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相続放棄のメリット・デメリット|注意点やトラブル・その他の選択肢は?

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相続の際、親の遺産の中に借金があることがわかって、相続放棄を検討している方なども多いのではないでしょうか。

相続放棄では、プラスの財産・マイナスの財産に関わらず、全ての遺産を放棄することになるため、「本当に相続放棄をしてもよいのかな…」と迷ってしまいますよね。

本記事では、相続放棄を迷っている方に向けて、相続放棄のメリット・デメリットを解説します。

あわせて、相続放棄をするべきかどうかの判断基準や、そのほかの選択肢なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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この記事に記載の情報は2024年11月29日時点のものです

相続放棄のメリット3つ

相続放棄の主なメリットには、以下のようなものがあります。

  • 被相続人の借金を相続せずに済む
  • 相続トラブルに関わらずに済む
  • 遺産分割手続きの手間が省ける

1.被相続人の借金を相続せずに済む

相続放棄の最も大きいメリットは、被相続人の借金を相続せずに済むことです。

通常の相続では、被相続人に借金があった場合、相続人間で法定相続分に従って均等に引き継ぐことになります。

ここでいう「引き継ぐ」とは、被相続人の状態をそのまま受け入れるということを指し、借金の返済が滞っているような場合は遅延損害金も一緒に引き継ぐ必要があります。

そのようなケースでは、引き継いだあとは債権者から返済を迫られることになりますが、相続放棄をすればこうした煩わしさから抜け出すことができます。

2.相続トラブルに関わらずに済む

相続放棄をすると「そもそも相続人ではなかった」という扱いとなるため、相続に関わる揉め事や権利関係から離れられるのもメリットといえます。

相続に関連して親族間で揉め事が生じた場合、相続人でなくなれば一切関係なくなりますし、連絡自体も受けなくて済むようになります。

3.遺産分割手続きの手間が省ける

遺産相続をおこなう際は、相続人同士で遺産分割協議をおこなったり、協議不成立の場合は調停や審判などにも対応したりする必要があります。

相続放棄をすればこれらの手続きに対応する必要がなくなり、相続手続きの手間が省けるという点もメリットです。

相続放棄のデメリット5つ

相続放棄の主なデメリットには、以下のようなものがあります。

  • 全ての遺産が相続できなくなる
  • 相続放棄すると撤回や取り消しはできない
  • 相続権が移行することでトラブルになる可能性がある
  • 死亡保険金や死亡退職金の非課税枠は利用できない
  • 相続放棄を申し立てても無効になるケースもある

1.全ての遺産が相続できなくなる

相続放棄をすると相続権が失われ、被相続人の資産や負債などは一切相続することができません

たとえば、被相続人が親で同居していた場合、相続放棄をしたら同居していた家からは退去しなくてはならなくなるでしょうし、テレビや電化製品なども被相続人の所有物であれば勝手に持ち出すことはできません。

2.相続放棄すると撤回や取り消しはできない

一度相続放棄をすると、原則として撤回や取り消しはできません

ほかの相続人から「財産はない」と言われていたのに実はあった場合や、「勘違いして相続放棄してしまった」というような場合でも、撤回や取消ができないこともあります。

そのため、十分に財産調査などをおこない、遺産状況を全て把握してから判断することが大切です。

相続放棄の取り消しについて詳しく知る

3.相続権が移行することでトラブルになる可能性がある

相続放棄をすると、相続放棄した人は「はじめから相続人ではなかった」とされ、次順位の相続人に相続の権利が移ります。

たとえば、被相続人である父親の相続財産に借金が含まれていて、相続人である自分が相続放棄をした場合、祖父母が生きていれば祖父母が相続人になります。

そのようなケースでは、祖父母が借金の存在を知らずに相続してしまったり、遺品を処分することで単純承認となってしまったりして、トラブルに発展する可能性もあります。

相続放棄をする際は、可能な限りほかの相続人への配慮も必要になるでしょう

法定相続人の範囲について詳しく知る

4.死亡保険金や死亡退職金の非課税枠は利用できない

死亡保険金や死亡退職金は相続税の課税対象となりますが、相続税には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。

相続放棄をしても死亡保険金や死亡退職金を受け取ることはできるものの、上記の非課税枠が適用されません。

したがって、相続放棄することで多くの相続税がかかってしまうおそれがあります

5.相続放棄を申し立てても無効になるケースもある

相続放棄を申し立てて裁判所で受理されても、その後の行動によっては相続放棄が無効となる場合もあります。

たとえば、被相続人の相続財産を使用したり処分したりすると、単純承認」として相続を承認したものとみなされることがあります

特に被相続人と同居していた場合などは、細心の注意が必要となるでしょう。

相続放棄の際にやってはいけないことについて知る

相続放棄をするかどうかの判断基準

相続放棄をすると相続人ではなくなるので、被相続人の借金も背負わずに済みます

ただし、プラスの財産も一切引き継ぐことができなくなります。

借金があるからといって安易に相続放棄を選択すると、後悔することもあります。

相続放棄を選択する前に、以下のポイントを押さえておきましょう。

プラスの財産とマイナスの財産はどれだけあるか

相続放棄をするかどうか決める際は、「借金の額や資産の額はどれだけか」「相続財産の中に思い入れのあるものはあるか」などを確認しましょう。

借金の額が多過ぎると、たとえプラスの財産を相続しても、自分の資産で補ってもどうにもならないという状態に陥ってしまいます。

そうなると自分の経済的状況が悪化し、日々の生活が苦しくなってしまいます。

借金の額が多くても資産も多ければ、資産から借金を返済することが可能になります。

たとえば、相続したプラスの財産の中から不動産を売却するなどして、その売却代金で借金を返済することもできます。

借金の額だけでなく、資産の額とのバランスをみることが大切です。

また、被相続人の資産の中に思い入れのある美術品や家宝などがある場合には、相続放棄すると心残りに感じてしまうこともあるかもしれません。

このような場合は、相続放棄以外の方法を検討しましょう。

限定承認などの相続手続きも検討する

借金を継がずに済む方法として、相続放棄のほかに限定承認という選択肢もあります。

相続放棄では「マイナスの財産もプラスの財産も一切引き継がない」というのに対して、限定承認は「プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ」という相続方法です。

ただし、相続放棄の場合は家庭裁判所に申立てをすればおこなえますが、限定承認では相続人全員の同意が必要になります。

そのため、相続人の中で1人でも限定承認を拒否する人がいたり、連絡がつかない人がいたりする場合には、選択することが困難な手段でもあります。

したがって、相続財産についてマイナスのほうが多いのが明らかで、とても返済できる金額ではない場合や、手放したくない財産が特にない場合などは、相続放棄を選択するのがよいでしょう。

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄をする際は、基本的に以下のようなスケジュールで進めましょう。

  1. 相続財産調査をおこなう|~1ヵ月
  2. 相続放棄の必要書類を準備する|~2ヵ月
  3. 家庭裁判所にて相続放棄の申し立てをする|~2ヵ月半
  4. 相続放棄申述受理通知書が届く

相続放棄では「相続の開始を知ったときから3ヵ月以内」に、家庭裁判所へ申述する必要があります。

期限を過ぎてしまうと単純承認とみなされてしまうので、余裕を持ったスケジュールで進めるとよいでしょう。

ここでは、主な手続きの流れについて解説します。

1.相続財産調査をおこなう|~1ヵ月

まずは相続財産全体について財産調査をおこない、ここで相続放棄するかどうかを決めましょう。

相続放棄の申述書には、財産状況について記載する項目があるうえ、もし相続する場合には遺産分割協議書を作成する際に財産の一覧について記載が必要になります。

相続放棄をするしないにかかわらず、まずは財産に関する調査をおこないましょう。

財産に関する調査では、被相続人名義の預貯金がわかる通帳や、定期預金などをしている場合は証書、不動産を所有しているかどうかについては登記簿謄本などから判断可能です。

もし直接財産状況を知るのが難しい場合は、被相続人に関係の深い相続人に聞いてみる、銀行の取引履歴を請求するなどの方法があります。

2.相続放棄の必要書類を準備する|~2ヵ月

財産調査の結果、相続放棄をすると決めた場合は相続放棄に必要な書類を準備します

家庭裁判所のホームページに詳細な記載がありますが、相続放棄では主に以下のような書類が必要です。

なお、被相続人との続柄によっては追加の書類が必要になることもあるため、よく確認しておきましょう。

相続放棄の必要書類は以下のとおりです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本 など

被相続人の戸籍は、出生から死亡までの全てのものが必要となります。

特に遠方の場合は郵送で請求したりして入手するまでに時間がかかるため、早めに請求しておくとよいでしょう。

3.家庭裁判所にて相続放棄の申し立てをする|~2ヵ月半

必要書類が準備できたら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続放棄の申し立てをおこないます。

提出書類に不備があったりすると期限内に間に合わないこともあるため、なるべく早めに提出しましょう。

必要に応じて家庭裁判所から連絡が来ることもあり、その場合は指示に従ってください。

期限内の手続きが困難な場合は期間伸長の申立てをする

もし特別な事情があって相続放棄の期限を過ぎてしまいそうな場合は、速やかに「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書」を家庭裁判所に提出しましょう。

書類を提出して裁判所に認められれば、相続放棄の熟慮期間を延長することができます。

ただし、必ずしも期間の延長が認められるわけではないため、いずれにせよ余裕を持って手続きを進めておくことが大切です。

4.相続放棄申述受理通知書が届く

家庭裁判所の審査を経て、相続放棄が認められると「相続放棄申述受理通知書」が届きます。

なお、相続放棄の申述をしても「単純承認をした」と認められるような行為をしていた場合には、相続放棄が認められません。

また、相続放棄申述受理通知書に似た書類として、相続放棄申述受理証明書というものもあります。

相続放棄申述受理証明書は、不動産の相続登記をおこなう際などに必要になる書類なので、必要に応じて発行しておきましょう、

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相続放棄にかかる費用

相続放棄をおこなう際は費用がかかります

ここでは、相続放棄にかかる費用について、手続きを自分でおこなう場合と専門家に依頼する場合に分けて解説します。

相続放棄を自分でおこなう場合の費用

相続放棄手続きを自分でおこなう場合の費用は、相続人1人につき約3,000円が目安となります。

相続放棄手続きの費用内訳は以下のとおりです。

  • 相続放棄申述書に添付する印紙代:800円
  • 被相続人の戸籍謄本:450円(被相続人の配偶者が申請する場合は不要)
  • 被相続人の除籍謄本・改製原戸籍謄本:750円
  • 被相続人の住民票:300円程度(市区町村によって異なる)
  • 申述人の戸籍謄本:450円
  • 郵便切手代:500円程度(裁判所によって異なる)
  • その他(交通費など)

相続放棄を司法書士に依頼する場合の費用相場

相続放棄の手続きを司法書士に依頼する場合、かかる費用は以下のとおりです。

相続放棄の期限内に依頼する場合

相続放棄手続きにかかる司法書士費用は以下のとおりです。

  • 相談料:1時間あたり5,000円程度
  • 申述書作成代行費用:3,000円〜6,000円程度(戸籍謄本類の取得・実費含む)
  • 代行手数料:2万円~3万円程度
    ※金額はあくまでも目安です

相続放棄の期限後に依頼する場合

相続放棄手続きにかかる司法書士費用は以下のとおりです。

  • 相談料:1時間あたり5,000円程度
  • 申述書作成代行費用:3,000円〜6,000円程度(戸籍謄本類の取得・実費含む)
  • 代行手数料:3万円~5万円程度
    ※金額はあくまでも目安です

相続放棄を弁護士に依頼する場合の費用相場

相続放棄を弁護士に依頼する場合、かかる費用は以下のとおりです。

  • 相談料:1時間あたり5,000円~1万円程度(初回相談無料の事務所もある)
  • 申述書作成代行費用:5,000円〜1万円程度(戸籍謄本類の取得・実費含む)
  • 代行手数料:5万円~10万円程度
  • 成功報酬:なし
    ※金額はあくまでも目安です

ただし、依頼先事務所などによっても金額にはバラつきがあるため、正確な金額を知りたい方は直接事務所に確認しましょう。

まとめ|相続放棄で迷ったら弁護士に相談を

相続放棄は、生前に被相続人が多額の負債を抱えていた場合などには有効な手段です。

ただし、注意点として相続権が移行することで相続問題が起きることもありますし、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が利用できないなどのデメリットもあります。

また、相続放棄をしてしまうと原則として取り消すことはできません。

弁護士であれば、必要書類の準備作成・相続放棄の手続き・裁判所の出廷・相続トラブルの解決など相続手続きの大部分に対応しており、相続放棄で悩んでいる方にとって心強い味方になってくれます。

当サイト「ベンナビ相続」では相続放棄が得意な全国の弁護士を掲載しており、初回相談無料の法律事務所なども多くあるので一度相談してみることをおすすめします。

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この記事の監修者
グリーンクローバー法律会計事務所
日下 貴弘 (東京弁護士会)
税理士資格を持っており、「相続に強い弁護士」として、遺産分割の問題/遺留分侵害額請求の問題/遺言の有効性の問題/相続の生前対策など、相続に関する問題を数多く扱っています。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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