ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ) > 相続コラム > 相続放棄 > 相続放棄の取消しはできる?できない?その条件と方法
更新日:

相続放棄の取消しはできる?できない?その条件と方法

注目 相続放棄に関する弁護士相談をご検討中の方へ
電話・メールOK
夜間・休日も対応
累計相談数
9万件超
相続放棄が得意な
弁護士から探せる
相続放棄が得意な
弁護士を探す

被相続人の借金や相続人同士のトラブルなどで「相続放棄するかどうか迷っている」という方は多いのではないでしょうか。

「相続放棄した場合、あとから取消しはできるのか」などと考えている方もいるでしょうが、相続放棄は簡単には取消しできず、取消しが認められるケースは限られています

また、相続放棄の取消しが可能なケースでも、期限内に手続きを進めなくてはなりません。

相続放棄の取消しを成功させたい場合は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

本記事では、相続放棄の取消しが認められるケースや、取消し手続きの流れ、相続放棄の取消しによるトラブルを避けるためのポイントなどについて解説します。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
相続放棄に強い弁護士を探す

相続放棄の取消し・撤回は原則として認められない

相続放棄を申し立てたあとに「やっぱり相続したい」などと思っても、相続放棄は基本的に取り消せません

相続放棄の取消し・撤回が認められると相続関係が複雑化し、ほかの相続人達が想定外の損害を被る可能性があるからです。

(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)

第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。

引用元:民法第919条

何らかの特別な事情があれば家庭裁判所が相続放棄の取消しを受理してくれることもありますが、これは非常にまれなケースです。

したがって、相続放棄するかどうかは慎重に判断する必要があります。

相続放棄の申述が受理される前の「取下げ」はできる

「相続放棄の取下げ」とは、相続放棄の申述が裁判所に受理される前に取下げることです。

相続放棄の申述が裁判所に受理されるまでには約1ヵ月かかり、その期間内であればいつでも取下げることができます

(家事審判の申立ての取下げ)

第八十二条 家事審判の申立ては、特別の定めがある場合を除き、審判があるまで、その全部又は一部を取り下げることができる。

引用元:家事事件手続法第82条

相続放棄の申述を取り下げるには、取下書という書類を家庭裁判所に提出します。

申述が受理されたあとでは取下げができなくなるため、取下げを考えている場合は速やかに手続きを進める必要があります。

相続放棄の取消しが例外的に認められる3つのケース

ここでは、相続放棄の取消しが例外的に認められるケースについて解説します。

2 前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。

引用元:民法第919条

1.制限行為能力者が単独で相続放棄をした

制限行為能力者とは、判断能力に問題があるために、自己の意思だけで契約や法律行為をおこなうことを制限されている人を指します。

たとえば、次のような人たちが制限行為能力者に該当します。

  • 未成年者
  • 成年被後見人
  • 被保佐人
  • 被補助人

制限行為能力者が相続放棄するためには、それぞれの制限行為能力者が以下のような特定の対象から同意や許可を得なければなりません

制限行為能力者

同意や許可を得る対象

未成年者

親権者または未成年者後見人の同意

成年被後見人

成年後見人の同意

被保佐人

保佐人の同意または家庭裁判所からの許可

被補助人

補助人の同意または家庭裁判所からの許可

相続放棄の申立ては、法律行為に当たります。

そのため、制限行為能力者が同意や許可を得ることなく単独で相続放棄をおこなう場合、例外的に相続放棄を取り消すことができるのです。

2.錯誤・誤解によって相続放棄をした

あとから相続財産について重大な錯誤・誤解があったことが判明した場合、相続放棄の取消しが認められる可能性があります。

たとえば「被相続人に多大な負債があって相続放棄を決めたものの、そのあとに負債をはるかに上回る資産が見つかった」というようなケースです。

ただし、重大な錯誤があったからといって必ずしも相続放棄の取消しが認められるわけではなく、以下のような点を考慮したうえで総合的に判断されます。

  • 錯誤した事情が相続放棄申述書に明記されていること
  • 錯誤が相続放棄の意思決定に重大な影響を及ぼしたこと
  • 相続放棄者による調査などに重大な過失がなかったこと

ただし、上記について証明するのは容易ではなく、過去の判例でも微細な判断が求められています。

相続放棄が取消されるとほかの相続人に損害が及ぶ可能性があることから、裁判所も慎重に判断するため、簡単には認めてもらえないと考えたほうがよいでしょう。

3.詐欺や強迫によって相続放棄をした

相続人のひとりが、財産を独占する目的でほかの相続人を騙したり脅したりして相続放棄させた場合、あとから取消しできる可能性があります。

たとえば「相続放棄をしないと家に火をつけるぞ」と恐怖を与えられたり、「被相続人に莫大な借金がある」と嘘をつかれたりした、というようなケースです。

このようなケースでは、相続人が自身の本意とは異なる選択によって相続放棄をしているため、あとから相続放棄の取消しが認められます
ただし、実際に詐欺や強迫がおこなわれた事実については、証明しなければならないため、やり取りの履歴などについては、証拠として残しておきましょう。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
相続放棄に強い弁護士を探す

相続放棄の取消し手続きの流れ|3つのステップ

相続放棄の取消し手続きをおこなう際は、家庭裁判所に申述する必要があります。

4 第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

引用元:民法第919条

ここでは、相続放棄の取消し手続きの流れを解説します。

1.必要書類を家庭裁判所に提出する

相続放棄取消申述書に必要事項を記載したうえで、以下とあわせて家庭裁判所へ提出します。

  • 相続放棄する方の戸籍謄本
  • 800円の収入印紙
  • 返信用の郵便切手

2.家庭裁判所にて取消しの審理がおこなわれる

必要書類を提出したあとは、家庭裁判所で相続放棄の取消しを認めるかどうかの審理がおこなわれます。

この審理では、相続放棄の取消し手続きをおこなった経緯や事情を確認するために家庭裁判所から呼び出しを受けたり、郵便で質問状が届いたりすることもあります。

なお、家庭裁判所から呼び出された場合、弁護士に同席してもらうこともできるため、きちんと事情を説明できるか不安な方は弁護士に依頼しましょう。

3.家庭裁判所にて相続放棄取消申述が受理される

相続放棄の取消しが認められると「はじめから相続放棄はおこなわれなかった」という扱いになり、遺産を相続する権利が戻ります。

ただし、すでに進行している遺産分割や相続財産の処分などまで取消せるわけではありません。

遺産分割をやり直したり財産の引き渡しを受けたりするためには、ほかの相続人に協力してもらう必要があります。

もし協力が得られず遺産を受け取れなければ、遺産分割調停などで争うことになる場合もあります。

相続放棄の取消しトラブルを避けるための3つのポイント

相続放棄の取消しを認めてもらうのは簡単ではなく、たとえ認められたとしても思うように相続が受けられないおそれがあります。

ここでは、誤った判断で相続放棄することなく、相続放棄の取消しトラブルを避けるために覚えておくべきポイントを解説します。

1.相続財産の調査をしっかりとおこなう

相続財産については、弁護士や司法書士などに依頼して詳しく調べてもらうことをおすすめします。

資産や借金などの状況を正確に把握しておくことで、相続放棄すべきかどうか適切に判断でき、トラブルを防げます。

注意点として、30万円〜100万円程度の依頼費用がかかります。

ただし、相続放棄には「被相続人が亡くなったことを知ってから3ヵ月以内」という期限があり、相続放棄するかどうか速やかに判断する必要があります。

判断を誤って後悔しないためにも、自力での対応が不安であれば弁護士などに依頼しましょう。

2.相続放棄の期間伸長を申し立てる

「相続財産調査が思ったように進まない」などの理由で、相続放棄の期限内に判断することが難しい場合、期間を伸ばしてもらうよう裁判所に申し立てることができます。

申し立てが認められた場合、1ヵ月~3ヵ月程度期間が延長されます。

3.相続問題が得意な弁護士に相談する

相続問題が得意な弁護士に相談すれば、相続放棄すべきかどうかアドバイスしてくれます。

なお、司法書士や税理士などの士業と同様に、弁護士にも得意分野があります。

全ての弁護士が相続問題を得意としているわけではなく、相続問題の解決実績が少ない弁護士に相談すると的確なアドバイスが得られない可能性があります。

全国の弁護士を検索できるポータルサイト「ベンナビ相続」であれば、相続問題を得意とする弁護士を地域別などで一括検索できます。

無料相談や休日相談の可否などで弁護士検索できる機能もあり、相続問題について相談する弁護士を探す場合はベンナビ相続がおすすめです。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
相続放棄に強い弁護士を探す

相続放棄の取消し手続きをする際の注意点

ここでは、相続放棄の取消し手続きをする際の注意点について解説します。

相続放棄の取消し手続きは期限内におこなう必要がある

相続放棄の取消し手続きは、民法で定められた以下いずれかの期限内におこなわなければなりません。

  • 追認が可能になった日から6ヵ月以内
  • 相続放棄した日から10年以内

3 前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。

引用元:民法第919条

追認が可能になった日」とは、取消しの理由となる事情が解消され、かつ取消しができることを知った日のことです。

たとえば、詐欺によって相続放棄させられた場合は、詐欺であることが判明して取消しができることを知った日となります。

遺産分割協議などの手続きはやり直す必要がある

相続放棄の取消しが受理されたあと、相続財産の引き渡しを受けるためには、遺産分割協議などの手続きをやり直す必要があります。

遺産分割協議をやり直したり財産を渡してもらったりするためには、ほかの相続人に協力してもらわなければならず、もし協力してもらえない場合は裁判などで争うことになります。

必ずしも相続放棄の取消しが認められるわけではない

相続放棄の取消しが認められるケースはあるものの非常にまれであり、困難な手続きといわざるを得ません。

相続放棄を取消すべき理由があっても、それを証明する資料を提出しなければなりませんし、資料が用意できたとしても、相続放棄の意思決定に重大な影響を及ぼしたことなどを証明することは容易ではありません。

これらのハードルをクリアして相続放棄の取消しを受理してもらうためにも、相続問題を得意とする弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

また、「相続放棄するべきかどうか迷っている」という方も、相続放棄の申立てをする前に弁護士へ相談することをおすすめします。

さいごに|相続放棄の取消しなどで悩んでいるなら弁護士に相談しよう

相続放棄の取消しは、原則として認められていません

「重大な錯誤・誤解によって相続放棄してしまった」などの場合、例外的に相続放棄の取消しが認められることもありますが、その際は相続放棄を取消すべき事情があることなどを主張しなければいけません。

自身で手続きをおこなうのが不安であれば、相続問題が得意な弁護士にサポートしてもらいましょう

「ベンナビ相続」では、相続問題が得意な弁護士を都道府県別・主要都市別で検索でき、無料相談や休日相談の可否などの条件を指定して検索することもできます。

相続放棄に関する不安があれば、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
相続放棄に強い弁護士を探す
この記事をシェアする
この記事の監修者
みとみらい法律事務所
後藤 直樹 (茨城県弁護士会)
弁護士歴30年以上。遺産分割や中小企業の跡継ぎトラブルまで、幅広い相続問題に対応。また、分割が複雑な不動産も長年の弁護士経験から他士業との連携を活かし、トータルサポートで問題の解決へと導く。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

相続放棄に関する人気コラム

相続放棄に関する新着コラム

ベンナビ相続
相談内容から弁護士を探す
相談員

相談内容を選択してください

金アイコン
もらえる慰謝料を増額したい方
弁護士の方はこちら
損をしない相続は弁護士にご相談を|本来もらえる相続対策も、弁護士が適正に判断|あなたの状況に合った損をしない解決方法を、遺産相続に強い弁護士がアドバイスいたします。|お問い合わせ無料