遺産分割協議書には特定の財産だけを記載しても構わないので、不動産の相続のみで作成するケースがあります。
しかし、一般的には相続財産すべてを記載することになり、不動産の相続手続きもあまり知られていないため、以下のような疑問が生じてくるでしょう。
取得時期が古い土地を相続すると、権利関係が複雑になっているケースもあるので注意してください。
本記事では、遺産分割協議書に不動産のみ記載する方法をわかりやすく解説します。
遺産分割協議書は不動産のみ記載しても問題ないので、遺産分割が全て決まっていなくても作成できます。
土地・建物の相続人だけ決まっており、相続登記だけでも進めておきたいときは、不動産のみ記載した遺産分割協議書を作成しても構いません。
なお、相続登記は2024年4月1日から義務化されるため、不動産の相続人が決まってから3年以内に登記申請しなかった場合、10万円以下の過料になる可能性があります。
遺産分割協議書に不動産のみ記載する場合、戸建て住宅と分譲マンションでは書き方が異なります。
分譲マンションは区分所有になり、戸建て住宅に比べて記載内容が多いので、以下を参考にしてください。
土地と戸建て住宅の遺産分割協議書を作成するときは、以下のように記載します。
アシロ一郎は以下の財産を相続する。
土地
所在 東京都新宿区西新宿○丁目
地番 ○番○○
地目 宅地
地積 250.00㎡
建物
所在 東京都新宿区西新宿○丁目○番○号
家屋番号 ○番○○
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造2階建
床面積 1階 115.00㎡ 2階 62.00㎡
遺産分割協議書は相続登記の際に法務局へ提出するので、第三者が見ても不動産を特定できるように記載してください。
区分所有マンションのみの遺産分割協議書を作成するときは、以下のように記載します。
アシロ一郎は以下の財産を相続する。
一棟の建物の表示
所在 東京都新宿区西新宿○丁目○番○号
建物の名称 ○○マンション
専有部分の建物の表示
家屋番号 東京都新宿区西新宿○丁目○番○号
建物の名称 502
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造10階建
床面積 5階部分 62.00㎡
敷地権の目的である土地の表示
土地の符号 1
所在 東京都新宿区西新宿○丁目
地番 ○番○○
地目 宅地
地積 2,300.00㎡
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 369412分の2740
地番や地積、敷地権割合などの項目は登記事項証明書どおりに記載してください。
遺産分割協議書に不動産のみ記載するときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
不動産は換価分割や代償分割するケースがあるので、具体的な分割方法も明記しておく必要があります。
遺産分割協議書には不動産を記載する場合、所在や地番、家屋番号などは登記事項証明書の記載内容に合わせます。
「○○町の駐車場を○○に相続させる」など、不動産を特定できない書き方では相続登記に使えないので注意してください。
不動産を相続する場合、念のために市区町村役場で名寄帳を取得しておくとよいでしょう。
名寄帳には被相続人名義の不動産が一覧表示されているので、相続登記の漏れを防止できます。
なお、不動産を固定資産税の課税明細書で確認するケースもありますが、資産価値が低く、非課税になっている不動産は記載されないので注意してください。
遺産分割協議書を作成するときは、新たな不動産が見つかった場合に備え、以下の取り決めを記載しておくとよいでしょう。
遺産分割協議をやり直す場合、すでに完了した相続手続きが無効になる可能性があるので注意してください。
換価分割とは、不動産の売却代金を公平に分割する方法です。
ただし、被相続人名義の不動産は売却できないため、ひとまず相続人を決定し、相続登記を済ませたあとに売却します。
たとえば、被相続人の子ども二人が不動産を換価分割する場合、遺産分割協議書は以下のような書き方になります。
第一項
次の不動産を換価分割するため、相続人アシロ一郎および相続人アシロ二郎は、各自の法定相続分に従って共有取得する。
土地や建物の表示
第二項
相続人アシロ一郎および相続人アシロ二郎は共同して前項の不動産を売却し、売却代金から売却費用を差し引いた残金について、各自の共有持分割合に応じて取得する。
なお、不動産の売却益が発生すると譲渡所得税がかかるので、不動産取得時の売買契約書などを調べ、取得額を確認しておく必要があります。
代償分割とは、不動産などを取得した相続人がほかの相続人に代償金を支払い、公平な遺産分割にする方法です。
代償金の支払いは贈与とみなされるケースがあるので、遺産分割協議書には以下のように記載しておきましょう。
相続人アシロ一郎は、相続人アシロ二郎に対し、前項の不動産を取得する代償として2,000万円を負担し、○年○月○日までに、アシロ二郎が指定する預金口座へ振り込みによって支払う。
代償分割に関する一文を記載しておけば、税務署に対して贈与ではないことを証明することができます。
不動産を相続したときは、以下の流れで相続登記を完了させましょう。
相続登記の必要書類や費用、相続税の計算方法などは以下の記事を参考にしてください。
遺産分割協議書は不動産のみで作成しても構いませんが、土地・建物が多いと作成ミスが発生しやすいので要注意です。
また、権利関係が複雑であったり、抵当権が抹消されずに残っていたりすると、相続登記はもちろん、不動産の活用・売却に支障をきたします。
不動産を相続すると固定資産税や都市計画税もかかるので、不要な土地・建物であれば、相続放棄も検討するべきでしょう。
遺産分割協議書の書き方や不動産相続に困ったときは、司法書士や弁護士などの専門家に相談してください。
遺産相続では相続人ごとに優先順位が定められており、相続人の組み合わせによってそれぞれの取り分が異なります。本記事では、相続順位・相続割合のルールや、パターンごと...
遺産相続にあたって遺産分割協議書をどのように作成すればよいのか、悩んで方も多いのではないでしょうか。本記事では、遺産分割協議書の必要性や具体的な書き方を解説しま...
兄弟姉妹が亡くなり、兄弟姉妹に親や子どもがいない場合には、残された兄弟姉妹が遺産を相続することになります。そこで、本記事では相続における兄弟姉妹の相続順位や割合...
法定相続人の順位が高いほど、受け取れる遺産割合は多いです。ただ順位の高い人がいない場合は、順位の低いでも遺産を受け取れます。あなたの順位・相続できる遺産の割合を...
親等は親族関係の近さを表したものです。この記事では親等とは何か、親等をどうやって数えるかといった基本的なことのほか、親等早見表、親等図を記載しています。親等でよ...
遺産相続を依頼した際にかかる弁護士費用の内訳は、一般的に相談料・着手金・成功報酬金の3つです。相続の弁護士費用がいくらかかるのかは、依頼内容や希望するゴールによ...
養子縁組を結んだ養親と養子には、法律上の親子関係が生じます。養子には実子と同じく遺産の相続権が与えられるうえに、相続税の節税にもつながります。このコラムでは、養...
特定の相続人に遺産を相続させない方法を知りたくはありませんか?夫・妻・兄弟はもちろん、前妻の子・離婚した子供に財産・遺留分を渡したくない人は注目。悩み解消の手助...
株式の相続が発生すると、株式の調査や遺産分割、評価や名義の変更などさまざまな手続きが必要になります。この記事では、株式を相続するときの手順について詳しく解説しま...
遺産分割協議とは、相続人全員による遺産分割の話し合いです。この記事では、遺産分割協議の進め方や、不動産など分割が難しい財産の分配方法などを解説するとともに、話し...
相続人の中に未成年者や認知症などで判断能力が低下してしまっている方がいる場合、遺産分割協議をおこなうに際に特別代理人の選任が必要となる場合があります。本記事では...
生前、被相続人に対して一定の貢献を果たした相続人は、遺産相続の際に「寄与分」を主張することができます。本記事では、遺産相続で寄与分の主張を検討している相続人のた...
遺産相続は、資産の特定や分け方などが複雑で、金額や相続人が多いほどたいへんです。本記事では、配偶者になるべく多くの遺産を相続させたい場合にできる適切な準備などに...
遺産分割は共同相続人全員でおこなう必要があり、遺産分割に先立って漏れなく共同相続人を把握しなければなりません。本記事では、共同相続人とは何か、および共同相続人に...
家庭裁判所の調停委員が、相続人全員が遺産分割方法など合意を形成できるようなアドバイス・和解案を提示。遺産分割調停を控えている方や、遺産分割協議が思うように進まず...
遺言書の有無や、親族の数などによって、相続できる財産は異なります。また、相続をしないという選択もあります。本記事では親が亡くなったケースを中心に、親族が亡くなっ...
遺産分割調停での解決できなさそうな状況であれば、遺産分割審判に移行します。本記事では、遺産分割調停と遺産分割審判の違い、審判に向けて準備しなければならないこと、...
代償分割をする場合、遺産分割協議書をどのように作成すればよいのでしょうか。この記事では、代償分割の概要や遺産分割協議書の書き方、代償金の決め方について解説します...
今回は、相続分の譲渡のメリットや、相続分の譲渡の諸手続き、手続きを進めるにあたっての注意事項をわかりやすく解説します。ベンナビ相続では遺産相続問題に力を入れてい...
配偶者居住権は、2020年4月より適用されるようになった権利をいいます。本記事では、配偶者居住権の概要や設定の要件、メリット・デメリットなどを解説します。手続き...