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2019年08月02日

遺留分とは相続人が必ずもらえる財産|割合と取り返す方法

恵比寿東京法律事務所
松島 新之介 弁護士
監修記事
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遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人が最低限の遺産を確保するために設けられた制度のことで、兄弟姉妹以外の相続人には相続財産の一定割合を取得できる権利(遺留分権)があります(1042条)。

遺留分に関して相続人のよくある不満
  • 遺言書で兄に全財産を譲るって書いてあるけど私は1円ももらえないの?
  • 姉が生前贈与を受けていたのだけど、財産を公平に分けないのは不平等だと思う
  • 全然関係ない『愛人』に財産を全部持っていかれるのは納得できない! など

財産を相続する時にもらえる金額が兄弟姉妹より少ないというケースは多々あります。同じ親から生まれたのだから、相続財産も公平でないと納得がいかないと感じることも多いでしょう。

もし、遺言書等で『全ての財産を兄の●●へ譲る』といった内容が残されている、生前贈与をもらっている兄弟がいた場合、遺留分侵害額(減殺)請求権を行使し、遺産を取り返すことができます

今回は、

  • 遺留分とはどんな制度なのか
  • 遺留分侵害額(減殺)請求権を持っている人
  • 遺留分侵害額(減殺)請求のやり方と手順

についてお伝えし、財産を1円でも多く取り戻すための方法をご紹介します。

※法改正(2019年7月1日施行)により、遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求」と呼ばれるようになりました。

この記事で遺留分に関してわかること

1:遺留分が侵害されている遺言書でも従わないといけないの?

2:遺留分の権利が認められているのは誰?

3:遺留分の割合は?

4:遺留分はどう計算するの?

5:遺留分侵害額(減殺)請求ってどうやってやるの?

6:相続人が請求に応じない場合、弁護士に相談するメリットってなに?

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  • 侵害された遺留分を取り戻せる
  • 正しい遺留分額が算定できる
  • 不当な遺言書などで奪われた遺留分も返ってくる可能性がある
  • 自分の代わりに交渉してもらえる兄弟やほかの相続人と直接話し合う必要はありません
  • 遺留分侵害額(減殺)請求が成功しやすい など

上記のようなお悩みは弁護士への相談で解決できるかもしれません。

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遺留分とは|遺留分制度の概要

まずは遺留分に関しての基本的な概要を確認していきましょう。

遺留分は遺言書の効果でもなくならない

民法の相続規定によると、法定相続分は原則として遺言によって排除しうる任意規定とされているため、被相続人が遺言によって遺産の分け方を指定したり、相続人が法定相続分と異なる分け方をするなど、その扱いは自由にして良いことになっています。つまり、推定相続人が遺産を受け取る権利は保障されないというのが原則になります。

しかし、相続財産が相続人の生活を保障する意義を持っている点や、被相続人名義の財産には相続人が被相続人に貢献したことによる潜在的持分が含まれていることも多い点などを考え、相続財産の一定割合については、強行規定として遺留分という最低限保証される財産を請求する権利が認められています。

難しく言いましたが、簡単に言えば「被相続人の持っている財産には、家族の協力によって得られた物もあるはずだから、被相続人の自由で処分できるとは言っても、最低限の財産は家族に残すべきですし、家族もそれを請求する権利があるよ」ということです。

(遺留分の帰属及びその割合)

第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一

二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
引用元:民法第1042条

強行規定とは?
遺留分は、被相続人の処分によって奪うことができない権利。ただし相続廃除や相続欠格に該当した場合は、この限りではないという規定。

兄弟姉妹には遺留分は認められていない

遺留分の権利(遺留分侵害額(減殺)請求)は、兄弟や姉妹には認められていませんので、遺言書の内容にどれだけ不満があっても、兄弟姉妹は遺留分を主張して、遺言の内容に文句をいう事はできません。

つまり、兄弟姉妹に相続財産を与えたくないと思っている相続人がいた場合、遺言で他の相続人に相続財産を渡すことを明記しておけば、簡単に実現することができます。

遺留分侵害額(減殺)請求ができる相続人は誰?

遺留分侵害額(減殺)請求ができる人はある一定の要件を満たしている人でないと出来ません。すでに兄弟姉妹には請求権そのものが最初からないことはお伝えしていましたが、ほかにどんな方が対象になるのか見ていきましょう。

遺留分侵害額(減殺)請求権がある人

民法上で定められている、遺留分侵害額(減殺)請求が出来る人は下記の3パターンに当てはまる人です。

1:配偶者
2:子(代襲相続人)
3:直系尊属

参考:遺留分権利者とは|遺留分割合と遺留分が認められない時の対策

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遺産相続における各相続人の遺留分の割合

遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額(減殺)請求を行えば最低限の遺産を取り戻すことができます。まずは各相続人の遺留分がどの程度なのかご説明します。遺留分は、遺留分の割合に法定相続分の割合を乗じて算定されます。)。

遺留分の基本的な割合

全ての相続人がもらえる遺留分の基本的な割合を表にまとめました。

相続人 

全員の遺留分 

相続人の遺留分

配偶者

子供

父母

兄弟

配偶者のみ

1/2

1/2

×

×

×

配偶者と子供

1/2

1/4

1/4

×

×

配偶者と父母

1/2

2/6

×

1/6

×

配偶者と兄弟

1/2

1/2

×

×

×

子供のみ

1/2

×

1/2

×

×

父母のみ

1/3

×

×

1/3

×

兄弟のみ

×

×

×

×

×

 

1:配偶者のみ

妻や夫といった配偶者は必ず相続人になり、遺留分の割合は1/2です。

2:配偶者と子

配偶者と子(ここでは妻と妹で設定)も遺留分の割合は1/2です。

3:配偶者と父母

配偶者とその父母の場合(ここでは妻と父母)も遺留分の割合は1/2です。

4:配偶者と兄弟

配偶者と兄弟の場合(ここでは妻と兄弟)は、妻については遺留分の割合は1/2です。兄弟姉妹には遺留分はありません。

5:子のみ

配偶者もおらず、子のみの場合(ここでは妹)遺留分の割合は1/2です。

6:父母のみ

配偶者がおらず、被相続人の子もいない場合は、父母が相続人となりますが、その場合の遺留分の割合は1/3です。

7:兄弟のみ

兄弟には遺留分は認められていませんので、兄弟が受け取れる遺留分はゼロになります。

ちなみに、法定相続人のうち、配偶者と子供(代襲相続人)、父母(祖父母)には、遺留分が認められています。

参考:相続における子供の遺留分に関して知っておくべき基礎知識

【関連記事】遺留分の計算方法と割合|本来の遺留分を獲得する方法

各相続人の遺留分を計算する計算式

遺留分の計算する場合、まずは「遺留分の基礎となる財産」を確認することから始めますが、被相続人が相続開始時に持っていた財産に、生前贈与をしていた財産を加えた額から債務を差し引いて算定します。(民法第1043条)

(遺留分を算定するための財産の価額)

第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
引用元:民法第1043条


遺留分の割合は基本的に、法定相続人が親などの直系尊属だけの場合、「遺留分算定の基礎となる財産」の3分の1。それ以外の場合は、財産の2分の1になります。(民法1042条)

遺留分の計算例

相続人:子供3人
遺産総額:7,000万円
生前贈与:3,000万円
債務:4,000万円の場合
 
遺留分算定基礎財産:7,000万円+3,000万円-4,000万円=6,000万円
子全員の遺留分:6,000万円×1/2(遺留分割合)=3,000万円
子供1人あたりの遺留分 3,000万円×1/3(法定相続分割合)=1,000万円 

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遺留分侵害額(減殺)請求の時効

まずは遺留分侵害額(減殺)請求の時効がいつから起算されるのかを確認しておきましょう。

贈与または遺贈があったことを知った日から1年間

民法1048条では遺留分侵害額(減殺)請求ができる期間(時効)に2つの時効期間を設けており、1つは遺言があり遺留分が侵害されたことを知ってから1年間の時効による消滅です。

相続が開始した時から10年間

相続開始時から10年を経過した場合も、遺留分侵害額(減殺)請求権の消滅時効になると規定していますが、こっちは消滅時効ではなく、「除斥期間」という解釈をされています。除斥期間とは、完全に遺留分請求できなくなってしまう期間です。

これも除斥期間になると、完全に請求できなくなりますので、早めの対応をしておくと良いでしょう。

参考:遺留分侵害額請求(減殺請求)の時効は最短1年|起算点と中断方法は?​

【関連記事】不当利得返還請求|不当に使い込んだ相続財産を取り返す手順

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)

第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
引用元:民法第1048条

遺留分侵害額(減殺)請求を行う方法と手順

すでにお伝えした通り、遺留分侵害額(減殺)請求の方法に、決まった方式や手順はありませんが、遺産を受け取った方に対して遺留分侵害額(減殺)請求を行う方法としては、

  1. 相手方と直接交渉をする
  2. 調停(裁判)で争う

基本的にはこの2パターンが考えられます。次項でそれぞれの方法をご紹介します。

遺留分侵害額(減殺)請求の手順1|遺留分侵害額(減殺)請求の順序

遺留分侵害額(減殺)請求は、遺留分を侵害している相続人や、遺産をもらった方に対して行います。この遺留分侵害額(減殺)請求には、こうしなければいけないという特別な方式や手続きはありません。

つまり、裁判所の手続きを利用することも出来ますし、裁判所を利用せず直接交渉によって請求することも可能です。まずは、特別受益者がいるかどうかを調べる必要があります。

民法では、特別受益を「遺贈」と「贈与」に分類しており、「1:遺贈」「2:贈与」の順に行っていくことと規定しています。


※特別受益者とは

相続人のなかで、被相続人から遺贈を受けたり、婚姻や養子縁組のため、または生計の補助として生前に贈与を受けた人のこと。不公平のないように相続分を事前に受け取った分を減額して調整することを民法では「特別受益」と呼びます。
参考:生前贈与は特別受益に当たる?財産の範囲・遺留分が増えるケースまとめ​


遺留分侵害額(減殺)請求の手順2|裁判以外

遺留分侵害額(減殺)請求をする際、まず初めに試して頂きたい方法です。裁判所を介さず、自分で行う方法なので、特に大きな費用などがかかることはないのがメリットとしていえます。

1:相続人の確定と財産の調査

まずはどの遺産が相続財産に当たるのか、それ自体について疑問がある場合、遺留分侵害額(減殺)請求をするためにもまずは「遺産は何か」「どのくらいあるのか」を調査、確定させる必要があります。具体的な方法は「遺産相続の対象となる財産と金額の確認方法」でご確認いただければと思います。

2:遺留分侵害額(減殺)請求の通知と方法

遺留分侵害額(減殺)請求をするために、遺留分侵害額(減殺)請求の意思表示を相手方に行う必要があります。「あなたは遺留分を侵害しているので返還を求めます」という意思表示を行えば、遺産をもらいすぎた方には遺産を返す義務が発生します。

遺留分侵害額(減殺)請求の意思表示の方法に関して、原則決まった方法はありませんので、どんな方法でお伝えいただいても構わないのですが、「間違いなくあなたに請求しましたよ」という証拠は残しておきたいので、具体的な方法として「内容証明郵便」を使った請求をするのがおすすめです。

遺留分侵害額(減殺)請求の手順3|調停

万が一相手が遺留分侵害額(減殺)請求に応じない、内容証明郵便を無視するといった場合には遺留分侵害額(減殺)請求調停を家庭裁判所へ申立てる必要があります。

遺留分侵害額(減殺)請求は調停前置主義がとられます。つまり、最初から審判や裁判を行うことはできませんので、離婚問題と同様に、まずは調停による話し合いから始まることになります。

1:遺留分侵害額(減殺)請求調停の申立

遺留分侵害額(減殺)調停は必要書類を揃えて、遺留分を請求する相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に、「遺留分侵害額(減殺)による物件返還請求調停」というものを申立てます。【お近くの裁判所検索

申立てに必要な費用
  • 収入印紙1200円分
  • 連絡用の郵便切手(裁判所によって異なる)
申立てに必要な書類
  • 家事調停申立書
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 被相続人の子の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 不動産登記事項証明書(不動産が含まれる場合)
  • 遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し(ある場合)
  • 相続人が父母の場合、父母の一方が死亡しているときは死亡の記載のある戸籍謄本
  • 直系尊属が死亡している場合、死亡の記載のある戸籍謄本

参考:裁判所|遺留分減殺による物件返還請求調停

2:申立書の作成

家事調停申立書サンプル(遺留分減殺請求版)
引用元:裁判所|家事調停調停申立書

3:遺留分侵害額(減殺)請求調停の開始

申立書が受理されると,裁判所から第1回の期日が相手方に通知され、裁判所に出頭に応じることになります。そして、裁判所が選任した調停委員を間に入れて話合いを進めていきます。

4:調停証書の作成

調停の結果、相手方との間で合意ができたら調停調書が作成されます。調停調書には裁判の判決と同じ効力があり、違反があった場合にはすぐに強制執行ができる効果も持っています。
参考:遺産分割調停の完全手引き|遺産獲得を有利に進める方法

遺留分侵害額(減殺)請求の手順4|訴訟・裁判

もし、調停で話し合いの決着がつかない場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所、または簡易裁判所に訴状を提出して訴え提起しましょう。

ただ、裁判となった場合は相続が得意な弁護士でないと、専門的な分野の内容に対応できませんし、裁判であなたが有利になるよう取り計らってくれるのは弁護士しかしませんので、一度無料相談だけでも行っていただく事を強くおすすめします。

遺留分侵害額(減殺)請求を弁護士に依頼するとより確実になる理由

必ずしも弁護士に依頼する必要はありませんが、弁護士に依頼するメリットももちろんあります。その理由を3つご紹介しますので、あなたの状況に応じてご判断いただければと思います。

相手と直接話合いをする必要がなくなる

お金のやり取りが発生するのはもちろんですが、相手との交渉の場を設けることも仕事などをしていれば一苦労です。 弁護士が間に入ることで、相手と毎回顔を突き合わせて話をする苦痛もなくなり、自ら相手に話合いを訴える必要はなくなります。相手が何かを言ってきた際には「話は弁護士に」と任せることも可能です。

参考:遺留分減殺請求を弁護士に相談するメリットと解決までの流れ​

早期解決への近道になる

一般人には相続の専門知識がないので、どのように進めていけば良いか分からない人がほとんどのはず。解決の見通しが全くたたないので、気持ちも不安にもなります。弁護士に依頼することで、「あなたの立場」「考え方」「相手の状況」などをヒアリングし、早期解決までの道筋をたててくれます。

法的手段を使って解決に結びつけられる

話合いで解決しない場合は、家庭裁判所で調停を行うことになりますので、相手が遺留分の意味を理解していない時や、頑なな態度を示している場合などは特に有効な手段になります。

審判や裁判に発展した場合でも裁判所へ弁護士が行きますので、本人は特に必要がない限り出廷する必要もありません。

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まとめ

以上が遺留分に関する内容になります。本来なら遺産の半分がもらえるはずだった配偶者や、その1/2とはいえ相続するはずだった被相続人の子供たちにとって、正当な権利を侵害されて気分が良いわけが無いと思います。

10万円や20万円ならまだ考える余地があるかもしれませんが、その額が100〜1000万円のような高額になった場合、「まあいっか」で済ますにはあまりにも大きな金額です。そのような場合の遺留分侵害額(減殺)請求は相続人の正当な権利です。

万が一遺留分を侵害されていた場合、今回の内容がお役に立てば幸いです。

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この記事の監修者
恵比寿東京法律事務所
松島 新之介 弁護士 (東京弁護士会)
遺留分・遺産分割案件を中心に、東京近郊からの相談に対応。相談者が安心して依頼できるよう、丁寧で細やかなやりとりを心がけている。税理士・司法書士と連携し、税金や不動産の悩みもサポートする。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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