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公開日:2019.12.26  更新日:2022.8.15

生前贈与は特別受益に当たる|持ち戻し計算の具体的なステップ

川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士
監修記事
Souzoku
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「父が亡くなる前に、兄が財産をもらっていた。それを考慮せずに遺産を分割するなんて納得がいかない!」このようなことがあれば、誰でも不公平感を感じることでしょう。

これを特別受益と呼びますが、普段の生活で慣れ親しんだものではありませんので、深く理解している人はいないのではないでしょうか。

そこでこの記事では、まず特別受益はどういったものかといった基本的な事柄を解説したのちに、特別受益を相続財産に加算して計算する「持戻し」についてと、特別受益を得た相続人に持ち戻しをどのように主張するかなどについて解説します。

また、特別受益は他の相続人の遺留分を侵害しているケースもありますので、遺留分侵害額請求についても紹介します。他の相続人が特別受益を得ていて、自分の相続分が不当に少なくなってしまいそうだという人は参考にしてください。

※法改正(2019年7月1日施行)により、遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求」と呼ばれるようになりました。

特別受益を受け取っておらず遺留分に納得いかないなら弁護士へご相談ください

特別受益に含まれるもの

  • 不動産を生前にもらっていた(生前贈与)
  • 被相続人(亡くなった人)から生きている時にまとまった金銭をもらっていた(生前贈与)
  • 法定相続人ではない第三者に遺言で財産を渡すことが書かれていた(遺贈)

いずれかのケースに当てはまるなら、弁護士に相談してみてください。

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特別受益の基礎知識

まずは特別受益とは何か、どういったものが特別受益に該当する財産なのかなど、「特別受益」への理解を深めましょう。

特別受益とは

特別受益とは、特定の相続人が、被相続人から婚姻・養子縁組・生計の資本として生前贈与や遺贈を受けた際の利益のことをいい(この贈与等の財産を「特別受益分」ともいいます)、特別受益を受けた相続人を「特別受益者」と呼びます。

相続人間での公平を確保するため、特定の相続人が被相続人から特別受益を受けている場合は、それを遺産分割の際に計算に入れて修正を行って分配します。

このように受益分を考慮することを冒頭でもお伝えした通り「特別受益の持戻し」といいます。

特別受益があったにもかかわらず、残った遺産のみを相続人で分けた場合、特別受益者以外の相続人は「不公平だ!」と感じてもそれは自然なことでしょう。

特別受益の持ち戻しは、そういった相続人間の不平等を解消するための手段なのです。

特別受益者の範囲

特別受益の持戻しの必要がある相続人は、被相続人から遺贈を受けた者、婚姻、養子縁組もしくは生計の資本として贈与を受けた者とされています(民法903条1項参照)。

このとき、特別受益者にあたるかどうかは、贈与等の時点で利益を受けた人が推定相続人であったか否かで判断していくことになります。

被代襲者に対する生前贈与等

被代襲者とは、代襲相続の際に「代襲される人」のことを言います。

被相続人の子や兄弟姉妹で相続人より先に死亡・欠格・廃除などで相続権を失った人がこれに当たります。

つまり、祖父A・父B・子Cがいるとして、BがAより先に死亡した場合はC(Aの孫)が代襲相続人(代襲して相続をする人)となりますが、この場合のBが被代襲者となります。

そして、被代襲者は、生前贈与等を受けた時点では推定相続人にあたるため、特別受益者の範囲に含まれます。

したがってBの死亡前にAがBに対して婚姻費用を出すなど生前贈与等にあたる行為をしていた場合、これらは代襲相続人の特別受益として算入することになります。

代襲者に対する生前贈与

代襲者は、代襲相続の際に「代襲する人」のことです。

上記の例でいえば、祖父Aの孫Cが父Bの代襲者となります。

代襲原因発生前に贈与等がなされた場合、Bは推定相続人ですが孫であるCは推定相続人にはなりません。

このとき、Cに対する生前贈与は他の第三者に対する贈与と変わりませんから、その後に代襲相続が発生したとしても、Cへの贈与は特別受益には含まれません。

逆に、代襲原因発生後に贈与等がなされた場合は、その贈与等を受けた時点で代襲者CはAの推定相続人となっているので、特別受益の持戻しが必要になります。

簡単に言えば、Bの死亡前にCがAから贈与を受けていた場合は特別受益には該当しませんが、Bの死亡後にCがAから贈与を受けていた場合は特別受益に該当することになります。

推定相続人となる前の生前贈与

養子縁組前に養子となる予定の者に与えた金銭や、婚姻前に婚約者に与えた金銭などが典型例です。

原則として、推定相続人となる前の贈与は特別受益には該当しません。

しかし、贈与が養子縁組や婚姻をするため、または縁組や縁談がまとまった結果など、推定相続人への贈与と実質的に同視できる場合には、特別受益に該当します。

相続人の配偶者その他親族に対する生前贈与等

特別受益の持戻しの対象は相続人に対する贈与に限られます。

相続人の親族に対して贈与があれば、相続人が間接的に利益を得ていても相続人の親族自身が推定相続人にならない限りは、特別受益には該当しません。

ただし、実際は推定相続人に対する贈与であるのに名義のみその配偶者にしてあるような場合は、実質的には相続人に対する贈与があったとみなして特別受益に該当すると判断されるケースもあります。

特別受益に含まれるもの

特別受益の財産の範囲は、下記のとおりです。

①婚資や養子縁組の費用

持参金や支度金など、婚姻や養子縁組のために被相続人に出してもらった費用が該当し、これらは原則として特別受益に該当します。

ただし、金額がごく少額であったり、被相続人の生前から持っていた資産と生活状況からみて扶養の一部であると認められたりした場合は、特別受益にはなりません。

結納金や挙式費用に関しては、実務上確立した扱いはありませんが、挙式費用は通常は遺産の前渡しとは考えられないので、特別受益に該当しないことが多いです。

②高等教育のための学資

高等教育は義務教育ではありませんが、現在の教育水準から考えるとほぼ義務教育(義務教育に準じたもの)といえます。

したがって、大学以上の教育や、留学・留学に近い海外旅行等の費用が「高等教育のための学資」に該当し、原則として特別受益と考えられます。

ただし、被相続人の生前の資産収入、社会的地位および生活状況などから、その程度の教育をするのが被相続人にとって自然であるような場合は扶養の範囲内と認められ、これらの学資は特別受益に該当しません。

③不動産の贈与

不動産はそれ自体で資産価値のある財産ですから、贈与を受けた人には大変な利益になることが普通です。

したがって、不動産の贈与は生計の資本としての贈与と認められる場合がほとんどであり、原則として特別受益に該当します。

④動産・金銭・社員権・有価証券・金銭債権の贈与

被相続人の資産収入、社会的地位および生活状況からみて、小遣い・慰労金・礼金の範囲を超え、相続分の前渡しと認められる程度の高額である場合は、原則として特別受益に該当します。

⑤借地権の承継・設定

借家権は原則として承継・設定ともに特別受益の問題は生じませんが、借地権に関しては「借地権相当額の贈与」にあたり、特別受益に該当します。

ただし、借地権の設定に際し、相続人が被相続人に対し世間相場の権利金を支払っている場合は、贈与とはいえないので特別受益には該当しません。

⑥土地などの遺産を無償で使用できることによる利益

例1:遺産である土地の上に相続人の1人が建物を建てて土地を無償で使用している場合

土地の無償利用の場合は、特別受益に該当すると判断されることがほとんどです。

1人の相続人が使用していることにより、その土地を貸し出せば得られる賃料分の損失が他の相続人に生じるためです。

評価は一概には決定できませんが、更地価額の1割~3割の範囲で特別受益額が決定されることが多いです。

例2:遺産である建物に相続人の1人が居住している場合

相続人が被相続人と同居していなかった場合は、家賃相当額の特別受益となります。

相続人が被相続人と同居していた場合で相続人に独立の占有権原がないような場合は、相続人は同居によって家賃の支払いを免れた利益はあるものの、被相続人の財産は何らの減少もないので、特別受益に該当しません。

⑦生命保険金

生命保険金は、原則として特別受益に該当しません。ただし、相続人間の不公平が到底認められないほどに著しいと評価すべき特段の事情がある場合は、特別受益に準じて扱われます。

⑧死亡退職金・遺族扶助料

遺族扶助料については、通常は法令等によって遺族の生活保障のため支払われる趣旨の金銭なので、特別受益に該当しない場合がほとんどでしょう。

しかし、死亡退職金については法的性質が多様なため、判断が分かれる場合があります。

つまり、賃金の後払いといえる場合は遺産となるので特別受益となる場合があります。

遺族の生活保障といえる場合は、遺産ではないので、特別受益とならないことになります。

死亡退職金をもらう人と相続人の範囲が同じかどうか、死亡退職金の受取人の決め方および金額の算定方法などから、死亡退職金が特別受益に該当するか否かが総合的に判断されることになります。

特別受益の評価

特別受益財産は、相続開始の時点を基準として評価額が決定されます(最判昭和51年3月18日)。

ただし金銭については、贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算した価額をもって評価され、不動産・動産・株式・ゴルフ会員権などは相続が開始した時点の時価評価とするのが一般的です。

建物や婚資として贈与された家財道具や自動車など、年数の経過によって減価するものについては、贈与した時点の価額を相続開始時の価額に評価換えする必要があります。

特別受益は持ち戻しを行う

これまで、特別受益が何かについて解説しました。

では、特別受益は相続の場でどのように考慮されるのでしょうか。ここで確認しておきましょう。

特別受益の持ち戻しとは

被相続人の生前に特別受益を受けた一部の相続人は、他の相続人よりも多く遺産を受け取っていますから不公平が生じます。

この不公平を解消するために、遺産分割では「特別受益の持ち戻し」を行います。

特別受益の持ち戻しとは、特別受益を相続財産に加算して、あらためて相続人で遺産協議分割を行いそれぞれの取り分を決めることです。

これは、民法903条によって定められています。

第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

引用:民法第903条

なお、特別受益に時効はありませんでしたが、法改正により、遺留分侵害額の計算上算定できる特別受益が相続開始後10年以内に制限されました。

また、遺産分割調停時の特別受益の主張についても10年の期間に制限される見込みです。

特別受益の持ち戻しの計算方法

特別受益の持ち戻しの計算方法は非常にシンプルです。

特別受益の金額と相続財産を合算し、特別受益を持ち戻した計算上の相続財産を、各法定相続人で分割します。図で説明すると次の通りとなります。

被相続人

上記の場合では、相続開始時の遺産が7,000万円で、特別受益が2,000万円ですから、それらを合計した9,000万円を相続財産として計算し、兄弟姉妹3人で分割します。

仮に法定相続分で計算した場合、長男は1,000万円、次男は3,000万円、長女は3,000万円を遺産として受け取ります。

以下では、詳しい計算方法を、具体例を用いて確認してみましょう。

みなし相続財産:特別受益のある相続分の計算方法

特別受益者がいる場合の持ち戻し免除について、まずは計算方法をステップに分けて理解しておきましょう。

①みなし相続財産の計算

まずは「みなし相続財産」を求めます。

民法上のみなし相続財産とは、被相続人が残した財産に特別受益を加えたもの、または寄与分を控除したもので、下記の計算式で求めます。

相続開始時の相続財産価額+贈与価額=みなし相続財産額

②本来の相続分の計算

次に、みなし相続財産と法定または指定の相続分を掛け合わせて、本来の相続分を求めます。

(みなし相続財産)×(法定または指定の相続分率)=本来の相続分

③具体的な相続分の計算

最後に、本来の相続分から贈与または遺贈価額を引いて、具体的な相続分を計算します。

(本来の相続分)-(贈与または遺贈価額)=具体的相続分

持戻し計算例

相続財産額が5000万円、相続人が妻A・嫡出子B・Cの3人の場合で計算してみましょう。

この場合、法定相続分に従うと、妻Aは相続財産の2分の1、子B・Cはそれぞれ相続財産の4分の1(2分の1×2分の1:相続財産から妻Aの相続分を引いた割合を子どもの人数で割った割合)を相続することになります。

①特別受益が本来の相続分を超えない場合

Bが200万円の生前贈与を受けており、Cは100万円の遺贈を受けている例で計算しましょう。

項目 計算式 金額
みなし相続財産額 5,000万円+200万円 5,200万円
妻Aの具体的相続分 5,200万円×2分の1 2,600万円
子Bの具体的相続分 5,200万円×4分の1-200万円 1,100万円
子Cの具体的相続分 5,200万円×4分の1-100万円 1,200万円

※ABCの具体的相続分を足すと、相続財産からCへの遺贈100万円を引いた4900万円になります。

②特別受益が本来の相続分を超える場合

Bが2000万円の生前贈与を受けており、Cが1000万円の遺贈を受けている例で計算しましょう。

項目 計算式 金額
みなし相続財産額 5,000万円+,2000万円 5,200万円
妻Aの具体的相続分 7,000万円×2分の1 2,600万円
子Bの具体的相続分 7,000万円×4分の1-2,000万円 1,100万円
子Cの具体的相続分 7,000万円×4分の1-1,000万円 1,200万円

Bが250万円分超過していることが分かります。

次に、Bを除いた相続人について、全相続人の相続分額の割合で、相続分を算定します。

項目 計算式 金額
AとCの相続分類 3,500万円+750万円 5,200万円
妻Aの具体的相続分 (5000万円-遺贈1000万円)×(3500万円÷4250万円) 2,600万円
子Bの具体的相続分 超過のためなし 1,100万円
子Cの具体的相続分 (5000万円-遺贈1000万円)×(750万円÷4250万円) 1,200万円

特別受益の持ち戻しは免除されることもある

特別受益の持ち戻しは必ず行うかといえばそうではありません。

特別受益があったとしても、持ち戻しをせずに相続開始時の遺産をそのまま相続人で分割することもあります。

これを特別受益の持ち戻し免除といいます。

特別受益の持ち戻し免除を行うのは、遺言者が遺言書などによってその旨の意思表示をした、といったことが代表的なケースです。

よくあるのが、生前に配偶者の生活基盤とすることを目的として、被相続人の自宅を生前贈与していた、といった場合です。

このように、遺言者に特別受益の持ち戻し免除の意思表示があった場合、特別受益者は遺産分割において特別受益の持ち戻しをする必要はありません。

民法第903条3項を根拠としています。

3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

引用:民法第903条3項

特別受益を主張する方法

では、相続人が特別受益を受けていた場合、具体的にどのようにして持ち戻し免除を主張して、相続人間での不公平を解消するのでしょうか。

まずは、遺産分割協議の場で特別受益者に対して特別受益があったことを伝えましょう。

特別受益者がそのまま合意してくれるのであれば、遺産協議書を作成し、持ち戻しを行って遺産分割をすればよいでしょう。

もし特別受益者が持ち戻しを拒否する場合は、遺産分割調停を申し立てて特別受益があったこと、特別受益の持ち戻しをしたいことを主張するようにしてください。

なお、遺産分割調停の場では、特別受益があったことを主張する場合は、客観的な根拠をもって主張・立証すべきです。

被相続人が所有していた財産が、どのように特別受益者に渡ったのかについて、証拠を集めておくようにしてください。

証拠としては、現金については被相続人の通帳や取引履歴などが挙げられます。

不動産や金融資産の贈与であれば、登記簿や不動産の査定書、売買契約書などを揃えるようにしてください。

特別受益は遺留分の侵害に当たるケースがある

特別受益が多大なものであった場合、あなたの遺留分が侵害されている可能性があります。

このときは、遺留分侵害額(減殺)請求を行わなければなりません。

ここではまず、遺留分とは何か、遺留分侵害に該当するのはどういったケースかについて理解しておきましょう。

遺留分とは

遺留分とは、被相続人が有していた財産の一部について、最低限の取り分として一定の法定相続人に保障する制度を言います。

遺留分権利者の範囲と割合

遺留分を有する者(遺留分権利者)は、配偶者相続人と血族相続人のうち第一順位(子どもや孫など直系卑属)と第二順位(直系尊属)です。

つまり、兄弟姉妹及びその代襲者以外の相続人とその承継人に認められた権利が遺留分ということになります。

子の代襲相続人も遺留分権利者にあたり、子どもが相続当時まだ胎児であった場合も、無事に出産すれば遺留分が認められます。

相続欠格者・相続を廃除された者・相続を放棄した者は遺留分権利者となりませんが、相続欠格・廃除は代襲原因になりますから(相続放棄の場合は代襲相続は起こりません)、その代襲者が相続人になるとともに遺留分権利者にもなります。

遺留分の計算

遺留分は、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額にその贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して算定します。

つまり、相続開始時に被相続人が有していた財産に、条件付の権利や遺贈、死因贈与、生前贈与、不相当な対価をもってした有償行為、特別受益などを足した額が遺留分算定の基礎となる財産となります。

なお、遺留分算定の基礎となる財産の評価基準時は、相続開始の時点となります。

遺留分侵害にあたるケース

遺留分の侵害にあたるケースは、相続人が現実に受ける相続利益が、算定された遺留分の額に満たない状態である場合です。

例えば、相続人が複数いるのにもかかわらず、「特定の相続人にすべての遺産を相続させる」という内容の遺言書が作られている場合です。

また、相続人に財産を遺したくないという理由から、死の直前に第三者に多額の財産を贈与している場合なども遺留分侵害といえます。

ただし、遺言書で遺留分を侵害する内容の遺言が遺されていたとしても、それが直ちに法的に無効になるわけではありません。

そのため、遺留分を侵害されている相続人が「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」によって自分の遺留分を取り戻さなければならないのです。

特別受益を得た相続人に遺留分を請求する場合

遺留分を侵害されているからといっても、何もせず黙っているだけでは救済されることはありません。

遺留分を侵害された相続人は、「遺留分侵害額請求」を行い、自分の遺留分を取り戻す必要があります。

ここでは、特別受益を得た相続人に遺留分を請求する方法についてご紹介いたします。

遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求権とは、遺留分を侵害された相続人が行使することのできる、遺留分を取り戻すための権利です。

遺留分侵害額請求権は、そのまま放置すると消滅時効にかかります。

したがって、遺留分権利者自身が、

  • 「相続の開始および侵害分について請求すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間」
  • 「相続開始の時から10年間」

という期間内に、遺留分侵害額請求権を行使しなければなりません。

遺留分侵害額請求の方法

遺留分侵害額請求の方式には特に決まりはなく、判例上は形成権とされることから、贈与を受けた人(受贈者)または遺贈を受けた人(受遺者)に対する一方的な意思表示だけで効果が生じるため、必ずしも裁判上の請求による必要はありません。

しかし、裁判外で請求する場合は、後日の証拠保全のため、通常は配達証明書付きで内容証明郵便を使用するのが一般的です。

また、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者にも侵害額請求権を行使する旨を知らせましょう。

そして、遺留分侵害額請求権を行使すると、遺贈→死因贈与→生前贈与の順番に遺留分の請求がなされます。

言い換えれば、新しい贈与から順に請求がなされるということです。

複数の遺贈がある場合には、遺贈間での先後関係はないとされ、全部の遺贈がその価額の割合に応じて遺留分請求されることになりますが、遺言者が遺言で別段の規定をしているときは、それに従います。

また、複数の贈与がある場合は、新しい贈与から遺留分請求し、順に前の(過去の)贈与に請求が及びます。

新旧の判断は登記や登録の日時ではなく、契約の日時によって行われます。

遺留分として請求した場合に得られる金額の計算例

相続財産額が5000万円、相続人が妻A・嫡出子B・Cの3人の場合で計算してみましょう。

ここでは、少し複雑なケースを考えてみます。

例1

Bが200万円の生前贈与を受けており(持戻し免除なし)、遺言書は「Cにすべての財産を相続させる」という内容になっているとします。

  • この場合、Bの特別受益の考慮と、A・Bの遺留分の考慮が必要となります。
  • 相続人が配偶者と子どもなので、総体的遺留分は相続財産の2分の1です。
  • 個別的遺留分は、配偶者Aが4分の1、子BCがそれぞれ8分の1になります。
項目 A B C
生前贈与 - 200万円 -
遺言書 - - 5,000万円
遺留分 相続財産の4分の1 相続財産の8分の1から特別受益200万円を控除した財産 相続財産の8分の1
Cへの遺留分侵害額請求の可否 -

①みなし相続財産は5200万円です。
②総体的遺留分は5200万円×2分の1=2600万円となります。
③妻Aはその2分の1の1300万円、Bはその4分の1の750万円が遺留分として確保されることになります。
④Bは200万円の特別受益を受けているため、550万円が遺留分となります。

例2

Bが1200万円の生前贈与を受けており(持戻し免除なし)、遺言書は「Cにすべての財産を相続させる」という内容になっているとします。

  • Bの特別受益の考慮と、A・Bの遺留分の考慮が必要となります。
  • 相続人が配偶者と子どもなので、総体的遺留分は相続財産の2分の1です。
  • 個別的遺留分は、配偶者Aが4分の1、子BCがそれぞれ8分の1になります。
項目 A B C
生前贈与 - 1,200万円 -
遺言書 - - 5,000万円
遺留分 相続財産の4分の1 相続財産の8分の1から特別受益1,200万円を控除した財産 相続財産の8分の1
Cへの遺留分侵害額請求の可否 × -
Bへの遺留分侵害額請求の可否 Cへの請求後、遺留分に満たない場合(不足している場合は○) - ×

①みなし相続財産は6200万円です。
②このため、総体的遺留分は6200万円×2分の1=3100万円となります。
③妻Aはその2分の1の1550万円、Bはその4分の1の775万円が遺留分として確保されることになります。

もっとも、Bは1200万円の特別受益を受けているため、遺留分を超過しています。したがって、Bは遺留分を主張することはできません。

今回の例ではAはCに遺留分侵害額請求を行えば、侵害された遺留分を取り戻すことができます。

しかし、例えばCへ遺留分侵害額請求をしてなお遺留分が侵害された状態(Cへの請求のみでは遺留分額に届かない状態)である場合は、次に特別受益者Bへ遺留分侵害額請求を行うことになります。

遺留分侵害額請求の効果

遺留分侵害額請求権が行使されて請求の意思表示が相手方に届くと、遺留分を侵害している分について、金銭支払請求権が発生します。

遺留分は放棄もできる

実は、遺留分は放棄することができます。

生前でも相続開始後でも遺留分の放棄は可能です。

例えば家族に重篤な障害を抱えている人がいて、その人のために遺産をすべて渡したい場合や、事業継続のため長男にすべてを相続させたいような場合、各相続人が遺留分の放棄をすることによって、そのようなことも実現できるようになります。

ただし、遺留分の放棄を無限定に認めると、相続人の自由意思での決定を阻害する場合があることから、生前の遺留分の放棄に関しては家庭裁判所での許可が必要とされていて、許可の基準も定められています。

遺留分の放棄の方法

相続開始前の遺留分の放棄は、遺留分権利者が家庭裁判所に申し立てをする方法でなされます。

相続開始後の遺留分の放棄は自由なので、家庭裁判所の許可は必要ありません。

遺留分の放棄の効果

  • 遺留分の放棄をしても、相続の放棄をしたことにはなりません。
  • 遺留分を放棄した人でも、相続が開始すれば相続人となります。

少し分かりにくいかもしれませんが、遺留分の放棄は「後で遺留分侵害額請求ができなくなる」ということにすぎません。

遺留分を放棄した人の相続分がなくなるわけではありませんし、遺言次第で相続の内容は変わってきます。

また、被相続人が遺言をしないまま死亡した場合には、当然ながら遺産分割協議の当事者にもなります。

その際に遺産を受け取りたくなければ、別途相続放棄等の手続きが必要になりますので、混同しないようにしましょう。

まとめ

特別受益とは、被相続人が亡くなる前に相続人が受けた贈与の利益のことです。

特別受益がある場合には相続人間で不公平がありますので、持ち戻しを行って遺産分割を行いましょう。持ち戻しはまずは遺産分割協議で話し合いを行います。

もし特別受益者が持ち戻しに合意しない場合には遺産分割調停を申し立てましょう。

なお、遺産分割調停では特別受益があったことをあなたが主張・立証する必要があります。

ご自身では難しいと判断した場合には弁護士に依頼するようにしましょう。

弁護士に依頼すると特別受益があったことの客観的事実の証拠を集めてもらえます。

また調停の場でもあなたの利益が最大となるように主張・立証を行ってもらえます。

ご自身での交渉で持ち戻しの実現が難しいと感じたら、相続に注力している弁護士に相談するようにしてください。

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Office info 202012231601 31191 w220 【不動産の相続なら】岡本政明法律事務所

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Office info 202208041512 65171 w220 桜井総合法律事務所

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KL2021・OD・157

この記事の監修者
川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士 (神奈川県弁護士会)
遺産分割など揉めやすい問題の交渉、調停、訴訟から、生前の相続対策として遺言や家族信託の活用についてまで幅広く対応。相談者の事情に合わせたオーダーメイドの解決を目指しており、多くの実績がある。

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【特別受益に含まれるもの】

・不動産を生前にもらっていた(生前贈与)
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相護士ナビ編集部

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