不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)とは、行方不明の人の財産を管理する人のことを指します。
通常、遺産分割協議は相続人全員が集まり話し合いによって協議します。
しかし、相続人である一人が行方知れずになっており、連絡が付かない場合、遺産分割協議をおこなうことができません。
そのようなケースで、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加するのが不在者財産管理人です。
本記事では、不在者財産管理人の選任条件と選任方法、また、不在者財産管理人の権限について解説します。
不在者財産管理人には弁護士がなることも可能
相続人の中に連絡が取れない人がいて悩んでいませんか?
結論からいうと、相続人の中に連絡が取れない人がいる場合、不在者財産管理人を選任することで遺産分割協議を進めることができます。
不在者財産管理人には弁護士がなることもできるので、一度弁護士に相談・依頼するとよいでしょう。
弁護士に相談・依頼すると以下のようなメリットを得ることができます。
- 不在者財産管理人の申し立て方法がわかる
- 遺産分割協議についてアドバイスをもらえる
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不在者財産管理人とは、相続の場面で、相続人が行方知れずになっており、相続を始められない場合に、行方不明の相続人の代理となる人物です。
相続の現場では、必ず相続人全員が集まらなければならないというわけではありませんが、相続人全員の同意がなければ遺産分割協議は終了しません。
相続人が1人揃わなかったからといって、その相続人抜きで遺産分割協議をすることはできないのです。
そこで、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることにより、不在者の相続人に代わって不在者財産管理人が遺産分割協議に参加することが可能です。
「不在者」とするにはある程度の期間が経過していることが条件
「不在者」の定義は、行方不明からある程度の期間が経っていることが条件としていえます。
言い換えると、「数日前には連絡がついていたのに、いざ相続が始まると全く連絡が取れなくなった」程度では行方不明とは言い切れないのです。
そもそも不在とは
「従来の住所又は居所を去った」ことをいい、当分帰来する見込みがない場合にこの条件を満たすことになります。
その際生死不明であることは求められませんが、ほんの数日間音信不通であるといった場合には、不在者といえるかどうかは微妙なところです。
戸籍謄本から相続人の「戸籍の附票」を請求
連絡が取れなくなった相続人が不在者に該当しない場合には、相続人調査で集まった戸籍謄本から、連絡の取れない相続人の「戸籍の附票」を請求することにより、現在の住所を知ることができます。
そのうえで、手紙や電話での連絡手段を取り、相手からの返答を待つことになるでしょう。
長期間不在が明らかな場合は失踪宣告を利用
あまりにも長期間不在であることが明らかにわかっている場合は、失踪宣告を利用し不在者の相続人を交えて遺産分割協議をすることもあります。
失踪宣告は、その人の生存が確認された最後の時から7年以上経っている場合に利用でき、失踪宣告がなされるとその人は法的に「死亡したもの」と扱われるため、これらの相続人を遺産分割協議に加えることで先の相続を進めることができます。
不在者財産管理人は、不在者の代わりに遺産分割協議に参加できますが、一部の相続人と親密な関係にある者が選任されると、不平等な遺産分割になってしまう可能性もあります。
ここでは、不在者財産管理人の選定条件を解説します。
相続に利害関係のない第三者が一般的に選任される
不在者財産管理人に選任される人物は、一般的に利害関係のない第三者が選任されます。
不在者財産管理人は不在者自身や不在者の財産を守るのがその役目です。
したがって、相続の際に利害が対立するであろう人を不在者財産管理人にすることは、原則としてできないものと考えるのがよいでしょう。
親族内から不在者財産管理人を選任したい場合は、相続人でない親族であることが前提となり、被相続人の友人等を候補にする手もあります。
また、不在者の親族とは連絡が取れる場合、そのまま不在者の親族が不在者財産管理人となるケースもあります。
なお、不在者本人が既に財産管理人を置いている場合には、裁判所は原則として干渉できません(民法25条2項)。
同様に、不在者に親権者や後見人などの法定代理人がいる場合には、法律の規定によって不在者の財産が管理されることになるので、特別の措置は必要ありません。
候補がいない場合は家庭裁判所が専門家を選任する
もし被相続人や不在者の親族に適任の人物がいない場合は、家庭裁判所から弁護士や司法書士などの専門家が不在者財産管理人として選任されます。
また、選任者として申し立てられた人物が適していないと判断された場合も、専門家が選任されるケースがあります。
不在者財産管理人は、不在者の財産を管理しなくてはなりません。財産管理には手間がかかるため、報酬も請求することも可能です。
ここでは、不在者財産管理人に選任された方がおこなうことを解説します。
不在者の相続財産の管理
不在者財産管理人は、不在者の財産を管理する役割を持ちます。
能動的に財産を使うことはありませんが、維持や改良、返済のための支払いがある場合は、財産の一部から支払います。
しかし、不在者財産管理人が不在者の財産を自由に使えるというわけではありません。
不正に使用したことが発覚した場合、不在者財産管理人の改任、損害賠償の請求、場合によっては業務上横領として刑事罰に問われることもあります。
財産目録の作成と裁判所への報告
不在者の財産を把握・管理したうえで、不在者の財産目録を作成し、裁判所へと報告する義務があります。
不在者の相続財産の中から報酬が支払われることも
不在者財産管理人には、裁判所へ請求することにより不在者の財産の一部から報酬を受け取ることを認められることがあります。
報酬の相場は一概にはいえませんが、月1万~5万円程度とされています。
不在者財産管理人の職務が終わるとき
不在者財産管理人の職務は「不在者が現れたとき」「不在者の死亡が確認されたとき」「不在者について失踪宣言がされたとき」この三種類のいずれかになった場合に終了します。
不在者が現れた場合は、そのまま不在者だった人物が財産を管理します。
不在者が死亡、失踪宣言された場合は、不在者の相続人にその財産が相続されることとなります。
また、不在者財産管理人は、遺産分割協議だけで終了ということはありません。
不在者の代わりに遺産分割協議をおこなったのであれば、そのまま不在者の財産も管理しなくてはなりません。
ここからは、不在者財産管理人の申立方法を解説します。
まず、申立人や申立先、必要費用や必要書類をまとめると以下のとおりになります。
申立人
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相続人など利害関係人、不在者の親族、債権者および検察官
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申立先
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不在者の住所、または居所を管轄する家庭裁判所
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必要費用
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・連絡用の郵便切手
・収入印紙800円
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必要書類
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・申立書
・不在者の戸籍謄本
・不在者の戸籍附票
・不在者財産管理人の候補者の住民票もしくは戸籍附票
・不在者の不在を証明する資料
・不在者の財産に関する資料
・申立人の戸籍謄本や賃貸契約書などの申立人との関係性を証明するもの
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以下では、それぞれについて詳しく解説します。
申立人
申立人には以下のような不在者がいることにより利害関係が生じる人物が当てはまります。そのほか、検察官が申立人となる場合もあります。
申立人となる人物
- 不在者がいることで遺産分割協議がおこなえない相続人
- 不在者が相続できない恐れのある不在者の親族
- 遺産分割協議がおこなえないことにより債権回収ができない被相続人の債権者 など
申立先
申立先は、不在者の住所を管轄する家庭裁判所です。
被相続人の住所を管轄する裁判所ではないので気を付けましょう。
必要費用
費用は、収入印紙800円と郵便切手代のみとそこまでかかりません。
不在者財産管理人が報酬を請求した場合、不在者に振り分けられた相続財産の中から支払われることとなります。
必要書類
必要書類は、不在者、不在者財産管理人に選任する人物、申立人の3人の書類を集める必要があります。
また、不在であることの証明や不在者の財産がわかる書類(不動産登記証明書や通帳写しなど)も必要となります。
そのうえで、申立書を記入し裁判所に提出します。裁判所が不在であると認めた場合、不在者財産管理人が選任されます。
通常、申立人が選任した人物が選ばれますが、裁判所がその人は適していないと判断した場合、弁護士・司法書士などの専門家が選任されることもあります。
申立書の記入例は、「不在者財産管理人選任申立書記入例」を参考にしてください。
不在者財産管理人の申し立ては、あくまで「不在者の財産を管理する権利」を得るための申請です。
厳密にいうと、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加することは権限外の行為なのです。
不在者財産管理人として「権限外行為許可」を裁判所から得なくてはなりません。
申立先や必要書類は上記と変わりませんが、不在者財産管理人権限外行為許可の申立書が別途必要となります。
不在者財産管理人権限外行為許可の記入例は「不在者財産管理人権限外行為許可記入例」を確認してください
相続時に必ず全員の相続人が揃うとは言い切れません。
長期間音信不通となっている相続人がいる場合、不在者財産管理人が不在者の財産を管理するということがあります。