異母兄弟は父親の相続人になるため、父親が亡くなったときは遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
しかし、腹違いの兄弟姉妹は会ったことすらないケースが多く、感情的にも受け入れ難いことから、以下のように考えている方もいらっしゃるでしょう。
異母兄弟が遺産相続に関わる場合、トラブルが起きやすいので注意しなければなりません。
ここでは、異母兄弟に相続させない方法や、トラブルへの対処法などをわかりやすく解説していきます。
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父親が同じで母親が異なる兄弟姉妹を異母兄弟、または異母姉妹といい、以下のようなケースは全員が異母兄弟の関係になります。
異母兄弟は全て父親の相続人になりますが、前妻の子や愛人の子は存在を知らされていないことも多いので、以下のように相続人の調査で判明する場合があります。
父親が亡くなったときは相続人を確定させる必要があるため、父親の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本などを調べてください。
父親の戸籍を辿ると結婚や離婚、子どもの出生や認知が記載されているので、異母兄弟の存在がわかります。
戸籍を調べるまで異母兄弟の存在を知らなかった場合、すぐには気持ちを整理できないかもしれませんが、父親の死亡は必ず伝えておく必要があります。
異母兄弟には父親の相続権があり、相続順位や法定相続分は以下のようになっています。
父親の遺産相続では異母兄弟が第1順位の法定相続人になり、法定相続分は人数割りします。
また、異母兄弟には遺留分も保障されているので、以下のように一定割合の相続財産を必ず取得できる点も確認しておきましょう。
遺留分とは、一定の法定相続人が必ず取得できる財産の割合です。
被相続人の子どもは法定相続分の2分の1が遺留分になるため、相続財産2,000万円を異母兄弟2人だけで相続するとした場合、1人につき以下の遺留分が保障されます。
異母兄弟のAに1,900万円、Bに100万円を相続させる遺言書を作成すると、Bは遺留分を侵害されるため、Aに対して150万円の侵害額を返還請求できます。
異母兄弟に遺留分の差はないので、遺言書で財産を渡すときは配分に注意してください。
異母兄弟に相続させたくなくても、遺留分が民法によって保障されているため、一定割合の財産は必ず分割しなければなりません。
ただし、以下のように生前贈与や遺言書を活用すると、異母兄弟に相続させないことも可能になります。
父親が亡くなったあとにできることは限られているので、生前の対策が重要になるでしょう。
生前贈与した財産は受贈者のものになるため、父親の相続財産から除外されます。
主な財産を現在の家族に生前贈与しておけば、異母兄弟に分割する相続財産がほとんどない状態になります。
生前贈与には以下の種類があるので、自分に向いている方法を選んでください。
暦年贈与は少しずつ長期的に贈与したいときに向いていますが、まとまった財産を贈与したいときは、特例贈与や相続時精算課税制度を利用するのがよいでしょう。
ただし、遺産の前渡しとみなされる贈与があった場合、異母兄弟から特別受益を主張されたり、遺留分を侵害したりする可能性があるので注意してください。
死因贈与とは、生前に贈与契約を結び、贈与者が亡くなったときに財産を渡す方法です。
指定した人に財産を渡す意味では遺言書と変わりませんが、不動産を死因贈与する場合は生前に仮登記できるので、土地や建物を確実に受贈者へ渡せます。
ただし、遺言書による遺贈に性質が近いことから、死因贈与した財産は相続税の課税対象になるので注意してください。
また、生前贈与と同じく、遺留分の侵害や特別受益にも配慮しましょう。
異母兄弟に相続させない方法としては、遺言書も有効です。
父親が遺言書を作成し、財産の承継者に配偶者とその子どもだけを指定すれば、異母兄弟は遺留分しか取得できなくなります。
ただし、遺言書の作成には厳格なルールがあり、わずかなミスでも無効になるリスクがあるので注意してください。
遺言書が無効になると遺産分割協議へ移行するため、異母兄弟が法定相続分を主張する可能性が高いでしょう。
また、遺留分の侵害額は現金返還が原則なので、主な相続財産が不動産のみだった場合、不動産の売却代金を遺留分の返還に充てなければならないケースもあります。
異母兄弟に相続させたくない場合、父親が生命保険の被保険者と保険料負担者になり、子どもを死亡保険金の受取人にする方法もあります。
死亡保険金は受取人固有の財産になるため、遺産分割する必要がありません。
また、死亡保険金は相続税の課税対象になりますが、以下の基礎控除があるため、最低でも500万円を相続財産から控除できます。
生命保険の活用では父親の現金や預貯金を保険料に組み換えるので、まとまった金額を前払い・一時払いできる保険に加入することで、異母兄弟が相続する現金資産が減少します。
異母兄弟の理解を得られるようであれば、遺留分の放棄を依頼してみましょう。
遺留分の放棄とは、異母兄弟が家庭裁判所へ申し立てをおこない、父親が生きているうちに遺留分の請求権を放棄する仕組みです。
ただし、異母兄弟が何らかの対価を得ている必要があるため、現金や不動産などを贈与しておかなければなりません。
自分から遺留分の請求権を放棄してもらうことになるので、異母兄弟との関係が良好でなければ難しいでしょう。
異母兄弟が相続放棄を承諾すれば、相続財産を渡す必要はなくなります。
相続放棄した人は最初から相続人ではなかったことになるため、父親の遺産相続には一切関わりません。
ただし、相続放棄は相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があり、期限後の申し立ては原則として認められないので注意が必要です。
父親が生きているうちに本人へ依頼し承諾を得たとしても、必ず相続放棄してくれるとは限りません。
さらに、後妻や後妻の子が相続放棄を依頼すると、異母兄弟の感情を逆なですることになり、法定相続分以上の取り分を請求される可能性もあります。
確実に相続放棄してもらいたいときは、十分な対価を用意する必要もあるでしょう。
異母兄弟が父親に暴力を振るう、または侮辱や虐待をするなど、著しい非行があった場合は以下の方法で相続人から廃除できます。
遺言書で相続人を廃除する場合、家庭裁判所に申し立てをおこなう遺言執行者も指定してください。
なお、相続の廃除が認められるケースはほとんどないため、異母兄弟の非行を証明したいときは弁護士に相談しておくとよいでしょう。
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相続人に異母兄弟がいると、以下のようなトラブルが起きやすいので注意が必要です。
一般的な遺産相続とはかなり事情が違うので、前もって確認しておきましょう。
異母兄弟も父親の相続人になりますが、存在だけは知っていても、父親から住所や連絡先まで聞いているケースはあまり多くありません。
住所・連絡先がわからないときは、まず父親の戸籍を辿り、異母兄弟の本籍を調べてください。
次に、異母兄弟の本籍がわかったら、戸籍の附票を取得して現住所を調べますが、電話番号は記載されていないので、手紙や直接訪問で父親の死亡を伝えることになります。
ただし、手紙に反応してくれるかどうかわかりませんし、外出中に訪問すると無駄足になるでしょう。
遠方に住んでいる場合は何度も訪問できないので、異母兄弟がいるときは、父親が生きているうちに家族へ連絡先を伝えておくことが大切です。
異母兄弟に父親の死亡を伝えても、遺産分割協議に参加してくれるとは限りません。
父親との交流が少なかった場合、連絡を受けても他人事と捉えられる可能性が高く、高額な財産でもない限り積極的に参加する理由がないと思われることもあります。
また、異母兄弟が遠方に住んでいると、会ったこともない兄弟のためにわざわざ出向いて相続の話し合いへ参加する状況になります。
異母兄弟が遺産分割協議に参加してくれないときは、本人の住所に近いホテルなどを利用する、または旅費を負担するなど、十分な配慮も必要です。
父親の戸籍を調べて異母兄弟がいないことを確認しても、愛人の子が死後認知されるケースもあるので注意が必要です。
父親が愛人の子を認知しないまま亡くなっても、死後3年以内であれば死後認知の訴訟を起こせるので、裁判所が認めた場合は父親の法定相続人になります。
認知には以下の方法もあるため、父親が亡くなったときは遺言書の有無も確認しておいてください。
強制認知は父親が生きているうちの訴訟となりますが、場合によっては父親が亡くなったあとに裁判所の審判が確定し、愛人の子が遺産相続に参加する可能性もあります。
異母兄弟がいる相続では、遺産分割調停や審判になる可能性もあります。
相続財産は公平に分割できるケースが少ないため、お互いが自分の権利を主張すると、何度話し合っても遺産分割協議がまとまらないことも多いでしょう。
もし当事者同士で遺産相続を解決できなかったら、まず家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立て、話し合いによる和解を目指すことになります。
調停が不成立に終わったときは審判へ移行しますが、決着までの期間は早くて6ヵ月、一般的には1年近くかかるので、各相続人は時間と労力を大きく消耗するでしょう。
異母兄弟と円満に遺産分割できるケースは少ないため、相続トラブルを回避したいときは相続問題に詳しい弁護士にサポートしてもらいましょう。
対応してもらえる内容について以下でそれぞれ解説します。
弁護士に戸籍の調査を依頼すると、最短日数で異母兄弟の存在が明確になります。
亡くなった父親が転籍している場合や、離婚・再婚歴があると、出生から死亡までの連続した戸籍謄本が大量になるので、1人で収集すると数ヵ月かかることもあります。
途中で戸籍の取得を断念するケースも少なくないので、相続人の確定を急ぎたいときは弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
異母兄弟を感情的に受け入れられない方や、会ったことのない兄弟に抵抗を感じている方は、弁護士に接触を依頼してください。
当事者同士が接触すると感情的になってしまい、トラブルに発展するケースもありますが、相手が弁護士であれば、異母兄弟も冷静に対応してくれるでしょう。
また、相続放棄などの難しい交渉でも、弁護士が対応すると承諾を得やすいので、異母兄弟に相続させないことも可能になります。
面識のない異母兄弟との接触は大きなストレスになるため、抵抗を感じている方は弁護士に任せましょう。
遺言書で異母兄弟に相続させないようにするときは、弁護士に作成を依頼してください。
自分で作成した遺言書は無効になるリスクが高く、異母兄弟を意識し過ぎると、ほかの相続人にとって不利な内容になる可能性があります。
弁護士は遺留分の侵害や各相続人の税負担などを考慮してくれるので、法的効力もあり、トラブルが起きにくい遺言書になるでしょう。
公証役場で作成する遺言書を公正証書遺言といい、法律の専門家である公証人が作成してくれるため、遺言書の法的効力が確実になります。
自分で作成した遺言書は、次のようなリスクが起こり得ます。
公正証書遺言にすると、上記のリスクを全て解消できます。
原本は公証役場に保管されるので、改ざんリスクを心配する必要もありません。
また、正本や謄本を紛失した場合でも、相続人は公証役場の検索システムを利用できるため、公正証書遺言があることを確認できます。
ただし公正証書遺言の原案は自分で考えなければならないので、原案作成に不安があるときは弁護士に協力してもらうとよいでしょう。
遺言執行者とは、遺言書どおりの遺産相続を実現するため、一定の権限をもって相続手続きなどを進めてくれる人です。
破産者や未成年者以外は誰でも遺言執行者になれるので、親族から選んでも構いませんが、相続全般の専門知識がなければ遺言執行に対応できません。
遺言書どおりに相続手続きを進めた結果、一部の相続人と対立するケースもあるので、遺言執行者は弁護士への依頼をおすすめします。
なお、遺言執行者は以下のような手続きに対応してくれます。
遺言執行者は遺言書で指定できますが、遺言者が指定していなかったときは、相続人が家庭裁判所へ申し立てて選任してもらうことも可能です。
異母兄弟との接触を避けたいときや、自分で対応できない相続手続きがあるときは、必ず遺言執行者を選任してください。
異母兄弟との遺産相続を調停や審判で解決するときは、平日に裁判所へ出向かなくてはならなりません。
対応が難しい方は裁判所の手続きを弁護士に依頼してください。
弁護士は依頼者の代理人になってくれるので、裁判所に出向く時間がない方でも調停や審判の手続きに対応できます。
また、裁判所の手続きは必要書類もかなり多く、財産目録や各財産の詳細資料、相続関係の説明図や戸籍謄本などを提出しなくてはならないので、自分で対応できないときは弁護士に任せましょう。
異母兄弟は同順位の法定相続人になるので、本来であれば協力して遺産相続を進めなければなりません。
しかし、お互いが協力関係になれることはほとんどなく、遺産分割協議が初対面というケースもあるでしょう。
場合によっては遺産分割調停になるため、いつまで経っても相続手続きを開始できない可能性も考えられます。
異母兄弟がいる遺産相続はトラブルも起きやすいので、困ったときは1人で悩みを抱えず、早めに弁護士へ相談してください。
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