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法定相続分と遺留分の違い|対象者、対象財産、計算方法、請求方法の違いを詳しく解説

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法定相続分と遺留分を同じものだと思っていませんか。

また、なにが違うのかいまいちわからない方はいませんか。

「法定相続分」とは、法定相続人に認められる遺産の相続割合のことをいいます。

一方、「遺留分」は最低限度保障される相続割合を意味します。

そのため、法定相続分には強制力はなく、遺留分には強制力があります。

本記事では、法定相続分と遺留分の基礎知識と主な違いをわかりやすく解説します。

本記事を参考に、法定相続分と遺留分の違いがわかり、自分がどのくらい相続できるか計算することができるようになりましょう。

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法定相続分と遺留分の違い

法定相続分と遺留分はどちらも相続人に認められた相続割合であるため、どのような点で異なるのか疑問に思うかもしれません。

ここでは、法定相続分と遺留分の違いについて詳しく解説します。

法定相続分|民法に規定されている相続財産を分割する際の割合のこと

「法定相続分」とは、法律上定められた法定相続人に認められる遺産の相続割合のことをいいます。

法定相続人の対象となるのは、配偶者、直系卑属(子どもや孫など)、直系尊属(親や祖父母など)、兄弟姉妹で、それぞれの立場に応じて相続できる割合が決まっています。

被相続人が亡くなって相続が発生した際、遺言書で相続の方法に関する記載がない場合には、遺産分割協議によって遺産の分け方を相続人間で話し合います

一般的にこのようなケースでは、遺産の分け方の目安として法定相続分を基に遺産の分け方を決めます。

ただし、法定相続分には強制力はないため、相続人全員の同意があれば遺産の分配方法を自由に決めることができます。

遺留分|一定の法定相続人に対して最低限保障されている相続財産の取得分のこと

「遺留分」とは、一定の法定相続人に対して最低限保障される相続財産の取得分のことをいいます(民法第1042)。

ここでいう一定の相続人の対象となるのは、配偶者及び直系尊属(子どもや孫など)、直系尊属(親や祖父母など)です。

例えば、遺言によって「長男に全ての遺産を相続する」という内容が記載されていた場合、他の相続人は不満を抱く可能性が極めて高いと考えられます。

遺留分は法定相続分と異なり強制力があるため、遺留分以下の財産しか受け取れない場合は、他の相続人に対して最低限認められた遺留分の限度で遺産を請求することができます(遺留分侵害額)。

ただし、遺留分は金銭での請求になるため、特定の不動産などを請求することはできません(2019年7月以降に被相続人が死亡した場合に限ります。)。

法定相続分と遺留分の違い1.対象者の範囲と順位

法定相続分と遺留分の大きな違いのひとつとして、対象者の範囲と順位が異なることが挙げられます。

配偶者は常に法定相続人となります。

そして、直系卑属にあたる子どもや孫は第一順位の法定相続人にあたります。

直系卑属がいなかった場合は、第二順位の法定相続人として直系尊属が相続権を取得し、直系尊属もいなかった場合に限り兄弟姉妹が第三順位法定相続人となります。

上位の順位を有する法定相続人がいる場合、下位の順位の法定相続人には相続権は発生しません。

一方、遺留分は配偶者と直系卑属、直系尊属のみに認められます

そのため、兄弟姉妹には遺留分が存在しません。

また、遺留分には順位がないため、相続人にあたれば遺留分が認められます。

つまり、配偶者と直系卑属は常に遺留分権者となり、直系卑属がいなかった場合のみ直系尊属にも遺留分が認められます。

なお、各相続人が法定相続分と遺留分の対象かどうかについては、下表も参考にしてください。

法定相続分と遺留分の違い2.対象となる財産

法定相続分と遺留分には、それぞれ対象となる財産が異なります

 

法定相続分

遺留分

財産

・土地や建物などの不動産

・自動車や貴金属などの動産

・預貯金

・現金

・株式

・その他債権など

・遺言によって取得した財産

・被相続人の死亡前の1年以内に贈与された財産

・当事者が遺留分を侵害することを知りながら生前贈与した財産

・相続人へ死亡前10年以内に贈与された財産(特別受益にあたるものに限る)

法定相続される財産は、被相続人の財産全てが含まれます

この財産には、土地や建物など不動産、自動車などの動産、預貯金、株式などプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。

そのため、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた額が相続財産として扱われます。

なお、生前贈与など特定の相続人が利益を得た取得についても「特別受益」として相続財産に含まれる場合があります。

そして、これらの財産を法定相続分に応じて相続人間で分割することになります。

一方、遺留分の対象となるのは以下のとおりです。

  • 遺言によって取得した財産
  • 被相続人が亡くなる1年以内に贈与された財産
  • 当事者が遺留分を侵害することを知りながら生前贈与した財産
  • 相続人へ死亡前10年以内に贈与された財産(特別受益にあたるものに限る)

遺留分は不公平な遺産分割を防止するものであるため、不公平な遺産分割にあたるような行為によって譲渡された財産が主に対象となります。

また、遺留分権利者の遺留分が侵害された場合には、遺留分侵害額請求によって遺留分を金銭の支払いによって取り戻すことができます

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法定相続分と遺留分の違い3.それぞれの割合と計算方法

法定相続分と遺留分は、相続人ごとにそれぞれ割合が決まっています

相続人

法定相続分

遺留分

配偶者のみ

遺産の全て

遺産の2分の1

子どものみ

遺産の全て

遺産の2分の1

配偶者と子ども

配偶者:遺産の2分の1

子ども:遺産の2分の1

配偶者:遺産の4分の1

子ども:遺産の4分の1

配偶者と父母

配偶者:遺産の3分の2

父母:遺産の3分の1

配偶者:遺産の6分の2

父母:遺産の6分の1

父母のみ

遺産の全て

遺産の3分の1

兄弟姉妹のみ

遺産の全て

権利なし

法定相続分は、配偶者と上位順位の法定相続人から順に認められます。

上位順位の法定相続人がいる場合、下位順位の法定相続人は相続人に該当しないため、法定相続分も認められません。

一方で、遺留分は配偶者、直系卑属、直系尊属にのみ認められます。

そのため、兄弟姉妹は常に遺留分が認められません

もっとも、直系尊属も直系卑属がいる場合には相続人に該当しないため、遺留分が認められません。

なお、子どもや兄弟姉妹が複数いる場合は、上表の割合の遺産を頭数で按分することになります。

法定相続分と遺留分の違い4.主張する方法

法定相続分と遺留分の違いとして、権利を主張する方法に違いがあります

法定相続分は、遺産分割時に用いる基準であるため、基本的に権利を主張することはありません。

しかし、遺産分割協議の際に法定相続分での遺産分割がおこなわれない場合は、法定相続分を主張することができます。

万が一、遺産分割協議で話し合いがつかなかった場合には、家庭裁判所の審判によって決定します。

この際にも、家庭裁判所は法定相続分を参考に遺産分割の手続きを進めます。

そのため、遺産分割に納得できない場合に法定相続分を主張することになります

一方で、遺留分を行使する際は遺留分侵害額請求をおこないます。

遺留分侵害額請求は、遺留分権利者が受遺者や受贈者に対して、侵害された遺留分相当額を金銭によって支払うことを請求するものです。

遺産分割同様、一般的には話し合いによる解決を目指しますが、合意できなかった場合には遺留分侵害額調停や遺留分侵害額請求訴訟を地方裁判所や簡易裁判所に対して申し立てる必要があります。

そのため、両者を比較すると遺留分の権利行使のほうがハードルが高いことが特徴といえます。

もっとも、遺留分は相続人に認められた権利です。

少しでも不公平な遺産分割がおこなわれている感じた場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。

法定相続分や遺留分について具体的に知りたい場合の主な相談相手

法定相続分や遺留分について悩んでいる際、誰に相談すればよいのか迷う方もいるかもしれません。

そのような際には、弁護士か司法書士といった専門家に相談するのがおすすめです。

ここでは、弁護士と司法書士それぞれの特徴や違いについて見てみましょう。

1.弁護士|相続全般について相談することができる

弁護士に相談した場合、相続全般について相談することができます

弁護士は、法律事務の全てを扱うことができるため、ほかの相続人との交渉や書類の作成など、全面的なサポートを受けられます。

また、後述する司法書士のように依頼の金額によってサポートできる範囲が制限されることもありません

そのため、相続全般のサポートを受けたい場合やどこから手続きを進めたらよいのかわからない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

さらに、弁護士であれば他の相続人とトラブルになりそうな場合にも、交渉や調停、審判、裁判の対応が可能です。

2.司法書士|請求金額が140万円以下なら相談することができる

司法書士は、相続登記や公的な書類を作成することを主な業務としています。

そのため、原則として相続全般の法律的判断が含まれるような相談をすることはできません

もっとも、認定司法書士の場合、請求額が140万円以下の訴訟であれば、他の相続人との交渉や相談などの代理人になることができます。

請求額が140万円以下の場合には、司法書士も相談先のひとつとして検討してもよいでしょう。

ただし、他の相続人との交渉や相続財産の調査の結果、140万円を超えてしまうと司法書士では対応できません。

「書類を作成してほしい」「不動産の相続登記をしてほしい」など、相談内容が明確な場合に司法書士への相談・依頼をするのがおすすめです。

さいごに|法定相続分や遺留分の意味を正しく理解して相続を進めよう

本記事では、法定相続分や遺留分の違いについて詳しく解説してきました。

遺言書などが残されていないケースでは、原則として法定相続分をベースとして遺産を相続人間で分けます

一方、遺産のうち一定の相続人に確保されている最低限の取り分の遺留分を侵害されたというようなケースでは、遺留分侵害額請求の対象となります。

本記事で紹介した法定相続分や遺留分などのように、相続の場面で登場する言葉はあまり聞き慣れないものも多いかもしれません。

ですが、ひとつずつの言葉を正しく理解しておかないと後悔の残る遺産相続になりかねません

そのため、相続や遺産分割に疑問や不安がある場合には、解決実績豊富な弁護士や司法書士といった専門家への相談・依頼することをおすすめします。

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この記事の監修者
京都松田法律事務所
松田 哲郎 (京都弁護士会)
あらゆる相続問題に取り組んできた経験をもとに、多角的な視点でのアドバイスやサポートの提供をおこなっている。他士業と密に連携し、不動産を含む複雑な相続もワンストップでスムーズに進めることが可能。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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