遺産分割協議が必要なのに兄弟が何も言ってこないときや、ご自身が相続した相続財産が考えていたよりも少なかったとき、他の相続人が、遺産相続の手続を勝手におこなっていた可能性は有ります。
被相続人の預金が引き出されていたなど遺産が無断で処理されたとき、他の相続人はすぐに対処すべきですが、以下の疑問が浮かぶのではないでしょうか。
- 遺産相続を無断でおこなわれたときは、この手続を無効にできる?
- 遺産相続が無断で手続する場合、とは?
- 無断で遺産相続の手続をされた場合、遺産をどうやれば取り戻せる?
- 自分で無断での遺産相続手続に対処できないとき、誰に相談すればよい?
原則として、相続人全員の同意がなければ遺産の相続手続をおこなうことはできません。
しかし、相続人の一人が、法定相続分に基づく共有持分登記をおこなえるなどの例外はあるので、注意する必要があります。
この記事では、遺産相続を他の相続人に無断でおこなわれてしまうケース、この遺産相続の手続を無効にする方法、弁護士がこの場合に協力することのメリットなど、わかりやすく解説します。
無断の遺産相続に困っているあなたへ
無断で遺産相続がおこなわれていたことに気づき、無効にしたい!でもどう対応すればいいんだろう...と悩んでいませんか?
結論からいうと、一部の相続人が、他の相続人に無断で遺産相続手続きをおこなった場合、この手続きは無効になります。
ただし、遺産使い込み分については法的手段を取らなければ取り戻すことは難しいため、この場合は早めに弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。
- 遺産相続手続きをリセットできるか相談できる
- 損害賠償請求と不当利得返還請求のどちらにするか相談できる
- 依頼すると、証拠集めを依頼できる
- 依頼すると、使い込みされた遺産を回収できる可能性が高まる
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遺産相続を無断でおこなうと無効になる
遺産相続手続は、原則として相続人全員の同意が必要です。
そのため、一部の相続人が、他の相続人に無断で遺産相続手続をおこなった場合、その手続は無効です。
他の相続人に無断でおこなわれた遺産相続の手続は無効となり、改めての仕切り直しが可能ですし、無断で遺産相続手続を実施した相続人が遺産を使い込んでいた場合等は、他の相続人は、遺産の使い込み分を取り戻すこともできます。
ただし、法的手段を取らなければ遺産使い込み分を取り戻すことは難しいので、事前に気を付けるべき点を学ぶため、無断で遺産相続手続をおこなわれたケースやその対応策を理解しておきましょう。
遺産相続を無断で実施されるケース8つ
遺産相続手続を無断で実施される場合とは以下のケースが挙げられます。
疑わしいと感じたときは、金融機関や法務局で必要書類を集める等して、証拠を押さえることを心掛けてください。
無断で預金を解約して残高を引き出された
被相続人名義の預金口座が勝手に解約されて残高を引き出されていたときには、金融機関の窓口で被相続人名義の預金口座の取引履歴を請求してください。
大半の金融機関は過去10年分の預貯金口座の取引履歴を保存しているので、この取引履歴を取り寄せることで、名義人が亡くなった後に口座が解約されてお金が引き出された状況を把握できます。
預金口座が解約されずにそのまま残っていても、通帳やキャッシュカード、届出印を管理している相続人が、名義人が死亡したことを告げずに勝手に預金を引き出したケースもありますので、この場合には引き出された預金を取り戻すための手続をおこなうことが必要です。
無断で株式を売却された
上場株式は、ネット上でも売買できるため、被相続人の証券口座のIDとパスワードを知っている相続人が無断で売却する場合があります。
しかしながら、遺言がない場合、被相続人が所有していた株式は相続人全員の共有財産になるため、無断で売却されたタイミングで株価も下落していた場合、相続人全員が株式下落の損失を被るなります。
このようなケースでは、株式を無断で売却した相続人に対し、他の相続人からの損害賠償請求や不当利得返還請求をおこなうことになるでしょう。
相続人ではない人が無断で財産を処分する
所有権が一見して明確ではない財産(バッグやゴルフセットなどの動産)については、相続人ではない者が、相続人に無断で処分している場合が有り得ます。
- ブランドウォッチやバッグなど
- 未使用のゴルフセット
- 高級ブランドの食器セット
- 宝石や貴金属類
- 市場価格の高い絵画や骨董品など
上記のような物品は、買い取り時に所有者を確認することが難しいこと等の理由から、物品買取後は、買い取った業者が所有することになります。
遺産相続のなかで、被相続人が生前に所有していた高価な財産がなくなっていないか、チェックしておきましょう。
相続登記を勝手にされた
不動産の相続登記をおこなう場合、遺言書や遺産分割協議書が必要になるため、無断で登記手続が実施されて、所有権が変更されることはありません。
ただし、法定相続分に応じた共有持分は他の相続人の同意を得ずに登記手続をおこなえるので、以下のトラブルが起きる可能性は考えられます。
- 法定相続分に基づく自分の共有持分を登記することで、他の相続人の共有持ち分も登記される
資産価値が低く、相続するメリットのない不動産でも、相続人には管理する義務や固定資産税の納付義務は発生します。
無断で相続の登記がおこなわれることで、他の相続人が登記に関するトラブルに巻き込まれる可能性はあります。
遺産分割協議書の署名や押印を偽造されていた
遺産分割協議書は全ての相続手続きに使えるため、署名や押印が偽造されていた遺産分割協議書を用いて、無断で相続登記や預金を解約するケースが考えられます。
遺産分割協議書の作成には、相続人各々の印鑑証明書が必要な場合が多いですが、「遺産分割協議に必要だから事前に郵送してほしい」などとして、印影をもとに印鑑を偽造し、結果として遺産分割協議書も偽造するケースは考えられます。
署名や印鑑の偽造は犯罪行為であり、相続人本人の意思に基づかないため、このような場合で作成された遺産分割協議書は無効ですが、協議書の偽造について被害者側が立証することが必要です。
この場合には、証拠として、実際に使われた印鑑と押印された書類などを集める必要があるでしょう。
無断で相続放棄の手続きがおこなわれていた
相続放棄は本人の意思に基づくおこなわれるものですが、郵送手続は可能で、代理人が家庭裁判所へ郵送で申し立てることもできます。
つまり、委任状を偽造して相続放棄を申し立てることも可能なので、相続人に無断で相続放棄の申立書を偽造するケースが考えられるのです。
無断で遺言書を書き換えていた
被相続人が自分で作成した遺言書は自宅で保管されるケースがほとんどのため、遺言書を発見した相続人が、自分に不利な部分を見つけて書き換えるリスクはあります。
相続人が無断で遺言書を書き換えた場合、この遺言書に基づく相続手続は無効であり、遺言書を書き換えた相続人は、相続欠格者として相続権をはく奪されます。
この場合、遺言書の偽造や変造は、遺言書の偽造を主張する側が証明しなければなりません。
このようなケースでは、遺産分割調停や訴訟など、裁判所を介した解決が必要になるでしょう。
無断で遺産相続手続をおこなわれたときの対処法
他の相続人に無断で遺産相続手続をおこなわれたときは、被害の拡大防止と財産の取り戻しが必要です。
被害を受けた相続人同士で協力し、以下のように対処してください。
預金口座を凍結する
金融機関に被相続人である名義人が死亡したことを伝えると、預金口座が凍結されるため、無断で預金が引き出されたり、口座が解約されたりすることを食い止められます。
預金口座の凍結は電話連絡だけで受け付けてもらえるので、すぐに取引先の銀行へ口座番号などを伝えてください。
なお、口座番号がわからないときも金融機関は照会できるので、戸籍謄本などを提出して名義人の相続人であることを証明できれば、1~2週間程度で結果が通知されます。
遺産分割協議をやり直す
無断で遺産相続手続をおこなわれていたとき、相続人間の話し合いで解決できる可能性もあるため、遺産分割協議のやり直しを検討する余地もあります。
無断で引き出すなどした被相続人の財産を返還してもらって、遺産分割協議をやり直す法要や、無断での引き出しが法定相続分の範囲内である場合には、残った相続財産を他の相続人間で分割すると決めてもよいでしょう。
代償金を請求する
無断で遺産の登記がおこなわれていたとき、お金の解決として代償金を請求する方法もあります。
お互いが合意できれば代償金の支払いで終えられるので、短期間で問題解決できるでしょう。
ただし、相手にお金があることが必要ですし、代償金の額で揉めることもあるので注意が必要です。
代償金は不動産の評価額を踏まえて決まるので、公示地価、市場価格のどちらを参考にするか、相続人間で意見が分かれる可能性は高いので、この場合には裁判による解決が望ましいといえます。
代償金の額に折り合いがつかないときは、弁護士への相談をおすすめします。
遺産分割調停を申し立てる
無断で遺産相続手続をおこなった相手と話し合いでの解決を図れないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。
調停は、原則として話し合いで和解を目指す裁判上の方法ですが、双方の間に調停委員が入るので、調停の開始時・終了時以外では、相手と顔を突き合わせることはありません。
調停では、無断で遺産相続手続がおこなわれたことを主張するとき、その裏付けとなる証拠資料を提出する必要があります。
調停が不成立となって審判へ移行すると、調停申立から終結までに1年ないし2年かかる場合もあり、長期戦となることが多いです。
このような長期戦の下での対応や、事件に関する証拠集めが難しい場合、まずは弁護士に相談しましょう。
遺産分割協議不存在確認訴訟を起こす
遺産分割協議不存在確認訴訟とは、他の相続人に無断で遺産分割協議書を作成された場合、その遺産分割協議が実際にはおこなわれていなかったことを裁判所へ主張して、遺産分割協議がなかったことを訴える手続です。
訴訟で解決を目指すとき、訴状や証拠の準備が重要になるので、ご自身で対応できないときには弁護士へ依頼してください。
遺産分割協議無効確認訴訟を起こす
遺産分割協議無効確認訴訟とは、以下のような状況で遺産分割協議がおこなわれたときに、その遺産分割協議の無効を訴える手続きです。
- 脅迫されて遺産分割協議に同意した場合
- 一部の相続人を除外したまま遺産分割協議を成立させた場合
- 錯誤や詐欺があった状況で遺産分割協議を成立させた場合
不動産の抹消登記を請求する
不動産の相続登記を無断で申請されたときは、法務局へその登記の抹消を求める登記手続を請求できます。
抹消登記手続をおこなうと、登記名義人が被相続人へ戻るので、あらためて遺産分割協議をおこなって、相続人の中で誰が不動産を相続するのか決めましょう。
この場合の登記申請手続は、一般的な登記手続申請とは異なってかなり特殊なので、登記手続の専門家である司法書士へ依頼したほうがよいでしょう。
損害賠償や不当利得返還を請求する
相続財産を無断で引き出すなどして使い込まれたときは、不法行為に基づく損害賠償請求、または不当利得返還請求によって回収する方法が考えられます。
どちらも裁判所での訴訟を通じた手段ですが、損害や不当利得があったことの立証責任が被害者側にあるため、有力な証拠を集めておかなければなりません。
また、損害賠償請求権と不当利得返還請求権は時効のタイミングが異なるので、どちらの方法で行くべきか、弁護士に相談するとよいでしょう。
無断で遺産相続手続をおこなわれたときの注意点
無断で遺産相続手続をおこなわれた場合、相続人間での話し合い、話し合いでの解決をできない場合には訴訟による解決を図ることが必要です。
ただし、以下の注意点のとおり、どちらの場合でも証拠は重要ですし、権利行使期間は限られているので、気を付けましょう。
自分で証拠を集めなくてはならない
相続財産の勝手な使い込みがあった場合、相手から回収するときには自分で証拠を集めなくてはなりません。
証拠がなければ、使い込みをした相手の主張を覆せないので、どのような手段で無断での遺産相続手続をおこなったのか、相続人が被った損害額はいくらなのか、被害者側の相続人が立証することが必要です。
訴訟の場合、証拠が重視されます。感情論で訴えても勝ち目はありません。
対応策を迷った場合には、無料相談などを活用して、一度、弁護士に相談されるとよいと思います。
権利主張には時効がある
相続財産の勝手な使い込みを法的手段で回収するときは、以下の時効に注意してください。
【損害賠償請求権の時効】
- 損害及び加害者を知ってから3年
- 不法行為があったときから20年
【不当利得返還請求権の時効】
- 権利を行使できることを知ったときから5年
- 権利を行使できるときから10年
消滅時効が完成した後では、被請求権者から消滅時効を援用された場合に権利が消滅します。
そのため、権利の消滅を防ぐため、まずは内容証明郵便などで相手方に催告することが必要です。
それぞれの権利について、消滅時効の起算点は間違えやすいので注意しましょう。
遺産分割協議には時効なし
遺産分割協議の締結には時効がありません。
無断で相続財産を処分した場合であっても、遺産分割協議のやり直しを諦めず、相続人間で遺産分割協議をしっかりおこなうよう心掛けましょう。
無断で遺産相続手続をおこなわれたときは弁護士への依頼がベスト
無駄で遺産相続手続をおこなわれた場合、相続人同士での解決が難しいときには、弁護士に依頼してください。
弁護士は以下のような対応を取るので、無断でおこなわれた遺産相続手続をリセットさせることだけでなく、無断で手続をおこなった相手から遺産の回収を図れる場合もあります。
- 証拠集めを依頼できる
- 消滅時効の完成を阻止してくれる
- 適切な解決方法を判断して実行してくれる
- 調停や審判でのサポートをしてくれる
証拠集めは、最も重要な作業ですが、ご自身で対応すると見落としが多くなったり、時間が経つほど収集が難しくなったりするので、弁護士へ依頼して証拠集めもお願いするほうが確実です。
損害賠償請求をおこなうときも、弁護士に任せることで権利の消滅時効の完成猶予を図ることができます。
また、遺産の使い込みの場合、損害賠償請求と不当利得返還請求のどちらで行くと勝てる可能性が高まるか、その選択は難しいので、迷ったときは弁護士に判断してもらいましょう。
弁護士は、家事調停や審判での代理人になれるので、仕事や家事が忙しく、家庭裁判所で開催される家事調停や家事審判に出廷できない方の場合、代理人として選任した弁護士が期日に出廷することで、事件を進めることができます。
弁護士が代理人として対応することで、無断で遺産相続手続をおこなわれた場合でも、適切な対応による早期解決を目指すこともできるでしょう。
まとめ|無断でおこなわれた遺産相続手続の対応は、弁護士へその解決を依頼しましょう
無断でおこなわれた遺産相続手続は法的に無効ですが、協議書に押印された印鑑を偽造されたり、字体を真似されたりすると、金融機関や法務局のチェックに引っかからない可能性があります。
被相続人が生前に使用していた預貯金口座の暗証番号を知っている相続人がいる場合、この相続人は、被相続人名義のキャッシュカードさえあれば預金を引き出すことは可能です。
一方で、預金の無断引出し等がおこなわれた後、無断引出しの証拠がなければ、相手にシラを切られてしまう等して、取り戻しが難しくなるでしょう。
無断で相続手続された遺産を取り戻したいときや、無断でおこなわれた遺産相続手続をリセットしたいときは、弁護士に解決を依頼してください。
この場合、証拠の散逸や消滅時効の完成を防ぐため、できるだけ早めの相談をおすすめします。
無断の遺産相続に困っているあなたへ
無断で遺産相続がおこなわれていたことに気づき、無効にしたい!でもどう対応すればいいんだろう...と悩んでいませんか?
結論からいうと、一部の相続人が、他の相続人に無断で遺産相続手続きをおこなった場合、この手続きは無効になります。
ただし、遺産使い込み分については法的手段を取らなければ取り戻すことは難しいため、この場合は早めに弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。
- 遺産相続手続きをリセットできるか相談できる
- 損害賠償請求と不当利得返還請求のどちらにするか相談できる
- 依頼すると、証拠集めを依頼できる
- 依頼すると、使い込みされた遺産を回収できる可能性が高まる
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