遺言執行者とは、遺言内容を正確に実現させるために必要な手続きなどをおこなう人のことです。
基本的に遺言執行者は誰でもなることができますが、仕事内容や選任方法などについてよくわからないという方も多いでしょう。
本記事では、遺言執行者の必要性や役割を詳しく解説します。
遺言執行者になれる人や選任方法なども紹介するので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
まずは、遺産相続における遺言執行者の基本的な知識を解説します。
遺言執行者の主な役割は、被相続人の遺言内容を実現することです。
被相続人が遺族のために遺言を残したとしても、正確に実行されなければ意味がありません。
実際、遺言が放置されたり、誰が執行していくのかで揉めたりするケースはよくあります。
そこで、リスク回避の手段として用いられるのが「遺言執行者」の制度です。
信頼できる人物を「遺言執行者」に指定することで、被相続人の死後、スムーズに遺言を執行できるようになります。
遺言執行者には以下のような手続きをおこなう権限が与えられ、相続人に対して進捗状況を報告する必要があります。
基本的には上記の手続きをこなしていくことになりますが、まずは下記の3点から始めるのがよいでしょう。
なお、就任通知書と財産目録は「遺言書の写し」とあわせて全ての相続人へ交付します。
遺言執行者の報酬に、一律の決まりはありません。
相続人のいずれか一人を遺言執行者に指定する場合には、報酬が発生しないこともあります。
弁護士・司法書士・信託銀行などに依頼した場合は、遺産総額の1%~3%を目安に考えておくとよいでしょう。
依頼先によって報酬は大きく変わるので、あらかじめしっかりと料金体系を確認しておくことが大切です。
なお、遺言執行者への報酬は、遺産のなかから相続人が支払うケースが一般的といえます。
未成年者や破産者以外であれば、誰でも遺言執行者になることができます。
しかし、遺言執行者の責任は重く、各種手続きを遅滞なく進めるには大きな負担を強いられます。
そのため、遺言執行者を適当に決めてしまうと、のちのちトラブルになる可能性も否定できません。
トラブルなくスムーズに遺言を実現させたいのであれば、弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続状況によっては、遺言執行者がいなくても問題なく相続できる場合もあります。
ここでは、どのような場合に遺言執行者が必要なのかを解説します。
遺言執行者を選任すべきケースは、主に以下のとおりです。
なお、遺言による非摘出子の認知や相続人廃除は遺言執行者でなければできないので、選任は必須となります。
遺言執行者が不要なケースは、主に以下のとおりです。
上記に当てはまる場合でも、万が一のトラブルやミスが不安であれば、弁護士などにサポートを依頼することをおすすめします。
遺言執行者を選任する方法としては、以下の3つがあります。
遺言執行者は、被相続人が遺言書で指定することができます。
被相続人が遺言書のなかで「〇〇を遺言執行者に指定します」などと記載するだけで構いません。
ただし、遺言執行者に指定された人が困惑するようなことがないよう、あらかじめ相談したうえで作成したほうがよいでしょう。
この遺言の遺言執行者に下記の者を指定する。 住 所 東京都新宿区西新宿○−○−○ |
遺言書では直接遺言執行者を指定せず、遺言執行者を指定することを委託するという方法もあります。
この場合、遺言書で委託された人が、別の誰かを遺言執行者として指定します。
遺言で遺言執行者が指定されていない場合や、相続発生時に遺言執行者が亡くなっている場合などは、家庭裁判所にて決めてもらうこともできます。
申立人 | 相続人・遺言者の債権者・遺贈を受けた人などの利害関係人 |
---|---|
申立先 |
遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 (「裁判所の管轄区域|裁判所」で確認) |
主な必要書類 |
・申立書(書式記入例) ・遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本 ・遺言執行者候補者の住民票、または戸籍附票 ・遺言書の写し、または遺言書の検認調書謄本の写し ・利害関係があることを証明できる資料 |
費用 |
・遺言書1通につき収入印紙800円分 ・連絡用の郵便切手代(裁判所によって異なる) |
自分が遺言執行者として指定された場合、拒否することもできます。
「遺言執行者になりたくない」という旨をすみやかに法定相続人に伝えてください。
口頭で伝えても問題ありませんが、のちのち「言った言わない」などのトラブルを防ぐためにも書面で伝えることをおすすめします。
一度就任した遺言執行者を解任する場合、家庭裁判所から許可をもらわなければなりません。
以下のようなケースに当てはまる場合、遺言執行者の解任が認められる可能性があります。
遺言執行者の解任には、「公正な遺言執行が期待できない」「遺言執行者としての義務をはたしていない」などの事情が必要になります。
単に「遺言の解釈をめぐって相続人と遺言執行者で争っている」というような場合は、解任が認められる可能性は低いといえます。
被相続人の遺言を正確に実現するためには、遺言執行者の存在が重要になります。
ただし、法律的な知識のない人が遺言執行者になってしまうと、思うように手続きが進まないおそれがあります。
遺言執行者の選任を考えるのであれば、弁護士や司法書士などの専門家に依頼しましょう。
法律事務所によっては初回相談無料のところもあるので、まずは一度相談してみることをおすすめします。
遺産相続では相続人ごとに優先順位が定められており、相続人の組み合わせによってそれぞれの取り分が異なります。本記事では、相続順位・相続割合のルールや、パターンごと...
遺産相続にあたって遺産分割協議書をどのように作成すればよいのか、悩んで方も多いのではないでしょうか。本記事では、遺産分割協議書の必要性や具体的な書き方を解説しま...
兄弟姉妹が亡くなり、兄弟姉妹に親や子どもがいない場合には、残された兄弟姉妹が遺産を相続することになります。そこで、本記事では相続における兄弟姉妹の相続順位や割合...
法定相続人の順位が高いほど、受け取れる遺産割合は多いです。ただ順位の高い人がいない場合は、順位の低いでも遺産を受け取れます。あなたの順位・相続できる遺産の割合を...
親等は親族関係の近さを表したものです。この記事では親等とは何か、親等をどうやって数えるかといった基本的なことのほか、親等早見表、親等図を記載しています。親等でよ...
遺産相続を依頼した際にかかる弁護士費用の内訳は、一般的に相談料・着手金・成功報酬金の3つです。相続の弁護士費用がいくらかかるのかは、依頼内容や希望するゴールによ...
養子縁組を結んだ養親と養子には、法律上の親子関係が生じます。養子には実子と同じく遺産の相続権が与えられるうえに、相続税の節税にもつながります。このコラムでは、養...
特定の相続人に遺産を相続させない方法を知りたくはありませんか?夫・妻・兄弟はもちろん、前妻の子・離婚した子供に財産・遺留分を渡したくない人は注目。悩み解消の手助...
株式の相続が発生すると、株式の調査や遺産分割、評価や名義の変更などさまざまな手続きが必要になります。この記事では、株式を相続するときの手順について詳しく解説しま...
遺産分割協議とは、相続人全員による遺産分割の話し合いです。この記事では、遺産分割協議の進め方や、不動産など分割が難しい財産の分配方法などを解説するとともに、話し...
相続人の中に未成年者や認知症などで判断能力が低下してしまっている方がいる場合、遺産分割協議をおこなうに際に特別代理人の選任が必要となる場合があります。本記事では...
生前、被相続人に対して一定の貢献を果たした相続人は、遺産相続の際に「寄与分」を主張することができます。本記事では、遺産相続で寄与分の主張を検討している相続人のた...
遺産相続は、資産の特定や分け方などが複雑で、金額や相続人が多いほどたいへんです。本記事では、配偶者になるべく多くの遺産を相続させたい場合にできる適切な準備などに...
遺産分割は共同相続人全員でおこなう必要があり、遺産分割に先立って漏れなく共同相続人を把握しなければなりません。本記事では、共同相続人とは何か、および共同相続人に...
家庭裁判所の調停委員が、相続人全員が遺産分割方法など合意を形成できるようなアドバイス・和解案を提示。遺産分割調停を控えている方や、遺産分割協議が思うように進まず...
遺言書の有無や、親族の数などによって、相続できる財産は異なります。また、相続をしないという選択もあります。本記事では親が亡くなったケースを中心に、親族が亡くなっ...
遺産分割調停での解決できなさそうな状況であれば、遺産分割審判に移行します。本記事では、遺産分割調停と遺産分割審判の違い、審判に向けて準備しなければならないこと、...
代償分割をする場合、遺産分割協議書をどのように作成すればよいのでしょうか。この記事では、代償分割の概要や遺産分割協議書の書き方、代償金の決め方について解説します...
今回は、相続分の譲渡のメリットや、相続分の譲渡の諸手続き、手続きを進めるにあたっての注意事項をわかりやすく解説します。ベンナビ相続では遺産相続問題に力を入れてい...
配偶者居住権は、2020年4月より適用されるようになった権利をいいます。本記事では、配偶者居住権の概要や設定の要件、メリット・デメリットなどを解説します。手続き...