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更新日:

【ひな形付き】遺産分割協議書とは?書き方・作成の流れ・必要なケースを解説

山村 真吾
監修記事
【ひな形付き】遺産分割協議書とは?書き方・作成の流れ・必要なケースを解説
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  • 「遺産分割協議書は作成したほうがよいのか」
  • 「遺産分割協議書の書き方や作成するまでの手順がよくわからない」

遺産分割協議書を適切な方法で作成しておけば、遺産分割のトラブルを防ぐことができます。

しかし、具体的な書き方や手順がイメージできず、遺産分割協議書の作成に着手できていない方も多いでしょう。

また、そもそも遺産分割協議書を作成する必要があるのかどうかさえ、判断できていない方もいるかもしれません。

そこで本記事では、遺産分割協議書の必要性や書き方、ひな形やケースごとの記載例、作成の流れや作成時の注意点などを解説します。

遺産分割協議書の適正な作成方法を把握し、遺産相続に関する揉めごとを未然に防ぎたい方は参考にしてください。

遺産分割協議書の作成でお悩みのあなたへ

「相続することになったけど、遺産分割協議書は作るべきなの?」「どうやって作る?」「そもそも自分でも作れるの?」などと悩んでいませんか?

結論としては、遺産分割協議書に関する悩みは弁護士に相談するのがおすすめです。

遺産分割協議書は正しく作成しないと無効になってしまうおそれがあり、弁護士に相談・依頼すれば以下のようなメリットを得ることができます。

  • 遺産分割協議書の作成方法がわかる
  • 依頼すれば、相続人や相続財産の調査もしてもらえる
  • 頼すれば、適切な遺産分割協議書を作成してもらえる
  • 公正証書化も依頼することができる

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目次

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果をまとめた書類のことです。

被相続人が亡くなった場合、遺言書がなければ法定相続人同士で誰が何を相続するかを決めなければなりません。

その際、口頭で確認し合うだけではあとでトラブルに発展しかねないため、遺産分割協議書を作成し、形あるものとして協議結果を残しておく必要があるのです。

法定相続人の全員参加のもと、適切に作成された遺産分割協議書は法的効力を有します

たとえ遺産分割の方法に不満を申し立てる相続人が現れたとしても、相続人全員の同意がない限り、原則として、遺産分割協議書に記載された内容が覆ることはありません

遺産分割協議書が必要なケース

上記でも触れたとおり、遺産分割協議書は「被相続人が遺言書を作成しておらず、相続人同士で分割方法を話し合って決定する」という場合に作成します。

また、被相続人が遺言書を作成していても「遺言内容とは異なる分割方法を話し合い、相続人全員が合意している」という場合も遺産分割協議書の作成が必要です。

なお、主に以下のような手続きをおこなう際には、遺産分割協議書の提出が必要となります。

  • 預金の名義変更・払い戻し
  • 不動産の名義変更
  • 株式の名義変更
  • 自動車の名義変更
  • 相続税の申告

相続手続きの中には期限が設けられているものもあるため、相続が発生した際は速やかに話し合いを済ませて遺産分割協議書を作成しましょう。

遺産分割協議書を作成する際の必要書類

遺産分割協議書を作成する際の必要書類としては、主に以下があります。

必要書類 取得場所 取得費用
①被相続人が出生してから死亡するまでの戸籍
(除籍・改製原戸籍・現戸籍)
被相続人の本籍地の市区町村役場 ・戸籍謄本:1通450円程度
・除籍・改製原戸籍謄本:1通750円程度
②被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 ・住民票の除票:被相続人が最後に住民登録していた市区町村役場
・戸籍の附票:被相続人の本籍地の市区町村役場
・住民票の除票:1通200円~400円程度
・戸籍の附票:1通200円~400円程度
③相続人全員の戸籍謄本 本籍地の市区町村役場 1通450円程度
④相続人全員の印鑑証明書(実印) 住民登録している市区町村役場・コンビニエンスストア 1通200円~400円程度
⑤財産目録 自分で作成する 無し
⑥相続財産に関する資料
(預貯金の残高証明書・不動産の登記簿謄本・車検証のコピーなど)
資料によって異なる 資料によって異なる

相続状況によっても必要となる書類は異なるため、特に相続関係が複雑なケースや相続財産の種類が多いケースなどでは弁護士に相談することをおすすめします。

遺産分割協議書は自分で作成することも可能

遺産分割協議書は、弁護士などに依頼せずに自分で作成しても問題ありません

自分で作成すれば依頼費用を抑えることができ、数万円~数十万円程度の節約が望めます。

ただし、遺産分割協議書を作成する際は相続や法律などの知識が必要であり、素人では作成方法を誤ったりして法的な効力を失ってしまうおそれがあります。

遺産分割協議書に不備があると、相続手続が難航したり相続トラブルに発展したりすることもあるため、少しでも作成が不安な方は弁護士にご相談ください。

遺産分割協議書を作成すべきタイミングとは?

遺産分割協議書の作成について、特に期限は定められていません

ただし、相続手続のうち相続税申告には期限があり、「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内」に済ませる必要があります。

したがって、遅くても相続税の申告期限には間に合うように作成しておきましょう。

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遺産分割協議書のひな形・書式

ここでは、遺産分割協議のひな形や作成例などを解説します。

遺産分割協議書のテンプレート【ダウンロード可】

遺産分割協議書のひな形は、法務局や国税庁などのホームページでダウンロード可能です。

以下では、法務局と国税庁の遺産分割協議書のひな形をそれぞれ紹介します。

法務局の遺産分割協議書の雛形

法務局の遺産分割協議書のひな形は以下のとおりです。

ダウンロードしたい方は「Taro-17 相続(遺産分割のとき) 記載例 |法務局」をご確認ください。

法務局の遺産分割協議書の雛形

引用元:Taro-17 相続(遺産分割のとき) 記載例 |法務局

注意点として、上記のひな形は遺産分割協議の対象が不動産に限られているため、不動産以外の財産を相続するケースではあまり参考にはなりません。

国税庁の遺産分割協議書の雛形

国税庁の遺産分割協議書のひな形は以下のとおりです。

ダウンロードしたい方は「➍ 相続税の申告書の記載例|国税庁をご確認ください。

国税庁の遺産分割協議書の雛形

引用元:➍ 相続税の申告書の記載例|国税庁

注意点として、上記のひな形は縦書きで漢数字が使用されているなど、一般的な遺産分割協議書とは形式が異なる部分もあります。

素人の場合、法務局や国税庁のひな形を参考にするだけでは適切な遺産分割協議書を作成できないおそれがあり、不安な方は弁護士に依頼することをおすすめします。

遺産分割協議書の作成例

遺産分割協議書には決まった様式はありませんが、以下に遺産分割協議書の作成例を示すので、参考にしてみてください。

遺産分割協議書

 

被相続人  山田太郎

生年月日  昭和●●年●●月●●日

死亡日   令和●●年●●月●●日

本籍地   東京都新宿区西新宿●-●●-●

最終住所地 東京都新宿区西新宿●-●●-●

 

上記被相続人の相続に関し、被相続人の法定相続人ら全員で遺産分割協議をおこなった結果、下記のとおりに遺産分割協議が成立したことを確認する。

 

1.相続人の特定

 相続人ら全員は、被相続人の相続人が、妻山田花子、長男山田一郎、長女山田和子および次男山田次郎の4名であることを確認する。

 

2.妻の取得財産

 相続人ら全員は、下記の不動産を妻山田花子が取得することに合意する。

 所在   東京都●●区●●

 家屋番号 ●●番●

 種類   ●●

 構造   ●●●●

 床面積  ●階 ●㎡

 

3.長男の取得財産

 相続人ら全員は、下記の預貯金を長男山田一郎が取得することに合意する。

 ●●銀行●●支店

 普通預金 口座番号●●●●●●●

 

4.長女の取得財産

 相続人ら全員は、被相続人の一切の動産について、長女山田和子が取得することに合意する。

 

5.次男の取得財産

 相続人ら全員は、前記2項から4項を除く一切の財産(本遺産分割協議成立までに明らかとならなかったものも含む)について、次男山田次郎が取得することに合意する。

 

6.清算条項

 相続人ら全員は、各相互に、被相続人の相続に関し、本協議書に定めるもののほか何らの債権債務も存在しないことを確認する。

 

 以上の内容で、相続人全員による遺産分割協議が成立したため、本協議書を4通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

 

令和●●年●月●日

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 昭和●●年●●月●●日

相続人  (妻)山田花子  ㊞

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (長男)山田一郎  ㊞

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (長女)山田和子  ㊞

 

住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●

生年月日 平成●●年●●月●●日

相続人 (次男)山田次郎  ㊞

 

なお、上記は、遺産の分割方法を記載しているだけの大まかな作成例です。

負の財産に関する分割方法や祭祀承継の条件など、相続時の状況にあわせて細かな事項を記載するケースもあります。

また、新たな相続財産が見つかった場合の取り扱いについて、遺産分割協議書で定めておくことも可能です。

遺産分割協議書を作成する際の流れ

ここからは、遺産分割協議書を作成するまでの流れを紹介します。

大きく4つのステップにわかれるので、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

1.相続人を確定させる

まずは、遺産の相続人を確定させる必要があります。

遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があり、ひとりでも欠けていれば遺産分割協議書を作成しても法的効力が否定されかねません。

基本的に遺産分割協議に参加するのは法定相続人であり、具体的には被相続人の配偶者・子ども・両親・兄弟姉妹などが該当します。

もし相続人を全員把握できていない場合は、被相続人の戸籍を確認しなければなりません。

ただし、前本籍地の戸籍なども取得して相続人を洗い出す必要があるので、自力での対応が難しい場合は弁護士に調査を依頼しましょう。

2.相続財産を確定させる

次に、相続財産を確定させましょう。

あとで新たな財産が見つかった場合は遺産分割協議をやり直す必要があるので、全ての財産を確実にリストアップしてください。

預貯金や不動産は比較的把握しやすい一方、目に見えない有価証券やゴルフ会員権などは見逃してしまうことも多いため注意が必要です。

また、ローンや借金といったマイナスの財産も相続対象となるので、漏れなく調べるようにしましょう。

相続財産の洗い出しは、できる限り相続人全員で協力し合いながら進めることも大切です。

3.相続人全員で遺産分割協議をおこなう

相続人・相続財産が確定したら、遺産分割協議をおこないましょう。

相続人全員の参加が必須ですが、その場に来られない事情がある場合はメールや電話でやり取りしても問題ありません

なお、相続人に未成年者が含まれている場合は、親が代理人として出席します。

ただし、親と子どもがどちらも相続人となるケースも多く、その場合は家庭裁判所に特別代理人の選定を申し立てなければなりません。

4.遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議で相続人全員の合意形成が確認できれば、遺産分割協議書の作成を進めます。

誰がどの財産をどの程度相続するのかを明確に記載し、相続人全員が署名押印をおこなってください。

遺産分割協議書の記載事項

次に、遺産分割協議書に記載するべき5つの基本事項を紹介します。

1.タイトル

まずは、何に関する書類なのかを明確にするためにタイトルを記載する必要があります。

書面の中央上部に「遺産分割協議書」と記載するケースが一般的です。

2.被相続人の情報

被相続人の情報も遺産分割協議書に記載するべき項目のひとつです。

誰が相続するのかも大切ですが、まずは誰の遺産を対象にした協議結果なのかを明らかにする必要があります。

被相続人の氏名・生年月日・死亡年月日・死亡時の住所は、最低限記載しておきましょう。

3.相続財産の内容

相続財産の内容の記載も当然必要です。

誰が、どの財産をどの程度取得するのかを明確に記載しましょう。

特に名義変更をともなう不動産自動車などを取得する場合、財産の情報を正確に記載していなければ、名義変更手続をおこなう際に不備を指摘される可能性があります。

また、金融資産を遺産分割する場合は、個々の財産を特定できるような工夫も必要です。

たとえば、預貯金なら金融機関名・支店名・口座の種別・口座番号まで指定しておくとよいでしょう。

4.作成日付

遺産分割協議書には、作成した日付も記載しておかなければなりません。

遺産分割協議が終わった日、または相続人全員の署名が完了した日付を記載してください。

5.相続人全員の情報

遺産分割協議書の末尾には、相続人全員の情報を記載してください。

住所・生年月日・氏名を記載するケースが一般的です。

遺産分割協議書はパソコンで作成することも可能ですが、トラブル防止や相続手続きを円滑に進めるためには、相続人全員が自署し、氏名の横に後述のとおり、認印ではなく、「実印」を押印することを強くおすすめします。

各自が実印を押すことで本人が確実に意思表示したことを証明でき、書面の信頼性が高まり、不正防止にもつながります。

さらに、印鑑証明書も併せて添付すれば、預貯金の解約や相続登記などの手続きもスムーズに進められるため、確実な相続を実現する上で非常に重要です。

遺産分割協議書を作成する際の注意点

次に、遺産分割協議書のトラブルを防ぐためのポイントを紹介します。

1.相続人全員が実名で署名押印すること

遺産分割協議書の捺印には、実印を使用しましょう。

重要な場面で使用する実印が押されていれば、各相続人が遺産分割協議書に同意しているという意思がより明確になります。

また、預貯金の解約手続や相続登記の手続きでは、相続人全員の印鑑証明書を提出する必要があるため、あらかじめ遺産分割協議書に添付しておくのもおすすめです。

2.遺産分割協議書が複数ページになる場合は契印を押す

遺産分割協議書が2ページ以上にわたる場合は、契印を押すことも大切です。

契印を押すことで、遺産分割協議書の各ページが連続していることを証明でき、偽造や抜き取りを防止できます。

ホチキス留めの場合は見開きの境界線上、製本の場合は製本テープにまたがるように押印してください。

なお、契印には捺印と同じ印鑑を使用し、相続人全員が押印する必要があります。

3.遺産分割協議書を2通以上作成する場合は割印を押す

遺産分割協議書を2通以上作る場合は、割印も忘れずに押しましょう。

割印を押すことで、それぞれの遺産分割協議書が同じ内容であることを証明でき、偽造防止になります。

割印は全ての遺産分割協議書にまたがるように、書類を少しずつずらして押印してください。

また、契印と同様に、捺印と同じ実印を用いて相続人全員が押印しなければなりません。

4.作成後は相続人全員が1通ずつ保管しておく

余計なトラブルを防ぐためにも、相続人全員が遺産分割協議書の原本を1通ずつ保管しておくことも重要です。

誰かが紛失したり偽造したりした場合でも、ほかの相続人の遺産分割協議書を見れば正しい協議結果を確認できます。

全ての遺産分割協議書について、署名押印や印鑑証明書の添付などを漏れなくおこない、相続人全員に同じものが行きわたるようにしましょう。

5.相続トラブルが不安な場合は公正証書化しておく

相続トラブルが不安な場合は、公正証書で遺産分割協議書を作成することを検討してもよいでしょう。

公正証書とは、法務局に所属している公証人が作成する公文書のことです。

公証人は法律の専門家であるため、遺産分割協議書の法的・形式的な不備についても的確なアドバイスを提案してくれます。

もっとも、公証人は、相続人間の話し合いそのものについては中立的な立場であるため、相続人間の利害調整や具体的な分割方法に関して、個々の利益を踏まえたアドバイスまでは行いません。

また、公正証書は通常の書面よりも高い証明力を有しており、裁判所で遺言の有効性が争われる場合には証拠として扱うことが可能です。

強制執行に関する文言を入れ込んでおけば、もし合意内容に反する相続人がいた場合には裁判を経ることなく強制執行できることもあります。

相続人同士の信頼関係が薄いときや、合意内容に不満を感じている相続人がいるときなどは、遺産分割協議書の公正証書化を検討してみてください。

【ケース別】遺産分割協議書の書き方

ここからは、遺産分割協議書の書き方についてケースごとに解説します。

ただし、本記事はあくまで一般的な解説にとどまるものであり、法的にはより複雑な論点や、ここでは解説しきれない細かな注意点も存在します。

したがって、実際に本記事で紹介する条項を遺産分割協議書に盛り込む際には、必ず弁護士などの専門家による確認を受けることを強くおすすめします。

相続財産ごとの書き方

まず、相続財産ごとの遺産分割協議書の書き方は以下のとおりです。

預貯金を相続する場合

預貯金を相続する際は、銀行名・支店名・口座種別・口座番号を記載する必要があります。

特に被相続人が複数の口座を持っている場合は、それぞれ特定できるようにあいまいな表現は避けてください。

【例】

・〇〇銀行〇〇支店   普通預金 口座番号〇〇〇

・〇〇信用金庫〇〇支店 定期預金 口座番号〇〇〇

預金口座内の残高は利息などによって変動するため、記載しないことをおすすめします。

また、預貯金を複数人で分割する際は、取得割合も指定しておくとよいでしょう。

名義財産を相続する場合

名義財産があるときは、「名義は異なるものの被相続人の遺産である」ということを明記し、法定相続人全員で確認する旨の条項を設けたうえで、被相続人名義の遺産と同様に扱うのが一般的です。

【例】

1.相続人全員は、名義人の異なる以下の遺産が被相続人の遺産であることを確認する。

・〇〇銀行〇〇支店   普通預金 口座番号〇〇(名義人 ▲▲)

・〇〇信用金庫〇〇支店 定期預金 口座番号〇〇(名義人 ◆◆)

 

2.相続人▲▲は以下の遺産を取得する。

・〇〇銀行〇〇支店   普通預金 口座番号〇〇(名義人 ▲▲)

 

3.相続人◆◆は以下の遺産を取得する。

・〇〇信用金庫〇〇支店 定期預金 口座番号〇〇(名義人 ◆◆)

預貯金だけでなく、株式や保険なども名義財産にあたるケースもあるため、記載漏れがないように注意してください。

不動産を相続する場合

不動産を相続する際は、相続登記手続に支障が生じないように必ず登記簿上の情報を書き写してください。

具体的な表記方法は、一軒家やマンションなどの種類によって異なり、以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。

なお、以下はあくまでも一般的な解説であって、相続財産に不動産が含まれる場合には、その後の登記手続を見据えて、弁護士や司法書士にその記載内容を確認してもらうことを強くおすすめします。

一軒家の場合

一軒家を相続する場合は、土地と建物に分けて、以下の項目を遺産分割協議書に記載しましょう。

土地の表記
  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積
建物の表記
  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積
マンションの場合

登記事項証明書には、一棟の建物の表示・敷地権の目的である土地の表示・専有部分の建物の表示・敷地権の表示などの記載があります。

登記事項証明書の情報をもとに、マンションの表記は 「一棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の表示」の3つに分けて記載するケースが一般的です。

一棟の建物の表示
  • 所在
  • 建物の名称
専有部分の建物の表示
  • 家屋番号
  • 建物の名称
  • 種類
  • 構造
  • 床面積
敷地権の表示
  • 符号
  • 所在及び地番
  • 地目
  • 地積
  • 敷地権の種類
  • 敷地権の割合

底地が敷地権化していない場合は、「一棟の建物の表示」と「専有部分の建物の表示」の2つを記載すれば問題ありません。

共有財産の場合

被相続人が第三者(親族を含む)と共有している不動産の共有持分権も、相続財産に含まれます。

遺産分割協議書で不動産について表記する際には、被相続人の持分を明記しておかなければなりません。

土地
  • 所在   〇〇市〇〇町〇〇丁目
  • 地番   〇〇番〇〇
  • 地目   宅地
  • 地積   〇〇㎡(共有者 ▲▲ 持分〇分の〇)
建物
  • 所在   〇〇市〇〇町〇〇丁目
  • 家屋番号 〇〇番〇〇
  • 種類   〇〇
  • 構造   〇〇
  • 床面積  〇〇㎡(共有者 ▲▲ 持分〇分の〇)

上場株式・有価証券を相続する場合

上場株式・有価証券を相続する場合は、証券会社名・支店名・口座名・発行会社名・株式数を記載しておきましょう。

【例】

・〇〇証券会社 〇〇支店 口座番号〇〇 〇〇株式会社〇株

なお、上場株式の保有状況は、証券保管振替機構への照会手続で明らかにすることができます。

ゴルフ会員権を相続する場合

ゴルフ会員権が相続財産に含まれる際は、発行会社名・ゴルフ場の名称・会員権の種類・会員番号を記載してください。

【例】

・〇〇株式会社 〇〇ゴルフクラブ 預託金ゴルフ会員権 会員番号〇〇

ゴルフ会員権は目に見える財産ではなく、遺産として認識されづらいため注意しましょう。

相続方法ごとの書き方

次に、相続方法ごとの遺産分割協議書の書き方は以下のとおりです。

配偶者居住権を設定する場合

配偶者居住権とは、被相続人が所有する建物に居住する配偶者が、引き続き無償で住み続けられる権利のことです。

配偶者居住権を設定する場合、遺産分割協議書には誰がどの建物にいつまで住み続けるのかを記載しておく必要があります。

【例】

被相続人◆◆の配偶者▲▲は、下記の建物の配偶者居住権を取得する。

存続期間は遺産分割協議書の成立日から▲▲の死亡日までとする。

 

・所在   〇〇市〇〇町〇〇丁目

・家屋番号 〇〇番〇〇

・種類   〇〇

・構造   〇〇

・床面積  〇〇㎡

なお、配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に居住していることが成立要件のひとつです。

もし別の建物に住んでいた場合は、遺産分割協議書に記載された内容どおりの効果が認められないおそれがあります。

葬式費用や債務の扱いを取り決める場合

葬式費用に関する取り決めを遺産分割協議で定めることも可能です。

遺産分割協議書には、誰がいくら負担するのかを記載します。

また、相続財産には負の財産も含まれるため、被相続人に債務がある場合も遺産分割協議書で取り扱いを決めておきましょう。

誰がどの債務をいくら継承するのかを記載し、新たな債務が見つかった場合の対応も補足しておけば余計なトラブルを未然に防ぐことができます。

もっとも、相続債務に関する取り決めは、あくまでも相続人間の内部的な取り決めであって、外部の債権者には直接、影響を与えるものではありません。

【例】

①◆◆は、葬祭費用を全額負担する。

②▲▲は、〇〇銀行の借入金〇〇円を継承する。

③新たな遺産及び債務が見つかった場合、▲▲が債務を全て負担し、ほかの相続人に対して債務の弁済を求償しないものとする。

代償分割をする場合

代償分割とは、特定の相続人が財産を一人で取得する代わりに、ほかの相続人に対して代償金を支払う方法を指します。

不動産などの分割が難しい財産を相続する際に用いられるケースが一般的です。

代償分割をおこなう際は、誰が誰に対していくら支払うのかを遺産分割協議書に記載します。

トラブル防止のために、支払い方法や支払い期限などもあわせて記載しておくのも有効です。

【例】

▲▲は〇項の財産を取得する代償として、◆◆に対し〇〇円を〇年〇月〇日までに◆◆が指定した口座への振込によって支払うものとする。

換価分割をする場合

換価分割とは、財産を現金化し、相続人同士で分け合う方法のことです。

一般的には、誰も取得を希望しない財産があった場合や、現金で公平に分割したい場合に用いられます。

換価分割をおこなう場合、誰がどの財産の換価金を、どの程度受け取るのかを遺産分割協議書に記載しましょう。

なお、不動産を売却する場合は注意が必要です。

基本的に不動産は売却までに時間がかかるため、買主に引き渡すまでの間、共有登記と単独登記のどちらで登記するかを決めておく必要があります。

さらに、不動産売却に伴う登記費用や税金の問題などもあるため、コストをいかに分担するかについても定めておきましょう。

【例】

①▲▲と◆◆は前項の不動産を共同で売却し、売却に要した一切の費用を換価金から差し引いた残金を共有持分割合に従って取得する。

②▲▲と◆◆は第1項の不動産を買主に引き渡すまでの間、共同で管理する。

管理費用は、第1項の共有持分割合に従い負担する。

遺産分割協議書に関するよくある質問

最後に、遺産分割協議書に関するよくある質問を紹介します。

同様の疑問を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

Q.遺産分割協議書はどこでもらえる?

遺産分割協議書については決まった様式はないため、どこかでもらえるわけではなく、自分で準備・作成しなければいけません。

基本的に用紙のサイズやカラーなどは自由ですが、A4サイズの白い用紙で作成するのが一般的です。

Q.遺産分割協議書はパソコンで作成しても問題ないか?

遺産分割協議書は、パソコンで作成しても問題ありません

様式が決まっているわけではないため、必要な項目さえ押さえておけば自由に作成できます。

遺産分割協議書は作成途中で変更が生じることも多いため、手軽に修正できるパソコンで作成するのがおすすめです。

Q.遺産分割協議書はどのような場合に必要か?

遺産分割協議書は「被相続人が遺言書を作成しておらず、相続人同士で分割方法を話し合って決定する」という場合に作成する必要があります。

また、被相続人が遺言書を作成していても「遺言内容とは異なる分割方法を話し合い、相続人全員が合意している」という場合も遺産分割協議書の作成が必要です。

なお、主に以下のような手続きをおこなう際には、遺産分割協議書の提出が必要となります。

  • 預金の名義変更・払い戻し
  • 不動産の名義変更
  • 株式の名義変更
  • 自動車の名義変更
  • 相続税の申告

遺産分割協議書がなければ、上記の手続きが滞るおそれがあります。

特に相続税の申告に関しては「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内」におこなう必要があるため、速やかに遺産分割協議書の作成を進めましょう。

Q.遺産分割協議書が必要ないケースは?

主に以下のようなケースでは、遺産分割協議書の作成は不要です。

  • 相続人がひとりだけの場合
  • 遺言書の内容に従う場合

「すでに被相続人の配偶者は死亡しており、子どもはひとりしかいない」というような相続人がひとりだけの場合、財産を分ける必要がないため当然遺産分割協議書は必要ありません。

遺言書の内容に沿って遺産分割する際も同様で、法定相続分どおりに遺産分割する際も基本的に遺産分割協議書は必要ありません。

Q.遺産分割協議書に不備があった場合はどうなるのか?

遺産分割協議書に不備があった場合は、名義変更などの手続きができない可能性があります

適切に手続きを済ませるためには、再度遺産分割協議書を作成しなければならないため、作成時は必要な項目が漏れなく記載されているかどうか必ず確認しておきましょう。

さいごに|遺産分割協議書の作成が不安なら、まずは弁護士に相談を

遺産分割協議書は自力で作成することもできます。

様式が定められているわけではないため、縦書き・横書きも自由に決められますし、パソコン・手書きのどちらで作成しても問題ありません。

ただし、遺産分割協議書に不備があると登記手続などが滞ったり、相続人同士の認識に違いが生じてトラブルになったりするおそれもあります。

特に相続財産の種類が多く遺産分割が複雑になる場合や、遺産分割協議書の作成に十分な時間をかけられない場合などは、弁護士に依頼することを検討しましょう。

弁護士なら、遺産分割協議書の作成方法のアドバイスや作成代行などを依頼でき、法的に有効な遺産分割協議書を作成してくれます

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この記事の監修者
Leapal法律事務所
山村 真吾 (大阪弁護士会)
当事務所は相続問題に注力しており、ご依頼者様の不安を和らげるため、誠実かつ高品質なリーガルサポートを提供することを大切にしています。寄り添って対応しますので、お気軽にご相談ください。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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