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死因贈与とは?遺贈との違いやメリットなど解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
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死因贈与(しいんぞうよ)とは、贈与者(財産を渡す人)と受贈者(受け取る側)の間で、「贈与者が死亡した時点で、事前に指定した財産を受贈者に贈与する」という贈与契約を結ぶことを指します。

「贈与」は、当事者の一方が事故の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約をいいます(民法第549条)。 

「死因贈与」は、贈与者の死亡を条件として財産が受贈者に渡る契約であるといえます。

被相続人(財産を残して亡くなった人)の財産が相続人(財産を受け取る人)に渡った時に、相続税が発生する場合は「相続」「遺贈」「死因贈与」の3パターンがあります。

  • 相続:生前に被相続人が財産を渡す相手を決めていない場合
  • 遺贈:生前に被相続人が財産を渡す相手を遺言によって決めている場合
  • 死因贈与:生前に被相続人が財産を渡す相手を契約によって決めている場合

相続・遺贈・死因贈与の違い

この記事では死因贈与の特徴を中心に、遺贈との違い、死因贈与のメリット・デメリットを解説します。           

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死因贈与と遺贈の相違点

死因贈与と似た財産を相続させる方法に遺贈があります。

遺贈とは、被相続人が遺言書によって指定した個人に対して財産贈与の意思表示をすることです。

遺言は、遺言書に定められている方式・書式で書かれることによって有効性が示され、遺言を残した人が亡くなった時点でその効力が発揮されます。

遺贈は贈与に分類される行為ですが、遺言によって相続財産を受け取る人には、贈与税ではなく相続税が課せられます。

この理由は、贈与される金品・現物が故人の遺産であり相続と同じ扱いになるからです。

遺贈に関しては「遺贈の場合の相続税の仕組みと通常の相続との違い」に詳しいのでこちらを参照してください。

死因贈与と遺贈は、どちらも法定相続人以外の人に対して相続財産を相続させることが可能となる仕組みです。

また、死因贈与と同じで、被相続人の死亡を条件として財産が贈与される点も同じです。

では死因贈与と遺贈にはどういった違いがあるのでしょうか。

ここでは死因贈与と遺贈の相違点について解説します。

相違点1:当事者の間での合意の必要性の違い

遺贈では、遺書を書き残す人が自身の相続財産を相続させたい相手を決めて、一方的に遺言の効力を使うことで、誰に対しても自身の相続財産を受け渡すことができます。

つまり、遺贈を選択する場合は、遺書を書き残す人の独断によって誰に自身の相続財産を受け渡すのか、自身の意思だけによって決定できるのです。

一方、死因贈与では、贈与する人と贈与を受ける人の間で、贈与契約を結ぶ必要があります。

つまり、遺贈とは違い、贈与する人の意志だけでは贈与する相手を決めることができず、贈与を受ける人が相続財産の受け取りを同意する必要があります。

相違点2:書面で同意を示す必要性の違い

遺贈においては、誰に対してどのような相続財産を受け継がせる意志があるのかを記した遺言書が、必ず必要となります。

しかし、死因贈与では必ずしも書面でおこなう必要がありません。

死因贈与を結んだ当事者間以外の第三者が、死因贈与に関わる契約を証明できるのであれば、口約束での死因贈与の契約が成立するのです。

しかし、後々の贈与や相続に関するトラブルを予防するためにも、死因贈与の契約に関する契約書を作成することは必須でしょう。

また、これは必須ではありませんが、当事者の捺印を入れてその契約書を公正証書として残しておくことをおすすめします。

相違点3:撤回が可能かの違い

遺贈の場合、一度遺言書を作成しても、撤回したい場合は書き直しをすることで何度でも撤回することが出来ます。

死因贈与も遺贈の規定を準用している(民法第554条)ため、基本的には撤回が可能です。

ただし「負担付き死因贈与」の場合、撤回が認められないことがあります。

「負担付き死因贈与」とは、贈与を与える代わりに、贈与者に対して生活の面倒を見るなどの義務や負担を課している贈与契約です。

この契約に含まれている義務や負担が一部であっても、契約どおり果たされているのであれば、撤回を認めることが契約当事者の片方だけの不利益となるため、撤回が認められないことがあります。

相違点4:年齢の違い

遺贈に関しては、15歳に達した者は単独でおこなうことが出来ます(民法第961条)。

死因贈与は契約であり、法律行為であるので、未成年者の場合は親権者などの法定代理人の同意を得るか、もしくは法定代理人が代理をしておこなう必要があります。(民法第5条)

ただし、単に贈与を受ける行為であれば未成年者でも単独で可能です。

相違点5:始期付所有権移転仮登記(始期贈与者死亡)を行うことが出来るかの違い

始期付所有権移転仮登記とは、被相続人が生存中は不動産の所有権は被相続人にあるけれど、被相続人が死亡した場合、所有権が相続人に移る登記のことをいいます。

遺贈においては、始期付所有権移転仮登記はできませんが、死因贈与はおこなうことができます。

相違点6:所有権移転登記の平易さの違い

被相続人が亡くなった際には、所有権移転登記をおこなう必要があります。

この時、遺贈においては遺言執行者を決めておけば、受贈者と遺言執行者とで所有権移転登記をおこなえるのに対し、死因贈与では受贈者と贈与者の相続人全員とで所有権移転登記をおこなう必要があります。

このため所有権移転登記は遺贈の方が簡単におこなうことが出来ます。

相違点7:発生する税金の違い

遺贈、死因贈与双方において、相続が発生し土地や建物の名義を相続人に変更する場合、登録免許税不動産取得税がかかります。

それぞれの税率は以下のとおりで、税金においては遺贈の方が有利になります。

 

遺贈

死因贈与

登録免許税

・法定相続人:0.4%

・法定相続人以外:2.0%

一律2.0%

不動産所得税

・法定相続人:非課税

・法定相続人以外:4.0%

一律4.0%

死因贈与のメリット・デメリット

ここでは死因贈与のメリットとデメリットについて確認してみましょう。

死因贈与のメリット

相続人に自分の要望を聞いてもらえる

死因贈与には、先述のとおり負担付死因贈与という形態をとることができます。

負担付死因贈与にすることで、死因贈与をする代わりに、生前に相続人に自身の介護など、何か自分の望むことを負担させることができます。

口約束でも成立する

死因贈与の契約に関しては、明確な規定はありません。

極端な例を出せば、契約自体は口約束でも成立します。

そのため遺贈と違い、形式的な不備等で契約が不成立になるようなことはありません。

死因贈与のデメリット

書面がない場合トラブルになる可能性がある

死因贈与は当事者同士の意志の合致により成立するので書類の作成は必須ではありません。

しかし口約束のみで、贈与契約書がない場合、被相続人の死後に、他の相続人との遺産分割協定においてトラブルになってしまう可能性があります。

そして書面がない場合、死因贈与の事実を証明することは現実的に困難でしょう。

負担付死因贈与は撤回できない場合がある

死因贈与は被相続人の死亡前であれば、被相続人の意思で契約を撤回することが出来ます。

しかし負担付死因贈与においては相続人が既に負担を履行していた場合、特別の理由がない限り撤回することができません。

不動産の税金面において不利になる

先述のとおり、死因贈与は遺贈に比べて、登録免許税と不動産所得税の税率が高く設定されています。

死因贈与と遺贈のどちらを選べばいいの?

これまでの内容で、死因贈与と遺贈の違いを理解していただけたかと思います。

では相続財産を法定相続人やそれ以外の人に残す歳に、死因贈与と遺贈のどちらを選択すれば良いのでしょうか。

「死因と贈与の相違点」でご紹介したように、この2つの方法の違いは、一方的かつ様式的な行為か契約行為かの違いに過ぎません。

法的な効力はどちらも大差はありませんので、税務的なメリット・デメリットで選択するのが良いと思われます。

また、最終的にご自身ではどちらが良いか判断できない場合は、相続問題を得意とする弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。

まとめ

死因贈与と遺贈の違いがお分かり頂けたでしょうか。

どちらの方法を選択するかどうかは、それぞれの人の事情によって異なるでしょう。

しかし、遺産相続を検討する場合に、遺言書を残すことで以外にも方法があると知っておくことは、被相続人にとってプラスになります。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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