相続放棄をした後に故人である被相続人の預金を引き出した場合、ほかの相続人や債権者が調べれば簡単にバレてしまいます。
預金の引き出しが発覚した場合、相続放棄が無効となる可能性が高いです。
なお、預金の引き出し以外にも相続放棄の前後にやってはいけないNG行為は多くあり、弁護士や司法書士などの専門家に相談して相続放棄が無効にならないように注意しておく必要があります。
本記事では、相続放棄後の預金引き出しのリスクやバレる可能性、預金引き出しがバレる原因や、相続放棄の前後でやってはいけないNG行為などを解説します。
トラブルなくスムーズに相続放棄を済ませるためにも知っておいたほうがよい内容なので、ぜひ参考にしてください。
結論として、相続放棄をした後に故人である被相続人の預金を引き出す行為は、高い確率でバレます。
預金の引き出しがバレてしまうと、のちのち横領や不当利得として責任追及されたりして深刻なトラブルに発展しかねません。
相続放棄後の預金引き出しが発覚する主な経緯・理由としては、以下の2つがあります。
ここでは、具体的にどのようにして相続放棄後の預金引き出しがバレるのかを解説します。
相続人は、遺産の状況を調べるために、被相続人の口座がある金融機関に対して、過去の入出金履歴の開示を請求できます。
過去の入出金履歴を見れば、不正な出金があったことがすぐに判明します。
相続放棄とは「被相続人の財産を一切相続しない手続き」であるため、当然ながら被相続人の預金を引き出す権利はなく、基本的に相続放棄後の出金は認められません。
不正な出金をしたことがバレてしまうと、ほかの相続人から不当利得返還請求(民法第703条)などを受ける可能性があります。

被相続人が存命中にお金を貸していた債権者も、債権回収のために「弁護士会照会」や「文書送付嘱託」などの手段で相続財産の状況を調査することが可能です。
弁護士会照会とは、弁護士の申請を受けて所属弁護士会がおこなう、公務所や公私団体などに対する照会のことです。
被相続人口座の入出金履歴は、弁護士会照会によって債権者に開示される場合があります。
文書送付嘱託とは、民事訴訟法第226条にて定められている手続きのことです。
裁判所から文書送付嘱託を受けた会社や機関などは、それに応じて該当文書を送付するのが一般的であり、被相続人口座の入出金履歴についても書証が提出される可能性があります。
被相続人が借金などを負っていた場合、債権者は債権回収のために預金の引き出しを理由に相続放棄の無効を主張し、借金を引き継がせようとしてくるおそれもあります。
相続放棄をした後は、被相続人の預金には安易に手を付けないようにしておいたほうが賢明です。

相続放棄をした後に被相続人の預金を引き出したことが発覚すると、上図のようなリスクを負うおそれがあります。
相続放棄が無効になるだけでなく、ほかの相続人や債権者から金銭の請求を受けたり、場合によっては刑事責任を問われたりする可能性もあります。
ここでは、実際にどのようなリスクが発生しうるのかを解説します。
相続放棄をした後に被相続人の預金を引き出すと、法定単純承認が成立して相続放棄が無効になる可能性があります。
法定単純承認と判断されると、被相続人の全財産を相続しなくてはなりません。
生前に被相続人が借金などの債務を抱えていた場合、相続人が返済義務を負うことになります。
被相続人の銀行口座から勝手に引き出した預金は、ほかの相続人も権利を有する共有財産の一部です(民法第898条)。
遺産相続で正当な理由なく一部の相続人が消費したりした場合、ほかの相続人は民法第703条(不当利得の返還義務)や第704条(悪意の受益者の返還義務等)に基づき、返還を請求することが可能です。
ほかの相続人から不当利得返還請求を受けた場合、勝手に引き出した預金のうち、自分の相続分を超える部分については返還しなければなりません。
なお、あなたが「自分に権利がない」と知りながら預金を引き出した「悪意の受益者」として判断された場合には、引き出したお金に加えて年3%の利息も上乗せしなければならないおそれもあります。
預金引き出し行為によって相続財産が減少し、ほかの相続人や債権者が具体的な損害を被った場合、不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性もあります(民法第709条)。
状況次第では、不当利益返還請求と損害賠償請求が同時におこなわれる場合もあり、大きな金銭的負担や精神的負担が生じることもあります。
勝手に預金を引き出して使い込むと、横領罪(刑法第252条)や窃盗罪(刑法第235条)などに該当する可能性があります。
ただし、刑法第244条では「配偶者・直系血族・同居親族などの間で生じた一部の犯罪や未遂罪については、刑の免除または告訴がなければ処罰できない」という親族相盗例が定められています。
したがって、実際に横領罪などで処罰を受けるのは極めて悪質なケースなどに限定され、かなりまれではあります。
相続放棄後に被相続人の預金を引き出したとしても、なかには例外的に法定単純承認が成立しないケースもあります。
一例として、以下のようなケースでは法定単純承認には該当しない可能性があります。
相続放棄後であっても、被相続人の葬儀費用を支払うために預金を引き出した場合は「法定単純承認には該当しない」と判断される可能性があります。
ただし、葬儀費用を被相続人の預金から支払う際は、あくまでも社会通念上相当な範囲内の金額である必要があります。
もし「大規模に葬儀を執りおこないたい」という場合は、自分の預金から支払うようにしましょう。
また、まずは一旦自分の預金から立て替えておき、あとでほかの相続人や相続財産清算人などに請求するなどの選択肢もあります。
支払い期限が到来した被相続人の借金を返済するために預金を引き出した場合も、「法定単純承認には該当しない」と判断される可能性があります。
ただし、これはあくまでも遺産相続することを前提とした話であり、相続放棄をすればそもそも被相続人の借金を支払う義務は一切なくなります。
うっかり支払ってしまうと、「相続する意思がある」とみなされて相続放棄できなくなる可能性があるため注意しましょう。
被相続人の借金などの返済については、相続放棄をしていないほかの相続人に任せるべきことです。
被相続人の預貯金を引き出したとしても、使う意思がなく、ほかの相続人や債権者に対して隠してもいなかった場合なども「法定単純承認には該当しない」と判断される可能性があります。
上記のような場合、単に相続財産を保存しているだけにすぎず、隠匿したり私的に消費したりしているわけではないからです。
ただし一般的には、わざわざ被相続人の預金を引き出して現金などの形で保存しておく必要性はありません。
ほかの相続人などから疑いを持たれるような行為をしてトラブルに発展するリスクを負うことは、避けたほうが無難です。
相続放棄後に預金を引き出してしまった場合、以下の3つのステップに従って冷静に対応し、問題を最小限に抑えましょう。
ここでは、それぞれの手順について解説します。
相続放棄後に被相続人の預金を引き出してしまったら、何よりもまず弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、引き出した状況から「法定単純承認に該当するかどうか」を法的視点から判断してくれます。
さらに、家庭裁判所への報告の要否や内容・ほかの相続人や債権者への説明方法など、状況に応じた具体的な行動指針を示してもらうことも可能です。
事態の悪化を防ぐためにも、なるべく早い段階で相談することをおすすめします。
なお、弁護士なら相続放棄の手続きを一任することもでき、具体的なサポート内容については以下の記事をご覧ください。
誤って預金を引き出してしまった場合は、基本的にそのまま被相続人の口座に再入金するのがベストです。
ほかの手段としては、たとえば専用の封筒に入れて「相続財産(被相続人〇〇の預金)」などと明記し、一切手を付けずに保管しておくのも有効です。
引き出したお金を消費したり、自分の財産と混ぜたりすると「相続財産を処分した」「隠匿した」などとみなされるリスクが高まるため避けましょう。
預金を引き出してしまった事実や経緯などについて、家庭裁判所・ほかの相続人・債権者などの関係者に対して正直に説明を果たすことも大切です。
たとえば、相続放棄の申述を家庭裁判所におこなう際は、預金引き出しの件に関する上申書や事情説明書を準備し、理由・引き出した金額・現在の保管状況・専門家への相談状況などを正直に記載しましょう。
ほかの相続人や債権者に対して説明する際は、弁護士を通じて事情の説明をおこなうのが効果的です。
過ちを犯した事実は変わりませんが、隠さずに誠意をもって対応することで、最終的に自身に対する不利益を最小限に抑えることにも繋がります。
ここでは、以下のような相続放棄後の預金の引き出しに関するよくある質問について解説します。
相続放棄後に被相続人の預金を引き出すと、高い確率でバレます。
相続人なら過去の入出金履歴の開示を請求できますし、被相続人に債務がある場合は債権者の財産調査によって預金の引き出しがバレることもあります。
預金の引き出しがバレると、相続放棄が無効になったり、不当利得返還請求や損害賠償請求を受けたりするおそれもあるため、くれぐれも止めましょう。
相続放棄する場合、法定単純承認に該当するような行為は避けましょう。
たとえば、以下のようなケースでは法定単純承認と認定される可能性があります。
相続放棄で避けるべき対応や相続放棄できなくなった場合の対処法など、相続放棄の注意点について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
社会通念上相当な範囲内の金額であれば、葬儀費用を相続財産から支出しても相続財産の処分にはあたらず、相続放棄が無効にならずに済む可能性があります。
ただし「社会通念上相当な範囲内の金額かどうか」は、被相続人の社会的立場や交友関係などに応じて個別に判断する必要があり、一律の明確な基準はありません。
なかには豪華な葬儀をおこなったことを債権者から指摘され、相続放棄の無効を巡るトラブルに発展するリスクもあります。
特に「相続人全員が相続放棄をする」というようなケースでは、できるだけ相続人の固有財産から葬儀費用を支出したほうがトラブルを避けられます。
どうしても葬儀費用を相続財産から支出する必要がある場合は、事前に弁護士に一度ご相談ください。
たとえ再入金を前提とした一時的な引き出しであっても、相続財産の処分と判断されて法定単純承認が成立し、相続放棄が無効になるおそれがあります。
相続放棄をおこなう場合、基本的に被相続人の預金を引き出すことは避けましょう。
相続放棄によって相続人が誰もいなくなった場合、被相続人の預金を含む相続財産は、家庭裁判所が選任した相続財産清算人が管理します。
相続財産清算人は、被相続人にお金を貸していた人や遺言で財産を受け取る人に対する支払い手続きなどを済ませたのち、残りがあれば国のものとして国庫に納めます。
相続人がいなくなった場合の手続きの流れについては、以下の記事や「裁判所ホームページ」などをご確認ください。
相続放棄をするのであれば、安易に被相続人の預金を引き出すのは避けましょう。
被相続人の預金を引き出したことは、ほかの相続人や債権者に簡単にバレてしまいます。
なお「相続放棄後に預金を引き出してしまった」「相続放棄の進め方がわからない」というようなケースでは、まずは弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士なら状況に応じた最適なアドバイスが望めるほか、代理人として相続放棄の手続きなどを代行してもらうこともでき、心強い味方として尽力してくれます。
当サイト「ベンナビ相続」では、相続問題や相続手続きが得意な全国の弁護士を掲載しています。
初回相談無料・電話相談可能などの法律事務所も多く、法律相談だけの利用も可能ですので、相続放棄に関する悩みがあるなら気軽にご相談ください。
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