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相続法の改正内容を徹底解説!施行日は?適用対象は?
2019年11月15日

相続法の改正内容を徹底解説!施行日は?適用対象は?

川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士
監修記事
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2018年に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立したことで、相続法が改正され、相続の仕組みが2019年から段階的に変更・新設されています

 

全体として相続の手間が減り、より公正な内容になりました。変更と新設は計8項目で、どれも重要な内容なのですべて解説します。

 

相続法改正の変更・新制度の施行日はバラバラ

相続法とは、民法のなかの相続について定めた条文のことを指します。

 

相続法改正の変更・新設8項目のタイトルと施行される日付は以下の通りです。

 

  • 配偶者居住権の新設(2020年4月1日から施行)
  • 夫婦間での居住用不動産の贈与の優遇(2019年7月1日から施行)
  • 預貯金の払戻し制度の新設(2019年7月1日から施行)
  • 自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日から施行)
  • 法務局での遺言の保管制度の新設(2020年7月10日から施行)
  • 遺言の活用(特になし)
  • 遺留分制度の見直し(2019年7月1日から施行)
  • 特別の寄与の制度の新設(2019年7月1日から施行)

 

【改正ポイント①】配偶者居住権の新設

今回の相続法改正で新設された配偶者居住権とは、故人(被相続人)の配偶者が、これまでの住まいに継続して住みやすくなる権利です。

新設前の状況と新設のメリットを紹介します。

 

新設前はどうだった?

配偶者居住権が新設される前は、例えば被相続人の配偶者が2,000万円の価値がある住宅を遺産分割において取得した場合、その分、現金の取得分が減る結果、十分な現金が確保できないという問題がありました。

 

事例を使って解説します。

 

夫が2,000万円の住宅と現金3,000万円の財産を遺して死亡し、相続人が妻と1人息子だけだったとします。妻は夫とその住宅に住んでいて、息子は独立して自分の家を持っています。

妻と1人息子の取り分は1/2ずつなので、総額5,000万円分の財産を2人で折半することになります。

 

このとき、妻がそのまま住宅に住み続けることになると、2,000万円の住宅を相続するので、妻は現金については500万円しか相続できません。

 

その住宅に住んでいない息子は現金2,500万円を相続します。

 

現金だけ見ると、妻は500万円息子は2,500万円を相続します。被相続人(夫または父親)の死亡により、妻も息子も住環境は変わっていないのに、相続する現金の額は5倍も差があります。

 

この場合、妻が十分な生活費を取得できない場合があるため、これに対処するために考えられたのが、配偶者居住権です。

 

新設のメリットは?

配偶者居住権が新設されたことで、先ほどの事例における妻は、相続した住宅に「無償で」住み続けることができます。

 

そして、配偶者居住権は、所有権とは別に、住む権利として価値を考えるため、所有権をそのまま取得するよりは、価値を低く算定することができます。この仕組みは少し複雑です。

 

まず妻と息子は、現金3,000万円を折半します。妻も息子も1,500万円ずつ相続します。

そして2,000万円の住宅について、仮に、配偶者居住権が半分、残りの所有権が半分の価値を持っているとします。そうすると、妻が相続する住宅の1,000万円分は「配偶者居住権」としての1,000万円になります。そして息子が相続する住宅の1,000万円分は「負担付き所有権」としての1,000万円になります。

 

負担付き所有権とは、その住宅には住めないものの、所有権はある状態のことです。

 

これで、現金の相続財産は2人で折半しながら、妻はこれまでの住宅に住み続けることができます。

 

配偶者居住権についてより詳しくは、「配偶者居住権とは?施行はいつから?遺された配偶者を保護する新制度を解説」をご覧ください。

 

【改正ポイント②】婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与等に関する優遇

婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与等に関する優遇も、相続人となった配偶者の住まいを守る内容になっています。

 

改正前はどうだった?

従来は、例えば妻が夫から住宅を生前贈与されたとき、その住宅は「遺産の先渡し(相続の先渡し)」なので、原則として、遺産分割時に、特別受益として計算に入れなければなりませんでした。

 

そのため、夫が死亡したとき、遺産分割において、妻が取得する額は生前贈与分を差し引かれることになります。

 

次のようなケースを想定してみます。

 

  • 住宅の価値は4,000万円、所有者は夫だった
  • 夫が生前に、住宅の持ち分1/2(2,000万円相当)を妻に贈与していた(残りの1/2分は夫の所有のまま)
  • 夫の死亡時の財産:住宅の持ち分1/2(2,000万円相当)と現金6,000万円
  • 夫の相続人:妻と1人息子

 

このときの相続財産の総額は8,000万円(=現金6,000万円+夫の住宅の持ち分2,000万円相当)ではなく、1億円(=現金6,000万円+夫の住宅の持ち分2,000万円相当+妻の住宅の持ち分2,000万円相当)となります。

 

なぜなら「妻の住宅の持ち分2,000万円相当」は「遺産の先渡し(相続の先渡し)」だからです。

 

したがって、遺産分割において、妻と1人息子は5,000万円分ずつの取得分があります。

 

妻がその住宅に住み続ける場合、夫の住宅の持ち分2,000万円相当を相続することになります。そして妻はすでに「妻の住宅の持ち分2,000万円相当」の生前贈与を受けているので、これを遺産分割時に特別受益としてカウントする結果、現金は1,000万円しか相続できません。

 

一方、1人息子は現金5,000万円を相続できます。

 

上記の内容をまとめるとこうなります。

 

  • 妻の相続=妻の住宅の持ち分2,000万円相当(生前贈与分)+夫の住宅の持ち分2,000万円相当+現金1,000万円
  • 1人息子の相続=現金5,000万円

 

妻も息子も、相続前後で住環境は変わっていないのに、現金の相続額は5倍の差が生じます。

 

改正のメリットは?

今回の相続法改正で、婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与には、優遇措置が取られることになりました

 

先ほどの事例でいくと、遺産分割時において、夫が妻に生前贈与した住宅持ち分1/2(2,000万円相当)は、原則として、特別受益として算入しないことになりました。

 

すなわち、夫の死亡による相続財産は総額8,000万円(=現金6,000万円+夫の住宅の持ち分2,000万円相当)になります。妻と1人息子は4,000万円ずつ相続します。

 

妻がその住宅に住み続ける場合、夫の住宅の持ち分2,000万円相当を相続しますので、残り2,000万円の現金を相続することができます。

1人息子は現金4,000万円を相続します。

 

以上のことをまとめるとこうなります。

 

  • 妻の相続=夫の住宅の持ち分2,000万円相当+現金2,000万円
  • 1人息子の相続=現金4,000万円

 

相続する現金の差は2倍にまで縮まりました。

そして妻は生前に住宅の持ち分2,000万円相当の贈与を受けているので、総額6,000万円相当を獲得したことになり、相続法改正によって「得」しています。

 

【改正ポイント③】預貯金の払戻し制度の新設

預貯金の払戻し制度の新設前の状況と新設後の違いを見ていきましょう。

 

新設前はどうだった?

預貯金の払戻し制度が新設される前は、相続人が複数いた場合、被相続人(亡くなった人)の預貯金は、遺産分割が終了するまで単独で払戻しを受けることができませんでした。

 

そのため、被相続人の葬儀を相続人の1人が行うとき、その資金をどこかから調達しなければなりません。

 

葬儀を行った相続人にも、預貯金の一部を相続する権利はありますが、葬儀のときは大抵遺産分割が終了していないので、預貯金のお金を使うことはできません。

 

新設のメリットは?

預貯金の払戻し制度が新設されたことで、被相続人の葬儀を行う相続人は、単独で被相続人の預貯金の一部の払戻しを受けることができるようになりました

 

ただ払戻し金額には上限があり、1金融機関あたり150万円、または、払戻しを受けようとする相続人の相続分の1/3の額のいずれか少ないほうの金額となります。

 

このお金で葬儀のほか、被相続人の借金を返済することもできます。

 

預貯金の払戻し制度の新設についてより詳しくは、「相続発生時の仮払い制度を解説|遺産分割の前に預貯金の一部の払戻しが可能に」をご覧ください。

 

【改正ポイント④】自筆証書遺言の方式の緩和

自筆証書遺言とは、遺言者(後で被相続人になる人)が自分で書く遺言書のことです。

今回の相続法の改正で、この方式が緩和されました。

 

緩和前はどうだった?

自筆証書遺言の方式が緩和される前は、遺言者がすべて手書きする必要がありました。パソコンのソフトで入力して印刷したものや、代筆は許されませんでした。

 

特に財産目録は項目が多くなると書くのが大変でした。認知症を発症すると、文字を書くことも難しくなります。

 

緩和後のメリットは?

今回の相続法改正で、自筆証書遺言のうち財産目録はパソコンで作成できるようになりました。印刷したものに署名押印するだけで、自筆証書遺言の一部として認められます。

 

ただ遺言書の「本記」は手書きでなければなりません。

 

【改正ポイント⑤】法務局での自筆証書遺言の保管制度の新設

法務局での自筆証書遺言の保管制度が新設される前の状況と、新設のメリットを紹介します。

 

新設前はどうだった?

法務局ではこれまで、遺言者の自筆証書遺言を預かったり保管したりしていませんでした。そのため遺言者のなかには、自筆証書遺言を自宅の机のなかにしまっておき、紛失させてしまうことがありました。また、悪意ある相続人に破棄されることもありました。

 

新設のメリットは?

法務局での自筆証書遺言の保管制度がスタートすることで、自筆証書遺言を自宅保管しなくて済むようになります。これにより、遺言の執行をより確実にすることが期待できます。

 

法務局での自筆証書遺言の保管制度の新設についてより詳しくは、「遺言書の保管方法の比較|法務局の新制度も紹介」をご覧ください。

 

【改正ポイント⑥】遺言の活用

今回の相続法の改正で、法務省は国民に遺言の活用を呼び掛けています。

 

遺言によって、相続人以外でお世話になった人に財産を渡すこともできますし、遺言は相続人たちの紛争を防止する役割もあります。

 

【改正ポイント⑦】遺留分制度の見直し

遺留分制度が見直されました。

 

改正前はどうだった?

次のケースで解説します。

 

  • 被相続人:父親、会社を経営、配偶者はすでに死亡
  • 相続財産:会社の土地と建物と預貯金
  • 相続人:長男と長女
  • 長男:父親の会社の経営を手伝っていて、父親の死亡後、会社を引き継いだ
  • 長女:会社に関わっていない

 

このケースで被相続人の父親が「長男に会社の土地と建物を相続し、長女に預貯金を相続する」と遺言していたとします。

 

このとき長女が「預貯金額はとても少額で、土地と建物の評価額にまったく及ばない」と考えたら、遺留分減殺請求権を行使することによって、会社の土地と建物の一部を共有状態にすることができます。遺留分減殺請求権は、遺産全てに効力が及ぶ権利でした。

 

長女の遺留分減殺請求が認められると、長男は会社の土地と建物の一部を長女に渡さなければなりません。それができなければ、土地と建物を売却して、その現金を長男と長女で分けることになります。

 

会社の土地建物が会社にとって極めて重要な財産である場合、会社経営に関与しない長女が共有者として加わることで、経営に支障がでることが考えられます。

 

改正のメリットは?

遺留分制度が見直されたことで、遺留分が遺産全体の経済的価値を把握し、金銭を請求することができる権利に変わりました。

 

長女が長男に請求できるのは、現金(金銭債権)だけになりました。権利の行使によって不動産の共有状態などを生ずることがなくなりました。

 

なお、改正にともなって「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」と呼ばれるようになりました。

 

【改正ポイント⑧】特別の寄与の制度の新設

特別の寄与の制度の新設前の状況と、新設のメリットを紹介します。

 

ここでの寄与とは、生前の被相続人への「お世話」のことです。

 

例えば、被相続人が生前に重い認知症を発症していて、家族が無償で相当な負担のある介護・看護をしていた場合、その介護・看護は特別な寄与となり、遺産から寄与料を請求できる可能性があります。

 

新設前はどうだった?

例えば、ある女性に長男と長女がいて、夫が死亡していたとします。女性が認知症を発症したとき、長男も長女も女性の世話をせず、長男の妻(義理の娘)だけが女性の介護をしていたとします。

 

長男が死亡したあとも、長男の妻は女性を介護し続け、長女は相変わらず介護に関与しなかったとします。

 

この状態で女性が死亡すると、相続人は長女しかいないので、長女が女性の財産をすべて相続することになります。

 

1人で女性を介護していた長男の妻は、相続人ではないので、遺産を取得することはできませんでした。

 

新設のメリットは?

特別の寄与の制度ができたことで、長男の妻は、特別な寄与をしていた場合には、財産をすべて相続した長女に対し、相応の金銭を請求することができるようになりました。

 

もし長女が金銭の支払いに応じなかった場合、長男の妻は家庭裁判所に寄与料を認めるよう申し立てをすることができます。

 

特別の寄与の制度の新設についてより詳しくは、「介護の有無は遺産相続に反映される|相続人でなくとも金銭請求権あり」をご覧ください。

 

まとめ

今回の相続法の改正で、相続は一部変わりました。これまで面倒だった手続きや不公正な印象があった仕組みが、やや改善されました。超高齢社会に合った相続制度に近づいたと考えてよいでしょう。

 

新しい制度が運用されるにあたっては、さまざまなトラブルが発生することも予想されます。新制度を利用しようと考える際は、相続に詳しい弁護士に依頼することを検討してみてください。

この記事の監修者
川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士 (神奈川県弁護士会)
遺産分割など揉めやすい問題の交渉、調停、訴訟から、生前の相続対策として遺言や家族信託の活用についてまで幅広く対応。相談者の事情に合わせたオーダーメイドの解決を目指しており、多くの実績がある。

相続トラブルに巻き込まれてしまった方へ

何かと相続トラブルに発展するのは遺産の割合に不満がある・納得いかないケースです。

例えば、下記などが該当します。

・思ったより相続される遺産が少なかった
・揉めたくないので、泣く泣く遺産の配分に納得した
・遺言書に他の兄弟姉妹に遺産を多く渡す旨が書かれていた

遺産相続では法定相続分といって、民法で定められている割合の通りに遺産を公平に分割しましょうという一応の定めがありますが、生前に被相続人(亡くなった人)の介護をしていた、被相続人の事業を手伝っていれば寄与分という制度で多くの財産をもらう権利があります。

また、他の相続人が生前に財産を多く受け取っていたのであれば、遺産分割協議の際に相続財産を減らすこともできます。ただ、こういったルールは相続人全員が知っているわけではありませんから、あなたが主張しても聞く耳をもたれない可能性もあります。

その場合、弁護士に相談することで法的な観点から主張をしてくれますし、トラブルになっている場合はその仲裁に一役買ってくれるでしょう。当サイトでは、相続トラブルを1人で解決できるか悩んでいる方へ無料電話・無料相談(一部)を行い、不安解消できるように努めています。

問題解決はもちろん、あなたの状況にあったアドバイスを提供することをお約束します。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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