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会社の相続はどうする?経営者が亡くなったあとのスムーズな手続きガイド

川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士
監修記事
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会社を経営していた親が亡くなった場合、会社の経営や株式について引き継ぎをおこなう必要があります。

しかし、会社の相続について相続をおこなう方法や具体的な手続きの流れを把握できている人は少なく、何をおこなったらよいのかわからないというケースがほとんどです。

そこで本記事では、会社の相続をおこなう方法について詳しく解説します。

相続をおこなう手順やよくあるトラブルを把握しておくことで、会社の相続がスムーズにおこなえるようにしておきましょう。

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会社の財産は個人の相続の対象にはならない

経営者である親が亡くなった場合、被相続人が経営者としての立ち位置を引き継ぐことが考えられます。

しかし、会社自体や会社のもつ財産は経営者個人の財産としては扱われないため、遺産相続の対象にはならないことを覚えておきましょう。

一般的に会社の相続をおこなうということは、会社の株式の相続をおこなうことを指します。

経営者であった被相続人の所有していた株式を相続人が相続し、会社の議決権および経営権を得ることで、事実上会社を相続したといえる状態になります。

会社の相続には2パターンある

会社を相続する場合、その「会社」が法人ではなく個人事業の可能性もあることに注意しなければなりません。

相続する「会社」が法人か個人事業かによって相続の方法が大きく異なります

以下では、それぞれの相続方法について解説をおこないます。

1.法人の相続の場合|相続の対象は株式

そもそも会社の財産は、会社の所有物であり、相続の対象にはなりません

そのため、被相続人が会社の経営をおこなっていたとしても、会社の財産は、経営者の個人的な財産として扱われるものではありません。

被相続人が経営していた会社が法人だった場合、相続の対象となるのは自社株です。

そのため、株式を相続することによって経営権を得て、事実上会社の相続をおこないます。

2.個人事業の場合|相続の対象は資産

被相続人のおこなっていた個人事業を引き継ぐ場合、相続の対象は事業全体の資産です。

法人の相続をおこなう場合と異なり、個人事業における資産は事業主の所有物であるため、相続人は資産をそのまま相続します。

相続の手続きとしては、資産を相続した後に被相続人のおこなっていた個人事業の廃業届を出す必要があります。

また、資産を相続された相続人が新たに開業届を出して個人事業を引き継ぎます。

法人である会社を相続するための手順

法人である会社を相続するためには、以下の5つのステップを踏む必要があります。

1.自社株を相続する

法人の会社を相続するためには、まず株式の相続をおこないます。

なお、株式の相続をおこなう際には株式の状況を把握しておくようにしましょう。

法人の経営権を実質的に得るためには、株式の過半数を得ておく必要があります。

また、会社の重要事項を定める特別決議を単独で可決するためには、株式の3分の2が必要です。

そのため、株式の相続をおこなう際には、株式の3分の2以上を取得することが望ましく、状況によっては特定の相続人に株式を集中して相続させるようにしなければいけません。

2.相続した株式の名義変更

株式を相続したら、忘れずに名義変更をおこなうようにしましょう。

株主としての権利行使をおこなうためには、株主名簿に記載されている必要があるため、株式を持っているだけでは経営権を得ることができません。

3.株主総会を開き代表に就任する

株式を相続し名義の変更をおこなったら、定款に基づき株主総会を開催します。

株主総会にて決議をおこない、代表取締役に就任することで経営権が得られるので、実質的に会社を相続したといえる状態になります。

4.登記手続き

株主総会を経て代表取締役に就任したら、取締役変更の登記手続きをおこないます。

登記手続きは法務局にて株主総会の議事録や取締役への就任承諾書、その他住民票などの提出が必要です。

5.金融機関などでの諸手続き

その他の手続きとして法人名義の銀行口座の名義変更など金融機関での手続きが必要となるでしょう。

会社によっては、社会保険関係や許認可に関する変更手続きも求められます。

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株式相続の際に知っておくべき評価額の算定方法

遺産相続にあたっては、遺産分割や相続税の観点から株式の価値の評価が必要です。

株式の評価方法は非上場企業の株式と上場企業の株式で異なるため、それぞれの評価方法について解説します。

非上場株式の場合

非上場企業の株式の場合は市場価格が定められていないため、会社の純資産や上場している類似業種の株価を参考に評価をおこないます。

なお、同族株主以外が株式を相続し会社を引き継いだ場合は、配当還元方式と呼ばれる別の方法で評価をおこなわなければいけません。

非上場企業の株式の相続は会社の状況に応じて評価方法を切り替える必要があるため、公認会計士などの専門家に相談することも選択肢としてあがるでしょう。

上場株式の場合

上場企業の株式の場合は、以下のいずれかから最も低いものを相続時の株価として扱います

  • 被相続人が亡くなった日の終値
  • 被相続人が亡くなった月の平均株価
  • 被相続人が亡くなった前月の平均株価
  • 被相続人が亡くなった前々月の平均株価

会社の相続においてよくあるトラブル

会社を相続する際には、以下のようなトラブルを生じてしまうことがあります。

1.経営権を得られない

会社を相続するためには、最低でも株式の半数、健全な経営をおこなっていくためには株式の3分の2以上を確保する必要があります。

しかし、遺産相続の方針によっては株式を分割して相続してしまうことがあり、経営権を得るために必要な株式を保持できなくなる場合があります。

会社の相続をおこなうのであれば、被相続人による遺言の作成や生前贈与の実施によって後継者を明確にしておくことや、相続人間で十分に話し合い、株式を特定の相続人に相続させるなどの工夫が重要です。

2.負債まで引き継いでしまう

会社によっては融資を受ける際に、経営者が連帯保証人となって融資を受けていることがあります。

このようなケースにおいて会社の相続をおこなう場合、相続人が連帯保証人を引き継がなければいけないことがあるため注意が必要です。

なお、連帯保証人を必ず引き継がなければいけないわけではなく、引き継ぎをおこなわなくても済むためのガイドラインが定められています。

もし、会社の相続をおこなう場合は事前に確認のうえ、金融機関と交渉をおこなうようにしましょう。

3.ほかの相続人と争いが起こる

会社の相続するためには株式の相続を集中させる必要があるため、遺産分割の方針についてほかの相続人と争いになることが考えられます。

株式以外の財産も加味し、不公平感が出ないように注意して遺産分割をおこなうようにしましょう。

会社相続トラブルを防ぐための生前対策

会社の相続を巡った相続人間のトラブルを避けるためには、被相続人が生前うちに対策をおこなうことも重要になります。

1.後継者は早めに決める

先代経営者が存命のうちに後継者が定められていないまま相続が発生すると、誰が会社を相続するか相続人間で話し合うことが必要です。

相続人間で後継者を決めるとなると、相続人間での争いが生じたり、スムーズに後継者が決まらず会社の経営に悪影響を及ぼしたりすることが考えられます。

相続人間の争いを避けるために後継者は早めに定め、その意思を示しておくことが大切です。

2.遺言書を作成する

後継者を定めたら、遺言書の作成をおこないましょう。

遺言書を作成することで誰を後継者とするのか先代経営者の意思を明確にすることができます。

また、遺産分割の方針についても示すことができるので、株式の相続を集中させることで相続人間の争いを避けることができるでしょう。

なお、遺言書で遺産分割の方針を示す場合は遺留分を加味するようにしてください。

遺留分とは、相続人に与えられた最低限相続を受けることができる財産の割合のことを指します。

遺留分を加味しない遺産分割となっていると、のちに相続人間でトラブルとなる可能性があるため、注意が必要です。

遺言書を作成する際には、どのように作成するのか、遺留分を加味した内容にするなど、注意しなければいけないことが多いため、弁護士などの専門家に相談するのもおすすめといえます。

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3.生前贈与をする

安定した相続をおこなうためには、生前贈与を活用するという方法もあります。

先代経営者が存命のうちから保有している株式を生前贈与していくことで、相続人間の争いなく会社を相続できるようになるでしょう。

税制の面で相続での引き継ぎより劣る部分はありますが、生前のうちから株式を後継者が保有することによって、後継者が早いタイミングから経営に参加できることがメリットといえます。

後継者自身が経験を積み後継者としての自覚をもてるようになるほか、周囲からも納得感を得たうえで相続がおこなえるようになるでしょう。

4.家族信託をする

家族信託とは、認知症などの発症に備えて信頼できる家族にあらかじめ財産の管理や運用をおこなう権利を与える制度です。

家族信託をすると、財産の管理・運用は受託を受けた後継者がおこない、運用の結果生まれた利益は先代経営者が受け取ります

また、その後先代経営者が亡くなった際には、後継者がその財産を得ることが可能です。

5.経営承継円滑化法を活用する

経営承継円滑化法とは、中小企業の円滑な事業承継を目的に施行された法律です。

遺留分に関して、生前贈与をおこなった株式が遺留分の計算範囲から除外される除外合意、もしくは生前贈与をおこなった株式の評価額をあらかじめ定めておく固定合意の2つの特例を利用できます。

経営承継円滑化法を活用することで、相続時に株式が分散してしまうことを避け、安定した引き継ぎが可能です。

会社の相続では相続税対策も大切

会社の相続にあたって、株式を相続することで相続税が発生します。

株式の評価額によっては、相続税が多額になると予想されるため相続税対策をおこなうようにしましょう。

株式の評価額を低下させる

相続税の金額は株式の評価額によって定められます。

そのため、株式の評価額を低下させることで、相続税を抑えることができるようになります。

株式の評価額を低下させるためには、以下に挙げた方法が検討できます。

  • 引退する役員へ退職金を支給する
  • 不動産を購入する
  • 設備や機械の導入をおこない減価償却費に計上する

なお、不動産は現金に比べて相続税評価額が低いため購入することで節税効果がありますが、購入から3年間は帳簿価額のまま評価がおこなわれるため、なるべく早いうちに購入をおこなう必要があります。

事業承継税制の活用

事業承継税制は、相続税や贈与税の負担軽減を目的に作られた制度です。

活用することで対象となる株式の納付に猶予が与えられるほか、要件を満たすことで納付が免除となります。

ただし、事業承継税制は制度が複雑で作成しなければいけない書類も多く、対応が面倒に感じられることも考えられます。

そのため、事業承継税制を利用するなら税理士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

さいごに

会社の相続をおこなう際には、株式の相続が必要となることがほとんどです。

また、株式を相続しただけでは会社を相続したとはいえず、経営権を得るためには株式の過半数以上を得て議決権を持つことが必要となります。

株式の相続にあたっては、相続人間で争いが生じることも考えられます。

相続人間の争いを避けるためには、先代経営者の生前の対策が重要です。

遺言書を作成したり、生前贈与を活用したりすることで、安定した事業承継をおこなえるようになるでしょう。

また、株式の相続をおこなう際には相続税にも注意しなくてはいけません。

相続税対策を含め、会社の相続に不安があるのであれば弁護士や税理士などの専門家に依頼し、徹底的にサポートしてもらうことも選択肢にあがるでしょう。

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この記事の監修者
川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士 (神奈川県弁護士会)
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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