特別受益とは、特定の相続人が被相続人から受けた遺贈や生前贈与による特別な利益を指します。
相手方が贈与の事実を否定する場合、客観的な証拠なしに持ち戻しを求めても、調停・審判で認められるのは困難です。
被相続人から多額の生前贈与を受けているにもかかわらず、当人が認めないケースは珍しくありません。
本記事では、特別受益の種類別に有効な証拠の種類と集め方を解説します。
証拠が見つからない場合の対処法や、主張が制限されるケースも取り上げているので、相続問題に直面している方はぜひ参考にしてください。
特別受益を主張するには、原則として客観的な証拠が必要です。
遺産分割協議では、特別受益を受けた相手方が贈与の事実を認めないケースが少なくありません。
証拠がなければ、調停・審判でも特別受益が認定されるのは困難です。
特別受益とは、生前贈与や遺贈により特定の相続人が被相続人から受けた特別の利益です。
遺贈はすべて特別受益に該当します。
一方、特別受益にあたる生前贈与は以下の2つに限られます。
生前贈与が特別受益に当たるかどうかは、遺産の前渡しとみられる贈与か否かが判断基準です。
具体的には、親族間の扶養の範囲を超えているかどうかをもとに判断されます。
遺贈や贈与を受けた相続人がいる場合、得た利益を考慮せずに遺産分割をすると、相続人間に不公平が生じます。
そのため、特別受益の価額を相続財産に加算(持ち戻し)したうえで、各相続人の取り分を算出するのが民法上のルールです。
相手方が特別受益を受けた事実を否定する場合は、証拠の提示が不可欠です。
特別受益者(特別受益を受けた相続人)は、贈与の事実を素直に認めない傾向があります。
特別受益を受けたと認めると、自身が受け取れる相続分が少なくなるためです。
協議や調停で解決できない場合は、審判で裁判官に判断を求めます。
特別受益の立証責任は、特別受益を主張する側が負います。
裁判所に特別受益の主張を認めてもらうためには、客観的な証拠が必要です。
特別受益として認められ、適切な持ち戻し計算をおこなうには、次の三つの事項を証明する必要があります。
以下では、贈与の種類ごとに有効な証拠を解説します。
現金・預金の贈与を証明する証拠の例は、以下のとおりです。
| 証明すべき事項 | 証拠の例 |
|---|---|
| 贈与の合意 | ・贈与契約書などの合意書面 ・相続人の一部に贈与する意思が確認できる被相続人のメモや日記等の書面 ・被相続人から相続人への送金事実を表す資料(預金通帳・振込票の控えなど) |
| 生計の資本または婚姻・養子縁組のための贈与 | ・被相続人の資力を示す資料(贈与時の預金額を示す預金通帳など) ・贈与の動機を示す資料(日記・メール・被相続人から事情を聴いていた第三者の陳述書など) |
| 特別受益の価格 | ・被相続人の預金通帳・振込票の控え ・贈与を受けた相続人の預金通帳 ・売買契約書・領収書(現金手渡しの場合) |
口座の取引履歴は、いつ・いくら・どこへという金銭の流れは示せます。
しかし、お金の動きだけでは、贈与・貸付のいずれだったのか判断できません。
贈与として認めてもらうには、贈与の合意の事実が必要となります。
贈与の合意の事実を証明するには、取引履歴に加えてその金員を相続人の一人に与えるという被相続人の贈与の意思の存在を示す書類を組み合わせるのが重要です。
一方、現金手渡しの場合は、取引明細に記録が残りません。
そのため、被相続人が高額な現金を引き出した時期と、贈与を受けた相続人の入金履歴や高額なものを購入した時期・金額などを照らし合わせる必要があります。
居住用・事業用不動産の贈与を証明する証拠の例は、以下のとおりです。
| 証明すべき事項 | 証拠の例 |
|---|---|
| 贈与の合意 | ・贈与契約書などの合意書面 ・被相続人から相続人への送金事実を表す資料(預金通帳・振込票の控えなど) ・登記事項証明書 |
| 生計の資本または婚姻・養子縁組のための贈与 | ・被相続人の資力を示す資料(贈与時の預金額を示す預金通帳など) ・贈与の動機を示す資料(日記・メール・被相続人から事情を聴いていた第三者の陳述書など) |
| 特別受益の価格 | ・固定資産評価証明書 ・不動産査定書 ・売買契約書 |
登記事項証明書を確認すれば、いつ・誰から誰へ・どのような原因で所有権が移ったかを把握できます。
ただし、登記の事実だけでは、贈与か否かを判断できない場合があります。
贈与契約書や被相続人とのやり取り記録と合わせて、贈与の事実を補強するのが重要です。
購入資金を現金で贈与した場合は、登記情報に直接現れません。
被相続人の口座の動きと不動産売買契約書の日付・金額を照らし合わせて、間接的に贈与の事実を証明します。
被相続人名義の不動産を無償使用していた場合に証明すべき証拠の例は、以下のとおりです。
| 証明すべき事項 | 証拠の例 |
|---|---|
| 贈与の合意 | ・使用貸借契約書・覚書 |
| 生計の資本としての贈与 | ・被相続人の資力を示す資料(使用貸借時の預金額を示す預金通帳など) ・使用貸借の経緯を示す資料(日記・メール・被相続人から事情を聴いていた第三者の陳述書など) ・住民票 ・家計簿 |
| 特別受益の価格 | ・不動産業者による査定書 ・固定資産評価証明書 ・路線価図 |
実務上、土地の使用貸借は、使用借権の設定を受けたことにより、土地使用借権相当額について、遺産の前渡し(生計の資本としての贈与)として特別受益に該当すると考えられています。
一方、建物の使用貸借は恩恵的要素が強く、明け渡しが容易なため、特別受益に該当しないとする見解が一般的です。
なお、相続人が被相続人と同居していた場合は使用借権が認められないため、特別受益には該当しません。
車両の贈与・購入資金援助を証明する証拠の例は、以下のとおりです。
| 証明すべき事項 | 証拠の例 |
|---|---|
| 贈与の合意 | ・贈与契約書などの合意書面 ・被相続人から相続人への送金事実を表す資料(預金通帳・振込票の控えなど) ・車検証 ・車両購入明細書・売買契約書 |
| 生計の資本または婚姻・養子縁組のための贈与 | ・被相続人の資力を示す資料(贈与時の預金額を示す預金通帳など) ・贈与の動機を示す資料(日記・メール・被相続人から事情を聴いていた第三者の陳述書など) |
| 特別受益の価格 | ・車両購入明細書 ・売買契約書 |
車検証では、誰の名義か・いつ取得したかを確認できますが、それだけでは被相続人がお金を出したかどうかはわかりません。
被相続人の口座に購入時期・購入金額と一致する出金記録がある、といった証明が必要になるケースが多いでしょう。
生活費の援助が特別受益に該当することを証明する証拠の例は、以下のとおりです。
| 証明すべき事項 | 証拠の例 |
|---|---|
| 贈与の合意 | ・贈与契約書などの合意書面 ・被相続人から相続人への送金事実を表す資料(預金通帳・振込票の控えなど) |
| 生計の資本としての贈与 | ・被相続人の資力を示す資料(贈与時の預金額を示す預金通帳など) ・贈与の動機を示す資料(日記・メール・被相続人から事情を聴いていた第三者の陳述書など) ・送金履歴の累計がわかる資料(預金通帳・振込票の控えなど) ・家計簿 ・援助を受けた相続人の要扶養状態がわかる資料 |
| 特別受益の価格 | ・被相続人の預金通帳・振込票の控え ・援助を受けた相続人の預金通帳 ・家計簿 |
民法上、配偶者・直系血族・兄弟姉妹には互いに扶養義務があります。
扶養義務の範囲内での生活費援助は贈与にあたらず、特別受益として認められません。
親族間の扶養義務の範囲を超えるかどうかの判断は、相続人の要扶養状態や被相続人の扶養能力を検討したうえで、個別的に金額を推計するのが実務上の扱いです。
特別受益を主張する際には、贈与額のほか、援助を受けていた相続人の要扶養状態の立証が求められます。
学資・留学費用の援助が特別受益に該当することを証明する証拠の例は、以下のとおりです。
| 証明すべき事項 | 証拠の例 |
|---|---|
| 贈与の合意 | ・贈与契約書などの合意書面 ・被相続人から相続人または学校への送金事実を表す資料(預金通帳・振込票の控えなど) ・学費の領収書・学費納入書類 |
| 生計の資本としての贈与 | ・被相続人の資力を示す資料(贈与時の預金額を示す預金通帳など) ・被相続人の社会的地位に関する資料 ・被相続人と相続人全員の学歴に関する資料 ・贈与の動機を示す資料(日記・メール・被相続人から事情を聴いていた第三者の陳述書など) |
| 特別受益の価格 | ・被相続人の預金通帳・振込票の控え ・学費の領収書 |
学費・留学費用の援助を受けた事実だけでは、基本的に特別受益と認められません。
被相続人の資力・社会的地位・学歴等を勘案して判断されます。
相続人全員が同程度の教育を受けている場合は、特別受益にあたりません。
借金の肩代わりを証明する証拠の例は、以下のとおりです。
| 証明すべき事項 | 証拠の例 |
|---|---|
| 贈与の合意 | ・贈与契約書などの合意書面 ・被相続人から相続人への送金事実を表す資料(預金通帳・振込票の控えなど) |
| 生計の資本としての贈与 | ・被相続人の資力を示す資料(贈与時の預金額を示す預金通帳など) ・贈与の動機を示す資料(日記・メール・被相続人から事情を聴いていた第三者の陳述書など) ・被相続人が求償権を放棄したことがわかる資料(返済を求めない旨のメールなど) |
| 特別受益の価格 | ・被相続人の預金通帳・振込票の控え ・完済証明書 |
特別受益にあたるか否かは、肩代わりした借金が相当額で、被相続人が求償権を放棄したことを認める事情があるかどうかを基準に判断されます。
求償権とは、債務者が返済すべき債務を代わりに返済した人が、債務者に対して立替分の返済を請求できる権利です。
以下のようなケースは、求償権を放棄した事情として認められる可能性が高いです。
特別受益として主張する場合は、借金が多額であることと、被相続人が当該相続人に返済を求めなかった事実を証明する必要があります。
事業用資金の援助を証明する証拠の例は、以下のとおりです。
| 証明すべき事項 | 証拠の例 |
|---|---|
| 贈与の合意 | ・贈与契約書などの合意書面 ・被相続人から相続人への送金事実を表す資料(預金通帳・振込票の控えなど) |
| 生計の資本としての贈与 | ・被相続人の資力を示す資料(贈与時の預金額を示す預金通帳など) ・贈与の動機を示す資料(日記・メール・被相続人から事情を聴いていた第三者の陳述書など) ・援助を受けた相続人の開業届の控え ・法人登記事項証明書 |
| 特別受益の価格 | ・被相続人の預金通帳・振込票の控え ・援助を受けた相続人の預金通帳 |
預金通帳・取引明細・開業届の控えを組み合わせ、お金の動きと事業開始のタイミングを照らし合わせましょう。
被相続人と相続人のメールやメモ・手帳等に資金援助を示すやり取りが残っていれば、贈与の合意を裏付ける証拠として有効です。
特別受益の主張は、証拠集めから始まります。
まずは当事者間の話し合いである遺産分割協議で主張し、合意による解決を目指しましょう。
話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停・審判で解決を図れます。
特別受益を主張する側は、相手方が被相続人から贈与を受けた事実を証明する必要があります。
まずは被相続人の居宅で預金通帳・日記・手紙・契約書類などを探し、関連しそうなものはすべて保管しましょう。
不動産の贈与がある場合は、法務局で登記事項証明書を取得します。
被相続人名義の預金の取引履歴は、相続人の立場でも開示を請求できます。
相手方が証拠を開示しない場合や、証拠収集の方法がわからない場合は、弁護士への相談を検討してください。
弁護士会照会によって、相手方が任意に開示しない資料を取得できる場合があります。
収集した証拠をもとに、遺産分割協議の場で特別受益の持ち戻しを主張します。
協議では、相手を感情的に責めるのではなく、証拠を根拠に話し合いを進めるのが重要です。
特別受益の額と持ち戻し計算の結果を具体的に示しましょう。
相手方が受けた贈与が相続分の前渡しにあたる、という法律上の考え方を説明できるのが望ましいです。
法的根拠を示せば、相手も感情論では反論しにくくなります。
相続人全員が合意すれば、内容を遺産分割協議書に明記し、各自署名・押印します。
遺産分割協議で話がまとまらない場合や、相手が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
遺産分割調停とは、調停委員が間に入り、当事者間の話し合いを仲介する手続きです。
当事者同士が直接向き合う必要がないため、精神的な負担を軽減できるでしょう。
調停の場では、収集した証拠を提出し、特別受益の事実と持ち戻しの根拠を説明します。
調停委員が中立の立場から相手方に働きかけてくれるため、協議の場では聞き入れてもらえなかった主張が認められることもあるでしょう。
全員が合意すれば、調停委員がその内容をまとめた調停調書を作成します。
調停調書は確定判決と同じ効力を持ちます。
調停でも合意に至らない場合、手続きは自動的に審判へ移行します。
審判は話し合いの場ではありません。
裁判官が、各当事者の主張と提出された証拠をもとに判断を下す手続きです。
特別受益の有無や金額の認定においては、提出した証拠が結論を左右します。
審判に臨む前に、どれだけ客観的で有力な証拠を揃えられるかが問われるでしょう。
客観的な証拠がそろっていても、法律上の規定や被相続人の意思によって、特別受益の持ち戻しを主張できない場合があります。
以下では、特別受益の持ち戻しが制限される5つのケースを解説します。
被相続人が、特別受益の持ち戻し免除の意思表示をしていた場合、持ち戻しの主張は認められません。
意思表示には明示と黙示の二種類があります。
| 意思表示の種類 | 概要 |
|---|---|
| 明示の意思表示 | 遺言書や贈与契約書などの書面に持ち戻しを免除する旨が記載されているケース |
| 黙示の意思表示 | 書面への記載がなくても状況から免除の意思が読み取れるケース |
黙示の意思表示が認められるかどうかは、次のような要素を総合的に考慮して判断されます。
たとえば、事業承継に必要な財産の贈与、障害や病気を抱える相続人への贈与などが、黙示の免除と認められる可能性があります。
被相続人が20年以上連れ添った配偶者に居住用不動産を贈与した場合、原則として持ち戻しは求められません。
婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与は、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定されるためです。
被相続人が明示的に免除の意思表示をしていなくても、法律上、免除の意思があったものと推定されます。
そのため、配偶者以外の相続人は、原則として長年連れ添った配偶者が贈与された自宅について特別受益を主張できません。
相続人の配偶者や子など相続人以外への贈与は、基本的に持ち戻しの対象外です。
たとえば、被相続人が長男の妻や孫に直接財産を贈与しても、長男への特別受益にはあたりません。
ただし、形式上は相続人以外への贈与であっても、実質的に特定の相続人が利益を受けたと評価できる場合は例外です。
例えば、被相続人が長男の配偶者に贈与した金銭が、長男の住宅購入資金に充てられていた場合などです。
贈与された財産が少額である場合は、特別受益としての持ち戻しを主張しても認められないでしょう。
親族間の扶養義務の範囲と評価される可能性が高いためです。
お年玉や入学祝い、お中元・お歳暮、病気の見舞金、小遣い程度の生活費援助などが典型的な例です。
いくら以上が特別受益になるという明確な金額基準はありません。
被相続人の資産状況や社会的地位、他の相続人とのバランスを踏まえて個別に判断されます。
一回あたりの金額が少額でも、長期間にわたって多数回なされ、総額が多額になった場合には特別受益と認められる余地があるでしょう。
贈与された財産が相続人の責任ではない事情で失われた場合、持ち戻しの対象から外れます。
生前贈与で受け取った家屋が、地震・火災・水害などの天災によって滅失したケースが代表例です。
相続人の管理の問題ではなく不可抗力による滅失として扱われるため、持ち戻しを求めても認められません。
ただし、滅失した家屋に火災保険がかけられており、相続人が保険金を受け取っていた場合は、その保険金が代わりに特別受益の対象となる可能性があります。
特別受益の証拠が手元にない場合でも、間接証拠の積み上げや、弁護士・裁判所を通じた調査手続の活用により、立証できる場合があります。
以下で詳しく解説します。
特別受益を直接証明する書類がなくても、複数の間接証拠を組み合わせると、贈与の事実を推認させられる場合があります。
間接証拠とは、贈与の事実そのものではなく、贈与があったことをうかがわせる周辺事実を示す証拠です。
具体的には、以下のようなものが間接証拠として活用できます。
証拠の組み合わせにより、裁判所に贈与の事実を合理的に推認できると判断してもらえる場合があります。
遺産分割手続きを弁護士に依頼すると、弁護士会照会(弁護士法23条照会)を活用した調査をおこなってもらえる場合があります。
弁護士会照会とは、弁護士が受任した事件に必要な範囲で、弁護士会を通じて金融機関などに情報提供を求められる制度です。
被相続人の取引履歴は相続人自身でも金融機関に請求できます。
他方、相手方の口座情報や確定申告書類などは、共同相続人の立場では通常入手できません。
相手方が任意の開示を拒んでいる状況でも、弁護士に遺産分割の手続きを依頼すれば、客観的な資料を確保できる可能性が高まります。
調停・審判の場では、裁判所を通じて金融機関や公的機関などに調査や文書の提出を求める手続きを利用できます。
調査嘱託は、裁判所が金融機関や公的機関などに対して、必要な情報の調査・回答を求める手続きです。
文書送付嘱託とは、裁判所が特定の機関に対して、関連する文書の送付を求める手続きです。
相手方の預金明細など、共同相続人という立場では直接入手できない資料でも、裁判所を通じて開示を受けられる場合があります。
特別受益に関する問題を弁護士に依頼すると、証拠収集・交渉・法的手続きに至るまで、一貫したサポートを受けられます。
弁護士であれば、贈与が特別受益にあたるかどうか、的確な判断が可能です。
手元に証拠がない場合や相手が開示を拒んでいる場合でも、弁護士会照会などの制度を活用して証拠を取得できる可能性があります。
特別受益の評価や持ち戻し計算など、専門知識が必要な作業も正確に対応してもらえるため安心です。
計算の誤りによる不利益を防ぎ、主張の説得力も高められます。
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本章では、特別受益の主張や証拠に関して、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式で解説します。
相続開始の時から10年が経過すると、原則として、特別受益を主張できなくなります。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は、相続開始から10年経過後でも特別受益を主張できる可能性があります。
また、相続人全員の同意がある場合は、相続開始時から10年が経過していても、特別受益を考慮した遺産分割ができます。
もっとも、長期間経過すると特別受益を示す証拠が散逸し、関係者の記憶も薄れます。
遺産分割を円滑に実施するためには、相続開始後できるだけ早く手続きを進めるのが望ましいでしょう。
相続人を受取人に指定した死亡保険金や死亡退職金は、原則として特別受益にはあたりません。
保険契約や勤務先の規定に基づいて受取人が直接取得するものだからです。
ただし、死亡保険金については、例外的に特別受益と認められるケースもあります。
他の相続人との間で著しい不公平が生じるほど、保険金の額が遺産総額に比して高額な場合です。
個別の事情については弁護士への相談をおすすめします。
特別受益として主張できる可能性があります。
民法は、特別受益者の範囲について、贈与時点で推定相続人であることを要求していないためです。
ただし、学説・実務上で見解は分かれています。
贈与を受けた時点では相続人ではなかった以上、原則持ち戻しを否定すべきという見解もあります。
実務では、贈与後に自らの意思で縁組・婚姻により推定相続人となった場合には、特別受益と評価される傾向が多い印象です。
主張が認められるかどうかは個別の事情によって異なるため、弁護士への相談をおすすめします。
特別受益を主張するには、客観的な証拠が必要です。
有効な証拠は贈与の種類によって異なります。
現金・預金であれば預金通帳や振込票、不動産であれば登記事項証明書や贈与契約書が基本です。
直接証拠が見つからない場合でも、日記・メール・第三者の証言といった間接証拠の積み重ねによって立証できる場合があります。
ただし、持ち戻し免除の意思表示があった場合など、証拠がそろっていても主張が認められないケースもあります。
特別受益の主張は、証拠収集・評価・持ち戻し計算など、専門的な知識が必要な場面が多いです。
手元に証拠がない場合や相手が開示を拒んでいる場合は、「ベンナビ相続」を活用のうえ、弁護士への相談を検討してください。
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