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生前贈与に強い弁護士の探し方|贈与のトラブルと弁護士に相談するメリットを解説

井澤・黒井・阿部法律事務所 東京オフィス
黒井 新
監修記事
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生前贈与は相続税対策の王道的な手段といわれますが、一定額を超えると贈与税がかかるため、受贈者(贈与を受ける人)の税負担を考慮しなければなりません。

また、一部の人だけに贈与するとほかの親族から「不公平だ」といわれてしまい、トラブルに発展する可能性もあります。

生前贈与のタイミングによっては節税効果が低くなるため、専門家のアドバイスも参考にするべきですが、以下のような疑問も生じてくるでしょう。

  • 生前贈与に強い弁護士はどうやって探す?
  • そもそも生前贈与に強い弁護士ってなに?
  • 生前贈与は節税対策だけ考えておけばよい?
  • 生前贈与がトラブルの元になるのはどんなとき?
  • トラブルの解決は誰に相談したらよい?

ここでは、生前贈与に詳しい弁護士の探し方や、弁護士に相談するメリットをわかりやすく解説しています。

生前贈与の注意点も解説していますので、相続対策を検討中の方はぜひ参考にしてください。

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目次

生前贈与に強い弁護士とは?

生前贈与のトラブル防止と解決は弁護士の専門分野なので、相続税対策を検討するときは生前贈与に強い弁護士を探しておくとよいでしょう。

なお、「生前贈与に強い」とは、一般的に以下のような弁護士を指すことが多いようです。

生前贈与問題の解決実績が豊富であること

相続に詳しい弁護士は、生前贈与問題の解決実績が豊富です。

ほとんどの弁護士は事務所のホームページに専門分野を掲載しているので、相続や生前贈与に強いかどうかわかります。

相談件数や解決実績も掲載していれば、安心して生前贈与問題を任せられる弁護士といえるでしょう。

相続問題に注力している弁護士であること

弁護士の専門分野はさまざまですが、相続問題に注力していれば、生前贈与にも詳しい弁護士といえるでしょう

生前贈与は遺産の前渡しになるため、必ず相続とセットで考える必要があります。

相続税と贈与税も関連性が高いので、切り離して考えることはできないでしょう。

生前贈与の問題は贈与者(財産を渡す人)が亡くなったあと表面化するケースが多いため、相続問題もケアできる弁護士に相談しておくことが重要です。

生前贈与を得意とする弁護士の探し方

弁護士と接する機会は少ないため、生前贈与をするときは相談窓口を見つけておくことが重要です。

弁護士への相談が初めての方は、以下の窓口を利用してください。

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生前贈与や遺産相続に注力している弁護士が多数登録されており、地域や相談内容、解決事例などの絞り込み検索できるので、理想の弁護士がすぐに見つかります

解決事例で弁護士を探す場合、遺産の種類や依頼人の立場、紛争相手などの細かな条件設定も可能です。

通常、弁護士の無料相談は30分程度となっていますが、ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)には60分無料の弁護士も登録されてるので、生前贈与や遺産相続の問題をじっくり相談できるでしょう。

ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)には弁護士の住所や連絡先、弁護士費用や相談方法など、知りたい情報が集約されています。

自宅から相談したい方は電話やメール、LINEやオンライン面談も活用してください。各弁護士が一覧表示されるので、「弁護士費用を比べてから決めたい」という方にもおすすめです。

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法律事務所のホームページを見てみる

生前贈与を得意とする弁護士を探すときは、法律事務所のホームページも見てみましょう。

ホームページには専門分野や相談件数、解決実績などの情報が掲載されているので、何を依頼できる弁護士なのか判断しやすくなっています

司法書士や税理士が所属している法律事務所であれば、贈与税や相続税申告、相続登記などの依頼もできるため、複数の問題も同時進行で解決できます。

「経験の浅い弁護士に任せるのは不安」という方は、弁護士の経歴や経験年数も確認しておくとよいでしょう。

生前贈与問題に関連する書籍や監修に携わっているか確認する

書籍の監修に携わっている弁護士には高度な専門知識があり、生前贈与問題の解決実績も豊富です。

相続や贈与関連の書籍は書店でも取り扱っていますが、ネット検索でも調べられるので、著者や監修者になっている弁護士名をチェックしておくとよいでしょう。

生前贈与を弁護士に相談したほうがよい理由

生前贈与をおこなう目的の多くが相続税対策なので、節税だけを意識しているケースが多いようです。

税金の相談相手といえば税理士ですが、親族同士のトラブルが発生しても紛争解決は依頼できません。

弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあるので、争いのない生前贈与を実現できるでしょう。

弁護士は税理士業務もできる

意外と知られていませんが、弁護士法では弁護士に税理士業務を認めています。

生前贈与に詳しい弁護士は贈与税や相続税にも精通していることが多いので、税金の悩みも相談できます

弁護士と税理士それぞれに依頼するとコストが高くなるので、弁護士だけに依頼できれば低予算で問題解決できるでしょう。

税金関係全般の問題であれば税理士に依頼するメリットはありますが、相続専門の税理士は全体の1割程度となっており、9割近くの税理士は企業の確定申告業務などに携わっています。

士業全体をみても相続の専門家は少ないため、税金や紛争解決、相続登記の問題は別々に依頼するケースが一般的です。

税金問題の解決を弁護士に依頼すると窓口が一本化されるので、各専門家へ別々に依頼するわずらわしさもなくなるでしょう。

有効な贈与契約書の作成を依頼できる

生前贈与に詳しい弁護士は贈与契約書の作成も依頼できるので、贈与があったことを確実に証明できます

生前贈与は口約束でも成立しますが、税務署に認められない可能性があるため、有効な贈与契約書を作成しておかなければなりません。

民法上の考え方では、「財産を渡す」「財産をもらう」の合意があれば、贈与契約が成立したものとみなされます。

しかし、書面にしていなければ第三者に証明できないため、税務署が生前贈与を認めなかったときは相続税の課税対象になるので、相続時の税負担が重くなってしまうでしょう。

贈与契約書の作成はそれほど難しくはありませんが、不動産や有価証券(株式など)は書き方を間違えてしまうケースが多いため、弁護士に作成依頼することをおすすめします。

トラブルにならない生前贈与を提案してくれる

相続や贈与に詳しい弁護士に相談すると、トラブルにならない生前贈与を提案してくれます。

生前贈与する場合、誰に・いつ・いくら贈与すると良いかが重要となります。

判断を誤ると節税効果が低くなり、自分が亡くなったあとトラブルが発生する可能性もあるので、弁護士のアドバイスを受けるようにしてください。

長男だけマイホーム資金をもらっている、次女だけ結婚費用を全額出してもらった、などの生前贈与であれば、贈与してもらえなかった家族は不満に感じるでしょう。

相続が発生すると「あなたはすでに高額な財産をもらっている」という理由で、わずかな財産しか相続できない可能性が高くなります。

公平かつ均等な生前贈与は難しいかもしれませんが、弁護士に相談しておけばトラブルが起きにくい贈与を提案してくれます。

親族間の紛争解決を任せられる

生前贈与が原因で親族間のトラブルが発生した場合、紛争解決は弁護士しか対応できません

親族同士の争いは遠慮がないので、他人とのトラブルよりも深刻化・長期化するケースが多いようです。

当事者同士で解決しようとすると、さらに問題が大きくなる可能性が高いでしょう。

争いが想定される、またはすでに争いになっているときは、なるべく早めに弁護士へ相談してください。

裁判の手続きを全て任せられる

相続トラブルが訴訟に発展した場合でも、弁護士には裁判の手続きを全て任せられます。

裁判には相続の専門知識や膨大な書類が必要となり、決着するまでの期間も長いため、時間と労力を消耗するでしょう。

弁護士に依頼すれば全て対応してくれるので、仕事やプライベートを犠牲にする必要がありません

故人が依頼していた弁護士がいると、親族も弁護士を探す手間が省けます。

生前贈与の段階から付き合いのある弁護士がいれば、家族構成や財産内容を知っているので、話が伝わりやすいでしょう。

弁護士に依頼するといくら費用がかかる?

弁護士費用の額は各弁護士によってまちまちですが、旧弁護士規定を参考としているケースが多いようです。

以下は旧弁護士基準の報酬体系なので、弁護士費用の一般的な相場になります。

弁護士費用の基本体系

弁護士費用は以下の料金で構成されています。

  • 相談料:一般的には30分5,000~1万円程度。初回のみ無料の弁護士が多い
  • 着手金:問題解決の成否に関わらず発生する費用。着手金無料の弁護士もいる
  • 報酬金:依頼者が獲得した経済的利益の○%という決め方
  • 実費:交通費や通信費、宿泊費や印紙代などの費用。依頼内容によってまちまち

着手金は正式に依頼したときに支払いますが、報酬金は問題解決したあとの支払いとなります。

実費には交通費が含まれているので、近くの弁護士に依頼したほうが安くなるでしょう

解決する問題によって弁護士費用は変わりますが、相続トラブルの場合は以下のような相場になっています。

相続トラブルの解決を依頼したときの弁護士費用相場

弁護士に相続トラブルの解決を依頼した場合、着手金と報酬金は以下のような相場になります。

【経済的利益と着手金】

  • 300万円以下:経済的利益の8%
  • 300万円超~3,000万円以下:経済的利益の5%+9万円
  • 3,000万円超~3億円以下:経済的利益の3%+69万円
  • 3億円超:経済的利益の2%+369万円

【経済的利益と報酬金】

  • 300万円以下:経済的利益の16%
  • 300万円超~3,000万円以下:経済的利益の10%+18万円
  • 3,000万円超~3億円以下:経済的利益の6%+138万円
  • 3億円超:経済的利益の4%+738万円

トラブル解決の弁護士費用は誰が払うのか

弁護士に依頼して親族間のトラブルを解決した場合、弁護士費用は依頼者が支払います

1人だけで弁護士費用を負担することになりますが、問題解決できれば依頼者は十分な経済的利益を獲得できます。

ほかの親族の問題も同時解決できたときは、依頼者が全員分を立替払いした形にしておき、あとで清算するとよいでしょう。

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生前贈与の相談ができる弁護士以外の専門家と、そのメリット・デメリット

生前贈与と遺産相続は関連性が高いため、セットで考える必要があります。

銀行や士業(弁護士や司法書士など)は相続と関わりが深いため、生前贈与は以下の窓口に相談してみましょう。

ただし、士業に相談するときは専門分野を確認しておく必要があるので注意してください。

銀行や信託銀行

一般的な銀行の場合、ファイナンシャルプランナーや相続アドバイザーなどの有資格者がいるケースがあります。

どちらも相続に関係する資格なので、生前贈与にも詳しいでしょう。

信託銀行は財産の管理・運用を任せられるため、一般的な銀行よりも相続や生前贈与に詳しく、実践的な知識もあります。

ただし、以下のメリット・デメリットを理解したうえで相談してください。

銀行や信託銀行のメリット・デメリット

銀行には生前贈与や相続に詳しい行員もいますが、士業ほど専門性は高くありません

相続財産の評価や申告書の作成は業務として取り扱っておらず、実務として依頼できるのは預貯金口座の相続手続きのみとなっています。

信託銀行の場合、相続登記や相続税申告を依頼できるケースもありますが、実際に手続きをおこなうのは提携している司法書士や税理士です。

信託銀行を介して依頼することになるので、かなり割高な料金になるでしょう。

行政書士

行政書士にはさまざまな書類作成や許認可申請を依頼できます。

具体的には遺言書や贈与契約書などの作成、相続財産の調査や戸籍謄本などの収集、自動車関係の手続き(名義変更や廃車など)を依頼できるので、生活に密着した相談窓口といえるでしょう。

身近な法律屋さんというイメージの行政書士ですが、相続や生前贈与について相談する場合、以下のようなメリット・デメリットがあります。

行政書士のメリット・デメリット

行政書士は弁護士や司法書士に比べて費用が安いため、低コストで贈与契約書・遺言書・遺産分割協議書などの書類作成を依頼できます。

ただし、代行できる法律行為が限られているため、相続税申告や相続登記、紛争解決などの依頼はできません

財産や家族の状況が以下のようなケースであれば、行政書士に依頼するメリットがあるでしょう。

  • 相続税が発生しない
  • 不動産を所有していない
  • 紛争が発生していない、または発生しそうなリスクがない

司法書士

司法書士も法律の専門家であり、ある程度の民事事件にも対応できるので、裁判所の手続きを依頼できる場合もあります。

行政書士よりも費用は高くなりますが、贈与契約書や遺言書の作成、家族信託の設計や契約書作成などを依頼できるので、司法書士への依頼だけで問題解決できるケースもあるでしょう。

なお、司法書士に相談する場合は以下のメリット・デメリットがあります。

司法書士のメリット・デメリット

登記申請は司法書士の独占業務なので、不動産の生前贈与や相続であれば、手続きを依頼するメリットが大きいでしょう。

不動産の相続登記は放置されているケースが多いため、土地の名義が祖父母や曾祖父母になっていた場合は、権利関係者の調査(戸籍謄本の収集)が膨大な作業になります。

不動産が複数ある場合も相続登記の手間がかかるので、司法書士への依頼をおすすめします。

ただし、司法書士が対応できる紛争解決は限られており、争う金額が140万円以上のときは依頼できません

司法書士に生前贈与や相続の相談をする場合、以下のようなケースであれば十分なメリットがあります。

  • 相続財産に不動産がある(不動産が多い)
  • 相続人や相続財産の調査を任せたい
  • 遺言執行者になってほしい

なお、相続登記は2024年4月1日以降の義務化が決定しており、手続きを怠った場合は10万円以下の過料(罰金)となります。

制度開始以前から放置されていた場合も過料の対象になるので注意してください。

税理士

税金関係にもっとも精通した士業が税理士です。

贈与税や相続税の計算、申告書の作成などを依頼できるので、高額な財産を贈与させるときには相談しておくとよいでしょう。

相続税が確実に発生する場合、税金問題を解消しただけで、ほかのトラブルも自動解決するケースがあります。

税理士に相談するときは、以下のメリット・デメリットを理解しておきましょう。

税理士のメリット・デメリット

相続専門の税理士には財産評価を依頼できるので、不動産や非上場株式の生前贈与、または相続するときに依頼するとメリットが大きいでしょう。

土地の評価額は素人が計算すると高くなるケースが多く、贈与税や相続税も高額になりがちです。

税理士に依頼すると適正価格を計算し、さらに減額要素を見つけてくれるので、税負担が大幅に軽くなるケースがあります。

非上場株式も評価方法が複雑なので、税理士や会計士に依頼する例が一般的です。

ただし、税理士は紛争解決に関わることができないので、親族間のトラブルが発生したときは弁護士に依頼しなければなりません。

税理士に相談する場合、以下の状況であればメリットがあるでしょう。

  • 確実に贈与税や相続税が発生する
  • 評価額の高い土地を生前贈与、または相続する
  • 税金の計算や申告を任せたい

生前贈与の課税方式

生前贈与した財産が一定額を超えると贈与税がかかります。

贈与税は申告納税方式となっているので、受贈者(贈与を受けた人)が自分で税額を計算しなければなりません。

贈与税には以下の課税方式があるので、それぞれの計算方法を理解しておいてください。

なお、暦年課税制度と相続時精算課税制度は併用できないので注意しましょう。

暦年課税制度

ごく一般的な贈与の方式を暦年課税制度といいます。

贈与をおこなうたびに申告・納税する方式ですが、年間110万円の基礎控除があるため、110万円以下の贈与を毎年繰り返すと高額な財産でも非課税贈与できます。

贈与税は基礎控除を超えた部分(課税価格といいます)に課税されるので、税額の計算式は以下のようになります。

贈与税の計算式

(贈与財産-基礎控除110万円)×税率-控除額

税率と控除額は国税庁ホームページに掲載されており、直系尊属(父母や祖父母)から18歳以上の子どもや孫に贈与したときは、税率が低くなる特例税率を適用できます。

生前贈与の一例として、親から子どもへ500万円を贈与したときの税額を計算してみましょう。

  1. 課税価格の計算:500万円-基礎控除110万円=390万円
  2. 贈与税の計算:390万円×特例税率15%-控除額10万円=48万5,000円

1回で贈与すると贈与税は48万5,000円ですが、毎年100万円ずつを5年間で贈与すれば税金はかかりません。

ただし、毎年同じ日付け・同じ金額で贈与すると、定期贈与とみなされる可能性があるので注意してください。

定期贈与とは、「500万円を100万円ずつに分けて5年間で贈与する」といった贈与契約であり、500万円が贈与税の課税対象になります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度を使うと、60歳以上の父母や祖父母が直系となる18歳以上の子どもや孫に贈与した場合、2,500万円までが非課税になります。

2,500万円を超える部分は20%の固定税率なので、贈与財産が高額になるほど節税効果が高くなります。

計算例をみると違いがわかりやすいので、3,000万円を贈与したときの税額を暦年課税制度(特例税率)と比較してみましょう。

【暦年課税制度】

  • 課税価格の計算:3,000万円-基礎控除110万円=2,890万円
  • 贈与税の計算:(2,890万円×税率45%)-控除額265万円=1,035.5万円

【相続時精算課税制度】

  • 課税価格の計算:3,000万円-特別控除額2,500万円=500万円
  • 贈与税の計算:500万円×税率20%=100万円

贈与税が10倍以上の違いになるため、高額な財産を短期間で贈与したいときには相続時精算課税制度を検討してみるべきでしょう。

ただし、相続時精算課税制度を使って贈与した場合、贈与財産は相続財産に加算しなければなりません。

贈与税の負担は軽くなりますが、将来的には相続税の課税対象になるため、相続税対策としての効果は期待できません。

相続時精算課税制度を選択すると途中で暦年課税制度には戻せないので、失敗しないためにも生前贈与に詳しい弁護士に相談しておきましょう。

生前贈与に利用できる特例措置

生前贈与する場合、贈与者と受贈者の関係や、生前贈与の目的によっては以下の特例措置が使えます

  • 教育資金の一括贈与の非課税制度:1,500万円まで非課税(2023年3月31日まで)
  • 贈与税の配偶者控除(おしどり贈与):2,000万円まで非課税
  • 住宅取得資金の非課税措置:最大1,000万円まで非課税(2023年12月31日まで)
  • 結婚・子育て資金の贈与の特例:1,000万円まで非課税(2023年3月31日まで)

若い世代へ資産を移転すると消費が活発になり、経済効果への波及が期待されるため、親から子ども、祖父母から孫への生前贈与は非課税枠が大きくなっています。

贈与税の配偶者控除は夫婦間の贈与に限られており、居住用不動産(自宅)または居住用不動産の購入資金を配偶者に贈与した場合、2,000万円まで非課税となります。

通称「おしどり贈与」と呼ばれており、配偶者には相続税の軽減措置もあるため、かなり高額な財産を相続しても相続税がかかるケースはほとんどありません。

主な相続財産が自宅のみであり、相続争いで配偶者が自宅を出ていくような状況が想定されるときは、おしどり贈与を検討してもよいでしょう。

なお、おしどり贈与以外の特例措置は終了時期が決定しているので注意してください。

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生前贈与するときの注意点

財産の移転が生前贈与と認められなかった場合、贈与財産は相続財産にカウントされるため、将来的に相続税の課税対象になります。

高額な贈与は特別受益とみなされ、親族間のトラブルになる可能性が高いので、以下の点には十分注意してください。

贈与者の判断能力

贈与者の判断能力が低下している状態で贈与すると、税務署が生前贈与を認めてくれない場合があります。

判断能力が低下している人の法律行為は無効になる可能性が高いので、贈与者の認知症が疑われる場合は注意しなければなりません。

認知症の症状にはレベルがあるので、判断能力が完全に失われていたり、断片的であったりするケースがあります。

一時的に判断能力が回復することもあるため、医師の診断書などが必要になるケースも考えられます。

贈与者の判断能力に不安があるときは、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

記録が残る方法で生前贈与する

生前贈与をおこなう場合、注意しておきたいのが税務署からの指摘です。

ある程度の資産があれば、相続税申告のあとに税務調査がおこなわれるケースがあり、生前贈与はかなり厳しくチェックされます。

「贈与でもらった財産だから相続とは無関係」と思っていても、生前贈与の証拠がなければ相続財産とみなされるため、相続税の課税対象になります。

税務署に指摘された時点で申告漏れになっているので、過少申告加算税などの税金が発生するでしょう。

生前贈与であることを証明できればペナルティはないので、贈与契約書を作成し、現金贈与の場合は必ず銀行振込を利用してください。

銀行振込にすると贈与者・受贈者の通帳に記録が残るので、「誰から誰に・いつ・いくら財産が移転したか」を証明できます。

長期間記帳していなかったために合算印字されたときや、通帳を紛失した場合は金融機関に過去の取引履歴を請求しましょう。

不動産を生前贈与したときも登記申請を早めにおこない、所有権が移転したことを証明できるようにしてください。

死亡前3年以内の贈与は相続財産に加算する

贈与者が亡くなる前3年以内におこなわれた贈与の場合、贈与財産は相続財産にカウントするため、相続税の課税対象になります。

相続財産へのカウントを生前贈与加算、または相続財産への持ち戻しといい、専門家の間では「3年ルール」と呼ばれるケースもあります。

家族(財産の所有者)の死期が迫ったことを知り、急いで財産を移転させるような行為は悪質な租税回避(税金逃れ)とみなされるため、3年ルールが設けられています。

おしどり贈与など、一部の特例措置には適用されませんが、暦年課税制度の贈与は注意しておく必要があります。

贈与者が高齢であったり、重い病気を抱えていたりする場合、生前贈与の節税効果を期待できないかもしれません。

遺留分を侵害する可能性

一部の人だけに高額な生前贈与をおこなうと、相続の際にほかの相続人の遺留分を侵害する可能性があります。

遺留分の侵害が発生すると相続人の関係が悪化しやすいので、以下のようなケースは要注意です。

  • 相続開始前の1年間でおこなわれた生前贈与
  • 遺留分の侵害を知っておこなわれた相続開始1年以上前の生前贈与
  • 法定相続人に対しておこなわれた相続開始前10年以内の生前贈与

民法で保障された最低限の取得割合を遺留分といい、子どもや配偶者は法定相続分の1/2となっています。

相続財産が遺留分を下回っていた場合、多くもらい過ぎている相続人が遺留分を侵害している状態になるので、侵害額の返還請求を迫られる可能性が高いでしょう。

遺留分は現金返還が原則となっているので、不動産の生前贈与で遺留分の侵害が発生した場合でも、請求者には現金を支払わなければなりません。

遺留分侵害が発生するケースは「遺言書がある相続のときだけ」と思われがちですが、実は生前贈与が原因になるケースもあるので注意が必要です。

なお、亡くなった方の兄弟姉妹には遺留分はありません。

特別受益に該当するかどうか

高額な生前贈与は特別受益を指摘される可能性があるため、受贈者は相続時に取得できる財産を減らされるかもしれません

生前贈与は相続財産の前渡しなので、一部の人だけにマイホーム資金などを贈与すると、ほかの相続人から「あなたの相続分は少しでよい」といわれてしまう可能性が高いでしょう。

扶養義務の範囲で生活費や教育費を渡しているケースは特別受益になりませんが、高額な生前贈与は特別受益にみなされる場合があります。

いくら生前贈与したら特別受益になるか?といった明確な線引きはないので、高額な生前贈与をするときは、相続争いになるかどうかも想定しておかなければなりません。

不動産の生前贈与は不動産取得税と登録免許税に注意

生前贈与で不動産をもらった場合、以下のように不動産取得税登録免許税がかかります。

  • 不動産取得税:土地や居住用建物の固定資産税評価額×1/2×税率3%

本来の計算方法は「固定資産税評価額×4%」ですが、令和6年3月31日までは固定資産税評価額が1/2となり、3%の特例税率が適用されます。

特例税率などの詳細は以下の総務省ホームページを参考にしてください。

ただし、相続したときには不動産取得税がかかりません

登録免許税も「固定資産税評価額×税率」で計算しますが、生前贈与で取得した場合は税率2%、相続であれば税率0.4%です。

不動産の生前贈与は贈与税も発生するケースが多いので、受贈者の税負担を考慮しておく必要があるでしょう。場合によっては生前贈与をおこなわず、相続したほうが安い税金になる可能性があります。

みなし贈与に該当する贈与

以下のようなケースはみなし贈与」に該当する可能性が高いので、贈与税が課税されるかもしれません。

  • 極端に低い金額で子どもや孫に不動産を売却した
  • 借金の免除や肩代わり
  • 保険料の負担者以外の人が満期金を受け取った場合
  • 共有名義の不動産の持分割合と住宅ローンの負担割合が異なる場合

現金などを渡していなくても、何らかの形で利益を受けている状況であれば、その利益が贈与とみなされるケースがあります。

贈与だと思っていなかった行為が生前贈与になる場合があり、気付かなければ贈与税の申告漏れになってしまいます。

判断に困ったときは弁護士に聞いてみましょう。

名義預金

預貯金の口座名義と実質的な預金者が異なる場合、名義預金に該当します。

よくあるケースとして、親または祖父母が子どもや孫名義の口座を開設し、将来は本人(名義人)に渡すつもりで預金している例があります。

通帳や印鑑、キャッシュカードを親や祖父母が管理しており、子どもや孫が口座の存在を知らなかった場合、名義人の財産とはいえません。

専業主婦の口座に預金残高がある場合も、税務署から「あなたには収入がないので別の人の財産だ」と指摘される可能性があるでしょう。

そこまでみられるの?と思われるかもしれませんが、名義預金は意図的な財産隠しに使われることが多いので、税務署も厳重にチェックしています。

名義預金に判定されると実質的な預金者の相続財産になるので、必ず贈与契約書を作成しておきましょう。

生前贈与の悩みは弁護士にご相談を

贈与税は相続税を補完する税金となっているため、財産の移転で相続税を回避しようとしても、次は贈与税が待ち受けています。

課税の仕組みがわかれば節税もできますが、親族への均等な贈与は難しいため、将来的には相続トラブルの原因になるかもしれません。

生前贈与を行った段階で争いになる可能性もあるので、誰に・いくら・どのタイミングで贈与するか、弁護士を交えて検討したほうがよいでしょう。

ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)では生前贈与に詳しい弁護士を見つけやすいので、家族への資金援助や相続対策を検討している方はぜひ活用してください。

生前贈与について今すぐ弁護士に無料相談できる!

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この記事の監修者
井澤・黒井・阿部法律事務所 東京オフィス
黒井 新 (第二東京弁護士会)
2002年弁護士登録。15年以上の実績のなかで多くの相続問題に取り組み、その実績を活かし、相続分野における著書執筆や不動産の講演・セミナーへ登壇するなど、活動の幅は多岐に渡る。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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