「遺産のことで兄弟と揉めている」「話し合いが進まず、どうすればいいかわからない」
家族間の相続トラブルは、一度こじれると自力での解決が難しくなります。
令和6年度の司法統計によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件(調停・審判)の新受件数は年間19,550件。遺産額5,000万円以下の家庭が全体の約78%を占めており、「うちは資産家じゃないから関係ない」とは言い切れない状況です。
本記事では、遺産相続トラブルのよくある7つのケースと対処法、未然に防ぐための具体策、実際の解決事例を紹介します。今まさにトラブルを抱えている方も、将来に備えたい方も、状況に合ったパートから読み進めてみてください。

※令和6年 司法統計年報(家事編)第2表の審判事件・調停事件の新受件数を合算して算出
遺産相続をめぐるトラブルは、年々増え続けています。令和6年度の司法統計によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件(調停・審判)の新受件数は19,550件。昭和60年の6,176件と比較すると、約40年で3倍以上に増加しています。
また、審判となる遺産の額を見てみると、遺産額5,000万円以下の案件が全体の約78%。1,000万円以下のケースも約36%にのぼります。
背景には、核家族化や親族間のコミュニケーション不足、不動産など分割しにくい財産の割合が高いことなどがあります。生前は仲の良かった兄弟でも、いざ遺産分割の話になると意見が食い違い、感情的な対立に発展するケースは珍しくありません。

遺産相続トラブルというとかなり高額のイメージがあるかもしれませんが、実際には比較的少額でも揉めているケースが多いです。
遺産相続トラブルには、いくつかの典型的なパターンがあります。ここでは実際に多い7つのケースと、それぞれの対処法を紹介します。自分の状況に当てはまるものがないか、確認してみてください。
「全財産を長男に譲る」など、極端な内容の遺言書が見つかりトラブルへ発展するケースです。遺言書で財産の大部分を特定の相続人に渡す内容になっていると、他の兄弟姉妹から不満の声が上がります。
争いに発展しやすいポイントは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、遺留分の侵害です。配偶者や子どもには、法律上保障された最低限の取り分(=遺留分)があります。遺言書の内容が遺留分を下回っていると、遺留分侵害額請求に発展する可能性があります。
2つ目は、遺言書の有効性です。作成時に認知症の疑いがあった場合や、日付・署名の不備がある場合は、遺言自体が無効になるケースも少なくありません。
いずれも感情的な対立に発展しやすく、話し合いだけでは解決が難しい類型です。
遺留分を侵害されている場合は、遺留分侵害額請求を検討しましょう。
請求期限は「相続開始および遺留分侵害を知った時から1年以内」です。遺留分侵害の事実を知らなかった場合でも、相続開始から10年が経過すると請求権が消滅します。期限を過ぎてから気づいても取り返しがつかないため、早めの対応が欠かせません。
遺言書の有効性に疑問がある場合は、作成時の判断能力や形式面に問題がないか確認する必要があります。ただし、有効・無効の判断には専門的な知識が求められるため、早い段階で弁護士に相談して法的な権利を整理するのがおすすめです。
「兄だけ留学費用を出してもらっていた」「姉だけマイホーム購入の頭金を援助してもらっていた」など、特定の相続人だけが親から多額の援助を受けていた不公平感からトラブルに発展するケースです。
法律上、相続人が生前に受けた多額の援助は「特別受益」として扱われる可能性があります。特別受益は、生前にもらった分を相続財産に一度戻して計算し直す仕組み。援助を受けた相続人は、遺産分割で受け取れる額が減ることになります。
ただし、何が特別受益にあたるかの判断は簡単ではありません。「学費は特別受益か」「結婚資金はどうか」など、金額や家庭の経済状況によって結論が変わるため、相続人同士の話し合いだけでは折り合いがつかないケースが多くなっています。
まずは、被相続人が生前にどのような援助をおこなったか、金額・時期・目的を整理しましょう。通帳の履歴や贈与契約書があれば、援助を証明する有力な資料になります。
特別受益に該当するかの判断は、家庭の経済状況や援助の性質によって変わります。自己判断で主張しても相手が納得しないケースがほとんどのため、弁護士に相談して法的な根拠を整理したうえで交渉に臨むのがおすすめです。
「親の通帳を確認したら、死亡直前に数百万円単位の引き出しがあった」など、同居していた親族による使い込みが疑われると、家族間の信頼関係は一気に崩れます。
使い込みがトラブルになりやすい理由は、証拠の確保が難しい点にあります。引き出した本人は「親に頼まれた」「介護費用に充てた」と主張するのが典型的なパターンです。領収書や介護記録が残っていなければ、水掛け論のまま長期化します。
使い込みの金額が大きい場合や、説明に明らかな矛盾がある場合は、不当利得返還請求訴訟にまで発展するケースも珍しくありません。
最優先は証拠の確保です。相続人であれば、金融機関に対して被相続人名義口座の取引履歴の開示を請求できます。出金日・金額・場所を時系列で整理し、介護記録や施設費用と突き合わせて不審な出金を特定しましょう。
ただし、使い込みの立証や返還請求の手続きには専門知識が求められます。時間が経つほど証拠が失われるリスクも高まるため、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。
現金と異なり、不動産は物理的に分けられないため、遺産のなかでもトラブルになりやすい財産です。
よくあるのが、長男が実家に住み続けたいが、他の兄弟姉妹へ相続分に見合った現金(代償金)を支払う余裕がないパターンです。「出ていけとは言えないし、かといってタダで住まれるのも不公平」と感情がこじれていきます。
とりあえず共有名義にするケースもありますが、売却や活用で意見が割れると、誰も手を出せないまま何年も放置される事態になりかねません。
さらに、不動産の評価方法でも対立が起きやすくなっています。たとえば3,000万円の実家でも、固定資産税評価額なら約2,100万円、実勢価格(時価)なら3,000万円前後と、評価方法によって1,000万円近い差が生じることがあります。
不動産の分割で揉めている場合、まずは分割方法の選択肢を知っておきましょう。
| 分割方法 | 内容 |
| 現物分割 | 土地を物理的に分ける |
| 代償分割 | 不動産を取得する相続人が、他の相続人に現金で補填する |
| 換価分割 | 不動産を売却し、現金を分配する |
| 共有 | 複数人で共有名義にする |
実家を手放したくない場合は「代償分割」、全員が納得できる公平さを重視するなら「換価分割」が現実的な選択肢です。共有名義は将来の売却や活用で揉める原因になるため、できる限り避けてください。
不動産の評価額で折り合いがつかない場合は、不動産鑑定士に依頼して適正価格を算出してもらう方法があります。どの分割方法が最適かは家庭の事情によって異なるため、弁護士に相談して方針を固めましょう。
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、法定相続分に上乗せして遺産を受け取れる制度です。
典型的なのは介護をめぐる対立です。例えば、同居して親の世話をしてきた姉が「私がいなければ施設費用がかかっていた」と主張する一方、弟は「同居して家賃が浮いていたはずだ」と反論するケースはよく見られます。
ただし、法的に寄与分が認められるハードルは意外と高く、単に同居して身の回りの世話をしていた程度では認められにくいのが現実です。
寄与分を主張するには、介護日誌や領収書など客観的な証拠が必要になります。証拠がなければ水掛け論になり、調停や審判に持ち込まれるケースも少なくありません。
寄与分を主張するには、介護の期間・内容・頻度を示す客観的な記録が欠かせません。手元にある以下のような資料を整理しておきましょう。
一方、寄与分を主張された側は、相手の主張が法的に妥当かどうかを冷静に見極める必要があります。寄与分が認められるには「特別の寄与」が求められるため、主張の内容がその基準を満たしているか、弁護士に確認しましょう。
寄与分の金額算定は複雑で、感情的な対立にも発展しやすい論点です。主張する側・される側どちらの立場でも、早めに弁護士へ相談して客観的な判断を仰ぐことをおすすめします。
普段まったく交流のない相続人が突然現れ、権利を主張してくるケースです。被相続人の戸籍を調べて初めて、以下のような事実が判明することがあります。
こうした相続人は連絡先すら分からないケースも多く、突然現れて法定相続分を強く主張してくることもあります。
遺産分割協議書には相続人全員の署名・押印が必要です。一人でも反対したり、連絡がつかなかったりすると、手続きが完全に止まってしまいます。
まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、法定相続人を正確に確定させましょう。前妻の子や認知した子も他の子と同等の相続権を持つため、遺産分割協議への参加は避けられません。
連絡先が不明な場合は、戸籍の附票から現住所を調査できます。それでも連絡がつかない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法もあります。
疎遠な相続人との交渉は、当事者同士で直接やり取りすると感情がこじれやすいため、弁護士を間に立てて進める方が安全です。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要ですが、人数が多かったり全国各地に散らばっていたりすると、話し合いの場を設けること自体が難しくなります。
特に厄介なのが、過去の相続手続きを放置していたケースです。代を重ねるごとに相続人が増え、数十人に膨れ上がることもあります。一人ひとりに連絡を取り、合意を得るだけでも膨大な時間と労力がかかります。
書類の郵送でやり取りを進めても、返送が来ない、連絡がつかないといった事態が重なると、手続きは長期化する一方です。相続税の申告期限(相続開始から10ヵ月以内)に間に合わなくなるリスクも出てきます。
こうした状況では、一部の相続人だけで話を進めたくなりますが、他の相続人の不信感を招き、さらに揉める原因になるため注意が必要です。
遺産分割協議は、法律上対面で行う必要はありません。電話・メール・オンライン会議でも進められます。
遺産分割協議書も、郵送での持ち回り署名が有効です。代表者を一人決めて窓口を一本化すると、やり取りがスムーズになります。
手間や精神的負担を減らしたい場合は、弁護士を代理人に立てるのもひとつの方法です。協議が長期化しそうなときは、早めに調停を申し立てることも検討してみてください。
相続トラブルは、事前の準備で防げるケースが多いです。「うちは大丈夫」と思っている家庭ほど、いざという時に揉めやすい傾向があります。ここでは、生前にできる4つの対策を紹介します。
相続トラブルを防ぐ最も効果的な方法は、法的に有効な遺言書を用意しておくことです。遺言書には主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
| 作成方法 | 本人がすべて手書き | 公証人が作成 |
| 費用 | 無料(保管制度利用は3,900円) | 数万円〜(財産額に応じて変動) |
| 無効リスク | 形式不備で無効になることがある | 公証人が関与するため、ほぼなし |
| 保管 | 自宅 or 法務局の保管制度 | 公証役場で原本を保管 |
| 検認手続き | 必要(法務局保管の場合は不要) | 不要 |
おすすめは公正証書遺言です。費用はかかりますが、形式不備で無効になるリスクがほぼなく、紛失や改ざんの心配もありません。
遺言書を作成する際は、遺留分に配慮した内容にすることが重要です。遺留分を無視した遺言書は、かえってトラブルの火種になります。

付言事項として家族への想いやメッセージを書き添えるのも有効です。「なぜこの分け方にしたのか」を本人の言葉で残しておくと、相続人の納得感が大きく変わります。
何がどれだけあるか分からない状態は、相続人同士の不信感につながります。
預貯金・不動産・有価証券だけでなく、借金やローンなどの負債も含めた一覧表(財産目録)を作成しておきましょう。財産目録に記載すべき主な項目は以下のとおりです。
通帳や権利証の保管場所を家族に伝えておくか、信頼できる第三者に託しておくことも重要です。「知らなかった」「見つからなかった」が原因で揉めるケースは少なくありません。
「相続の話は縁起が悪い」と避けてしまう家庭は多いですが、親の意向と子どもの希望をすり合わせる機会を持つことが、トラブル予防に大きく役立ちます。家族会議で話し合っておきたい主なテーマは以下のとおりです。
お盆やお正月など家族が集まるタイミングを利用して、相続の話をタブー視しない空気を作ることから始めてみてください。

家族だけで話がまとまらない場合は、弁護士やファイナンシャルプランナーなどの専門家を交えるのも有効です。第三者が入ることで、感情的な議論になりにくくなります。
不動産など分割しにくい財産がある場合、代償分割の資金を生命保険で準備しておくのがおすすめです。生命保険が相続対策に有効な理由は、大きく2つあります。
1つ目は、遺産分割の影響を受けない点です。生命保険金は原則として受取人固有の財産となるため、原則として遺産分割協議の対象になりません。相続人同士で揉めていても、受取人は保険金を確実に受け取れます。
2つ目は、相続税の非課税枠がある点です。「500万円×法定相続人の数」までは非課税となるため、節税効果も期待できます。
たとえば、実家を長男に相続させたい場合、長男を受取人にした生命保険に加入しておけば、保険金を他の兄弟姉妹への代償金に充てることができます。不動産を手放さず、かつ公平な分割を実現できる手段です。
実際に弁護士へ依頼することで、複雑な相続トラブルが解決に向かった事例(体験談)を紹介します。どのようなサポートを受けられるのか、参考にしてみてください。
親の財産を管理していた長男が「財産は無い」と主張し、遺産内容の開示を拒否。困った他の相続人が弁護士に相談しました。弁護士が受任後、以下の調査を実施しました。
調査の結果、長男が開示していなかった財産が判明。正確な遺産の全体像を把握したうえで、遺産分割協議へと進めることができました。
「財産を隠されているかもしれない」と感じても、個人で金融機関や役所に調査をかけるのは簡単ではありません。弁護士に依頼すれば、法的な権限を使って財産の実態を明らかにできます。
父から相続した賃貸ビルの管理を兄が引き継ぎ、当初は賃料を依頼者に分配していたものの、数年後から支払いを停止。何度交渉しても応じなかったため、弁護士に依頼しました。
弁護士は受任後、管理会社の決算書などから賃料の総額と必要経費を精査し、依頼者に分配されるべき正確な金額を算出。その根拠をもとに訴訟を提起しました。
和解の結果、相続割合に応じた賃料3,500万円の全額が支払われました。当事者間の交渉では一切応じなかった相手も、法的手続きに入ったことで解決に至ったケースです。
甥・姪との意見対立に加え、相続人である母親の認知症が進行し成年後見人がつく事態になったケースです。遺産分割協議は2年以上にわたり停滞していました。
弁護士が受任後、双方の主張を整理したうえで、成年後見人がついている母親の生活保障を考慮した代償分割を提案。最終的に、依頼者が遺産をすべて取得し、母親の取り分は今後の生活を見据えた流動資産(現金・預貯金)で支払う形で合意に至りました。
高額な遺産でなくても、認知症や親族間の対立が絡めば協議は長期化します。関係者それぞれの事情に合った分割方法を設計できるのが、弁護士に依頼する大きなメリットです。
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最後に遺産相続トラブルについて、よく寄せられる質問をまとめました。気になるものがあればぜひチェックしてください。
遺言書があっても、トラブルが起こるケースはあります。よくあるのが、自筆証書遺言の形式不備です。日付・署名・押印のいずれかが欠けているだけで、遺言書自体が無効になります。
また、特定の相続人に財産が偏った内容であれば遺留分侵害額請求の対象になります。遺言書の文言が曖昧な場合や、作成時に認知症の疑いがある場合は、遺言の有効性そのものが争点になることも。
トラブルを防ぐには、形式不備のリスクがない公正証書遺言で作成し、保管場所を家族に伝えておくことが大切です。
最優先は、相続に関する書類・通帳・遺言書などを手元に集めておくことです。紛失すると、後から事実関係を確認できなくなります。
そのうえで、早めに弁護士へ相談し、状況を整理しましょう。自己判断で遺産分割協議書などに署名・押印すると、後から取り消すのが難しくなります。対応が遅れるほど関係もこじれやすくなるため、初回無料相談などを活用して早めに動くことが大切です。
ケースにより数ヶ月から数年まで、大きな幅があります。
| 解決方法 | 目安期間 |
| 遺産分割協議で合意 | 簡易なもので数週間〜数ヶ月、複雑なものは1年〜 |
| 調停(家庭裁判所) | 6ヶ月〜1年半程度 |
| 審判・裁判 | 1年〜3年以上 |
令和6年度の司法統計によると、調停で最も多い解決期間は「6ヶ月〜1年以内」です。ただし、1年以上かかるケースも全体の3割以上を占めています。
相続人の人数が多い場合や、不動産の評価が争点になる場合は長期化しやすい傾向にあります。早期に弁護士へ相談し、協議の段階で解決を目指すのが、時間・費用の両面で有利です。
遺産分割請求そのものに時効はありませんが、関連する手続きには期限が設けられているため注意が必要です。
例えば、遺留分侵害額請求は「相続開始および遺留分侵害を知った時から1年」で権利が消滅します。さらに、相続税の申告・納付は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」に行わなければなりません。
まだ時間があると思っていても、期限は意外と早く訪れます。権利を失わないためにも、早めに弁護士へ相談しておきましょう。
遺産相続トラブルは、資産家だけの問題ではありません。裁判所の司法統計が示すとおり、遺産額5,000万円以下のごく普通の家庭が全体の約78%を占めています。
法的に有効な遺言書を作成し、財産の全体像を家族で共有しておくだけでも、トラブルのリスクは大きく下がります。
すでにトラブルが起きている場合は、自己判断で動くより早い段階で弁護士に相談するのがおすすめです。対応が遅れるほど、感情的な対立が深まり、解決までの時間と費用がふくらみます。
「まだ弁護士に頼むほどではないかも」と思っている段階でも、状況を整理するだけで気持ちが楽になることがあります。まずは無料相談を活用するところから始めてみてください。
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