平成20年の弁護士登録から14年以上、弁護士としてのキャリアを積み上げてきた大隅愛友先生。
東京都内の弁護士事務所へ勤務後、独立・開業し、現在は「弁護士法人ベストロイヤーズ法律事務所」の代表を務めています。
これまでに対応してきた法律問題は、身近な法律問題である相続、交通事故、インターネットの削除請求離婚、労働問題、債務整理や、専門的な法律問題である建築事件、医療過誤事件などさまざま。また、国内だけでなく国際的な企業間の取引紛争、国際人権問題など実績は多岐に渡ります。
今回のインタビューでは、弁護士になろうと思ったきっかけ、学生時代の経験、日々舞い込む法律相談と向き合う姿勢、将来の展望などを大隅先生にお聞きしました。
弁護士を目指したきっかけ
――大隅先生が弁護士を目指されたのはいつだったのでしょうか。
大学2年生のときです。
大学は法学部へ進学しましたが、身近に法曹関係者はいませんでしたし、入学時にはっきりと弁護士になるということは考えておらず、将来は得意な英語を活かして商社や外資系企業で働きたいと漠然と考えていました。
大学へ入学した後は、法学の理論的・実務的な面白さに大変刺激を受けました。大学での学問は、高校生までの勉強とは異なり、単に公式やルールを覚えるのではなく、自分の頭で物事を批判的に考えることが求められます。法学は、人々が安心して生活でき、より良い社会や国家の実現を目指し、新しい技術の出現や社会・国際情勢の変化に応じて、どのように法制度の制定、運用を行うべきかを考えるものです。高度に理論的でありながら、事情に即した柔軟な対応も求められる。過去の事情を踏まえながら、複雑な社会・国際情勢への対応、さらには将来の変化を見据えることも必要とされる。
法学は非常に面白い、大人の学問だと感じました。
弁護士を目指したのは、司法試験委員を長く務められた刑法学者の林幹人先生や民事訴訟法の大家である小林秀之先生の影響が大きかったです。両先生とも、学生に法専門職の素晴らしさ、重要性を説いてくださり、私も弁護士という職業を意識するようになりました。両先生との出会いには今でも本当に感謝しております。
――司法試験に向け、法律の勉強一色だったのでしょうか?
いえ、法律一色というわけではありませんでしたね。
というのも、大学に入った時点では弁護士になろうとは思っていませんでしたので、最初の頃は法律の勉強に専門的に力を入れてはいませんでした。また、弁護士を目指そうと決めた後も、法学だけでなく弁護士になった先を見据えて大学時代に学んでおいた方が良いと思われる学問を並行して学ぶことにしたのです。
法律は杓子定規なものと考えられがちですが、実は「人間社会の紛争を解決するためのルール」であり、法律を理解し、十分に使いこなすためには、対象となる人間や社会に対する深い理解が必要となります。弁護士が世界で最も多く、競争が激しいために弁護士の質も高いとされている米国の状況を調べたところ、大学時代には法学の勉強はほとんどせずに一般教養をまずは身につけ、その後,大学院(ロースクール)時代に集中して法律学をマスターする制度となっていることも分かりました。
そのため、学部時代は法学の基礎を学ぶとともに、教養・人間学の科目をできるだけ多く学ぶことにしました。また、今後の国際化を見据えて語学(英語)についても取り組もうと決めました。
――人同士が争うから法律がある、という点で根本的な「人の理解」にまで手を広げたのですね。
そうです。将来、弁護士として大きな活躍をするために、学部時代に法律の勉強だけでは不十分であり、教養・人間学の科目と語学(英語)についても力を入れて勉強しようと思ったのです。
履修した教養・人間学の分野は多岐にわたりますが、物理学や化学、法医学、心理学、情報リテラシー、漢文学、聖書学など各分野で日本を代表するような教授陣の講義を積極的に受講しました。英語も最終的には帰国子女レベルである上級クラスで学ぶことが許されました。
その結果、本来は128単位の取得で卒業が認められるところを最終的には160単位(5年分の単位数に相当)取得していました。同じ年に卒業した学生の中では一番多く単位数を取得したのではないかと自負しています。日本の大学生は大学に入ったら遊んでばかりで勉強しないと言われていましたが、そんなことはないぞと言いたいですね(笑)。
弁護士になった後に、複雑な案件や形勢が不利と見られていた案件で、他の弁護士が気付かない活路を見出して依頼者を救ったことが何度もあります。法律のプロ同士の戦いの中で、法律の知識だけではない、教養・人間学に基づく大局観が良い結果へと導いたのではないかと思っています。
――勉学に時間を割く分、サークル活動やアルバイトなどに取り組むのは難しかったのではないでしょうか?
そう言われることが多いのですが、実際にはそんなことはないですよ。
大学のサークルにもいくつか所属していました。たとえば、英語研究会では英語スピーチの学生大会に出たり、演劇場での英語劇(演目:”You’ve Got Mail”など)に参加しました。私は留学経験もなく山形の田舎から出てきたため、英語のレベルはそれほど高くはありませんでしたが、帰国子女の仲間や熱意のあるメンバーから大いに刺激を受けました。学生時代特有の熱気ですね。
張り詰めた空気のスピーチ大会で壇上に一人で上がるときの緊張感や、真っ暗な演劇場で幕が上がるときの高揚感は20年以上経った今でもありありと思い出されます。
アルバイトでは、世界的な動物写真家である岩合光昭先生の会社で働かせていただいたことが貴重な経験でした。膨大な数の写真の中からクライアントが求める写真(例えば「アフリカの大草原の中で夕日を浴びてライオンの親子がくつろぎながら寄り添っている写真」)を数百枚の写真の中から選定するための準備作業や国内・海外のクライアントとの連絡(英語あり)などを担当していました。
少し話がそれますが、写真を含む「芸術」と「法律」は全く異なるもののように思われますが、実は共通しているところがあります。優れた芸術家・法律家には、いずれも論理性・合理性と感性・表現力の双方が必要であることです。論理性・合理性と感性・表現力のバランスが取れていなければ、人々に受け入れられる作品、法令・判例を継続的に生み出すことはできません。岩合先生ご自身も世界的な動物写真家であるのみならず、NHK紅白歌合戦の審査員や映画監督を務められたり、百貨店でのトークショー・サイン会はいつも長蛇の列ができるなど、まさに双方の能力を兼ね備えた人物でした。
エピソードを挙げれば切りがないのですが、このように大学時代に法学の勉強以外でも弁護士業務につながるような影響を受けたことはたくさんありました。
――お話をお伺いするととても充実した大学生活だったのですね。その後、法科大学院時代(ロースクール)へ進学されたわけですが、大学院時代にもなにか力を入れて取り組んでいた分野があったのでしょうか?
大学院へ進学した後は、司法試験に必要な準備を行うことは当然として、それに加えて、より弁護士実務に近い分野も学ぶことにしました。
進学した大学院が実学・経済界に強かったこともあり、経営学、経済学や会計学などの法隣接科目を積極的に履修しました。経営学、経済学や会計学の知識は会社法や企業間紛争対応や企業顧問業務の基盤となりました。また、当時はマイクロソフト、アップル社などのIT企業の興隆期であり、日本も小泉内閣時代に「知財立国」宣言がなされたこともあり、特許権、著作権、商標権など知的財産権の将来や重要性に注目して専攻していました。
「独立自尊」(自他の尊厳を守り、何事も自分の判断・責任のもとに行うこと)、「半学半教」(教える側と学ぶ側に上下関係を持ち込まず、互いに教え合い学び合うこと)の精神に基づき、仲間や教授陣と日本と世界の将来について熱く語り合った日々もいい思い出です。
大学院時代には、外資系の世界的法律事務所へのエクスターンシップも経験しました。
マジックサークル(”Magic Circle”※)と呼ばれるイギリス系の多国籍事務所の一つであるフレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所(“Freshfields Bruckhaus Deringer LLP“)の東京オフィスで国際弁護士の執務体験をしました。巨大ローファームの組織や知識・経験の共有体制、ITを活用した弁護士実務を目の当たりにしましたね(※ロンドンに本拠を置く最も権威のある5つの多国籍法律事務所の一つ)。
フレッシュフィールズのフランス事務所の弁護士が東京に研修に来ており、日本とアメリカの国際取引に関する英語で書かれた契約書についてエクスターンシップ生も交えて検討することになった際に、必死で法務・ビジネス英語と会社法、国際法と格闘したことも良い思い出です。
帰国子女でもなく、留学経験もない私が世界でも有数の国際法律事務所であるフレッシュフィールズでエクスターンシップをするチャンスを得られたのは、学部時代の語学と大学院時代のビジネス系の法隣接科目の準備があったからです。
――ここまで、先生はとてもお話の引き出しが多いと感じておりましたが大学生・大学院生時代のお話をお聞きして納得致しました。
対応してくれた弁護士が「自分のために最善を尽くしてくれたのか」が全て
――現在はどういったご相談に対応することが多いのでしょうか。
相続や交通事故、インターネットの削除請求を中心にご相談をお受けしています。
相続では、高額な不動産が絡む相続案件、遺言書の無効・偽装に関する相談や多額の引出金がみられる相続など、複雑なご相談が多いです。交通事故も死亡事故や重度後遺障害が残ってしまったというような、重大な事故に遭われた方からのご相談があります。インターネットの削除請求については比較的新しい分野ですが、今後もご相談が増えると思われる分野です。
中には、最初に相談した弁護士から「専門的に取り扱っている弁護士へ相談した方がよい」と言われ、ベストロイヤーズへきましたとおっしゃる方も少なくありません。
――同業の方でも困難であると判断した案件、となればかなり複雑な案件なのでしょうね。
そうですね。実は、弁護士は全ての分野に精通しているわけではありません。相続、交通事故どちらの分野も弁護士の力量次第で大きく結果が変わります。私は相続、交通事故の分野において、それぞれ1000件を超える法律相談をお受けしてきました。また、インターネット分野についても、新しい分野であることから法令や判例の変化を捉える必要がありますが、私は法科大学院時代から着目、準備しています。
だからこそ、専門的な知識・経験が活きる法分野といえます。
――相談をして断られた方でも、先生に受けてもらえると分かれば安心される方も多いのではないでしょうか。例えば、先生は、案件と向き合う際の心構えや信念などはあるのでしょうか。
ご依頼者様にとって、弁護士が1年目であろうと20年目であろうと関係ありません。弁護士が「自分のために最善を尽くしてくれるかどうか」が全てです。この考え方は弁護士1年目のときから持っていて、経験が20年にもなる先輩弁護士にも負けないよう努力を重ねてきました。
弁護士への相談を検討している方は「この問題を解決したい」「この不安から解放されたい」と思って事務所に足を運んでくださる方ばかりでした。ご依頼者様に対してどのように最善を尽くすか、この考えを常に持って向き合うようにしています。
このような姿勢がご依頼者様に支持され、多数のご依頼をいただいている理由だと思います。
最後に
――最後に、今後への意気込みやご相談者への一言があればお願い致します。
弁護士になってから始めの10年は、多数のご相談と裁判手続きを中心に、弁護士としての専門技能を高めることに注力してきました。その結果、訴訟・調停等の裁判手続き及び相続、交通事故、債務整理等の分野に関してはトップレベルの実績を挙げることができたと考えています。
現在を含む次の10年は、私個人の専門技能に加え、IT、組織化、専門化を通じて、より多くの法律問題でお困りの方々へ高品質な法律サービスを提供できる体制を整えることを目標としています。
私たちは、法律問題の解決にはITの活用がカギになると考え、かなり早い段階から、法律事務所のホームページを開設し、その後、相続、交通事故、債務整理、離婚、不動産等、各分野の専門ホームページを製作し、法情報の発信や業務処理システムの構築を行ってきました。今後はsnsの活用も含め、より一層、役に立つ法情報の発信に努めてまいります。
また、現在、相続、交通事故、インターネットの削除請求等の分野を集中的に取り扱うことで専門化も進めています。生死に関わる心臓病の手術を希望する患者が、内科や眼科の医師ではなく心臓外科の医師に診てもらうように、弁護士も専門性を高めてご依頼者様が求める分野のスペシャリストとして研鑽することが依頼者救済につながると考えています。
私たちの事務所名である「ベストロイヤーズ」(“Best Lawyers”)は、ご依頼者様にとって最良の弁護士でありたいという願いが込められています。専門化、組織化とITの活用によって、高度な法律サービスを提供してご依頼者様を救済するとともに、誰もが優れた法律サービスを受けられる社会の実現に取り組んでまいります。
相続、交通事故、インターネットの削除問題等でお困りの際には、ベストロイヤーズへお気軽にご相談ください。