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相続税・贈与税の改正で節税できるか?2024年から始まる相続時精算課税制度の活用

日暮里中央法律会計事務所
青木 豊
監修記事
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2023年に相続税・贈与税の税制が改正されました。

具体的にどのような見直しがなされたのか、気になる方は多いのではないでしょうか?

本記事では、今回の税制改正のポイント、税制改正の背景などについて解説します。

改正後の注意点も紹介するので、改正を踏まえて相続税・贈与税対策をしっかり練りたい方はぜひ参考にしてください。

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この記事に記載の情報は2024年02月06日時点のものです

どう変わるの?2023年の相続税・贈与税の税制改正の3つのポイント

2024年1月からの相続税・贈与税の税制改正のポイントは大きく3つあります。

1.相続税精算時課税制度に年110万円の基礎控除を創設

今回の税制改正では、相続税精算時課税制度に年110万円の基礎控除が創設されました。

相続時精算課税制度とは60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子・孫が贈与を受ける場合、2,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。

ただし相続時精算課税という名前のとおり、贈与者が亡くなり相続が開始されると、2,500万円の非課税を使い贈与された分に相続税が課税されます。

また贈与者の生前も、贈与額が2,500万円を超えた分には20%の贈与税がかかるのです。

相続税精算時課税に年110万円の基礎控除枠が設けられたことで、その分は贈与者が亡くなった後に相続財産に加算されることがなくなりました。

年110万円までの贈与に対しては贈与税がかからないだけでなく、相続税もかからなくなったわけです。基礎控除枠までの贈与は申告も必要がありません。

相続税精算時課税に年110万円の基礎控除枠ができたことで、申告の手間が軽減されるうえに相続税も少なくなったわけです。

制度の利用者にとって、メリットが増えたことになります。

 

改正前

改正後

基礎控除

0円

年110万円

贈与税の課税対象財産の額

(贈与額−2,500万円)×20%

{(贈与累計額−年110万円)−2,500万円}×20%

相続税の課税対象財産の額

贈与額全て

贈与額から年110万円を差し引いた額

2.暦年贈与制度では生前贈与加算の期間が死亡前7年間に延長される

暦年贈与において、生前贈与加算の期間が「死亡前3年間」から「死亡前7年間」に延長されます。

暦年贈与とは、年間110万円の基礎控除枠まで贈与税がかからない仕組みを利用した贈与方法です。

暦年贈与を利用することで、贈与税を節税できます。

前述の相続時精算課税と暦年贈与はいずれか一方を選ぶかたちとなり、相続時精算課税を選んだ場合は、暦年贈与には戻れません。ただし別の贈与者から受ける贈与については、引き続き暦年贈与の利用が可能です。

暦年贈与を選んだ場合、これまでは贈与者の死亡前3年間に贈与された分は相続財産に加算され、相続税が課税されていました。(納付済の贈与税分は税額控除される)改正後はこの期間が3年間から7年間に延長されます。

生前贈与加算の期間が長くなったことで、相続税が増税されることになります。これは暦年贈与を選ぶ方にとってはデメリットです。

なお改正後は贈与者の死亡前4年間に贈与された分のうち、総額100万円まで相続財産に加算されないというルールも追加されています。

3.「教育資金」と「結婚・子育て資金」の一括贈与の特例が延長される

改正後は、教育資金と結婚・子育て資金の一括贈与の特例期間が延長されます。

これらは、子・孫に教育資金を贈与した場合は1,500万円まで、結婚・子育て資金を贈与した場合は1,000万円まで非課税となる特例です。

今回の改正で、教育資金贈与の特例は2026年3月31日まで、結婚・子育て資金贈与の特例は2025年3月31日まで延長されました。

また、これらの特例を節税目的で利用する人が多かった実情を踏まえた見直しもなされます。

まず教育資金贈与の特例を利用したものの、贈与者が亡くなったときに贈与された資金を使い切っていなかった場合、改正前はその残りが受贈者が23歳未満か学生であれば相続財産に加算されませんでした。

しかし改正後は、受贈者が23歳未満または学生であっても、相続財産が5億円を超える場合は相続財産に加算され、相続税がかかることになります。

また贈与された教育資金のうち30歳までに使いきれなかった分には、贈与税が課税されます。

この贈与税を計算する際、改正前は18歳未満なら一般税率、18歳以上はより税率が低い特例税率が適用されていました。一方で改正後は、年齢にかかわらず一般税率が適用されることになったのです。

結婚・子育て資金贈与の特例についても、改正後は一部のルールが変更されます。受贈者が50歳に達した段階で使いきれなかった分が、贈与税の課税対象になる点は改正前も後も同じです。

ただ適用される税率に関し、改正前は一般税率より低い特例税率が適用されていたところ、改正後は一般税率が適用されることになりました。

どうして変えるの?2023年の相続税・贈与税の税法改正の背景

本項では、2023年における税法改正の背景について解説します。

1.相続税精算時課税制度の利用を促すため

贈与税の負担を軽減できる相続税精算時課税制度は、子ども世代への資産移転を促進することが目的と考えられます。

国は子ども世代に移転された資産を、投資や消費にまわして欲しいわけです。しかし改正前は少額の贈与でも申告が必要になるなど、使いやすいとはいえずあまり利用されませんでした。

今回の改正では、前述の通り相続税精算時課税制度に110万円の基礎控除枠が設けられています。

これにより110万円までは申告の必要もなくなり手続きが簡単になったのに加え、相続税も節税できるようになったのです。

このように改正によって制度を利用しやすくしメリットも増やすことで、国は制度の利用を促したいものと考えられます。

2.富裕層の節税目的で制度を利用されるのを回避するため

教育資金と結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、祖父母から子ども世代に教育などの資金を贈与しやすくすることを目的としています。

この制度で子どもが資金を得やすくし、教育・出産・子育ての不安を取り除こうとしているのです。本制度は、国がすすめている少子化対策の一環ともいえます。

しかし改正前、本制度は富裕層の節税目的に使われやすかった面がありました。一括贈与された資金の使い残しが発生すること自体、節税目的が疑われます。

そこで本制度を本来の目的以外で利用されるのを防ぐため、使い残しに対する課税ルールを厳しくしたものと考えられるのです。

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便利になった相続時精算課税制度を利用したい方が知っておくべき注意点

今回の改正で、相続時精算課税制度をより便利に活用できるようになりますが、一方で注意点もあります。

ここからは、相続税精算課税制度を利用する場合に知っておくべき注意点を紹介します。

1.利用できる対象者が決まっている

相続時精算課税制度は、以下の対象者のみ選択できます。

  • 贈与者(贈与する者):贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母
  • 受贈者(贈与される者):贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子まや孫など)

贈与者が60歳未満であったり受贈者が18歳未満であったりする場合は、相続時精算課税制度を利用できないので注意してください。

ただし、非上場株式や事業用資産の贈与の場合は、贈与者が60歳以上であれば受贈者の年齢にかかわらず相続時精算課税制度を利用できる場合があります。

利用できる対象者については国税庁のホームページで確認できるので、気になる方はチェックしてみてください。

2.一度選択するとあとから撤回することができない

相続時精算課税制度は、一度選択するとあとから変更することはできません。

受贈者は、贈与者ごとに相続時精算課税制度か暦年贈与のいずれかを選択できますが、相続時精算課税制度を選んだ贈与者からの贈与財産は、全てこの制度が適用されます。

仮に贈与者Aからの贈与財産を相続時精算課税制度で受け取ると決めた場合は、その年以降の贈与者Aからの贈与財産を暦年贈与へ変更することはできません

相続時精算課税制度と暦年贈与のどちらを選ぶべきかは人によって異なります。

たとえば将来値上がりしそうな不動産や株を贈与する場合、相続時精算課税制度を選ぶことで相続税を節税できる可能性が高いです。

相続時精算課税制度による贈与を相続財産に加算する場合、贈与時点の評価額で加算します。そのため値上がり前に贈与することで相続税を軽減できるのです。

一方、長生きする方は暦年贈与を選んだ方がよい可能性があります。元気なうちから基礎控除枠内での贈与を長期的に続けることで、相続時精算課税制度を選ぶより節税できることがあるからです。

また相続時精算課税制度を選ぶことで、自宅や事業用宅地の相続税を大幅に節税できる可能性がある小規模宅地等の特例が使えなくなります

このように、どちらをえらぶとよいかはさまざまな条件によって異なります。そのためご自身の場合にどちらを選ぶとよいかは、相応の専門知識がないと正しく判断するのは難しいでしょう。

不安であれば早い段階で税理士に相談し、どちらを選ぶとよいかアドバイスをもらうことをおすすめします。

3.非課税枠2,500万円は将来的に相続税の対象となる

非課税枠2,500万円の範囲で贈与した分は、将来的に相続税の対象となる点は注意が必要です。相続時精算課税制度を利用して非課税になるのはあくまで贈与税であり、相続税がかからないわけではありません

相続時に思ったより相続税が高額となり、驚かないようにしましょう。

今後の税制改正で相続税のどのような点を見直しされる可能性がある?

今後も税制改正で見直される可能性がある点として、以下が挙げられます。

ただし、あくまで現時点で要望として挙がっているものであり見直しが決定しているわけではないので、参考程度にとどめてください。

1.死亡保険金の相続税非課税限度額の引き上げ

1つ目は、死亡保険金の相続税非課税枠の引き上げです。

現行の法律では、被相続人が保険料を支払っていた生命保険の死亡保険金は、「500万円×法定相続人数」までなら相続税がかかりません

この非課税枠に「(配偶者+未成年の被扶養法定相続人数)×500万円」を追加して欲しいという要望が上がっているのです。

たとえば父親の法定相続人として、母親と未成年の子ども1人がいるとします。

現行の制度では、死亡保険金が500万円×2=1,000万円までなら相続税がかかりません。しかしこの要望が実現すると、この例では以下の分だけ非課税枠が増えるのです。

  • (配偶者(1人)+未成年の被扶養法定相続人数(1人))×500万円=1,000万円

これによって現行制度による1,000万円分を含め、非課税枠が合計2,000万円まで拡大することになります。

仮に非課税枠が引き上げられれば相続税がより軽減される可能性が高いので、多くの人にとってメリットがあるでしょう。

2.法人版および個人版事業承継税制の見直し・延長

2つ目は、事業承継税制の見直しと延長です。

事業承継税制とは、事業承継のために後継者が事業用資産や自社株式を取得した場合に、贈与税・相続税の納税が猶予される制度を指します。

現在、承継する資産・事業内容・後継者などに対してさまざまな要件が設けられているため、要件の緩和を求める人が多いと考えられます。

また、法人版は2027年12月31日まで、個人版は2028年12月31日までの適用のため、延長してほしいと考える人も多いでしょう。

さいごに|相続税・贈与税の対策がしたいなら税理士に相談しよう!

2023年の税制改正により、現行の制度が大きく見直されました。

相続税・贈与税の対策方法が変わる可能性もあるので、効果的な対策を知りたい方は税理士に相談・依頼しましょう。

税金の専門家である税理士に相談すれば、資産移転を適切におこなう方法を知ることができます。

少しでも不安があるなら、ぜひ一度相談してみてください。

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この記事の監修者
日暮里中央法律会計事務所
青木 豊 (第一東京弁護士会)
早稲田大学法学部を卒業後、早稲田大学大学院法務研究科へ入学。第一東京弁護士会所属。公認会計士試験合格、FP1級、税理士業務も行うタックスローヤー。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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