- 「再婚後に築いた財産を、前妻の子に相続させたくない」
- 「父から前妻との間に子がいると聞いているが、遺産相続で関わりたくない」
前妻との間に子がいる場合、上記のような考えが頭をよぎるかもしれません。
しかし、前妻との子にも父の財産を相続する権利があります。相続欠格・相続廃除などの事由がない限り、本人の意に反して相続手続から除外できません。ただし、生前に対策を講じることで、前妻の子の取り分を少なくできる可能性はあります。
本記事では、相続における前妻の子の扱いを踏まえ、再婚後の家族に財産をできるだけ残す方法を解説します。将来発生しうるトラブル別の対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
前妻の子に相続したくないあなたへ
後妻と後妻の子にだけ財産を残したいけど、トラブルは避けたいな...と悩んでいませんか?
結論からいうと、前妻の子と後妻・後妻の子の間で対立関係が生じてしまい、遺産分割がまとまらない可能性があります。
前妻の子がいる相続はトラブルが起きやすいので困っている方は早めに弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。
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- 遺言書の作成方法についてアドバイスをもらえる
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前妻の子に相続させない方法を探る前に知るべきこと
前妻の子は、後妻の子と同じく、父の財産を相続する権利を持っています。有効な遺言がない限り、前妻の子を無視して相続手続は進められません。前妻の子に相続させない方法を探る前に、まずは相続における前妻の子の扱いについて、正しい理解を深めましょう。
前妻の子にも相続する権利がある
前妻との子には、父の財産を相続する権利があります。
被相続人の子は、第1順位の法定相続人です。離婚後、子が前妻の戸籍に入ったり、前妻の姓を名乗っていたりしても、子であることに変わりはありません。子が前妻の再婚相手と普通養子縁組をしている場合も同様です。
父母が離婚しても、法律上の父子関係は消えません。
離婚した前妻との子の相続割合は後妻の子と同じ
前妻の子の法定相続分は、後妻の子と同じです。子が複数いる場合は、前妻の子・後妻の子の区別なく、法定相続分を頭数で割ります。
後妻(配偶者)が存命の場合の法定相続分は、後妻が2分の1、子全体で2分の1です。相続開始時点で後妻(配偶者)が死亡している場合、子らで全部を相続します。
たとえば、相続人が後妻A・後妻の子B・前妻の子Cの三人であれば、各自の法定相続分は以下のとおりです。
- 後妻A:2分の1
- 後妻の子B:4分の1
- 前妻の子C:4分の1
もっとも、相続人全員の同意があれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けるのも可能です。
前妻の子に相続開始を知らせないまま手続きはできない
被相続人の全財産の行き先を指定した有効な遺言書がない限り、前妻の子を無視して相続手続は進められません。
遺産の全部について有効な遺言書がない限り、相続人全員で遺産の分け方について話し合わなければならないためです。前妻の子を除外した遺産分割協議は、無効となります。遺言と異なる遺産分割をしたい場合も、前妻の子を含めた相続人全員の合意が必要です。
したがって、仮に前妻の子を除いた相続人で遺産分割協議を成立させても、同協議書では相続手続は進められません。相続登記や預貯金の払い戻しといった手続きでも、原則として相続人全員の関与が必要です。
前妻の子に相続放棄の強要はできない
前妻の子に相続放棄を強要することはできません。相続放棄は、相続人本人の自由な意思に基づいておこなわれるべきものです。「放棄してほしい」と自身の希望を伝えたとしても、前妻の子に応じる義務はありません。
また、前妻の子を騙したり、危害を加えると脅したりして相続放棄の申述をさせた場合、相続放棄は取り消される可能性があります。たとえば、前妻の子に「被相続人には多額の借金があるから、相続放棄をしないと返済義務を負う」などと嘘をついた場合などです。
前妻の子にも遺留分があるため取り分をゼロにするのは難しい
遺産の全てを後妻や後妻の子に相続させる旨の遺言を残しても、前妻の子の取り分を完全にゼロにするのは難しいでしょう。
前妻の子にも、遺留分が認められるためです。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合です。遺留分を侵害する遺言や贈与があった場合、前妻の子は遺留分侵害額を請求できます。
前妻の子の遺留分の割合(個別的遺留分)は、法定相続分に2分の1を乗じた値です。たとえば、相続人が後妻A・後妻の子B・前妻の子Cの三人の場合、前妻の子の個別的遺留分は8分の1です。
上記のケースで、被相続人が後妻Aに全財産の3分の2、後妻の子Bに全財産の3分の1を相続させる旨の遺言を残していたとしましょう。前妻の子Cは、以下のとおり、後妻Aに対して400万円・後妻の子Bに対して200万円を請求できます。
【前提条件】
・相続開始時の財産の総額:4,800万円
・生前贈与なし
・相続債務なし
▼前妻の子Cの個別的遺留分
総体的遺留分2分の1 ×法定相続分 4分の1=8分の1
▼前妻の子Cの遺留分額
4,800万円 × 8分の1 =600万円
▼遺留分侵害額
前妻の子Cの遺留分額600万円 -前妻の子Cが相続によって得た財産額 0円= 600万円
▼後妻Aと後妻の子Bに請求できる金額
・後妻A: 600万円 × 3分の2 = 400万円
・後妻の子B:600万円 × 3分の1 = 200万円
※受遺者(遺言により財産をもらった人)が複数いる場合は、受遺者が目的物の価額の割合に応じて負担する。 |
前妻の子に相続させたくない場合の生前対策
前妻の子には遺留分が認められているため、相続分を完全にゼロにするのは困難です。しかし、生前に対策を講じておくと、再婚後の家族にできるだけ多くの財産を残せる可能性があります。前妻の子の相続分を最小限に抑えるための主な生前対策は、以下のとおりです。
- 遺言書を作成する
- 後妻や後妻の子に財産を生前贈与する
- 後妻や後妻の子と死因贈与契約を締結する
- 死亡保険金の受取人を後妻や後妻の子に指定する
- 前妻の子に自由な意思のもと遺留分を放棄してもらう
- 推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求または遺言書で意思表示する
遺言書を作成する
後妻や後妻の子に財産を相続させる旨の遺言書を作成する方法です。全ての財産の分け方を示した有効な遺言書があれば、原則として遺産分割協議を経ずに相続手続を進められます(割合のみ指定する場合を除く)。
あらかじめ遺言書で遺言執行者を指定しておくと、後妻と前妻の子が直接やり取りしなくてすむ体制を整えられます。遺言執行者は、相続財産の管理を含め、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務を有しているためです。
もっとも、前妻との子には遺留分があるため、遺言書の作成時には配慮・工夫が必要です。たとえば、以下のような方法があります。
- 遺言書に、前妻の子の遺留分に相当する金額を相続させる旨を記載する
- 相続開始後の遺留分侵害額請求に備えて、現金や生命保険を準備する
後妻や後妻の子に財産を生前贈与する
後妻や後妻の子に財産を生前贈与する方法です。生前に財産を移転させておけば、相続開始時の財産総額を減らせるため、結果的に前妻の子が相続する財産も少なくなるでしょう。
年間の贈与額を基礎控除額(110万円)以下におさめれば、贈与税の課税を避けつつ、少しずつ相続財産を減らせます。10年・20年といった長期的な計画で贈与を継続できるのであれば、暦年贈与を活用することで、相続税の負担軽減にもつながるでしょう。
ただし、以下のいずれかに該当する贈与は、遺産の前渡しと捉えられる特別な利益(特別受益)にあたります(価額が少額・扶養の一部と認められる場合を除く)。
| 贈与の種類 |
具体例 |
| 婚姻または養子縁組のための贈与 |
婚姻・養子縁組の際の持参金・支度金 |
| 生計の資本としての贈与 |
・居住用不動産(または購入資金)の贈与
・事業資金の援助
・土地の無償使用(使用貸借)など |
特別受益は、計算上、相続財産に加算(持ち戻し)して、相続分を算定するのが一般的です。遺産分割時に贈与を受けた相続人の取得分が減る可能性があります。
また、年間110万円以下の暦年贈与でも、時期・期間によっては相続財産に加算されて課税対象となる場合もあります。生前贈与を検討する場合は、事前に弁護士・税理士に相談するのが賢明です。
後妻や後妻の子と死因贈与契約を締結する
後妻や後妻の子と死因贈与契約を締結する方法もあります。死因贈与とは、贈与者(財産を譲る人)の死亡によって効力が生じる贈与です。死因贈与は契約行為であり、贈与者と受贈者(財産を受け取る人)の合意により成立します。
死因贈与には、以下のようなメリットがあります。
| 贈与者側のメリット |
・自分の死後に財産を贈与するにあたり、条件や負担を定められる(「介護して欲しい」「同居して欲しい」など)
・受贈者が生前に負担を履行しない場合には、死因贈与を撤回できる |
| 受贈者側のメリット |
・契約の時点で贈与の内容を知るため、贈与者の死後に自分がもらえる財産が事前に把握できる
・贈与者の死後の財産処分に備えられる |
不動産を死因贈与する場合は、契約時に仮登記(始期付き所有権移転仮登記)の設定も可能です。仮登記を設定しておくと、贈与者の死後の本登記がスムーズに進められます。
ただし、死因贈与は遺贈や一部の生前贈与と同様に、遺留分の計算対象に含まれます。死因贈与契約を締結する場合は、前妻の子の遺留分を侵害しないよう配慮しましょう。
死亡保険金の受取人を後妻や後妻の子に指定する
死亡保険金の受取人を後妻・後妻の子に指定するのも有効な方法です。
被相続人を保険契約者兼被保険者とする生命保険の死亡保険金は、受取人の固有財産であり、相続財産に含まれません。あらかじめ受取人に指定しておくと、保険金の分だけ後妻・後妻の子が実質的に多く受け取れるようになります。
共同相続人間の不公平が著しい場合などを除き、基本的に、特別受益として遺産分割時に考慮される心配もありません。遺産と別枠で後妻・後妻の子にお金を残せるのは安心です。
なお、死亡保険金は相続税上は、みなし相続財産として課税対象になりますが、500万円×法定相続人の数の非課税枠が適用されます。
前妻の子に自由な意思のもと遺留分を放棄してもらう
前妻の子が自ら「父親の財産は一切いらない」旨の意思を示している場合は、生前に遺留分を放棄してもらう方法も視野に入れられるでしょう。
推定相続人は、相続開始前に家庭裁判所の許可を得て、あらかじめ遺留分を放棄できます。前妻の子の申立てによって遺留分の放棄が認められれば、遺留分侵害額請求を相続開始前に封じられます。
遺留分の放棄は、あくまで前妻の子の自由意思によるものでなければなりません。強制・脅迫があれば無効となります。また、遺留分を放棄しても相続権自体は消滅しないため、遺言と組み合わせるのが理想的です。
推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求または遺言書で意思表示する
前妻の子に、被相続人への虐待・重大な侮辱・著しい非行のいずれかがある場合は、相続廃除を検討できます。
相続廃除とは、遺留分を含む相続権をはく奪する制度です。相続廃除が認められるためには、前妻の子に、以下のいずれかの廃除事由が必要です。
| 廃除事由 |
具体例 |
| 被相続人に対する虐待 |
被相続人に対し、日常的に暴力をふるったり、耐え難い精神的な苦痛を与えたりした場合 |
| 被相続人に対する重大な侮辱 |
言葉や行動により、被相続人の名誉・尊厳を著しく傷つけた場合 |
| その他の著しい非行 |
・重大な犯罪で有罪判決を受けた
・被相続人の財産を不当に処分した
・犯罪により何度も服役し、被相続人に被害者らへの被害弁償・借金の支払いを肩代わりさせた |
推定相続人の廃除は、生前に家庭裁判所へ請求する方法と、遺言で意思表示する方法の二通りがあります。遺言による場合は、相続開始後に遺言執行者による家庭裁判所への請求が必要です。廃除の審判が確定すると、廃除対象者の遺留分を含む相続権がはく奪されます。
ただし、廃除された推定相続人に子(子が死亡している場合は孫)がいる場合、代襲相続人が被相続人の財産を相続します。
被相続人の死後、前妻の子に相続させたくない場合にできる対策
生前対策が十分でなかった場合でも、相続開始後に後妻・後妻の子がとれる手段があります。以下で詳しく解説します。
後妻や後妻の子が介護に貢献した事実を主張する
後妻や後妻の子が、被相続人の生活の世話や看護をしたり、無償で家業を手伝ったりした場合は、寄与分を主張できる可能性があります。寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加に特別に貢献した相続人に対し、貢献の度合いに応じて相続分を加算する制度です。
寄与分を認める場合は、相続財産から寄与分を控除したものを相続財産とみなします。そのため、後妻または後妻の子に寄与分が認められると、前妻の子の取り分が実質的に減少します。
寄与分が認められるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
- 相続人自らの寄与行為がある
- 寄与行為が特別の寄与である
- 被相続人の遺産が維持または増加した
- 寄与行為と被相続人の財産の維持・増加との間に因果関係がある
寄与分を定めるか否かは、共同相続人間の協議または家庭裁判所の調停・審判によって決定します。寄与分を定める場合には、寄与の内容や程度に応じて金額を決定します。
前妻の子に自由な意思のもと相続分を放棄してもらう
前妻の子が自発的に「父の遺産は受け取らない」旨の意思を示している場合は、遺産分割協議において相続分を放棄してもらう方法があります。相続分の放棄とは、相続人としての地位を残しつつ、相続財産に対する自己の持分を放棄する意思表示です。
放棄された相続分は、ほかの相続人に各人の相続分に応じて帰属するというのが実務上の考え方です。たとえば、相続人が後妻A・後妻の子B・前妻の子Cの三人のケースで、前妻の子Cが相続分を放棄した場合、AとBの相続分は以下のとおりです。
| |
法定相続分 |
前妻の子Cの相続分放棄後の相続分 |
| 後妻A |
2分の1 |
3分の2 |
| 後妻の子B |
4分の1 |
3分の1 |
| 前妻の子C |
4分の1 |
0 |
相続分の放棄は、ほかの相続人に対し、相続分を放棄する旨の意思表示をすることで効力が生じます。もっとも、実務上は、放棄書や遺産分割協議書への署名・実印による押印・印鑑証明書の提出を受けるのが一般的です。
なお、相続分の放棄は相続人としての地位は残るため、借金などの相続債務は法定相続分に応じて引き継がなければなりません。
前妻の子に自由な意思のもと相続放棄をしてもらう
前妻の子が、「父の財産・負債を一切相続したくない」「再婚後の家族と関わりたくない」といった理由で相続放棄を申述する場合もあるでしょう。相続放棄をすると、前妻の子は最初から相続人ではなかったものとみなされます。
たとえば、相続人が後妻A・後妻の子B・前妻の子Cの三人のケースで、前妻の子Cが相続放棄をすると、AとBの相続分は以下のとおりとなります。
| |
法定相続分 |
前妻の子Cの相続放棄後の相続分 |
| 後妻A |
2分の1 |
2分の1 |
| 後妻の子B |
4分の1 |
2分の1 |
| 前妻の子C |
4分の1 |
0 |
前妻の子が遺産分割協議に参加する必要もなくなるため、相続手続で関わらずに済みます。しかし相続放棄は、前妻の子の自由な意思に基づいてなされる必要があり、強制はできません。
なお、相続放棄は、相続開始を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
前妻の子がいる場合の遺産分割の進め方
本章では、前妻の子がいる場合の遺産分割の進め方を解説します。
1.遺言書の有無を確認する
相続が開始したら、まずは遺言書の有無を確認する必要があります。被相続人が有効な遺言を残していれば、遺言の内容に従って遺産を分配できます。遺言書の主な探索方法は、以下のとおりです。
| 遺言の種類 |
調べ方 |
| 自筆証書遺言 |
①被相続人の身の回りを確認する。自筆証書遺言の保管場所は人によって異なるが、以下のような場所が一般的。
・通帳などを保管する書類棚や金庫
・机の引き出し
・仏壇の物入れ
・銀行の貸金庫
②被相続人の知人や関係のあった弁護士・税理士などに聞いてみる。 |
| 自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度を利用している場合) |
①利用の有無が不明な場合は、遺言書保管事実証明書の交付請求をおこなう。
②被相続人が生前に指定している場合は、法務局から遺言者が指定した方への通知が届く。
③ほかの相続人が遺言書の閲覧または遺言書情報証明書の交付を受けたときは、法務局から関係遺言書保管通知が届く。 |
| 公正証書遺言 |
①被相続人の居宅内や貸金庫に公正証書遺言の正本・謄本がないか確認する。
②居宅内や貸金庫で正本・謄本が見当たらない場合は、最寄りの公証役場に赴き、検索してもらう(公正証書検索システム)。 |
自筆証書遺言を発見した場合は、開封せずに家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。検認を経ずに開封した場合は、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。法務局に保管された自筆証書遺言や公正証書遺言は検認不要です。
2.相続人を漏れなく把握する
相続人調査をおこない、相続人を漏れなく把握しましょう。遺産分割協議の実施や公的機関や金融機関での相続手続には、相続人を確定する必要があります。原則として、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・改製原戸籍謄本・除籍謄本を取り寄せます。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などが揃ったら、相続人の戸籍謄本を取得しましょう。相続人の生存が確認できたら、相続人の所在を確認するために住民票を取得してください。住所がわからない場合は、戸籍の附票を取得して住所を確認します。
相続人がひとりでも漏れると、遺産分割協議は無効になります。相続人の特定に不安がある場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。
3.相続財産を調査・リストアップする
相続財産を調査しましょう。誰が何をどれだけ相続するのか、相続税はいくらになるのかを計算するためには、相続財産調査が必要です。調査が不十分だと、相続税の申告漏れが生じたり、遺産分割のやり直しが必要になったりして、不利益を被る可能性もあります。
相続財産調査では、被相続人が相続開始時に持っていたプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も調査してください。遺言がある場合も、遺言書に相続財産の全てが記載されているとは限らないため、調査が必要です。
相続財産調査が済んだら、相続財産の一覧表(遺産目録)を作成して前妻の子を含む相続人全員に開示することをおすすめします。遺産目録があれば、相続人全員が相続財産の内訳・評価・総額などの全体像を明確に把握できるため、話し合いをスムーズに進められます。
4.前妻の子を含む相続人全員で遺産分割協議をおこなう
相続人全員で遺産分割協議をおこないます。相続人が一人でも欠けると、遺産分割協議は無効となるため、前妻の子にも参加してもらう必要があります。協議は、相続人全員が一堂に会するほか、電話・メール・手紙などの方法でおこなっても差支えありません。
前妻の子と直接やり取りしたくない場合は、弁護士への依頼も検討してください。弁護士は代理人として前妻の子との交渉をおこなえるため、直接接触を避けられます。
5.遺産分割協議書を作成する
相続人全員が遺産分割の内容に合意すれば、合意内容を遺産分割協議書として書面にします。遺産分割協議書に、相続人全員が署名・押印します。
以下のような手続きでは、相続人全員が実印を押印した遺産分割協議書や印鑑登録証明書が必要です。
- 相続税の申告
- 不動産の相続登記申請
- 預貯金の払い戻し・名義変更
遺産分割協議書の作成時は、遺産の内容を正確に記載しましょう。新たな財産が判明した場合の扱いに関する条項も入れておくと安心です。「後日発見された財産は、〇〇が取得する」、「法定相続割合に基づき分割する」などといった一文を加えると、再協議を防げる場合もあります。
遺産分割協議書の作成に不安がある場合は、弁護士への依頼を検討してください。
6.財産の名義変更・解約・払い戻しなどを実行する
遺産分割協議書に基づいて、各財産の名義変更・解約・払い戻しなどをおこないます。被相続人名義の預貯金口座は、預金名義人である被相続人の死亡を金融機関に伝えた時点で凍結されます。そのため、預貯金の名義変更または解約・払戻し手続きが必要です。
また、2024年4月1日から不動産の相続登記が義務化されました。相続したことを知った日(遺産分割協議で不動産を取得した場合は、遺産分割協議の成立日)から3年以内に法務局へ申請する必要があります。
正当な理由なしに相続登記を怠ると、10万円以下の過料が科される場合があります。期限内の相続登記申請が難しい場合は、相続人申告登記をおこないましょう。相続人申告登記を申請すれば、相続登記の申請義務を果たしたとみなされます。
遺産相続で前妻の子との間に生じうるトラブル別の対策
被相続人に離婚・再婚歴がある場合には、共同相続人間でトラブルが生じるケースが少なくありません。以下では、前妻の子との間に生じうるトラブル別の対処法を解説します。
前妻の子が音信不通で連絡が取れない|戸籍の附票から追跡する
前妻の子が音信不通で連絡が取れない場合や連絡先がわからない場合は、戸籍の附票から現住所を追跡しましょう。戸籍の附票には、当該戸籍が作られてから除籍になるまでの住所移転の履歴が記録されています。
前妻の子の住所が判明したら、まずは手紙を送りましょう。前妻の子の父親について相続が開始したこと、相続手続に協力をしてほしいことなどを伝えます。
前妻の子と関わりたくない|弁護士に遺産分割交渉を依頼する
前妻の子と関わりたくない場合は、弁護士への依頼を検討してください。弁護士に依頼すれば交渉を代理してもらえるため、前妻の子と直接やり取りをする必要がありません。精神的負担を大きく軽減できるでしょう。
相続人調査・相続財産調査から、遺産分割協議書の作成・各種名義変更まで、一貫したサポートを受けられるのもメリットです。税理士・司法書士と連携のある弁護士に依頼すれば、相続税申告や相続登記などもワンストップで対応してもらえます。
前妻の子が遺産分割協議に参加しない|調停・審判を申し立てる
前妻の子が遺産分割協議に応じない場合は、調停・審判による解決を図りましょう。遺産分割調停は、相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。相手方(共同相続人)が複数いる場合は、うちのひとりの住所地を選択可能です。
調停では、調停委員が提出した資料を精査し、当事者双方から詳しく事情を聴いて、紛争解決の糸口を掴むよう努めてくれます。調停期日では、通常、申立人と相手方は別々に調停室に呼ばれるため、前妻の子と顔を合わせる機会はほとんどありません。
合意に至る見込みがない場合や、前妻の子が調停期日に参加しない場合は、調停不成立として自動的に審判手続に移行します。審判では、裁判官が職権で証拠調べや事実の調査をおこない、遺産分割の方法を指定します。
前妻の子が相続手続きに協力しない|遺言執行者の選任を申し立てる
前妻の子が遺言に基づく相続手続に協力してくれない場合は、遺言執行者の選任を申し立てましょう。遺言執行者がいない場合、相続人全員が手続きに関与しなければならないため、思うように手続きを進められないこともあるためです。
家庭裁判所に申し立てて、中立・公平な第三者を遺言執行者に選任してもらえば、相続人間の感情の対立や紛争を回避できます。遺言執行者の選任申立ては、遺言者の最後の住所地を管轄する裁判所におこないます。
申立時には、遺言執行者の候補者を立てることが可能です。家庭裁判所が適任と判断すれば、同候補者が遺言執行者に選任されます。利害関係がない第三者である弁護士を選任してもらえば、前妻の子とのやり取りも任せられます。
弁護士であれば、知識や経験に基づきスムーズに遺言内容を実現できるでしょう。
前妻の子から遺留分を請求された|生命保険を活用する
前妻の子の遺留分を侵害する遺贈・贈与などがある場合は、遺留分侵害額請求に備え、生命保険を活用するのも有効な方法です。
2019年7月1日以降に発生した相続で遺留分侵害額請求を受けた場合は、遺留分侵害額に相当する金銭を支払うのが原則です。換価価値のある遺産が不動産しかない場合などには、売却を余儀なくされるかもしれません。
生命保険の死亡保険金の受取人を後妻や後妻の子に指定すると遺産分割の対象外となるため、支払い原資を確保できます。遺留分相当額以上の保険金が準備できていれば、不動産の売却を避けられます。
前妻の子がいる相続で弁護士に遺産分割を依頼するメリット
前妻の子が関わる相続では、前妻の子の所在がわからなかったり、感情的な対立から遺産分割協議がスムーズに進まなかったりする場合が多いです。弁護士に依頼すれば、相続人調査から交渉・調停・審判まで一貫して任せられます。精神的な負担も軽減できるでしょう。
前妻の子と連絡が取れない場合も調査を任せられる
弁護士に依頼すれば、前妻の子と連絡が取れない場合も調査を一任できます。弁護士は、受任事件の処理に必要な範囲で、戸籍謄本・附票・住民票などを取得できます(職務上請求)。
調査は相続人自身でもできますが、収集や判読が難しく見落としや漏れが生じてしまう場合もあるでしょう。被相続人や前妻の子が転籍を繰り返していると、時間や手間が特にかかります。
弁護士に依頼すれば、手間のかかる調査を代行してもらえるうえ、前妻の子への連絡も任せられます。
前妻の子と関わる心理的負担から解放される
弁護士に依頼すれば、前妻の子との連絡・交渉を任せられます。前妻の子と関わる心理的な負担が大幅に軽減されるでしょう。
疎遠な前妻の子との直接交渉は感情的になりやすく、こじれると調停・審判に発展しやすいのが実情です。弁護士が代理人として協議に参加することで、冷静に遺産分割協議を進められます。
遺産分割後に紛争が再燃するリスクを軽減できる
弁護士に依頼すれば、遺産分割後に紛争が再燃するリスクを軽減できます。弁護士であれば、将来生じうるトラブルを予測し、リスクに備えた遺産分割協議書の作成が可能です。
遺産分割協議書は、相続人自身でも作成できます。しかし、当事者や遺産の表示に誤りがあると、法務局や金融機関に手続きを受け付けてもらえない場合も少なくありません。
相続財産の調査に漏れがあれば、財産の価額などによっては遺産分割協議のやり直しが必要になる場合もあります。
弁護士に依頼すれば、相続財産の全容を正確に把握し、適切な評価額を算定できます。遺産分割協議書の形式的不備によって相続手続きができなくなるリスクも軽減できるでしょう。
前妻の子の相続は「ベンナビ相続」で弁護士に相談
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生前対策は早いほど選択肢が広がります。「ベンナビ相続」で、まずは弁護士に相談してみてください。
弁護士への依頼で前妻との子の遺産分割協議がスムーズに進んだ事例
本章では、「ベンナビ相続」を介して弁護士に依頼した結果、前妻の子との遺産分割協議がスムーズに進んだ事例を紹介します。
面識のない前妻の子たちと遺産分割協議を成立させたケース
弁護士のサポートにより、面識のない前妻の子たちと遺産分割協議を成立させたケースです。
被相続人には、前妻と後妻との間に複数の子がいました。依頼者(被相続人と後妻の子)は、被相続人が遺言を残さず突然亡くなったことから、面識のない前妻の子たちとの遺産分割に不安を覚えて弁護士に相談。
依頼を受けた弁護士は、相続人調査・前妻の子らの所在確認から協議の代理まで一貫して対応しました。遠方在住の前妻の子らには手紙と電話で交渉を進め、法定相続分に沿った代償分割案で協議を成立させました。
介護の事実などの主張・立証により有利に遺産分割を進めたケース
病弱な夫を長年介護した後妻(依頼者)が、夫の死後に前妻の長女・次女から法定相続分(各4分の1)を要求されたケースです。
後妻は、介護の事実を証明して有利に遺産分割を進めたいと希望し、弁護士に相談。弁護士は、生前に依頼者が立て替えていたお金と、介護による寄与分が約700万円であることを立証して前妻の子らを説得。
最終的には、前妻の子らは各100万円、依頼者は800万円を獲得する形で遺産分割が成立しました。
前妻の子への相続に関するよくある質問
本章では、前妻の子が関わる相続について、よくある質問にQ&A形式で回答します。
Q.婚外恋愛で生まれて認知した子にも相続権はありますか?
父が認知した子(非嫡出子)にも、婚姻関係にある妻との子(嫡出子)と同等の相続権があります。非嫡出子は、認知によって父との間に法律上の親子関係が生じるためです。認知された子には相続権が発生し、嫡出子と同じ割合で父の財産を相続する権利を持ちます。
Q.離婚で籍を抜いた子にも相続権があるのですか?
離婚後、子が母の戸籍に入籍しても、子は父の相続権を有します。親子関係は、父母の離婚によって消えるものではありません。
Q.夫の死亡を前妻の子に知らせないのは問題になりますか?
トラブルに発展するリスクがあります。遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員の参加・合意が必要です。前妻の子を意図的に除外した協議は無効となり、協議をやり直す必要が生じます。
自筆証書遺言がある場合は、検認の手続きが必要となるため、家庭裁判所からの連絡で前妻の子が相続開始を知る場合もあります。自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は、遺言保管所(法務局)から関係遺言書保管通知が届くでしょう。
夫の死亡を速やかに通知しなかったことで、感情的な対立が激化するリスクも無視できません。前妻の子とのやり取りが不安な場合は、弁護士への依頼も検討してください。
まとめ
前妻の子にも相続権や遺留分があるため、本人の意に反して相続から完全に除外することはできません。
しかし、再婚後の家族にできるだけ多くの財産を残せる方法はあります。遺言書の作成・生前贈与・生命保険の活用といった生前対策を適切に講じることで、前妻の子の取り分を抑えられます。
前妻の子自身が「父の財産は一切いらない」という意向を示している場合は、遺留分の放棄・相続分の放棄・相続放棄なども視野に入れられるでしょう。
前妻の子と直接関わりたくない場合や、遺産分割でのトラブルが不安な場合は、弁護士への依頼が有効です。弁護士に対応を任せることで、精神的な負担を大きく軽減できます。
将来のトラブルを防ぐためにも、「ベンナビ相続」を活用のうえ、相続問題に強い弁護士への早めの相談をおすすめします。