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生前贈与を受けても相続放棄は可能?注意点や生前にできることを解説

代表弁護士 野条 健人
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被相続人から生前贈与を受けて、相続の際に「借金などを引き継ぎたくないから相続放棄したい」という方もいるでしょう。

基本的には生前贈与後でも相続放棄はできますが、なかには相続税がかかったり生前贈与が取り消されたりするケースもあります。

思わぬトラブルを避けるためにも、各手続きについて正しい知識を押さえておきましょう。

本記事では、生前贈与後に相続放棄をする際の注意点や、相続税がかかるケースなどについて解説します。

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生前贈与とは

生前贈与とは、生前に自分の意思で自分の財産を別の人に贈与することです。

生前贈与をすれば相続財産が減って相続税の負担軽減が望めるため、節税対策として用いられるケースもあります。

なお、生前贈与では贈与側が「あげる」という意思を示し、受け取る側は「もらう」という意思を示す必要があります。

また、贈与できる財産は現金や預貯金にかぎらず、株式や不動産などでも可能です。

生前贈与を受けた場合でも相続放棄はできる

相続放棄とは、被相続人の財産に関する相続権を全て放棄することです。

相続放棄をした場合、その人は「はじめから相続人ではなかったもの」として扱われます。

生前贈与と相続放棄はまったく別の手続きであり、生前贈与を受けたあとに相続放棄することもできます。

生前贈与を受けて相続放棄をすると相続税がかかる場合がある

生前贈与を受けて相続放棄をする際は、相続税に注意しなければなりません。

生命保険金を受け取ったなどのケースを除き、通常の相続放棄で相続税は発生しませんが、以下のような場合は課税対象になる可能性があります。

相続開始前3年~7年以内に生前贈与がおこなわれた場合

相続開始前3年~7年以内に生前贈与がおこなわれた場合、相続税の課税対象になり、贈与財産は相続税の課税対象財産に含まれます

2023年までは「相続開始前3年以内の生前贈与」が課税対象でしたが、税制改正によって2024年以降の生前贈与については「相続開始前7年以内」へと順次延長されます。

相続時精算課税制度の適用を受けている場合

生前贈与について相続時精算課税制度の適用を受けている場合、相続税の課税対象になり、贈与財産は相続税の課税対象財産に含まれます。

相続時精算課税制度とは、「60歳以上の父母・祖父母が18歳以上の子ども・孫に生前贈与をする場合、2,500万円まで贈与税が非課税になる」という制度です。

相続時精算課税制度は、税務署への申請によって適用されるため、税務署側も相続税の申告・納税が必要であることを把握しています。

財産の合計額が基礎控除額を下回っている場合は相続税がかからない

相続税には、基礎控除という非課税枠が設けられています。

上記のケースに該当していても、「生前贈与された財産」と「ほかの相続人が取得した財産」の合計が以下の基礎控除額を下回っている場合は相続税がかかりません

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

なお、税制改正によって、2024年以降の生前贈与については新たな控除制度が追加されます。

詳しくは「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし|国税庁」を確認してください。

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生前贈与を受けて相続放棄をおこなう際の注意点

生前贈与を受けて相続放棄をする際は、以下のような点に注意しましょう。

詐害行為取消権が行使された場合は生前贈与が取り消される

詐害行為取消権とは、債務者が悪意を持って自己の財産を不当に減らしたりして債権者が正当な利益や弁済を得られないようにする行為について、債権者が取り消せる権利のことです。

(詐害行為取消請求)

第四百二十四条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

引用元:民法第424

たとえば、「借金を抱えている被相続人が生前贈与をおこない、相続の際に相続放棄がおこなわれた」というようなケースでは、債権者から詐害行為取消権を行使されて生前贈与が取り消される可能性があります。

原則として相続放棄の取り消しはできない

家庭裁判所にて相続放棄の申述が受理された場合、原則として取り消すことはできません。

ただし、例外として「詐欺や強迫によって相続放棄をした」「錯誤による相続放棄だった」などの事情がある場合は、取り消しが認められることもあります。

相続放棄の手続きには期限がある

相続放棄では、相続開始を知ったときから3ヵ月以内に手続きをおこなわなければなりません。

期限を過ぎてしまうと「単純承認をしたもの」とみなされ、資産も負債も全て相続することになります。

期限を過ぎた場合でも、「やむを得ない事情があって手続きができなかった」というようなケースでは、家庭裁判所にて手続きをおこなうことで相続放棄が認められる可能性はあります。

ただし、素人では適切に対応できない恐れがあるため、相続問題が得意な弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

生前贈与や相続放棄以外に有効な方法

被相続人に借金などがある場合、相続での負担を減らすためには以下のような方法も有効です。

被相続人が債務整理をおこなう

被相続人が存命であれば、債務整理をおこなって借金を整理しておくのが有効です。

ただし、債務整理の方法としては任意整理・個人再生・自己破産などがあり、借金額などの状況によって最適な方法は異なります

債務整理をおこなう際は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

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相続人が限定承認を選択する

限定承認とは「プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も引き継ぐ」という相続方法です。

相続放棄では全ての財産を受け取ることができませんが、限定承認では自宅や車などの資産を受け取ることができるため、特に「受け取りたい財産がある」という場合には有効です。

また、限定承認であればマイナスにならない範囲で相続できるため、「ある程度の資産が残っているものの、正確な借金状況がわからない」という場合などにも向いています。

さいごに|生前贈与後の相続放棄に関する悩みは弁護士に相談を

生前贈与後に相続放棄をすることはできますが、生前贈与の直後に相続が発生した場合や相続時精算課税制度の適用を受けた場合などは、相続税に注意しなければいけません。

なお、相続放棄をおこなうには家庭裁判所での手続きが必要であり、素人では書類準備などに時間がかかって期限内に手続きが終わらないおそれもあります。

弁護士であれば、手続きの進め方についてアドバイスしてくれるほか、手続きの代行を依頼することもできます。

当社が運営するベンナビ相続」では、相続問題が得意な全国の弁護士を掲載しているので、弁護士を探す際はおすすめです。

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この記事の監修者
かがりび綜合法律事務所
代表弁護士 野条 健人 (大阪弁護士会)
地元に根差した法律事務所で、地域とのつながりをベースにした親身な対応に定評あり。遺産分割などの相続トラブルのほか、生前対策にも力を入れ、財産管理や「終活」に関する豊富な知見を有する。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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