相続時の遺産分割は、遺言による指定のほか、遺産分割協議での話し合いによって自由に決められます。
しかし、実際に遺産を分け合うとなった際、どうやって遺産分割の割合を決めるべきかで悩んでしまうケースは少なくありません。
本記事では、遺産分割の割合の一般的な決め方のほか、民法上で定められている法定相続分について解説します。
遺産をどう分配したらいいかわからず悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
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遺産分割の割合を決めるには、一般的に以下4つの方法があります。
それぞれの方法について説明します。
被相続人が遺言書を残していれば、その内容に従うのが原則です。
特定の相続人に全ての遺産を遺贈する旨が記載されていればそのとおりに相続し、分割割合が記載されていればそれに従って財産を分割します。
ただし、相続人全員が合意すれば遺言書の内容どおりに相続しなくてもかまいません。
その場合は、相続人全員で遺産分割協議をおこない、遺産の分割方法や割合を決めます。
遺言書がなければ、遺産分割協議をおこなって分割の仕方を決めます。
遺産分割協議は必ず相続人全員でおこない、全員が合意する必要があります。
分割割合はどのように決めても問題ないので、必ずしも平等に分割する必要はありません。
「事業を継承する相続人Aが全財産を相続する」という内容でもかまいませんし、「故人の面倒を一人で見てくれた相続人Bが多めに取得する」といった内容でもかまいません。
相続人全員が合意に至りさえすれば、どのような割合で分割しても問題ないのです。
遺産分割協議でなかなか合意に至らなければ、法定相続分通りの割合での分割を検討します。
法定相続分とは、民法第900条で定められた遺産の分割割合です。
個々の事情に関係なく、平等な遺産分割を実現できます。
いつまでも協議がまとまらなければ、家庭裁判所の手続きを利用して、分割の割合を決めます。
利用できる裁判所手続きには、調停手続きと審判手続きがあり、最初は必ず調停手続きの申し立てから始めます。
調停手続きとは、裁判所が当事者の間に入って、もう一度話し合いをすることで解決を試みる手続きです。
裁判官のほかに、調停委員という専門家が同席し解決方法を提案してくれます。
調停委員は公平かつ中立的な立場にあるため、特別受益や寄与分などの例外的な事情がない場合には、平等に分割できる法定相続分どおりの分割を提案するでしょう。
裁判所の提案内容に納得できず、調停が不成立に終わった場合は、審判手続きに移行します。
審判手続きとは、双方の主張や意見を聞いたうえで、法律的な側面から見てどのように分割するのが適切かを裁判官が判断し、遺産分割割合を決める手続きです。
審判手続きで裁判所が下す結論も、特別な事情とそれを立証する有力な証拠がない限り、法定相続割合に準ずることになるでしょう。
法律的な観点からすると、遺産はできるだけ相続人に平等に分割すべきものとされています。
法定相続分については民法で定められており、裁判所での手続きでも基本的に法定相続分での遺産分割を進められるでしょう。
法定相続分とは遺産分割の基本となる分割方法であり、速やかに、かつトラブルのない遺産分割を実現するためにも、正しく理解しておくことが大切です。
ここでは、法定相続分について具体例を紹介しながら解説します。
法定相続分とは、法律で定められた遺産分割割合のことです。
割合は法定相続人の立場や人数に応じて変わります。
法定相続人とは、遺産を相続できる人のことです。
配偶者以外の法定相続人については、以下のように相続順位が定められています。
相続順位 | 法定相続人 |
---|---|
第1順位 | 子や孫など直系卑属 |
第2順位 | 親や祖父母など直系尊属 |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
法定相続分は遺産分割の基本ではありますが、必ずしも従わなければいけないわけではありません。
遺言があればその内容に従うべきですし、遺産分割協議で相続人全員の合意を得られれば、協議で決まった割合で分割します。
法定相続分の割合については、民法第900条で次のように定められています。
さまざまなケースにおける法定相続分の割合については相続人の組み合わせごとに下表でまとめています。
自信の該当するケースを確認ください。
相続人の組み合わせ | 法定相続分 |
---|---|
配偶者のみ | 全部 |
子どものみ | 子の人数で等分 |
子ども一人 | 全部 |
子ども二人 | 1/2ずつ |
配偶者と子ども一人 | 配偶者 1/2 子ども 1/2 |
配偶者と二人の子ども | 配偶者 1/2 子ども 1/4ずつ(=1/2×1/2) |
配偶者と被相続人の親(一人) | 配偶者 2/3 被相続人の親 1/3 |
配偶者と被相続人の両親 | 配偶者 2/3 被相続人の親 1/6ずつ(=1/3×1/2) |
被相続人の親のみ | 両親がそろっている場合:1/2ずつ 片方の親のみの場合:全部 |
配偶者と被相続人の兄弟姉妹(一人) | 配偶者 3/4 被相続人の兄弟姉妹 1/4 |
配偶者と被相続人の兄弟姉妹(二人) | 配偶者 3/4 被相続人兄弟姉妹 1/8ずつ(=1/4×1/2) |
被相続人の兄弟姉妹のみ | その人数で等分 |
被相続人の両親ともに同じ兄弟姉妹1人、異母兄弟1人 | 両親ともに同じ兄弟姉妹 2/3 異母兄弟 1/3 |
それぞれのケースについて、詳しく解説しましょう。
相続人が、子どももしくは親や兄弟姉妹のみの場合は、人数で遺産を等分します。
たとえば相続人が子ども4人なら、それぞれの法定相続分は4分の1、兄弟姉妹5人なら5分の1ずつです。
親の場合は、両親とも健在であれば2分の1ずつ、片方の親しかいなければ、その方が全ての遺産を相続します。
法定相続人が配偶者と子ども3人であれば、配偶者の法定相続分が2分の1、残りの2分の1を子ども3人で等分することになります。
よって、この場合の法定相続分は以下のとおりです。
法定相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹である場合、配偶者の法定相続分は4分の3です。
残りの4分の1を被相続人の兄弟姉妹の数で等分します。
よって、法定相続分は以下のとおりです。
また、以下では少々特殊な場合について紹介しておきます。
養子や養親であっても、法定相続分における遺産分割割合は実子や実親と変わりません。
ただし、養子縁組の種類に応じて相続人になれるかどうかが異なります。
養子縁組には以下の2種類の縁組方法があります。
普通養子縁組の場合、実親とも養親とも親子関係があります。
そのため、どちらの親または子どもが亡くなったとしても相続人として、実子や実親と同じ割合で遺産を取得できます。
一方、特別養子縁組の場合、実親との親子関係は消滅しているため、実親、または実子が亡くなっても相続権はありません。
それぞれの場合をまとめると以下のようになります。
実親や実子が亡くなった場合 | 養親や養子が亡くなった場合 | |
---|---|---|
普通養子縁組による親子関係 | 相続権あり | 相続権あり |
特別養子縁組による親子関係 | 相続権なし | 相続権あり |
婚外子であっても、認知されていれば第1順位の法定相続人であり、ほかの子どもらと同じ割合で遺産を取得できます。
たとえば、被相続人の実子1人と認知された子ども1人の2人が相続人であれば、それぞれ2分の1ずつ取得することになります。
代襲相続とは、本来の相続人がすでに死亡している場合に、相続権がその子どもや孫に移ることをいいます。
代襲相続人の相続割合は、本来の相続人の相続分を代襲相続者間で等分することとなります。
たとえば、次のような場合を考えてみましょう。
本来であれば、被相続人の子どもであるAとBが2分の1ずつ相続するはずですが、Bが亡くなっているため代襲相続が起こります。
亡くなっているBの相続分2分の1については、CとDが等分して相続することとなり、このケースでの相続割合はAが2分の1、CとDがそれぞれ4分の1ずつとなります。
遺言書がある場合、不公平な割合での遺産分割を指定されていることもあります。
基本的に遺産分割は遺言書の内容に従っておこないますが、最低限取得できるはずの遺留分すらもらえなければ、しかるべき対処をすべきです。
遺言がある場合の遺産分割で損をしないために、知っておきたい注意点について解説します。
遺留分とは、一定の法定相続人に対して認められる権利であり、法律で最低限取得が保証されている遺産のことです。
遺留分は、たとえ遺言があったとしても奪えません。
遺言書に、全ての財産を特定の相続人に譲る旨が書いてあったとしても、他の相続人は遺留分に相当する分の遺産を取得できるのです。
遺留分を有するのは、法定相続人の中でも以下の人のみです。
以下の人には遺留分がないため、請求できません。
各相続人の遺留分の割合は下表のとおりです。
具体的な金額は遺産総額に下記の割合を掛けて求めます。
相続人 | 遺留分 |
---|---|
配偶者のみ | 1/2 |
子ども一人 | 1/2 |
子ども二人 | 子ども1/4ずつ |
被相続人の親(一人)のみ | 1/3 |
配偶者と子ども一人 | 配偶者:1/4 子ども:1/4 |
配偶者と二人の子ども | 配偶者:1/4 子ども:1/8ずつ |
配偶者と被相続人の親(一人) | 配偶者:1/3 被相続人の親:1/6 |
配偶者と被相続人の両親 | 配偶者:1/3 被相続人の親:1/12 |
しかし、実際に遺留分に相当する金額を求めるのは、なかなか難しいケースも多いでしょう。
遺産の評価額を算出するのが難しかったり、特別受益といわれる生前贈与の扱いが難しかったりするためです。
自分で計算するのが難しいと感じたら、弁護士に相談することをおすすめします。
具体的な遺留分の金額を算出して、遺産の取得予定額が遺留分に達していなければ、遺留分侵害額請求をおこないましょう。
遺言による遺贈などにより遺産を多く取得している相続人に対して、不足分である侵害額の支払いを求めます。
請求方法は、対面や電話などで請求相手に口頭でもかまいませんが、万一トラブルに発展した場合に備えて、証拠が残るよう手紙やメールなどを利用したほうがよいでしょう。
最も良いのは内容証明郵便を利用する方法です。
内容証明郵便とは、郵便局が、「いつ、誰が、誰あてに、どのような内容の文章を送付したか」を証明してくれるサービスです。
さらに配達証明を付加しておけば、相手方が「受け取っていない」などと事実と違う主張をするのを防げます。
遺留分侵害額請求権には相続が発生したことと遺留分の侵害があったことを知ったときから1年という時効があります。
時効が成立してしまえば遺留分の請求はできませんので、できるだけ速やかに対処すべきです。
請求方法がよくわからなかったり、今後の付き合いを考えて自分で請求するのは気が引けたりするなら、弁護士への依頼を検討しましょう。
遺産分割の割合には、法律で定められた「法定相続分」という割合がありますが、必ずしもこれに従わなくてもかまいません。
遺言書があれば、通常はその内容どおりに分割しますし、遺言書がなければ、遺産分割協議によってその分割方法を相続人全員が納得いくように決めます。
もし遺産分割協議をおこなっても話がまとまらなければ、法定相続分に従った割合での遺産分割が推奨されます。
できるだけトラブルを防ぎ、速やかに遺産分割をおこなうためにも、法定相続分の割合や遺留分について正しく理解しておくほうがよいでしょう。
もし、遺産分割についてトラブルが起こりそうであれば、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
第三者である弁護士が法律的な観点からアドバイスをしたり、間に入ったりすることで、相続人同士の関係がこじれることなく、速やかに解決するでしょう。
問題が長期化してしまう前に、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。
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