相続放棄を進める中で、どのような失敗例があるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
相続放棄は、やり方をひとつ間違えるだけで無効となり、多額の借金をそのまま背負うことになりかねません。
期限を過ぎた・遺品に触れてしまった・照会書を放置してしまったというケースも、実際に起きている失敗です。
本記事では、相続放棄でよくある6つの失敗例と、失敗しないための5つの対策、万が一失敗した場合の対処法まで順を追って解説します。
相続放棄は、正しい手順を踏めば確実に認められる手続きですが、知らずにやってしまう行動や見落としがちな落とし穴が数多くあります。
ここでは、相続放棄をする場合によくある失敗例を6つ紹介します。
相続放棄は、自分に相続が発生したことを知ったときから3ヵ月以内に手続きを完了させなければなりません。
3ヵ月の間に家庭裁判所へ申述をおこなわなければ、原則として全ての財産と借金を無条件で引き継ぐ単純承認をしたとみなされます。
実際には、葬儀や各種手続きで忙しい時期と重なり、気づけば期限を過ぎていたというケースが少なくありません。
また、相続の開始を知った日の起算点の把握を間違えているケースも多いので注意が必要です。
もし3ヵ月の期限を過ぎてしまった場合でも、借金の存在を後から知ったなどの特別な事情が認められれば、例外的に受理される可能性があります。
ただし、判断するには高度な法的知識が必要なほか、一旦相続放棄が受理されても、後で債権者が相続放棄の有効性を争って訴訟を起こしてくる、ということもままありますので、期限内に相続放棄をするのが最も確実な方法であり、期限が迫っていると感じたら速やかに弁護士に相談するのをおすすめします。
家庭裁判所へ申述申立をしなかった場合も、相続放棄が失敗する典型的なパターンのひとつです。
相続放棄は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類を受理されて初めて法的な効力が発生します。
話し合いで合意したから大丈夫だろうと思い込み、裁判所への申述を忘れてしまった事例も少なくありません。
よくある失敗は、親族間での遺産分割協議において「私は何もいらない」と宣言し、合意書に署名・捺印したことで相続放棄の手続きが終わったと思い込んでしまうケースです。
また、手続きを弁護士などの専門家に依頼せず、自分で書類を準備している途中で期限が過ぎてしまったり、煩雑な作業のために放置してしまう事例も散見されます。
確実に相続放棄するためには、必ず期限内に家庭裁判所へ申述し、受理通知書を受け取るところまで完結させる必要があると理解しておきましょう。
裁判所から届いた照会書に回答せず放置した場合、申述が却下される可能性があります。
照会書には、いつから相続開始を知っていたか・申述は本人の真意かなどの確認事項が記載されており、速やかに回答・返送しなければなりません。
ありがちな失敗例としては、申述書を郵送して全ての手続きが完了したと思い込み、その後に届く裁判所からの封書を見落とすケースなどです。
裁判所から届いた書類は、必ず中身を確認する習慣をつけてください。
その上で不明点がある場合は、返送前に弁護士に相談して適切なアドバイスを受けるのが確実です。
相続放棄を検討している中で遺産に手をつけてしまうと、単純承認(相続を承認したこと)とみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性があります。
具体的には、被相続人の預金を引き出す・財産を分配する・借金の一部を返済するといった行為が該当します。
また、賃貸物件の解約に伴う敷金を受領するために権利行使をしたり、未払いの給与を受け取って消費するのも処分行為に該当するリスクがあるため危険です。
単純承認は、詐欺や強迫、または重大な錯誤があった場合を除いて、原則として撤回できません。
少しくらいなら大丈夫という感覚での行動が、致命的なミスになりかねないので注意が必要です。
相続放棄の手続きが完了し、裁判所から受理通知書が届くまでは被相続人の財産や債務には一切触れないでください。
自分だけが相続放棄をしても、ほかの相続人への連絡を忘れると思わぬトラブルを招きます。
相続放棄をすると、その人の相続権が次順位の相続人に移ります。
子が全員放棄すれば親などの直系尊属へ、直系尊属もいなければ兄弟姉妹へと順に移るのが原則です。
自分は放棄した、というだけで済む話ではなく、知らないうちに別の親族が多額の借金を引き継いでいたというケースもゼロではありません。
法的に連絡の義務があるわけではありませんが、予期せぬ二次被害やトラブルを防ぐには相続人となる可能性のある親族へ事前に事情を説明し、可能であれば一斉に手続きを進めるのが理想的です。
少なくとも手続き後は、次順位の方へ速やかに連絡を入れるのがトラブル防止のためのマナーといえるでしょう。
独断で進めるのではなく、関係者への影響をふまえた配慮が円満な解決には欠かせません。
相続放棄の手続きを正しく把握していなかったせいで、相続人同士で認識のズレが生じ、本来は無用な相続争いが起こる可能性があります。
自分は放棄したから関係ないという態度は、他の親族から見れば面倒なことを押し付けられたと映り、感情的な対立を生むきっかけとなります。
場合によっては、話がこじれてしまい調停や訴訟に発展し、解決まで数年かかるケースも珍しくありません。
法律上、相続放棄は個人の判断で進められる手続きですが、家族全体への影響を考えて進めることが不要なトラブルを防ぐうえで非常に重要です。
相続放棄の失敗は、事前の準備と正しい知識で防げるものがほとんどです。
ここでは、確実に相続放棄を認めてもらうための対策を5つ解説します。
相続放棄を検討しているなら、できるだけ早く動き出すことが重要です。
3ヵ月の期限は思っているよりも短く、葬儀や役所の手続きなどと並行して進めると、気づけばギリギリの状況になりがちです。
まずは相続が開始したタイミングで、故人の銀行口座の残高や不動産の有無、そして負債(借金)の状況を可能な限り早急に把握しましょう。
特に借金の調査は、信用情報機関への照会や郵送物の確認など時間がかかる工程が多いため、できるだけ早めに進めてください。
どうするか完全に決めてから動くのではなく、調査を進めながら判断材料を揃えるという姿勢が不可欠です。
少しでも期限に不安を感じる場合は、期間が経過してしまう前に、速やかに専門家のアドバイスを仰ぐのが賢明です。
3ヵ月の期限内に相続放棄の判断が難しい場合、家庭裁判所へ相続放棄の期間延長を申立てが可能です。
申し立てが認められれば、期限を1ヵ月~3ヵ月程度延長してもらえます。
ただし、この申し立て自体も3ヵ月の期限内におこなう必要があるので注意が必要です。
まだ時間はあると思っているうちに期限が切れてしまう前に、早めに申し立てを検討しましょう。
相続放棄を判断する前に、財産の全体像を正確に把握することが重要です。
相続放棄は一度受理されると、後から実は価値のある不動産や預貯金が見つかったと知っても、原則として撤回することはできません。
調査の対象は、銀行の預貯金や不動産、株式などの有価証券だけでなく、生命保険金、過払い金の有無、消費者金融や個人間での負債までさまざまです。
自力での調査には限界があり、特に遠方の不動産やネット銀行などの把握は困難を極めるケースも少なくありません。
財産調査のノウハウを持つ弁護士であれば、職権での調査などを用いて隠れた財産や負債を見落とさず、客観的なデータに基づいて放棄すべきか否かの正確な判断が可能です。
どうしても自力での調査に限界を感じる場合は、弁護士に依頼しましょう。
相続放棄を検討している間は、被相続人の財産・債務に一切触れないことが原則です。
一度でも遺産に手をつけると、単純承認とみなされるリスクがあります。
具体的には、預金の引き出しや借金の肩代わりのほか、形見分けなども単純承認とみなされる危険があります。
また、葬儀費用として少しお金を引き出した・形見として時計をもらったといった行為も後から問題になるおそれがあります。
「これくらいなら大丈夫だろう」という自己判断が、多額の負債を一身に背負うという取り返しのつかない結果を招く恐れがあります。
どうしても急ぎで必要な支出がある場合や、遺品の整理を行いたい場合は、まずは弁護士に相談する方が安全です。
相続放棄をする前に、家系図などで相続人の範囲と順位を正確に把握しておきましょう。
あらかじめ子・直系尊属・兄弟姉妹と相続の順位を理解していないと、あなたが相続放棄したらどこに相続権が移るかが見えてきません。
中には、予期していなかった遠縁の親族に相続権が回ってしまい、トラブルの原因になるケースもあるので注意が必要です。
家系図は、お住まいの市役所・区役所で戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)を収集すれば作成・閲覧できます。
自分で進めるのが難しい場合は、弁護士に家系図作成を依頼すれば、戸籍収集から親族関係の特定まで法的な根拠に基づいて進めてもらえます。
相続放棄に少しでも不安があるなら、迷わず弁護士に相談してください。
相続放棄には3ヵ月の期限があるので、不安点をそのままにした場合、取り返しのつかない結果になる可能性もゼロではありません。
たとえば、すでに遺産に手をつけてしまった・期限ギリギリで動けていない・借金の存在を後から知ったといった状況でも、弁護士に相談すれば解決の糸口が見つかる場合があります。
相続放棄は、相続関係や相続財産を正確に把握したうえで適切に手続きを進める必要があり、複雑になることも多く、一度失敗すると取り返しがつかない可能性もあります。
自分でなんとかなるだろうと判断せず、不安が生じた段階で弁護士の意見を仰ぐのが、自分と家族の未来を守るための正解です。
相続放棄に失敗したからといって、すぐに諦める必要はありません。
状況によっては、まだ対処できる余地があります。
ここでは、失敗後に取りうる2つの対処法を解説します。
3ヵ月の期限を過ぎてしまった場合でも、上申書(事情説明書)を提出してやむを得ない事情があったと裁判所に認められれば、相続放棄が受理される可能性があります。
これを実務上「熟慮期間経過後の相続放棄」などと呼びます。
ただし、知らなかった理由だけではなく、なぜ知ることができなかったのかを裏付ける根拠も必要です。
具体的には、被相続人と長年疎遠であり、借金の存在を予見することが不可能だったなど、期限を守れなかったことに対する確かな裏付けが必要です。
裁判所へ提出する上申書の書き方ひとつで結論が大きく変わるので、裁判所を説得するためにも、この段階から弁護士に依頼するのを強くおすすめします。
家庭裁判所から相続放棄の申述を却下された場合、決定を受けてから2週間以内に高等裁判所へ即時抗告できます。
却下となる主な理由は、単純承認とみなされる行為があった場合や、3ヵ月の期限が経過していると判断された場合などです。
ただし、特殊な事情がある場合や期間の計算方法に異議がある場合は、抗告によって覆る可能性があります。
たとえば形見分けの範囲内であり単純承認にはあたらない・被相続人の死亡を知った日の計算が誤っている場合などは、抗告によって結論が覆るケースがあります。
即時抗告は、通常の相続放棄よりも法的な専門知識が求められる手続きです。
2週間という短い期限の中で適切に対応するためにも、相続問題に詳しい弁護士へ速やかに相談しましょう。
相続放棄の強い弁護士を選ぶときは、費用の安さだけでなく、経験の豊富さと真摯に対応してくれるかもチェックしましょう。
相続放棄の手続きは、個々の状況に合った柔軟な判断が求められるので、実績が少ない事務所ではマニュアル外の対応ができないおそれがあります。
依頼後は、以下のポイントを意識しておくことが重要です。
弁護士に一任することは重要ですが、一発勝負の手続きだからこそ、依頼後も主体的に関与する姿勢が非常に大切です。
手続き開始後も不明点が出てきたら、速やかに弁護士へ確認しましょう。
相続放棄の手続きを弁護士に依頼したい方には、「ベンナビ相続」への相談をおすすめします。
ベンナビ相続とは、相続放棄・遺産分割・相続トラブルに精通した弁護士を全国から探せるポータルサイトです。
累計相談数25万件以上、累計サイト訪問数4,790万人超(2026年4月時点)の実績があります。
対応エリアやオンライン相談の可否など、細かい条件を絞って自分に合った弁護士を探せるのが特徴です。
地方在住の方でも、自宅から都市部の経験豊富な弁護士に相談できます。
初回無料相談に対応している事務所が多いので、まずは気軽な相談から始めてみましょう。
続いて、ベンナビ相続に掲載された弁護士に相続放棄を依頼し、実際に解決した事例を3つ紹介します。
自分の状況と照らし合わせてみてください。
何十年も疎遠だった伯父が息子と連帯して借り入れていた住宅ローンについて、依頼者のもとに債権回収会社から突然「法定相続割合に応じて支払え」という通知が届きました。
依頼者は相続放棄の手続き方法がまったくわからない状態でしたが、弁護士に依頼して必要な戸籍類の取得から家庭裁判所への申述申立まで全ての手続きを代理してもらい、無事に受理されました。
何から始めればよいかわからない状況でも、弁護士に依頼すれば問題なく解決できたのがわかる事例です。
ある日突然、依頼者のもとに裁判所から訴状が届きました。
数年前に死亡した兄が住んでいたマンションの管理費といった数百万円の滞納額の支払いを求めるものでした。
依頼者は訴状によって初めて兄の死亡を知ったという状況でしたが、弁護士が被相続人との交流のなさと死亡を知らなかった経緯を陳述書にまとめ、家庭裁判所に申述。
相続放棄は無事受理され、支払い義務を免れました。
期限内かどうかわからない不安な状況でも、弁護士の適切な対応によって解決できた事例です。
被相続人が亡くなって数年後、依頼者のもとに債権者からの通知が届き、多額の負債が発覚しました。
先順位の相続人が相続放棄していたことを知らなかったため、3ヵ月の期限はすでに経過している状況でした。
依頼を受けた弁護士が、期限経過に至った経緯・被相続人の生活状況・死亡の事実を知った経緯を丁寧に裁判所へ説明。
結果として、570万円の負債について相続放棄の申述が受理されました。
もう手遅れかもしれないという状況でも、弁護士へ速やかに相談したおかげで解決できた事例です。
最後に、相続放棄の失敗例についてよくある質問をまとめました。
自分の状況に近いものがあれば参考にしてください。
A.一般的な費用の相場は、亡くなられた被相続人1人に対して相続放棄される方1人あたり3万円~10万円程度ですが、事案の複雑さによって変動します。
主に、放棄する人数・手続きの難易度によって工数が異なります。
基本報酬のほかにも、戸籍謄本の取得費用や郵送代などの実費が数千円~数万円かかるのが一般的です。
契約前の見積もりで、どこまでの範囲が含まれるかの内訳をしっかり確認するのをおすすめします。
A.弁護士に依頼すれば、申述書の作成から裁判所への提出、照会書への対応まで代行してくれます。
弁護士は法的な代理権を持つため、書類作成代行にとどまらず裁判所とのやり取り全般までカバーが可能です。
そのほか、債権者からの督促への対応アドバイスなどの心理的負担を軽減するサポートも受けられます。
どの範囲までサポートしてもらいたいかは、弁護士にあらかじめ相談しておくとスムーズです。
A.原則として、受取人が指定されている死亡保険金や遺族年金は相続放棄をしたあとでも受け取りが可能です。
受取人が指定されている死亡保険金や遺族年金は、受取人本人の固有の権利であり、亡くなった人の相続財産には該当しません。
ただし、保険の受取人が亡くなった本人に設定されている場合は例外とされ、死亡保険金や遺族年金を受け取れない可能性があります。
また、自己判断で受け取ると遺産の処分とみなされるおそれもあります。
死亡保険金や遺族年金を受け取るときは、必ず保険会社や弁護士へ確認するのが賢明です。
A.法律上の条件を満たしていないと判断された場合、却下されるリスクは十分にあります。
相続放棄は時間制限もタイトのため、なかなかやり直しのきかない厳格な手続きであり、禁止行為や書類の不備があると認められません。
具体的には、3ヵ月の期限超過・照会書の無視・遺産の売却や消費といった行為が却下される主な原因です。
相続放棄の却下を避けるためにも、速やかに弁護士へ相談して正確な書類作成と裁判所での手続きを進めましょう。
A.状況によっては、期限後でも相続放棄できる場合があります。
ただし、「知らなかった」という理由だけでは認められません。
なぜ期限内に知ることができなかったのか、やむを得ない事情を具体的に裁判所へ説明する必要があります。
また、すでに相続財産に手をつけている場合は単純承認とみなされ、相続放棄が認められない可能性があります。
期限を過ぎていると気づいた段階で、すぐに弁護士へ相談することをおすすめします。
A.相続放棄を検討している場合、原則として遺品整理や大掛かりな清掃はおこなえません。
遺品を処分・分配する行為は、単純承認(相続を承認したこと)とみなされる可能性があります。
家にある家具や物品整理は、相続放棄後まで待つのが基本です。
ただし、生ゴミなどの腐敗物は撤去しなければ周囲に被害が及ぶため、大家や近隣の住民から対応を求められる場合も増えていますが、最低限の対応まで認められる場合があります。
ただ、どこまで動くべきかの自己判断は難しいので、動き出す前に必ず弁護士に確認しましょう。
相続放棄で失敗しないために、特に押さえておくべきポイントは以下の3つです。
なお、すでに期限を過ぎてしまった・遺産に少し手をつけてしまった場合でも、諦める必要はありません。
特殊な事情があると認められれば、期限後でも相続放棄が受理されたケースは実際にあります。
大切なのは、一人で抱え込まずに早めに専門家へ相談することです。
自己判断で動いた結果、取り返しのつかない状況になるリスクを避けるためにも、少しでも不安を感じた段階でプロの力を借りましょう。
相続放棄に強い弁護士を探すときは、ベンナビ相続の利用がおすすめです。
初回無料相談に対応している事務所も多いので、まず自分の状況を専門家に話すところから始めましょう。
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