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相続人廃除とは|要件・手続き方法・廃除できる相続人の範囲を解説

弁護士法人ベストロイヤーズ法律事務所
大隅 愛友
監修記事
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相続の際、以下のような理由で「どうしても財産を渡したくない相続人がいる」ということもあるでしょう。

  • 子どもから暴力や暴言を受けている
  • 子どもが介護の世話をしてくれない
  • 配偶者が長年浮気をしていた
  • 親族の借金を肩代わりさせられた
  • 犯罪を犯した親族がいる など

相続させたくない相続人がいる場合、相続人廃除という制度を利用すれば相続権を剥奪することができます

ただし、相続人廃除を利用するためには一定の要件を満たしている必要があり、所定の手続きも踏まなければいけません。

この記事では、相続人廃除の要件や手続きなどの基本的な知識のほか、相続人廃除を取り消す方法や弁護士に依頼するメリットなども解説します。

相続人廃除を検討している人は参考にしてください。

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自分の遺産を相続させたくない人がいて、どうしたら遺産を残さずに済むか悩んでいませんか?

 

結論からいうと、相続人廃除をおこなえば、相続させたくない人から相続権をはく奪することができます。しかし、相続人廃除の手続きは複雑なので、一度弁護士に相談しておくとよいでしょう。

 

弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを得ることができます。

  • 相続人廃除の対象となるか判断してもらえる
  • 相続人廃除以外に遺産をできるだけ減らす方法を教えてもらえる
  • 遺言書の作成についてアドバイスをもらえる
  • 依頼すれば、相続人廃除や遺言の作成を任せられる

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相続人廃除の基本的な内容

まずは、相続人廃除の制度内容について解説します。

相続人廃除とは|相続人廃除されるとどうなる?

相続人廃除とは、相続人が持っている相続権を剥奪する制度のことです。

(推定相続人の廃除)

第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

引用元:民法第892

相続人廃除がおこなわれると、その対象者は被相続人(亡くなった人)の遺産を相続することができません。

なお、あくまでも相続権を失うのは「相続人廃除された対象者本人」に限られます

対象者の子どもや孫などは、相続権を失った対象者の代わりに相続できます。

相続人廃除の対象者

相続人廃除の対象者になるのは、以下のような遺留分を持っている推定相続人に限られます。

推定相続人とは「被相続人が亡くなったあとに相続人になるはずの人」のことで、遺留分とは「相続の際に最低限もらえる取り分」のことです。

  • 被相続人の配偶者(夫・妻)
  • 被相続人の直系卑属(子ども・孫)
  • 被相続人の直系尊属(父母・祖父母)

なお、被相続人の兄弟姉妹は遺留分を持っておらず、相続人廃除の対象にはなりません

もし兄弟姉妹に財産を渡したくない場合は、兄弟姉妹以外に全財産を相続させる旨を遺言書に記載しておけば渡さずに済みます。

相続人廃除できるのは被相続人のみ

相続人廃除ができるのは被相続人だけで、配偶者や子どもなどはできません民法第892条)。

たとえば、被相続人と子どもの関係性が悪いことを理由に、子どもに財産が渡らないように被相続人の配偶者が相続人廃除を申し立てようとしても、認められません。

相続人廃除が認められる要件

相続人廃除には要件が定められており、以下のいずれかを満たしている必要があります(民法第892条)。

  • 被相続人に対して虐待をした
  • 被相続人に対して重大な侮辱を加えた
  • 推定相続人による、その他の著しい非行があった

なお、上記の要件を満たしているだけでは足りず、裁判所にて「相続人廃除が相当である」と認めてもらわなけなければいけません

そのためには、裏付けとなる証拠を準備して、対象者の問題行為が相当な程度であったことを主張することになります。

「被相続人に対する虐待」に該当するケース

相続人廃除の要件としての「虐待」とは、身体的な暴力だけでなく、精神的苦痛を与える行為なども該当します。

具体例としては以下のとおりです。

  • 日常的に殴る・蹴るなどの暴力を振るっていた
  • 日常的に「死ね」「生きている意味がない」などの暴言を吐いていた
  • 介護が必要な状態であるにもかかわらず世話をしなかった
  • 生活費を与えなかった など

なお、虐待を理由に相続人廃除が認められるかどうかは、虐待の程度・頻度・被相続人の責任の有無・家庭の状況などを総合的に考慮したうえで判断されます。

「被相続人に対する重大な侮辱」に該当するケース

ここでの「重大な侮辱」とは、被相続人の名誉や感情を害する行為・被相続人の自尊心を傷つける行為のことです。

具体例としては以下のとおりです。

  • 日常的に被相続人の人格を否定する発言していた
  • 被相続人の重大な秘密を暴露した など

なお、重大な侮辱を理由に相続人廃除が認められるかどうかについても、侮辱をするまでの経緯・程度・頻度・被相続人の責任などを総合的に考慮したえうえで判断されます。

「推定相続人による、その他の著しい非行」に該当するケース

「その他の著しい非行」に該当するものとしては以下のとおりです。

  • 犯罪をして有罪判決を受けた
  • 被相続人に借金を肩代わりさせた
  • 浪費を繰り返した
  • 被相続人の財産を勝手に処分した など

これらの行為によって、被相続人が「虐待」や「重大な侮辱」と同程度の精神的苦痛を受けた場合、相続人廃除が認められる可能性があります。

相続人廃除が認められると戸籍に記載される

裁判所にて相続人廃除が認められた場合、市区町村役場に届け出をおこなうことになります。

その際、対象者である相続人の戸籍には、相続権が剥奪された旨が記載されます。

戸籍は、法定相続人を確認するうえで大切な資料です。

相続人廃除の事実が記載されていれば、相続時に誤って相続人として取り扱われるような事態を避けられるため、戸籍に記載されるようになっているのです。

相続人廃除が認められると遺留分は請求できない

相続人廃除が認められると、対象者は相続人としての地位自体を失うことになります。

通常、遺言内容が「全財産を相続人の一人だけに相続させる」というような不公平な内容の場合、ほかの相続人は自身の遺留分を請求できます。

しかし、相続人廃除の対象者は相続権を剥奪されているため、遺留分を請求することができません

相続人廃除が認められても代襲相続はできる

相続では、すでに相続人が亡くなっていたりして財産を受け取れない場合、代わりに相続人の子どもや孫が受け取れる「代襲相続」という制度があります。

相続人廃除の場合も代襲相続の対象となります。

もし相続人廃除の対象者に子どもや孫がいる場合、子どもや孫は財産を受け取ることができます

相続人廃除の手続き方法

相続人廃除の手続きは、「生前廃除」と「遺言廃除」の2種類あります。

生前廃除の場合、被相続人が存命中に家庭裁判所へ申し立てます。

一方、遺言廃除の場合、被相続人が亡くなったあとに遺言執行者が家庭裁判所へ申し立てます。

ここでは、それぞれの手続きの流れを解説します。

生前廃除の流れ|被相続人が生きている間におこなう場合

生前廃除の場合、以下のような流れで手続きを進めます。

①申立書を作成する

まずは、家庭裁判所にて「推定相続人廃除の審判申立書」を入手します。

申立書には、相続人廃除を求める具体的な理由を記入し、裏付けとなる資料なども添付します。

ただし、ケースによって記載すべき内容は異なります。自力で作成できるか不安な場合は、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

以下は申立書の記載例ですが、あくまでも参考程度に留めてください。

【推定相続人廃除の審判申立書の作成例】

推定相続人廃除の審判申立書

令和●年●月●

申立人 山田太郎

当事者の表示

本籍 東京都新宿区新宿●●●●―●
住所 〒●●●−●●●●
東京都新宿区新宿●●●●―●
申⽴⼈ 山田 太郎(昭和●●年●⽉●⽇⽣)

本籍 東京都新宿区新宿●●●●―●
住所 〒●●●−●●●●
東京都新宿区新宿●●●●―●
相⼿⽅ 山田 一郎(平成●●年●月●日生)

申立の趣旨

相手方が申立人の推定相続人であることを廃除する審判を求める

申立の理由

1.申立人は、20年来、飲食店を経営している

 

2.相手方は、申立人の長男である。5年前からギャンブルを頻繁におこなうようになり、多大な借金を作った。申立人は相手方に再三注意をしたが、改善しなかった。相手方は借金を返済せず、暴力を用いて申立人に代わって返済するように求めた。実際に申立人は返済をした。このような相手方には財産を相続させることもできない。

 

3.よって、相手方を申立人の推定相続人から廃除するため、本申立に及んだ。

添付書類(略)

 

②家庭裁判所へ申し立てる

次に、以下の書類を準備して、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。

申し立て先の家庭裁判所は「裁判所の管轄区域|裁判所」を確認してください。

  • 相続廃除申立書:家庭裁判所で入手
  • 被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地のある市区町村役場で入手
  • 相続人廃除の対象者の戸籍謄本(全部事項証明書) :本籍地のある市区町村役場で入手

③家庭裁判所で審判がおこなわれる

書類提出後は、家庭裁判所にて相続人廃除を認めるかどうかの審判がおこなわれます。当日は、申立人と相続人廃除の対象者が、それぞれ相続人廃除の理由などについて主張・立証します。裁判所は総合的な事情を考慮したうえで、相続人廃除を認めるか否定するか判断します。

④市区町村役場へ届け出る

相続人廃除が認められた場合は、確定日から10日以内に以下の書類を準備して、被相続人の戸籍がある市区町村役場に届け出ます。届け出が完了した時点で、対象者の相続権が剥奪されます。

  • 推定相続人廃除届:市区町村役場で入手
  • 審判書の謄本:家庭裁判所で入手
  • 審判の確定証明書:家庭裁判所で入手

遺言廃除の流れ|被相続人が亡くなったあとにおこなう場合

遺言廃除の場合、以下のような流れで手続きを進めます。

①遺言書を作成する

まずは、被相続人が遺言書を作成し、相続人廃除を希望する旨を記載しておきます。

主な記載事項は以下のとおりです。

  • 誰を遺言執行者(相続人代表として相続手続きをおこなう者)にするのか
  • 誰の相続権を剥奪したいのか
  • なぜ相続人廃除を希望するのか

なお、遺言書は定められた方式で作成しなければならず、素人が自力で作成すると無効になってしまう恐れもあります。

不備のない遺言書を作成したいのであれば、弁護士に依頼することをおすすめします。

②家庭裁判所へ申し立てる

被相続人が亡くなったあとは、遺言執行者以下の書類を準備して、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。

申し立て先の家庭裁判所は「裁判所の管轄区域|裁判所」を確認してください。

  • 推定相続人廃除の審判申立書:家庭裁判所で入手
  • 被相続人の死亡について記載された戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地のある市区町村役場で入手
  • 相続人廃除の対象者の戸籍謄本(全部事項証明書) :本籍地のある市区町村役場で入手
  • 遺言書の写し・遺言書検認調書謄本の写し:家庭裁判所で入手
  • 遺言執行者選任の審判書謄本:家庭裁判所で入手

生前廃除と同様、遺言廃除でも「推定相続人廃除の審判申立書」を作成しなければいけません。

遺言執行者が弁護士の場合は問題ありませんが、相続人などが務めている場合は弁護士に依頼することをおすすめします。

③家庭裁判所で審判がおこなわれる

書類提出後は、家庭裁判所にて相続人廃除を認めるかどうかの審判がおこなわれます。

遺言廃除の場合、遺言執行者と相続人廃除の対象者が、それぞれ相続人廃除の理由について主張・立証することになります。

④市区町村役場へ届け出る

相続人廃除が認められた場合は、確定日から10日以内に以下の書類を準備して、被相続人の本籍地の市区町村役場に届け出ます。

届け出が完了すれば、対象者は「相続開始時点で相続権はなかったもの」として扱われます。

  • 推定相続人廃除届:市区町村役場で入手
  • 審判書の謄本:家庭裁判所で入手
  • 審判の確定証明書:家庭裁判所で入手

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相続人廃除は取り消すことができる

場合によっては、相続人廃除が決定したものの、状況が変わることもあるでしょう。

相続人廃除は被相続人の意思によっておこなうものであり、被相続人が希望すれば取り消すこともできます

相続人廃除を取り消すためには、家庭裁判所への申し立てが必要です。

被相続人が存命中であれば被相続人が家庭裁判所に申し立てて、被相続人が亡くなっている場合は遺言執行人が申し立てます。

申し立ての内容に問題がなければ、相続人廃除の取り消しについて審判が確定します。

そのあとは、確定日から10日以内に以下の書類を準備して、被相続人の本籍地の市区町村役場に届け出れば相続権が復活します。

  • 推定相続人廃除取消届:市区町村役場で入手
  • 審判書の謄本:家庭裁判所で入手
  • 審判の確定証明書:家庭裁判所で入手

相続人廃除と相続欠格の違い

相続人廃除に似た制度として「相続欠格」というものもあります。

相続欠格とは、相続人が以下のような相続欠格事由に該当する場合、相続権が剥奪されるという制度です。

(相続人の欠格事由)

第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。

一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

引用元:民法第891

相続人廃除と相続欠格は、どちらも「相続人が持つ相続権が剥奪される」という点は共通しています。

ただし、相続人廃除では被相続人が意思表示して裁判所に認められる必要があるのに対し、相続欠格では相続欠格事由に該当していれば自動的に相続権がなくなるという点で大きく異なります。

そのほかにも、相続人廃除と相続欠格は以下のような違いがあります。

【相続人廃除と相続欠格の違い】

項目

相続人廃除

相続欠格

被相続人の意思表示

必要

不要

裁判所での審判

必要

不要

取り消し

できる

できない

戸籍の記載

あり

なし

遺留分

なし

なし

代襲相続

あり

あり

相続人廃除が認められる確率

2020年には、相続人廃除や取り消しに関する申し立てが310件ありました。裁判所の統計によると、そのうち185件が既済であり、内訳としては「容認43件、却下80件、取下げ60件、その他2件」となっています。

上記の統計には、相続人廃除だけでなく相続人廃除の取り消しも含まれていますが、裁判所にて申し立てが認められる確率は約23%です。

裁判所に申し立てを認めてもらうためには、資料などを準備して的確に主張・立証しなければいけません。もし自力での対応が難しそうであれば、弁護士への依頼をおすすめします。

相続人廃除の裁判例|認められたケース・否定されたケース

ここでは、相続人廃除に関する裁判例を紹介します。

相続人廃除が認められた裁判例

まず、相続人廃除が認められたケースを紹介します。

「著しい非行があった」と判断されたケース

被相続人には養子縁組を結んでいた女性がおり、その女性は被相続人が10年近く入院や手術を繰り返していることを知っていながら、一切看病をしていませんでした。

その女性は、年1回程度インドネシアから帰国して被相続人から生活費を受け取ることはあったものの、看病のために帰国したことはなく、

被相続人が「体調が悪い」と訴えても無視したり、被相続人に対して訴訟を取り下げるよう長時間迫ったりするなどしたという事例です。

裁判所は、これら一連の行為について総合的に考慮し、民法第892条で定める著しい非行に該当すると判断して、相続人廃除が認められています。

参考
東京高裁 平成23年5月9日(Westlaw Japan 文献番号 2011WLJPCA05096002)

「重大な侮辱があった」と判断されたケース

被相続人の長男が、病気がちだった被相続人の生活の面倒を見ずに無視したり、「早く死ね、80まで生きれば十分だ」と罵倒するなどしたという事例です。

被相続人は、配偶者の相続を巡っても長男から脅迫を受けており、常に長男に対して恐怖心を抱いていました。

裁判所は、被相続人に対する重大な侮辱があったものといわざるをえないと判断して、相続人廃除が認められています。

参考
東京高裁 平成4年10月14日(Westlaw Japan 文献番号 1992WLJPCA10140002)

「重大な侮辱・虐待があった」と判断されたケース

被相続人には娘がおり、その娘は小学校・中学校・高校在学中に窃盗や万引きなどの非行を繰り返して、少年院に送致されていました。

さらに、犯罪歴のある暴力団員と結婚したり、被相続人は結婚に反対していたにもかかわらず、被相続人の名前を披露宴の招待状に印刷し、被相続人の知人達に配ったりするなどしたという事例です。

裁判所は、これら一連の行為によって被相続人は多大な精神的苦痛を受け、名誉を毀損されており、結果的に家族としての協同生活関係が破壊されて今後も修復が難しい状況であると判断して、相続人廃除が認められています。

参考
東京高裁 平成4年12月11日(Westlaw Japan 文献番号 1992WLJPCA12110002)

相続人廃除が否定された裁判例

次に、相続人廃除が否定されたケースを紹介します。

「被相続人にも非がある」と判断されたケース

被相続人が、息子と口論になった際に暴行を受けて全治5ヵ月の怪我を負ったうえ、侮辱するような言葉を吐かれたことで、「重大な侮辱・虐待に当たる」と主張して相続人廃除を申し立てたという事例です。

裁判所は、主張されている暴行の大部分は双方に責任があるうえ計画性もなく、紛争の規模も小さいことから重大な侮辱や虐待には該当しないと判断して、相続人廃除が否定されています。

参考
名古屋高裁 昭和61年11月4日(Westlaw Japan 文献番号 1986WLJPCA11041003)

「あくまでも一時的な行為に過ぎない」と判断されたケース

被相続人が、自身の背任行為を長男に刑事告訴されたことで、「重大な侮辱に当たる」と主張して相続人廃除を申し立てたという事例です。

裁判所は、長男の行為は被相続人に侮辱を加えているものの一時的な所業であり、そもそもの原因は背任行為をした被相続人側にあるため、相続人廃除における重大な侮辱には該当しないと判断して、相続人廃除が否定されています。

参考
東京高裁 昭和49年4月11日(Westlaw Japan 文献番号 1974WLJPCA04110003)

「請求内容に重大性がない」と判断されたケース

被相続人が、長男や長男の嫁から扇風機を投げつけられたり、暴行を受けて右手首裂傷などの怪我を負ったり、侮辱するような言葉を吐かれたりしたことで、「重大な侮辱・虐待に当たる」と主張して相続人廃除を申し立てたという事例です。

裁判所は、被相続人による「重大な侮辱・虐待に当たる」という主張は主観的判断によるものであり、行為に至るまでの経緯・内容・程度などを総合的に考慮すると、相続権を剥奪するほど重大なものではないと判断して、相続人廃除が否定されています。

参考
名古屋高裁 平成2年5月16日(Westlaw Japan 文献番号 1990WLJPCA05160003)

相続人廃除を検討しているなら弁護士に依頼を

相続人廃除は自力でおこなうこともできますが、基本的には弁護士に依頼したほうがよいでしょう。

特に法的書類の作成経験がない場合、書類不備に気付かず提出してしまったり、主張・立証が不十分で申し立てが却下されてしまったりする恐れがあります。

さらに、家庭裁判所での審判の際も、対象者が相続人廃除の要件を満たしていることを主張・立証しなければいけません。

弁護士に依頼すれば、依頼者の代わりに適切な申立書を作成してくれますし、審判の際も的確な主張・立証が望めます。

手続きの手間が省けるだけでなく、相続人廃除を認めてもらえる可能性も高まるため、依頼することをおすすめします。

最後に|相続人廃除が得意な弁護士を探すなら「ベンナビ相続」

相続人廃除をおこなえば、財産を渡したくない相手に相続させずに済みます。

ただし、相続人廃除は誰でも認められるものではなく、資料などを準備して的確な主張・立証をする必要があります。

弁護士であれば、個々の状況に応じて、相続人廃除の申し立てが認められるかどうかのアドバイスが望めますし、相続人廃除の手続きも依頼できます。

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大隅 愛友 (千葉県弁護士会)
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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