「被相続人」とは、どのような人を指すのか、相続の優先順位はどうなっているのか、相続が受けられないケースはあるのか……。
相続に関連して多くの方が直面する問題のひとつに、「親が亡くなったものの相続の知識がない」ということがあります。
何から調べればいいのかわからず、パソコンの前で頭を抱えてしまう方も少なくありません。
疑問点は山積みですが、大切な家族の財産を守り適切に承継するためにも、まずは「被相続人」という概念を理解することが重要です。
本記事では「被相続人」の基本情報をはじめとした、相続に関する知識をわかりやすく解説します。
相続は、故人の遺志と遺された私たちの生活に密接に関わる重要なテーマです。
本記事をとおして、相続に関する基礎知識を身につけましょう。
被相続人とは、相続できる財産を遺して亡くなった人を指します。
たとえば父親が亡くなってその財産を相続することになった場合は父親が被相続人、遺産を相続する妻や子どもが相続人となります。
なお、相続財産として多くの方がまずイメージするのは、現金・銀行預金・有価証券・不動産などの積極財産でしょう。
ですが、相続財産には借金・買掛金・未払いの税金といった消極財産も含まれるので注意が必要です。
被相続人が相続人の知らないうちに高額の借金を抱えていた場合など、大きな問題に発展する例もあります。
相続には、単に故人の財産を残すというだけでなく、故人の財産と意志を次世代に引き継ぐという大切な役割があります。
そのため、相続を円滑に進めるためには、被相続人の意思をどのように反映させるかということが重要なポイントであるといえるでしょう。
以下では、被相続人の意思を相続に反映させるための方法について解説します。
遺言書とは、被相続人が自身の財産を「誰に」「どのように」分配したいかを明記した文書です。
存命時に遺言書を遺しておくことで被相続人の最終意志が尊重され、相続人間での争いを防ぐことにもつながります。
遺言書には、主に自筆証書遺言や公正証書遺言、秘密証書遺言といった形式があります。
このうち公正証書遺言は正確性と法的保護のために推奨されることが多い一方、自筆証書遺言も作成の簡便さと自由度の高さから選ばれています。
正式な効力を持つ遺言書を作成するためにも、まずは専門家のアドバイスを求めることが重要です。
生前贈与とは、被相続人が生存中に財産を移転する方法です。
事前に贈与しておくことで相続税が節税できるほか、相続人間の財産分配に関するトラブルを防ぐことにもつながります。
年間110万円までの贈与は非課税ですが、110万円を超える贈与は課税対象となりますので注意しましょう。
生前贈与をおこなうメリットは、以下のとおりです。
生前贈与はさまざまなメリットが得られるほか、相続計画の一環としても有効な手段です。
ただし、税法上の複雑なルールを把握しなければならないため、税理士や専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
「家族信託」とは、資産を持っている方が信頼できる家族に資産管理や処分を任せられる仕組みです。
万が一、病気などによって判断力が低下してしまった場合でも資産の保全や管理ができるほか、相続時にも家族間での紛争を防ぐことができます。
税負担の軽減にもつながるため、相続計画の一環として有効です。
家族信託を選択するメリットは、以下のとおりです。
家族信託は資産の効率的な管理と相続手続きのスムーズ化を実現できる方法ですが、信託管理人には信頼でき適切な知識をもつ人を選ぶ必要があります。
複雑な法的手続きも必要になるため、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
遺産相続は、故人である被相続人の財産を親族が引き継ぐ重要な制度です。
相続手続きを円滑に進めるためにも、法定相続人・法定相続分・遺留分・代襲相続といったさまざまな情報を知っておくことが大切です。
ここでは、遺産相続の際に知っておきたい基礎知識を紹介します。
被相続人が遺した財産は、相続人によって引き継がれることになります。
法律によって定められた「法定相続人」として被相続人の配偶者・子ども・親などの親族が該当しますが、遺言書がある場合は遺言書の指示内容に従って財産が分配されます。
なお、相続割合は民法で定められた法定相続分に基づいて決められており、配偶者と子どもがいる場合は配偶者が相続財産の半分を、残りの半分を子どもたち分割するのが基本です。
「法定相続分」とは、法定相続人が受け取ることができる遺産の割合を指します。
この割合は故人との関係や他の相続人の存在によって異なり、民法によってその優先順位が定められています。
第1順位は被相続人の子ども、第2順位は親、第3順位は兄弟姉妹です。 ただし、被相続人の配偶者はこれらの順位にかかわらず、常に一定の割合で相続権をもっています。
相続順 |
法定相続人と相続割合 |
|
第1順位 |
配偶者 2分の1 |
子ども(直系卑属) 2分の1 |
第2順位 |
配偶者 3分の2 |
親(直系尊属) 3分の1 |
第3順位 |
配偶者 4分の3 |
兄弟姉妹 4分の1 |
遺留分とは、被相続人が遺した財産の中で、法律により一定の相続人が最低限受け取ることが保証された財産を指します。
これは、相続人の経済的保護と被相続人の意思尊重のバランスをとるために設けられた制度です。
たとえば、被相続人が遺言によって財産の分配を決めている場合であっても、該当する相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使することで遺留分相当額の請求が可能です。
遺留分が認められているのは以下の相続人に限られます。
代襲相続とは、法定相続人が被相続人より先に亡くなった場合に、その相続人の子どもなどが代わりに遺産を相続する制度です。
たとえば、被相続人の子どもがすでに亡くなっている場合、その子どもの子(被相続人の孫)が相続人となります。
この制度によって家族間の財産継承がスムーズになるほか、代襲相続人が経済的な保護を受けられるようになるというメリットがあります。 世襲相続のポイントは、以下のとおりです。
被相続人の配偶者や子どもをはじめとして、法定相続人には被相続人の財産や権利を引き継ぐ権利を持っています。
しかし、実は法定相続人であっても相続権を失うケースがあります。
ここでは、相続欠格・相続廃除・相続放棄という相続権を失う3つの主なケースについて解説します。
相続欠格とは、特定の行為や状況によって相続権を法的に失うことを指します。
相続欠落は相続の公正を保つための重要な法的概念であり、相続人が被相続人に対して重大な不正行為をおこなった場合に適用されます。
相続欠格に該当する行為をおこなった相続人は相続権を失いますが、相続欠格の申し立てをおこなう際には適切な証拠の提出が必須です。
相続欠落が適用される主なケースとしては、以下のような内容が挙げられます。
相続廃除とは、被相続人が遺言書によって特定の相続人を相続から除外するという法的手段を指します。
相続廃除は相続人間の関係性や被相続人の意思を反映する制度であり、被相続人が生前に決定して遺言書に明記しなければなりません。
相続廃除がおこなわれる背景はさまざまですが、たとえば相続人が被相続人に対して重大な不義行為をおこなった場合のような合法的な理由が必要です。
相続廃除による効果として、以下の内容が挙げられます。
なお、相続廃除の対象となるのは、遺留分を有した推定相続人に限られています。 たとえば、最初から遺留分がない被相続人の兄弟姉妹などは相続廃除の対象外です。
相続放棄とは、相続人が被相続人の財産に関する相続権を放棄することを指します。
ほとんどの場合、被相続人が抱えていた借金などの消極財産を避けるために利用される制度です。
相続放棄をおこなった場合、放棄した相続人は「最初から相続人ではなかった」という扱いになります。
なお、相続放棄をおこなうためには相続人が自らの意志で決定して家庭裁判所への正式な申し立てをおこなう必要があります。 相続放棄に関する知っておきたいポイントとして挙げられるのは、以下のような内容です。
本記事では、被相続人の概要から相続の優先順位、さらには相続を受けられない特定のケースなどについて詳しく解説しました。
相続に関することは非常に複雑で、被相続人や相続人個々の状況によって必要な手続きなどはまったく異なります。
相続はほとんどの方にとって他人ごとではなく、いずれ対応を迫られることになる問題です。
いざというときに役立つ知識を身につけておくことはもちろんですが、どうしても専門的な知識が必要になるため専門家への相談も検討しましょう。
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