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被相続人とは?相続の優先順位や相続を受けられない3つのケースも解説

関口 英紀 弁護士
監修記事
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「被相続人」とは、どのような人を指すのか、相続の優先順位はどうなっているのか、相続が受けられないケースはあるのか……。

相続に関連して多くの方が直面する問題のひとつに、「親が亡くなったものの相続の知識がない」ということがあります。

何から調べればいいのかわからず、パソコンの前で頭を抱えてしまう方も少なくありません。

疑問点は山積みですが、大切な家族の財産を守り適切に承継するためにも、まずは「被相続人」という概念を理解することが重要です。

本記事では「被相続人」の基本情報をはじめとした、相続に関する知識をわかりやすく解説します。

相続は、故人の遺志と遺された私たちの生活に密接に関わる重要なテーマです。

本記事をとおして、相続に関する基礎知識を身につけましょう。

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被相続人とは|相続財産を遺して亡くなった方のこと

被相続人とは、相続できる財産を遺して亡くなった人を指します。

たとえば父親が亡くなってその財産を相続することになった場合は父親が被相続人、遺産を相続する妻や子どもが相続人となります。

なお、相続財産として多くの方がまずイメージするのは、現金・銀行預金・有価証券・不動産などの積極財産でしょう。

ですが、相続財産には借金・買掛金・未払いの税金といった消極財産も含まれるので注意が必要です。

被相続人が相続人の知らないうちに高額の借金を抱えていた場合など、大きな問題に発展する例もあります。

被相続人の意思を相続に反映させる方法

相続には、単に故人の財産を残すというだけでなく、故人の財産と意志を次世代に引き継ぐという大切な役割があります。

そのため、相続を円滑に進めるためには、被相続人の意思をどのように反映させるかということが重要なポイントであるといえるでしょう。

以下では、被相続人の意思を相続に反映させるための方法について解説します。

遺言書|被相続人が財産を誰にどのくらい残したいか意思を示す方法

遺言書とは、被相続人が自身の財産を「誰に」「どのように」分配したいかを明記した文書です。

存命時に遺言書を遺しておくことで被相続人の最終意志が尊重され、相続人間での争いを防ぐことにもつながります。

遺言書には、主に自筆証書遺言や公正証書遺言、秘密証書遺言といった形式があります。

  • 公正証書遺言:遺言者が公証役場に出向いて公証人の前で遺言内容を口授します。公証人は遺言を作成して、必要になるときまで保管します。公正証書遺言の利点は、正確さと法的に高い信頼性をもっていることです。費用はかかるものの、裁判所などによる検認は必要ありません。
  • 自筆証書遺言:遺言者が全文を自筆で書いたうえで署名・日付を入れたものです。法務局で保管できますが、必須ではありません。自筆証書遺言の執行には検認済証明書が必要で、割印が押されている必要がありますが、手数料が不要で遺言者が個人的に遺言を作成できるというメリットがあります。
  • 秘密証書遺言:公証人と証人2名以上に遺言書の存在証明をしてもらいながら、公証人、証人、相続人含め、本人以外内容を見ることができない形式の遺言書です。ただし、ほかの方法に比べ手間がかかる、記載に不備があると無効になるなど確実性に欠けることから、年間の利用件数は100件程度にとどまります。

このうち公正証書遺言は正確性と法的保護のために推奨されることが多い一方、自筆証書遺言も作成の簡便さと自由度の高さから選ばれています。

正式な効力を持つ遺言書を作成するためにも、まずは専門家のアドバイスを求めることが重要です。

生前贈与|被相続人が存命のうちに財産を贈与する方法

生前贈与とは、被相続人が生存中に財産を移転する方法です。

事前に贈与しておくことで相続税が節税できるほか、相続人間の財産分配に関するトラブルを防ぐことにもつながります。

年間110万円までの贈与は非課税ですが、110万円を超える贈与は課税対象となりますので注意しましょう。

生前贈与をおこなうメリットは、以下のとおりです。

  • 相続税の節税:相続税の基礎控除を超える資産を所有している場合は、生前贈与しておくことで税負担を軽減できる可能性があります。
  • 円滑な資産移転:所有している資産を生前に移転することで、相続時の手続きや親族間での紛争の可能性を減らすことができます。
  • 受贈者の資金計画:受贈者は生前贈与を受けることで事業投資や住宅購入などの資金計画を立てやすくなります。

生前贈与はさまざまなメリットが得られるほか、相続計画の一環としても有効な手段です。

ただし、税法上の複雑なルールを把握しなければならないため、税理士や専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

家族信託|相続財産の管理を家族などに委託する方法

家族信託」とは、資産を持っている方が信頼できる家族に資産管理や処分を任せられる仕組みです。

万が一、病気などによって判断力が低下してしまった場合でも資産の保全や管理ができるほか、相続時にも家族間での紛争を防ぐことができます。

税負担の軽減にもつながるため、相続計画の一環として有効です。

家族信託を選択するメリットは、以下のとおりです。

  • 資産管理の効率化:家族が資産を管理することで、資産の適切な運用や保全が可能になります。
  • 相続手続きの簡素化:相続の際に信託資産は相続財産とは別物として扱われるため、相続手続きを簡略化できます。
  • 紛争の予防:資産分配に関する事前の合意があるため、相続に伴う家族間の紛争を防ぐことができます。
  • 税負担の軽減:一定の条件下で、相続税や贈与税の負担を軽減できます。

家族信託は資産の効率的な管理と相続手続きのスムーズ化を実現できる方法ですが、信託管理人には信頼でき適切な知識をもつ人を選ぶ必要があります。

複雑な法的手続きも必要になるため、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

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遺産相続をする際に最低限おぼえておくべき関係者とルール

遺産相続は、故人である被相続人の財産を親族が引き継ぐ重要な制度です。

相続手続きを円滑に進めるためにも、法定相続人・法定相続分・遺留分・代襲相続といったさまざまな情報を知っておくことが大切です。

ここでは、遺産相続の際に知っておきたい基礎知識を紹介します。

法定相続人|遺産を相続する法律上の権利を持つ人

被相続人が遺した財産は、相続人によって引き継がれることになります。

法律によって定められた「法定相続人」として被相続人の配偶者・子ども・親などの親族が該当しますが、遺言書がある場合は遺言書の指示内容に従って財産が分配されます。

なお、相続割合は民法で定められた法定相続分に基づいて決められており、配偶者と子どもがいる場合は配偶者が相続財産の半分を、残りの半分を子どもたち分割するのが基本です。

法定相続分|民法上、各法定相続人が受け取れる遺産の割合

法定相続分」とは、法定相続人が受け取ることができる遺産の割合を指します。

この割合は故人との関係や他の相続人の存在によって異なり、民法によってその優先順位が定められています。

第1順位は被相続人の子ども、第2順位は親、第3順位は兄弟姉妹です。 ただし、被相続人の配偶者はこれらの順位にかかわらず、常に一定の割合で相続権をもっています

相続順

法定相続人と相続割合

第1順位

配偶者  2分の1

子ども(直系卑属)  2分の1

第2順位

配偶者  3分の2

親(直系尊属)  3分の1

第3順位

配偶者  4分の3

兄弟姉妹  4分の1

遺留分|兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限相続できる遺産の割合

遺留分とは、被相続人が遺した財産の中で、法律により一定の相続人が最低限受け取ることが保証された財産を指します。

これは、相続人の経済的保護と被相続人の意思尊重のバランスをとるために設けられた制度です。

たとえば、被相続人が遺言によって財産の分配を決めている場合であっても、該当する相続人は遺留分侵害額請求権を行使することで遺留分相当額の請求が可能です。

遺留分が認められているのは以下の相続人に限られます。

  • 配偶者:被相続人の妻や夫
  • 直系卑属:被相続人の子どもや孫など、直接の子孫にあたる人物
  • 直系尊属:被相続人の親や祖父母など直接の先祖にあたる人物

代襲相続|亡くなった法定相続人にかわり子などが遺産を相続する制度

代襲相続とは、法定相続人が被相続人より先に亡くなった場合に、その相続人の子どもなどが代わりに遺産を相続する制度です。

たとえば、被相続人の子どもがすでに亡くなっている場合、その子どもの子(被相続人の孫)が相続人となります。

この制度によって家族間の財産継承がスムーズになるほか、代襲相続人が経済的な保護を受けられるようになるというメリットがあります。 世襲相続のポイントは、以下のとおりです。

  • 相続順位:代襲相続の順位は法定相続人の順位に基づいています。被相続人の子がすでに亡くなっている場合は、その子(孫)が代わりに相続権を持ちます。
  • 相続割合:代襲相続人は、本来の相続人が受け取るはずだった相続分を引き継ぎます。亡くなった子が受け取るはずだった相続分は、その子(孫)が受け取ります。
  • 複数の代襲相続人:代襲相続人が複数いる場合(亡くなった相続人に複数の子どもがいる場合など)、相続分は代襲相続人間で均等に分割されます。
  • 相続放棄:代襲相続人も、通常の相続人と同様に相続放棄が可能です。相続放棄した場合、その人の相続分は他の相続人に移ります。

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法定相続人が相続権を失う3つのケース

被相続人の配偶者や子どもをはじめとして、法定相続人には被相続人の財産や権利を引き継ぐ権利を持っています。

しかし、実は法定相続人であっても相続権を失うケースがあります。

ここでは、相続欠格・相続廃除・相続放棄という相続権を失う3つの主なケースについて解説します。

相続欠格|法律を犯すなどして相続権をはく奪されること

相続欠格とは、特定の行為や状況によって相続権を法的に失うことを指します。

相続欠落は相続の公正を保つための重要な法的概念であり、相続人が被相続人に対して重大な不正行為をおこなった場合に適用されます。

相続欠格に該当する行為をおこなった相続人は相続権を失いますが、相続欠格の申し立てをおこなう際には適切な証拠の提出が必須です。

相続欠落が適用される主なケースとしては、以下のような内容が挙げられます。

  • 被相続人などの殺害または殺害未遂
  • 遺言書の偽造・隠匿
  • 重大な虐待または侮辱

相続廃除|被相続人の意思で相続権をはく奪されること

相続廃除とは、被相続人が遺言書によって特定の相続人を相続から除外するという法的手段を指します。

相続廃除は相続人間の関係性や被相続人の意思を反映する制度であり、被相続人が生前に決定して遺言書に明記しなければなりません。

相続廃除がおこなわれる背景はさまざまですが、たとえば相続人が被相続人に対して重大な不義行為をおこなった場合のような合法的な理由が必要です。

相続廃除による効果として、以下の内容が挙げられます。

  • 相続権の喪失:相続廃除された相続人は、相続権を完全に失います。相続権を失った場合は、被相続人の遺産を相続することができなくなります。
  • 代襲相続への影響:相続廃除は特定の相続人にのみ有効であり、たとえば相続廃除された相続人の子どもが代襲相続人となった場合などは原則として影響せず、相続権を持ち続けることができます。

なお、相続廃除の対象となるのは、遺留分を有した推定相続人に限られています。 たとえば、最初から遺留分がない被相続人の兄弟姉妹などは相続廃除の対象外です。

相続放棄|相続人自らが相続権を放棄すること

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産に関する相続権を放棄することを指します。

ほとんどの場合、被相続人が抱えていた借金などの消極財産を避けるために利用される制度です。

相続放棄をおこなった場合、放棄した相続人は「最初から相続人ではなかった」という扱いになります。

なお、相続放棄をおこなうためには相続人が自らの意志で決定して家庭裁判所への正式な申し立てをおこなう必要があります。 相続放棄に関する知っておきたいポイントとして挙げられるのは、以下のような内容です。

  • 自発的な決定:相続放棄は相続人が相続を望まない場合に選択できる制度であり、相続人が自らの意思で決定することが大前提です。
  • 全ての遺産に適用:相続放棄をおこなうことで、相続人は遺産全体からの権利を放棄します。「消極財産のみ」といった、部分的な放棄は認められません。
  • 代襲相続への影響:相続放棄によって、相続放棄をおこなった相続人の子どもなどの代襲相続人は相続権を得ることになります。

さいごに

本記事では、被相続人の概要から相続の優先順位、さらには相続を受けられない特定のケースなどについて詳しく解説しました。

相続に関することは非常に複雑で、被相続人や相続人個々の状況によって必要な手続きなどはまったく異なります。

相続はほとんどの方にとって他人ごとではなく、いずれ対応を迫られることになる問題です。

いざというときに役立つ知識を身につけておくことはもちろんですが、どうしても専門的な知識が必要になるため専門家への相談も検討しましょう。

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この記事の監修者
川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士 (神奈川県弁護士会)
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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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