遺産分割(いさんぶんかつ)とは、被相続人が遺言を残さずに死亡した場合に、一旦は相続人全員の共有財産となったものを、各相続人へ話し合いによって具体的に分配していくことを言います。
相続税の申告期限は別にして、遺産分割の時期については決まった期限はありません。
遺産は共有状態のまま相続することも可能ですが、相続したものが土地や不動産の場合など、具体的に分ける方法が曖昧なもののケースですと、のちのち相続財産をめぐってトラブルになる可能性もあります。
遺産相続の際、もし相続人同士でトラブルが起こった場合にはどのように対処していけばよいのでしょうか?また、トラブルを未然に防ぐ方法はあるのでしょうか?
本記事では、遺産分割の流れや手続き方法と併せて、遺産分割においてよく起こる問題を解説します。
遺産分割をスムーズに進める方法がわからず悩んでいるあなたへ
遺産分割をスムーズに進める方法がわからず悩んでいませんか?
遺言書がない場合、土地や不動産など具体的に分配するのが困難な遺産は相続トラブルの原因になることがあります。
相続トラブルを未然に回避したい場合や、すでにトラブルに巻き込まれているという場合、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
また、弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。
- 遺産分割の流れや手続きについて教えてもらえる
- 依頼すれば、遺産分割協議で仲立ちとして話し合いをスムーズに進めてもらえる
- 依頼すれば、遺産分割協議から遺産分割審判までの煩雑な手続きを一任できる
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この記事に記載の情報は2024年01月12日時点のものです
遺産分割には「遺産分割協議」「遺産分割調停」「遺産分割審判」の3つの方法があり、基本的には「1:遺産分割協議」→「2:遺産分割調停」→「3:遺産分割審判」の順で進めていくことになります。
もしこの段階で「遺言書の存在が確認できている場合」は、【1:遺言書の有無を確認】をご覧ください。
遺産分割協議とは、相続が発生した際、被相続人による遺言書がない場合に相続人全員で遺産分割に関する話し合い(協議)をおこなうことです。
相続人同士の話し合いで、遺産の分割方法や、だれが何を相続するかを決定します。
ただし、相続人同士で直接話し合おうとすると、お互いに感情的になったりして話し合いが長引くこともあります。
弁護士に依頼すれば、依頼者の代理人として冷静に話し合いを進めてくれるため、なるべくスムーズに解決したい場合にはおすすめです。
詳細は「遺産分割協議とは|進め方や期限、話し合いがまとまらないときの対処法」で解説しているので、参考にしてください。
遺産分割調停とは、遺産分割協議において相続人の間では話し合いがつかない場合などに、家庭裁判所において、調停委員に間に入ってもらい話し合いによる解決を目指す手続きです。
遺産分割調停では各相続人からの事情を確認し、必要に応じて資料等を提出してもらうなど、事情をよく把握したうえで、
- 各相続人がそれぞれどのような分割方法を希望しているか
- その分配比率などはどうしてほしいのか
を聴取し、合意を目指し話し合いが進められます。
詳細は「遺産分割調停とは?家庭裁判所での流れと弁護士に依頼するメリット」で解説します。
遺産分割調停でも話がつかなかった場合、遺産分割審判に自動的に移行されます。
別途で審判申し立てをする必要はありませんので、そのまま調停員の指示に従ってください。
ちなみに、遺産分割事件には調停前置主義(いきなり裁判をすることはできず、まず調停をして解決できなかった場合に初めて裁判を起こせるという制度)はありません。
初めから「調停」または「審判」の手続きを申立てることも可能ですが、いきなり審判を申立てようとしても、まずは調停を申し立てて、裁判所の関与の下でできるだけ話し合いによる解決を図るよう促される可能性が高いです。
なお、弁護士であれば、遺産分割協議・遺産分割調停・遺産分割審判などの手続きを一任することが可能です。
弁護士に依頼することで、他の相続人との交渉・必要書類の収集・裁判所でのやり取りなどに対応する必要がなくなり、遺産相続にかかる手間を大きく軽減できます。
遺産分割の方法には、以下の4つがあります。
ここでは、それぞれの分割方法について解説します。
現物分割(げんぶつぶんかつ)
この家は長男に相続し、あの車は長女にあげようといったように、その名のとおり遺産そのものを現物(そのまま)で分ける方法です。
現物分割では現物の性質上、各相続人の相続分をきちんと分けることは難しいため、相続人の間で取得格差が大きい場合は一部の資産を売却してその代金で調整したり、沢山相続した人が自己資金で調整(代償分割)したりします。
換価分割(かんかぶんかつ)
相続財産を売却し、お金に換えて綺麗に分割する方法です。
現物分割では難しい各相続人の法定相続分を、きっちり分割したい場合などは便利ですが、この場合は処分費用や譲渡取得税などを考慮する必要があります。
代償分割(だいしょうぶんかつ)
土地や建物を跡取りである長男が取得する代わりに、長女に500万円、次男に600万円支払うなど、相続分以上の財産を取得する代償として他の相続人に自己の財産(金銭等)を交付する方法です。
共有分割(きょうゆうぶんかつ)
不動産や有価証券といった各遺産を、相続人の間で共有する分割方法です。
この方法を取ると、共有者が死亡した場合に新たな相続人の名義が加わっていくということになります。
そのため、将来的な売却の際に、手続きが複雑になってしまう可能性があります。
その場では解決したと思っても、結果的に問題の先送りになってしまうケースがあるため、あまり良い分割方法とはいえません
遺産分割に決まった順番などはありませんが、流れを追っていくことが早期解決につながる一番の近道にもなります。
以下の一般的な手順を確認しておきましょう。
まずは被相続人が遺言書などを残していないかを確認しましょう。
もし遺言書がある場合は、遺産分割協議を待たず、遺言書の内容を優先する必要があるからです。
遺言の残し方にもいくつか種類があり、遺言書の種類によってはその内容や書き方が正当かどうかを判断する必要があります。
遺言書の有無が確認できたら、次は遺産相続の全財産がどの程度あるのかを知る必要があります。
プラスもマイナスも全てを含めた財産を洗い出し、土地や不動産に関しては金額に換算する作業が発生する場合もあります。
相続財産を確認する方法については「相続財産に含まれる財産と課税対象になる財産の違い」を、確認しましょう。
遺産相続の際、誰がどの財産を相続するかを決めるには、相続人全員の同意を得る必要があります。
話し合いの場自体に全員が顔を突き合わせる必要はありませんが、同意が一人でも欠けると遺産分割協議そのものが無効になってしまいます。
そのため、場合によっては被相続人の出生から死亡までの戸籍をもとに、代襲相続などにも注意しながら相続人を確定していく必要があります。
もし、連絡のとれない相続人がいる場合は、「連絡のとれない相続人がいるのですが・・・」を確認してください。
遺産分割において、まず初めにおこなわれる話し合いです。
ここで全ての相続人が納得できる話し合いができれば円満解決となりますので、お互いの譲歩や過度な自己主張をしないようにするのがポイントです。
必ず全員が顔を合わせて協議をしなければならないというわけではないので、遠方や疎遠等の理由で分割協議への参加を渋る相続人がいる場合は、書面でのやりとりや調停・審判も視野に入れるのがよいでしょう。
5:話し合った内容を遺産分割協議書にまとめる
相続人同士で話し合って決めた内容は「遺産分割協議書」としてまとめておくことで、のちのちの言った言わないなどのトラブルを未然に防ぐことができますので、必ず作成しておきましょう。
また、遺産分割協議書がないと「不動産の相続手続」ができませんので、用意しておくことをおすすめします。
遺産分割協議で話がまとまらない場合、遺産分割調停か遺産分割審判を申立てることになります。
申立てに必要な書類や費用、手順などの詳細は「遺産分割協議が不成立なら遺産分割調停を申し立てる」を確認してください。
遺産相続の流れとしては上記のとおりですが、これまで相続の経験がない素人では、相続人などの調査漏れや遺産分割協議書の記載ミスなどが起こる恐れがあります。
ミスなく遺産相続を済ませたい場合は、弁護士にサポートを依頼しましょう。
弁護士には、遺言書の検認・相続財産や相続人の確認・遺産分割協議・遺産分割協議書の作成などを一任でき、スムーズな遺産相続が望めます。
遺産分割協議とは違い、調停や審判(裁判)の場合、費用やその都度必要な書類が違うので、簡単に紹介します。
遺産分割調停に必要な書類
- 申立書1通及び、その写しを相手方の人数分
- 標準的な申立添付書類
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての除籍戸籍・改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票又は戸籍附票
- 遺産に関する証明書(登記事項証明書や預貯金等の残高証明書など)
申立てにかかる費用
弁護士を調停の依頼をした場合の費用
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相談料:5,000円~/30分(初回相談無料の事務所も多いです)
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着手金:300,000円程度~(遺産の額によって異なるのが通常です)
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報酬金:取得できた財産の4~16%程度
もちろん弁護士に頼まなくても進めることはできますが、相続人同士で話し合いがつかなかったからこそ、調停や審判(裁判)に発展しているわけですので、弁護士の活用を検討いただくのが無難でしょう。
遺言書の存在を知らずに遺産分割が成立していたとしても、遺言内容に反する部分があった場合は無効になります。
しかし、相続人全員がその遺言内容を無視して遺産分割するというのであれば、相続人全員の合意があれば遺言書を無視した分割協議が優先されます。
相続人のうち1人でも異議を唱える者がいる場合は、やはり改めて遺言書に沿った再分割をしなければなりません。
最後に、遺産分割でよく出てくる問題を紹介します。
絶対かと言われれば、そんなことはありません。
しかし、相続人同士で取り決めた内容を必ず守らせるという意味でも、作成することをおすすめします。
ちなみに、家屋や土地の遺産分割の場合、遺産分割協議書の作成は必須となります。
遺産相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3パターンがあり、借金も全部相続するのか、プラスの財産の範囲内で借金も相続するのか、全部捨てるのかを選ぶことが出来ます。
したがって、借金がプラスの財産を上回る場合には、借金だけを相続しないという方法は取れません。
被相続人の財産の形成に生前から貢献していたり、世話をしてくれた人がいた場合など、被相続人に貢献した相続人には「寄与分」という貢献分があります。
ただし、この「寄与分」はいくらが妥当であるかは簡単に算出されるものではありませんので、貢献した人に相続財産を確実に渡したいのであれば、遺言書を作成しておくべきだと言えます。
被相続人の生前に多額の援助を受けた者がいた場合、相続分どおりに遺産を分けるともらい過ぎのように思えます。
このような不公平を是正する為にあるのが「特別受益」といわれる制度です。
相続人全員で協議しなければ、その協議は無効となりますので、連絡の取れない兄弟などがいる時は、まずはその人の居所を見つけなければなりません。
弁護士であれば、職権で相続人の住所地を調べ、その住所地へ遺産分割協議に応じるように手紙を送ることも可能です。
遺産を分割するには、一般的に4種類の方法があります。
法定相続の場合であってもそうでなくても、基本となる遺産分割の方法です。
詳しくは「土地の相続手続きと流れを解説|分け方・必要書類・期限まで」を確認してください。
内縁者には基本的に相続権はありませんが、遺言書で適切に指定されていれば、財産を相続できる可能性があります。
「内縁の妻や夫は相続できる?相続権がないパートナーに遺産を残す方法を解説」などを確認して、どんな場合に遺産を渡すことになるのかを確認しましょう。
遺言書の内容は優先度の高いものではありますが、法定相続人全員が同意すれば、必ずしも遺言内容に従う必要はありません。
また、「特定の誰かに全財産を相続させる」といった他の相続人の遺留分を侵害するような内容の場合は、侵害された遺留分権利者は請求によって自己の最低限の取り分を守ることができます。
本来受け取るはずだった遺産の全額について、「社会団体への寄付」「愛人への遺贈」などがおこなわれた場合、残された相続人は「遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)」をおこない、最低限の遺産を取り戻すことが出来ます。
詳しい手順などは「遺留分とは|割合と受け取れる人・遺留分侵害額請求の手順を解説」をご覧ください。
被相続人が遺言書を残していない場合は、遺産分割について相続人同士で決定することになります。
基本的には「1:遺産分割協議」「2:遺産分割調停」「3:遺産分割審判」の順で進めていき、現物分割・換価分割・代償分割・共有分割のうち、いずれかの方法で分け合います。
遺産相続は相続人だけで進めることも可能ですが、相続人などの調査漏れが起きたり、遺産分割協議で感情的な対立が生じたりして、手続きがうまく進まない恐れがあります。
弁護士であれば、遺産相続のために必要な手続きを一任できますので、トラブルなく迅速に済ませたい人にはおすすめです。
初回相談無料の事務所もありますので、弁護士への依頼を悩んでいる人も、まずは一度話を聞いてみましょう。
遺産分割するためには、遺言書の確認や相続財産の調査、相続人の確定、相続人同士での遺産分割協議などやることがたくさんあります。
上記の対応は後々のトラブルを回避するためにも、怠るわけにはいきません。
遺産分割に関してお悩みの方は、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼すれば、下記の様なメリットを受けられます。
- 相続する財産や相続人の調査を任せることができる
- 弁護士が代理人となり、他の相続人と直接話をしなくても済むようになる
- 遺産分割で自分の希望を反映させるためのアドバイスがもらえる など
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