件・事例を解説

川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士
監修記事
Kiyobun
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寄与分とは、被相続人に対して特別な寄与をした場合、相続での取り分が多くなるという制度です。

特別な寄与に該当するケースとしては、被相続人の介護を何年も続けていたり、被相続人の会社を引き継いで業績を伸ばしたりした場合などがあります。

本記事では、寄与分が認められるケースや寄与分の計算方法、寄与分を主張する際の流れなどを解説します。

「寄与分を獲得したい!」とお悩みの方へ

「介護などで被相続人に貢献したけど、寄与分って認められるのかな...」と悩んでいませんか?

結論からいうと、寄与分に関するお悩みは弁護士への相談・依頼をおすすめします。あなたのケースと希望に合わせて、代理人となって尽力してくれるでしょう。

弁護士に依頼することで以下のようなメリットを得られます。

  • 調停で寄与分をより認めてもらいやすくなる
  • 寄与分に関する不安を相談できる
  • 調停で争う場合に、法的な視点から助言してもらえる
  • ほかの相続人との関係悪化を防げる

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この記事に記載の情報は2023年12月05日時点のものです

寄与分が認められるケース

ここでは、寄与分の成立要件や種類、寄与分が認められた判例などを解説します。

寄与分の成立要件

民法では、寄与分の成立要件について以下のように定められています(民法第904条の2第1項)。

  1. 共同相続人による寄与行為であること
  2. 寄与行為が特別の寄与であること
  3. 被相続人の財産の維持または増加があり、寄与行為との間に因果関係があること

寄与行為の一例としては以下のとおりです。

  • 被相続人の事業の手伝いをした
  • 被相続人の事業に資金提供をした
  • 仕事を辞めて、入院している被相続人の付き添いをした

さらに、寄与分が認められるためには「特別な寄与であるかどうか」もポイントで、以下の4つの要件も満たしている必要があります。

  1. 報酬などはもらっておらず、無償性があること
  2. 長期間にわたって従事してきて、継続性があること
  3. 片手間でおこなっておらず、専従性があること
  4. 被相続人と一定の身分関係であること(配偶者・子ども・兄弟姉妹など)

寄与分の種類

寄与分が認められるケースについては、家事従事型・金銭等出資型・療養看護型・扶養型・財産管理型の5種類に分類されます。

家事従事型

被相続人の事業に無償に近い形で従事して、被相続人の財産増加に寄与した場合は、家事従事型に該当します。

ここでの事業の代表例としては、農業や商工業などがあります。

金銭等出資型

たとえば、被相続人にあたる夫が自身の名義で不動産を取得する際、相続人にあたる妻が自身の収入を提供した場合は、金銭等出資型に該当します。

ほかにも、相続人が被相続人の借金を肩代わりした場合なども該当します。

療養看護型

被相続人の療養看護をして、付き添い看護費の支出を免れさせるなどして相続財産の維持に寄与した場合は、療養看護型に該当します。

なお、療養看護型は「病気の看護」と「老親の看護」に分類され、老親の看護のほうが貢献度は高いと判断されます。

扶養型

被相続人を扶養して生活費などを賄い、相続財産の維持に寄与した場合は、扶養型に該当します。

なお、夫婦についてはお互いに相互扶助の義務があり、父母や兄弟姉妹などもお互いに扶養する義務があるため、これらについてはケースバイケースでの判断となります。

財産管理型

被相続人の財産管理をして管理費用の支出を免れた場合や、被相続人が持つ土地の売却にあたり、立ち退き交渉や書類手続きなどをして売却代金を増加させた場合などは、財産管理型に該当します。

寄与分が認められた判例

ここでは、実際に寄与分が認められた判例を紹介します。

家事従事型の判例

この判例では、被相続人の家業である農業の後継者として従事したことで、相続人の寄与分として1,000万円を認める判決が下されました。

【参考】千葉家裁判決 平成3年7月31日(Westlaw Japan 文献番号1991WLJPCA07310010)

金銭等出資型の判例

この判例では、被相続人の生前に金銭を出資したことで、相続人の寄与分として約450万円を認める判決が下されました。

【参考】和歌山家裁判決 昭和59年1月25日(Westlaw Japan 文献番号1984WLJPCA01250007)

療養看護型の判例

この判例では、認知症で常時見守りが必要な被相続人を介護したことで、相続人の寄与分として876万円を認める判決が下されました。

【参考】大阪家裁判決 平成19年2月8日(Westlaw Japan 文献番号2007WLJPCA02086001)

財産管理型の判例

この判例では、被相続人が持つ土地の売却にあたって立ち退き交渉や売買契約の締結などをしたことで、相続人の寄与分として300万円を認める判決が下されました。

【参考】長崎家裁判決 昭和62年9月1日(Westlaw Japan 文献番号1987WLJPCA09010001)

調停で寄与分を認めてもらうために必要なもの

寄与分については、相続人同士で遺産分割協議をしたり、裁判所の手続きである調停や審判などをしたりして決定します。

調停で寄与分を認めてもらうためには、以下について客観的に証明できるものが必要です。

  • 被相続人の事業に関する労務の提供
  • 被相続人の事業に関する財産上の給付
  • 被相続人の療養看護

ここでは、調停時に準備すべきものについて解説します。

家業に従事したという記録

たとえば、タイムカードがあれば証拠として有効です。

自営業などでタイムカードがない場合は、近所の人の証言や取引先相手とのメールのやり取りなどが参考になります。

被相続人の介護をしていたことがわかるもの

診断書・カルテ・介護認定に関する記録・介護ヘルパーの利用明細・連絡ノートなどが証拠として有効です。

介護期間・1日の介護時間・介護内容などがわかるもの

介護状況については、介護日記が証拠として有効です。

なお、介護が原因で仕事を休んだり休日出勤をしたりした際の記録なども参考になります。

銀行口座の通帳・クレジットカードの使用履歴

被相続人と金銭のやり取りがあった場合は通帳の写し、クレジットカードを使用した場合は使用履歴などが証拠として有効です。

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寄与分の計算方法

寄与分については基本的な計算方法があるものの、実際は家庭裁判所の裁量によって金額が変動します。

以下はあくまで目安のひと一つとして参考にしてください。

家事従事型の計算方法

家事従事型の場合、寄与分の計算方法は以下のとおりです。

寄与分額=寄与者が受け取るべき相続開始時の年間給付額×(1-生活費控除割合)×寄与年数

金銭等出資型の計算方法

金銭等出資型の場合、寄与分の計算方法は以下のとおりです。

不動産取得のための金銭贈与

寄与分額=相続開始時の不動産額×(出資金額/取得当時の不動産額)

不動産の贈与

寄与分額=相続開始時の不動産額×裁量的割合

不動産の使用賃借

寄与分額=相続開始時の賃料相当額×使用年数×裁量的割合

金銭の贈与

寄与分=贈与当時の金額×貨幣価値変動率×裁量的割合

療養看護型の計算方法

療養看護型の場合、寄与分の計算方法は以下のとおりです。

療養看護

寄与分額=付添婦の日当額×療養看護日数×裁量的割合

療養に関する費用負担

寄与分額=実際の負担額

扶養型の計算方法

扶養型の場合、寄与分の計算方法は以下のとおりです。

現実の引取り扶養

寄与分額=(実際の負担額または生活保護基準による額)×期間×(1-寄与者の法定相続分割合)

扶養料の負担

寄与分額=負担扶養料×期間×(1-寄与者の法定相続分割合)

財産管理型の計算方法

財産管理型の場合、寄与分の計算方法は以下のとおりです。

不動産の賃貸管理・占有者の排除・売買契約締結についての関与

寄与分額=第三者に委任した場合の報酬額×裁量的割合

火災保険料・修繕費・不動産の公租公課の負担など

寄与分額=実際の負担額

寄与分がある場合の相続分の計算方法

寄与分がある場合、相続分の計算方法は以下のとおりです。

  • 寄与者の相続分=(相続開始時の財産価格-寄与分の価格)×相続分+寄与分の価格

ここでは、以下のようなケースを想定した場合の相続分の計算方法を解説します。

  • 相続財産:5,000万円
  • 相続人:妻・長男・次男
  • 寄与分について:妻は被相続人である夫の看護を10年間しており、1,000万円の寄与分が認められた

みなし相続財産の計算方法

みなし相続財産とは、寄与分を控除したあとの相続財産のことで、今回のケースでは以下のように計算します。

  • みなし相続財産=5,000万円-1,000万円=4,000万円

各相続人の相続分の計算方法

各相続人の相続分は、以下のように計算します。

  • 妻の相続分:4,000万円×1/2+1,000万円=3,000万円
  • 長男の相続分:4,000万円×1/2×1/2=1,000万円
  • 次男の相続分:4,000万円×1/2×1/2=1,000万円

上記のとおり、相続で寄与分がある場合は、相続財産から寄与分を控除してから分配します。

寄与分がある場合の遺留分の対応

遺留分とは、一定の相続人が最低限受け取れる相続分のことです。

たとえば、遺言内容が不平等で相続人の遺留分が侵害されている場合は、その相続人は遺留分侵害額請求をして自身の相続分を取り戻すことができます。

ただし、寄与分については遺留分との明確な優先順位が規定されていません。

さらに、遺留分侵害額請求の対象は遺贈と贈与に限られていることから、寄与分に対する遺留分侵害額請求はできないということになります(民法第1046条2項1号)。

なお、「相続財産が不動産のみで寄与者に遺贈された」というようなケースでは、不動産全体が遺留分算定の基礎となります(民法第1044条第904条の2を準用していないため)。

この場合は、寄与者は自己の寄与分を控除して不動産を評価することはできないということになります。

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寄与分を主張する際の流れ

ここでは、相続で寄与分を主張する際の流れについて解説します。

遺産分割協議で寄与分を主張する

被相続人が遺言書を作成していない場合は、遺産分割協議にて分配方法を決定します。

まずは遺産分割協議にて寄与分を主張し、ほかの相続人が合意してくれれば遺産分割協議書を作成して手続きは終了となります。

しかし、寄与分を認めるとほかの相続人は取り分が減ってしまうため、なかには主張が受け入れてもらえないこともあります。

その場合は、調停に移行して寄与分を主張します。

寄与分を求める調停を申し立てる(遺産分割協議では解決しない場合)

寄与分の主張を受け入れてもらえない場合は、書類や費用を準備して裁判所に調停を申し立てます。

調停では根拠となる証拠などを用いて寄与分を主張し、合意を目指して話し合いを進めます

以下では、調停で必要な書類や費用について解説します。

必要書類

調停を申し立てる際は、以下の書類を「ほかの相続人のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所」または「相続人同士で合意した家庭裁判所」に提出します。

裁判所の場所は「各地の裁判所一覧|裁判所」から確認できます。

  • 申立書1通、相手方の人数分の申立書の写し
  • 申立添付書類
  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍附票
  • 遺産に関する証明書:不動産登記事項証明書および固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書・有価証券の写しなど
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の父母の出生時から死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の兄弟姉妹の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 甥姪の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子ども(および代襲者)で死亡している人がいる場合:その子ども(および代襲者)の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

費用

調停にかかる費用は以下のとおりです。

  • 申立人1人につき収入印紙1,200円分
  • 連絡用の郵便切手(裁判所によって異なる)

連絡用の郵便切手の金額については「各地の裁判所一覧|裁判所」から自身の申し立て先に直接確認してください。

審判に移行する(調停では解決しない場合)へ

調停では解決しない場合は、自動的に審判へ移行します。

審判の場合、根拠となる証拠などを用いて寄与分を主張したのち、裁判官によって判決が下されます。

【関連記事】遺産分割審判の流れと弁護士に相談して有利に進める方法

特別受益がある場合の寄与分の扱い

特別受益とは、被相続人から受け取った特別な利益のことで、生前贈与・遺贈・死因贈与などが該当します。

特別受益がある場合は、その贈与の価額を相続財産に加算し、加算額を基礎として各相続人の相続分を計算するのが通常です。

ただし、特別受益だけでなく寄与分もある場合は、特別受益者と寄与者が同じ場合と異なる場合で処理が異なります。

寄与者と特別受益者が同じ場合

寄与者と特別受益者が同じ場合は、「特別授与は寄与に対する対価といえるかどうか」がポイントとなります。

もし特別受益が寄与に対する対価として認められる場合は、「すでに寄与分は支払われたもの」として寄与分は認めずに計算します。

一方、特別受益が寄与に対する対価として認められない場合は、基本的に寄与分と特別受益を同時に適用して計算します。

寄与者と特別受益者が異なる場合

寄与者と特別受益者が異なる場合は、基本的に寄与分と特別受益を同時に適用して計算します。

遺言書では寄与分を定めることができない

被相続人が遺言書を作成している場合は、遺言内容に則って分配するのが通常です。

しかし、「妻に寄与分として遺産の半分を与える」「子どもには寄与分を与えない」というように、遺言によって寄与分を定めることは原則としてできません

相続人ではない親族でも「特別の寄与」は認められる

これまでは、子どもの配偶者などの相続人以外の親族が被相続人に対して何らかの貢献をしても、その貢献分を考慮することが困難な状況でした。

しかし、2019年7月の民法改正により、相続人以外の親族でも被相続人に対して特別な貢献があった場合は、「特別の寄与」があったとして相続人に金銭の請求ができるようになりました(民法第1050条)。

これは民法第904条の2の寄与分とは異なる制度として設けられたものですが、内容的には類似するものなのであわせて覚えておきましょう。

もし、このような「特別の寄与」があったと考えられる場合は、弁護士に相談しましょう。

さいごに

寄与分にはさまざまな成立要件があり、たとえ被相続人のために貢献していても、証拠などを準備して的確に主張できなければ協議が長引いたりする恐れがあります。

弁護士であれば、寄与分の主張や証拠収集などの対応を一任でき、調停や審判に移行した場合もそのまま対応してくれます。

寄与分の成立要件を満たしているかどうかのアドバイスなども望めますので、まずは一度相談してみることをおすすめします。

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この記事の監修者
川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士 (神奈川県弁護士会)
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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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