遺産相続では、少しでも多く財産をもらいたいと思う相続人が、詐欺的な行為に及ぶケースが見られます。ほかの相続人に騙され、自分の取り分が少なくなってしまうのは、あまりにも理不尽でしょう。
万一トラブルに巻き込まれた場合に適切に対応できるよう、実際に起きやすい不正行為の具体例を把握しておくことが大切です。
本記事では、遺産分割の場面で起きやすい詐欺的行為の典型例や対処法を解説します。証拠の集め方・予防策・弁護士のサポートを受けるメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
遺産相続では、少しでも多く財産をもらいたいと思う相続人が、自分の取り分を増やそうとして、詐欺的な行為に及ぶケースがあります。遺言書の破棄・遺産の使い込み・財産隠しなどが典型例です。本章では、遺産相続で起こり得る詐欺行為の例を7つ紹介します。
自分に有利な内容の遺言書を偽造したり、自分に不利な内容の遺言書を変造・破棄したりする行為です。
遺言書を発見した相続人が、ほかの相続人に遺言書の存在を隠してしまうケースは少なくありません。たとえば、自分に不利な内容の遺言書をなかったことにして、遺産を不正に取得しようとする場合などです。
自己の利益のため、あるいは不利益を避けるために遺言書を偽造・変造・破棄する行為は、相続欠格事由にあたります。欠格事由に該当する相続人は、裁判などの手続きを要せず、当然に相続をする権利を失います。
遺言書の偽造・変造は、有印私文書偽造罪に該当するとして、刑事責任を問われる可能性もあるでしょう。被相続人の意思を無視・軽視し、自分の利益のために遺言書を偽造・変造・破棄するのは、悪質な詐欺的行為です。
遺産の一部を隠したり、資料の開示を拒否したりする行為です。
被相続人から財産の管理を任されていた相続人が、ほかの相続人に遺産の全容を教えないケースは珍しくありません。相続開始後、被相続人の居宅から現金・貴金属・骨董品などを勝手に持ち出し、遺産分割の対象から外す目的で隠すケースも見られます。
公平な遺産分割を実現するには、共同相続人全員が遺産の全容を正確に把握する必要があります。遺産の一部を隠す行為は、私利私欲のために遺産分割の公正性を害する悪質な行為といえるでしょう。
被相続人から多額の生前贈与を受けた事実を伏せる行為です。相続人の一部が、被相続人から特別受益にあたる生前贈与を受けている場合、現存する遺産のみを対象に遺産分割をすると、公平を欠きます。
以下のような生前贈与は遺産の前渡しと捉え、遺産分割時に相続財産に加算して、各人の相続分を調整する必要があります。
| 贈与の種類 | 具体例 |
| 婚姻または養子縁組のための贈与 | 婚姻・養子縁組の際の持参金・支度金 |
| 生計の資本としての贈与 | ・居住用不動産(または購入資金)の贈与 ・事業資金の援助 ・土地の無償使用(使用貸借)など |
特別受益の主張は、生前贈与を受けていない相続人がおこなわなければなりません。しかし、相手が生前贈与を受けた事実を認めず、資料も開示しない場合には、立証が難しくなる可能性がある点に注意してください。
遺産を私的に使い込んだのに、被相続人のために使ったと嘘をつく行為です。お金の管理を任されていた相続人が、被相続人名義の口座から預貯金を引き出し、自分のために費消してしまうケースは珍しくありません。
特に被相続人が高齢で判断能力が低下していたり、認知症を患っていたりする場合によく見られます。被相続人からキャッシュカードを託されているような場合には、被相続人の指示に基づくのか無断出金なのかの判断がつきにくいのも実情です。
被相続人が不動産を賃貸して賃料を得ているケースでは、同居の子や不動産管理を任された親族が、受け取った賃料を使い込むケースがあります。相手が主張する使途の証拠が残っていない場合は、お互いが引くに引けなくなり、紛争が激化することも少なくありません。
遺産である不動産の売却益を低く伝える行為です。相続人のひとりが不動産を現物で取得し、ほかの相続人に代償金を支払う代償分割では、予期せぬトラブルが生じることがあります。
弁護士が交渉に関与する場合は、当事者が互いに査定書を出し合い、中間値を評価額として代償金を計算するのが一般的です。しかし、当事者同士の話し合いでは、親族間の関係性や知識の差から、言われるがまま合意してしまうケースもあります。
たとえば不動産を取得する相続人が、低く見積もられた査定書を提示するケースも珍しくありません。不当に低い金額をベースに代償金を計算すると、不動産を取得する相続人が実質的に多く遺産を取得することになります。
代償金を受ける側の相続人の無知につけ込み、評価額を低く伝える行為は、ほかの相続人の不満を招くでしょう。
被相続人に対する未返済の借金を隠す行為です。相続が開始すると、被相続人が有する権利義務は、原則として全て相続人に引き継がれます。不動産や預貯金などの財産だけでなく、貸しているお金(債権)も同様です。
ほかの相続人は、被相続人からお金を借りていた相続人に対し、自己の相続分に応じて返済を請求できます。しかし、被相続人とほかの相続人の関係性が希薄な場合などには、貸付金債権の存在を把握していないケースも多いです。
ほかの相続人に知られていないのをいいことに、被相続人に対する未返済の借金を隠すケースもよく見られます。
貸付金は、お金を借りたのが相続人でも、未返済分が相続税の対象となります。貸付金の存在を意図的に隠す行為は、重加算税などの追徴課税のリスクをはらむ悪質な行為です。
相続手続に要した費用を水増しして、共同相続人に請求する行為です。相続では、相続税の納税・登記費用・専門家への報酬など、まとまった額の費用がかかる場合もあります。
弁護士費用・司法書士費用や裁判所費用は、依頼または申立てをした相続人が支払い義務を負うのが原則です。しかし、相続人間に争いがない場合は、あらかじめ費用の負担割合を決めて、遺産分割時に清算するケースも少なくありません。
負担割合を定めている場合、相続人の中で決めた代表者がいったん支出したあと、ほかの相続人に金額を報告する形がよく取られます。ところが、費用を立て替えた相続人が、ほかの相続人に対して、実際の金額よりも多く伝えるケースがあります。
想定より負担が大きかったという手間賃のつもりでも、ほかの相続人に嘘をついて費用を水増し請求するのは、不正な行為といえるでしょう。
遺言書を偽造・変造・破棄した相続人は、相続権をはく奪されるおそれがあります。財産隠しや遺産の使い込みが認められると、遺産分割のやり直しや共同相続人から裁判を起こされる可能性もあります。
遺言書を偽造・変造・破棄した相続人は、遺留分を含む相続権を失うおそれがあります。自己の利益のため、あるいは不利益を避けるために、遺言書を偽造・変造・破棄する行為は、相続欠格事由に該当するためです。
相続人自らが遺言書を偽造・変造した場合だけに限りません。不当な利益を得る目的で、以下のような行為に及んだ場合には、相続欠格事由に該当する可能性があります(民法第891条)。
遺産の一部を隠したり、共同相続人を騙したりして遺産分割協議を成立させた場合、遺産分割のやり直しが必要になる可能性があります。
錯誤(民法第95条)または詐欺(民法第96条)によって、当初の遺産分割協議による合意の意思表示が取り消される可能性があるためです。取消権の行使によって当該合意の意思表示が取り消されると、当初の遺産分割協議は無効となるため、再協議が必要になります。
たとえば、隠された遺産の存在を把握していれば当初の遺産分割協議は成立し得なかった、といえる場合は全体的に再協議すべきです。
共同相続人から、裁判を起こされる可能性があります。相続人のひとりが遺産を使い込んだ場合、ほかの相続人は使い込んだ相続人に対して、以下のいずれかの請求を検討できます。
| 根拠 | 定義 | 詳細 |
| 不当利得返還請求 (民法第703条) |
法律上の原因がないのに、他人の財産や労務によって利益を得た者に対し、損失を受けた側が当該利益の返還を求めること | 共同相続人は遺産を使い込んだ相手に対し、自己の法定相続分の限度で不当利得の返還を請求できる |
| 損害賠償請求 (民法第709条) |
故意または過失によって他人の権利や利益を違法に侵害し、損害を与えた人に対し、損害を受けた側が賠償を求めること | 遺産を自己の利益のために利用・処分・隠匿した場合は不法行為が成立し、損害を受けた側は使い込んだ相続人に対し、自己の法定相続分の限度で損害賠償を請求できる |
当事者間の合意が見込まれるなら、遺産分割調停・審判内での解決を目指せます。しかし、使い込んだ相続人が素直に認めるとは限りません。
当事者間での解決が見込めない場合は、不当利得返還請求訴訟または損害賠償請求訴訟を提起して解決を図ります。
遺言書を偽造・変造した場合には、有印私文書偽造罪(刑法第159条)が成立する可能性があります。また、遺産を多く取得するために偽造・変造した遺言書を他の相続人等に見せた場合には、偽造私文書等行使罪(刑法第161条)が成立する可能性があります。
遺産の一部を隠したり、共同相続人を騙したりして、遺産を多く取得した場合には、詐欺罪(刑法第246条)が成立する可能性があります。
本章では、共同相続人に詐欺的な行為が疑われる場合の適切な対処法を解説します。
共同相続人に詐欺的な行為が疑われる場合は、まずは不正の証拠となる資料を集めて事実関係を明らかにしましょう。根拠もなく相手を問いただしたり責めたりするのは、新たなトラブルの火種を生むだけです。
たとえば、遺産隠しや預貯金の使い込みが疑われる場合は、以下のステップで事実関係を確認しましょう。
使い込みを疑っていても、実際は被相続人の生活費や自宅の修繕費などに充てていたり、領収証などが残されていたりする場合もあります。感情的な憶測や思い込みによるトラブルを防ぐためにも、事実関係は正確に把握しましょう。
被相続人名義の財産・負債を再調査して、遺産の全体像を把握しましょう。相続人のひとりが被相続人の財産を占有して開示しない場合でも、相続人の立場として単独で調査できる方法は残されています。財産別の主な調べ方は、以下のとおりです。
| 財産の種類 | 調べ方 |
| 不動産 | ①不動産の所在地または住所がわかる場合は、登記簿謄本を取得する ②被相続人の居宅内に固定資産納税通知書がないか確認する ③市区町村役場の資産税課で名寄帳、土地家屋課税台帳、固定資産税台帳、評価証明書等を取得して、当該市区町村内にある被相続人名義の不動産の有無を確認する |
| 預貯金 | ①被相続人の居宅内に預貯金通帳がないか確認する ②被相続人の生活圏内の金融機関に口座の有無や残高を照会する |
| 有価証券 | ①被相続人の居宅内に証券会社発行の取引残高報告書がないか確認する ②被相続人の生活圏内の証券会社に口座開設の有無・有価証券等の預託の有無・残高を照会する ③ゴルフバッグの名札を確認する(ゴルフ会員権の有無の確認) |
| 動産 | ①被相続人の居宅内を探索する ②被相続人の生活圏内の金融機関の貸金庫内を確認する ③駐車場・ガレージなどの契約書・料金の引落しがないか確認する(自動車の有無の確認) |
| 債権 | ①被相続人の居宅内・貸金庫などに契約書・借用書などがないか確認する ②被相続人名義の通帳に債務者からの入金がないか確認する ③被相続人に事業所得や不動産所得がある場合は、確定申告書や決算書を確認する |
| 債務 | ①被相続人の居宅内・貸金庫などに契約書などがないか確認する ②被相続人名義の通帳に債権者への返済履歴がないか確認する ③被相続人宛ての郵便物に督促状・催告書などがないか確認する ④不動産登記事項証明書の乙区欄の記載を確認する ⑤被相続人に事業所得や不動産所得がある場合は、確定申告書や決算書を確認する ⑥株式会社日本信用情報機構(JICC)、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センターに照会を行う |
遺言書の偽造・作成への不正な関与や遺産の使い込みが疑われる場合には、当時の被相続人の健康状態などがわかる資料を集めましょう。遺言書の作成・使途不明の出金の時点で、被相続人の判断能力が著しく低下していた場合、遺言や遺産分割協議の効力を争えます。
判断能力(意思能力)の有無の判断時に参照される証拠の例は、以下のとおりです。
被相続人の健康状態や入退院の状況などから、遺言書の作成や出金指示ができる状態であったか確認しましょう。
もっとも、遺言書の作成や財産の管理を委任するに足りる判断能力の有無は、法的な観点から判断されます。認知症と診断されていても、一律に判断能力(意思能力)が否定されるわけではないため、自己判断は避け、弁護士への相談をおすすめします。
遺産隠し・使い込みを裏付ける証拠を確保できたら、遺産分割協議の取消しや遺産の返還を求めます。
当初の遺産分割協議を無効にするほどの重要な財産でなければ、隠されていた財産のみについて追加で分割方法を協議しても構いません。当初の協議を維持するのが著しく不公平な場合は、共同相続人全員に対して取消しの意思表示をおこないます。
遺産を使い込まれた場合は、使い込んだ相続人に対して、返還を求めましょう。返還を請求できる範囲は、自己の法定相続分に相当する部分までです。たとえば相手が900万円を使い込み、あなたの法定相続分が3分の1であれば、300万円の支払いを請求できます。
協議前の段階で使い込みが判明した場合は、共同相続人全員の合意により、財産が現存するものと推定して遺産分割をおこなうことも可能です。
不正な行為をはたらいた相続人が非を認め、共同相続人全員の合意が得られる場合には、遺産分割協議をやり直します。
詐欺的行為をした相続人が相続欠格に該当する場合は、相続欠格者を除いた相続人だけで遺産分割をおこないます。詐欺的行為をした相続人が相続欠格に該当しない場合は、同人を含めた相続人全員で遺産分割協議をおこなわなければなりません。
再協議がまとまったら、当初の遺産分割協議書を破棄し、新たな遺産分割を有効とする旨を明記した遺産分割協議書を作成しましょう。
共同相続人全員の合意が得られない場合には、家庭裁判所に遺産分割協議の無効確認を求めて調停を申し立てます。遺産分割協議無効確認請求事件は、調停前置主義がとられているため、原則として訴訟の提起前に調停を申し立てなければなりません。
調停では、調停委員が各相続人の主張を聴き取り、歩み寄りを促すなどして合意による解決を図ります。当事者全員が当初の遺産分割協議を無効とする旨の合意に至れば、調停が成立します。
調停成立後は、共同相続人間で改めて遺産分割協議をおこなうか、遺産分割調停または審判で遺産の分け方を決めなければなりません。
遺産分割の無効確認調停が不成立となった場合は、地方裁判所に遺産分割協議無効確認訴訟を提起します。遺産分割協議無効確認調停が不成立となった場合、自動的に審判手続に移行することはなく、訴訟提起が必要です。
訴訟では、裁判官が当事者の主張や提出された証拠を精査し、遺産分割協議の有効・無効を判断します。そのため、当初の無効原因または取消原因を、客観的な証拠に基づいて証明しなければなりません。
訴訟は時間も費用もかかり、精神的な負担も大きくなるため、弁護士のサポートが不可欠です。
不公平な内容の遺言や生前贈与により、自己の遺留分を侵害された場合は、遺留分侵害額請求権の行使により遺留分を回復できます。遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に法律上取得することが保障されている相続財産の一定割合です。
遺留分侵害額請求の対象となるのは、以下のとおりです。
遺留分侵害額請求権の行使は、配達証明付き内容証明郵便の送付によりおこないます。同請求権は、相続開始および贈与・遺贈を知った時から1年で時効により消滅するため、意思表示をした記録を残しましょう。
なお、遺留分を侵害する贈与・遺贈の存在を知らなくても、相続開始から10年が経過すると、権利行使ができません。
詐欺・錯誤などを理由に遺産分割協議の合意の意思表示を取り消す場合は、以下の点に注意しましょう。
当初の遺産分割協議の合意の意思表示を取り消す場合は、消滅時効に注意しましょう。錯誤・詐欺・強迫などによる意思表示の取消権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効により消滅します。
共同相続人の不正行為が判明したら、遺産分割のやり直しに向けて早めに対応を開始しましょう。
遺産の所有権がすでに第三者に移転している場合は、原則として取り戻せません。遺産分割協議に詐欺・錯誤などの取消原因があることを知らず、知らなかったことについて過失のなかった第三者は、保護されるからです。
相続人間では遺産分割協議を取り消せても、善意無過失の第三者に対しては、取消しを主張できない場合があるので注意してください。
騙されたと知りながら遺産分割を進めた場合は、合意の意思表示は取り消せません。以下のような行動をとると、当初の協議を有効なものと認めた(追認)とみなされるためです。
たとえば、遺産分割協議書に基づいて預金の払い戻しを受けたり、遺産を管理している相続人に引き渡しを求めたりした場合です。
遺産分割協議をやり直す場合、本来払う必要がなかった税金がかかる可能性があります。遺産分割協議のやり直しによって財産を再分配すると、税法上は贈与または譲渡と評価されるためです。
やり直しで新たに財産を取得した人が対価を払わない場合、財産を取得した相続人に贈与税が課税されます。対価を支払った場合は、対価を受け取った相続人に譲渡所得税が課税される場合があります。
また、やり直しによって不動産の所有者が変わる場合には、登記済みの相続登記を抹消したうえで、新たに相続登記を申請しなければなりません。抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(不動産20個以上の場合は、申請件数1件につき2万円)。
当初の遺産分割協議に基づき納付済みの相続税や登録免許税は返還されないため、結果的に二重課税となるでしょう。
相続における不正を防ぐためには、公正証書遺言の作成や財産状況の共有などが有効です。弁護士のアドバイス・サポートを受けるのも積極的に検討してください。
遺言書の作成を検討しているなら、公正証書遺言がおすすめです。公正証書遺言とは、二人以上の証人立ち会いのもと、遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人が筆記して作成する方式の遺言です。
公証人が、遺言者から聞き取った内容を、法的な視点で整理しながら作成するため、解釈の違いが生じにくくなります。公証人が遺言者の意思を確認しながら作成するため、将来有効性を争われるリスクを軽減できるのもメリットです。
公正証書遺言は、原本が公証役場で保管されるので、紛失・毀損・隠匿・改変のおそれもありません。公証役場で独自の検索システムが用意されているため、相続人による遺言の検索もスムーズです。家庭裁判所の検認手続きが不要なため、手続きの手間も省けます。
自身が元気なうちに家族会議をおこない、財産の内容や希望を伝えておくのも有効です。
推定相続人(相続が開始した時点で相続人となる人)全員に財産の内容を知らせておけば、無用な紛争を回避できる可能性があります。遺産の分け方について生前に納得を得ておくと、将来の紛争を避けやすくなります。
自分の希望を一方的に伝えるだけでなく、各推定相続人の事情を共有することも大切です。
たとえば、被相続人と同居して身の回りの世話をしてくれる人がいれば、生活費や医療費の原資を残す必要があるかもしれません。また心身の不調があれば、生活費の確保について特別の考慮が必要です。
生前から互いに理解・譲歩し合うことを心がければ、相続開始後も円満かつスムーズに遺産分割協議を進められるでしょう。
弁護士への相談・依頼も有効です。公平な遺産分割をおこなうためには、各相続人に法律上認められる権利や相続分を正しく理解しなければなりません。相続開始前から相続に関する知識を共有しておけば、相続トラブルに発展する可能性を低くできます。
遺言書の作成を依頼すれば、特別受益・寄与分・遺留分を考慮した作成も可能です。相続開始後も、遺産分割協議に関与してもらえるため、一部の相続人による情報操作をけん制しやすくなるでしょう。
共同相続人に詐欺的な行為が疑われるときに、弁護士に相談・依頼するメリットは、以下のとおりです。
弁護士に相談すれば、証拠の収集方法や相続財産調査について具体的なアドバイスを得られます。共同相続人に不正が疑われる場合には、証拠の確保や財産調査が不可欠です。
たとえば遺産である預貯金の使い込みが疑われる場合、預金明細や被相続人の医療・介護記録などの収集が必要です。相続人が自ら資料を収集するには限界があったり、どのようなものが証拠になり得るのか判断できなかったりする場合もあるでしょう。
弁護士から事前にアドバイスを得ていれば、必要な資料を効率的に収集できます。相手方への交渉・調停・裁判などを依頼する場合には、相続財産調査も任せられます。
弁護士に相談すれば、遺産分割協議の合意の意思表示の取消しの可否を適切に判断してもらえます。
詐欺的行為をはたらいた相続人が自分の非を認めれば、当初の遺産分割協議を合意解除したうえで再協議が可能です。しかし、共同相続人全員の合意による遺産分割協議のやり直しには、二重課税のリスクが伴います。
詐欺・錯誤などの取消原因があれば課税リスクを回避できますが、詐欺や錯誤にあたるかどうかの判断には法律の専門知識が必要です。弁護士に相談すれば、専門的な知識や判例の傾向をもとに、適切に判断してもらえます。
弁護士に依頼すれば、詐欺的行為をはたらいた相続人との交渉・訴訟を一任できます。
直接対峙すると感情的になりやすく、相手が事実を認めずに話が進まないケースも珍しくありません。弁護士が代理人として交渉すれば、法的根拠を示しながら冷静に話し合いを進めやすくなります。
協議・調停で解決できない場合は、訴訟で解決を図ります。訴訟では、話し合いを前提とする調停と異なり、専門的な知識や経験が必要です。弁護士に依頼すれば、法的根拠や経験に基づき、適切な主張・立証が可能です。
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騙された遺産を取り戻したい場合は、早めに「ベンナビ相続」で弁護士を探してみてください。
本章では、「ベンナビ相続」を介して依頼した弁護士のサポートにより、遺産を取り戻せた事例を紹介します。
共同相続人による相続開始前の無断出金について、訴訟を提起して返還を求めたケースです。
相続開始後、妹から説明された被相続人の預金残高があまりにも少なく、不審に思った依頼者は、金融機関から取引履歴を取得。被相続人は、認知症で施設に入院中であったのに、不自然な出金が複数みられました。
依頼者は妹による無断出金を疑い、返還請求を弁護士に依頼しました。弁護士は、取り寄せた介護認定の調査資料に「金銭の管理が困難」「金銭管理は妹がおこなっており、本人は把握していない」との記載を確認。
無断出金が裏付けられる根拠があるものの、妹が認めなかったため、不法行為・不当利得を理由に訴訟を提起しました。最終的には妹が解決案を受け入れ、訴訟外で和解が成立。依頼者は1,900万円の経済的利益を得ました。
共同相続人のひとりが1,000万円超の預貯金の存在を隠していたケースです。
被相続人の子三名で遺産分割協議を進めるなか、相続人のひとりが預貯金の一部を引き出して隠していると判明。金額などの詳細が不明であったことから、依頼者は隠匿を明らかにしたいと弁護士に依頼しました。
弁護士は、金融機関から取引履歴を取得し、内容を分析したうえで、遺産分割調停を申し立てました。資料とともに預貯金の行方を示すよう求めた結果、1,000万円超の隠匿が判明。
相続人のひとりが隠していた預貯金も遺産分割の対象とすることに全員が合意し、調停が成立しました。依頼者は、不動産と預貯金の一部を無事に取得しました。
本章では、遺産相続における詐欺的行為にまつわる関心事にQ&A形式で回答します。
遺産分割のやり直しが認められれば、当初の相続登記を抹消したうえで、再協議に基づく相続登記を申請できます。
共同相続人全員の合意を得られる場合は、遺産分割協議のやり直しが可能です。共同相続人全員の合意が得られない場合は、調停を経た上で、遺産分割協議無効確認訴訟を提起します。
当初の遺産分割協議の取消または無効が認められたら、改めて共同相続人全員で遺産分割協議または調停・審判で分割方法を決定します。
詐欺の態様が悪質な場合は、刑事告訴を検討できます。たとえば相続人のひとりが遺言書を偽造し、真正な遺言書として共同相続人に提示した場合、有印私文書偽造罪および同行使罪が成立し得ます。
もっとも、刑事告訴をしても、必ず受理してもらえるとは限りません。刑事責任を問えるかどうかがわからない場合や、手続きに不安がある場合は弁護士への相談をおすすめします。
知らない人から相続に関する連絡がきても、詐欺とは言い切れません。相続開始の連絡がきたら、まずは戸籍を調査して、被相続人との関係を確認しましょう。
通知書に相続関係図などが同封されている場合もありますが、まったく心当たりがなければ戸籍を確認しましょう。相続に関連した詐欺の手口も存在するため、慎重に見極めるのが大切です。
遺産相続では、遺言書の偽造・財産隠し・使い込み・生前贈与の隠ぺいなど、詐欺的な行為が起こり得ます。発覚した相続人は、相続欠格や遺産分割協議のやり直し、損害賠償請求などのリスクを負います。
不正が疑われる場合は、感情的に問いただす前に、取引履歴や財産状況などの証拠を確保しましょう。不正行為が明白である場合は、取消しの意思表示をしたうえで、共同相続人全員の合意による再協議を目指します。
合意が得られない場合は、調停・訴訟による解決を図りましょう。ただし、取消権には時効があり、再協議によって余分な税金が発生する場合もあります。
共同相続人の不正行為にお悩みなら、まずは「ベンナビ相続」を活用のうえ、弁護士に相談してみてください。
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